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翌朝、ドアの音に起こされた。案内人だった。何の用かわからないが、早起きして塔を探しに出かけるつもりだったので、いつまでも眠りこんでしまうのを避けれたのでありがたい。「トウヘツレテッテクダサイ」「朝ごはん食べた?」 外に出て見あげたとき、まさにそこに塔があるのかとびっくりしたが、ちがった。塔ではなくちょっと奇妙な感じの煙突のような物だった。 案内人についてゆく。
2010年05月30日
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僕のお金が役に立ったばかりでなく、ありがたいことに、ここは宿泊施設であるらしく部屋のようなところに案内された。(深夜におなかがすき、サンドイッチを作ります) あした起きたら塔を探しに出かけましょう。
2010年05月26日
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僕は案内人にもお礼を言う。 いろいろお礼を言いたいのですけど、言葉が通じないのはじつに残念です。言葉が読み取れないと知っててもこの街に来たのかな? どうかな、やっぱり来たような気もします。わかりませんけど。まあ、塔にさえ行ければいいのですから、言葉はたいして問題じゃない。いや、そうじゃなくって、塔がどこにあるのか教えて欲しいのに言葉がねぇ…というようなことをしゃべってみたところ、案内人もしゃべりだした。「だいじょうぶよ。きっとあしたは遠山記念館に入れるし、おもしろい物をたくさん見れるわ。お金も運良く手に入ったから入場料の心配もしなくていいし、よかったわね」
2010年05月23日
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そうか、ここは両替所だったのか。 ちがうかな…なんか奇妙…「すごいよ、ほら、こんなに高く買ってくれたよ」「ずいぶん珍しいお金だったのね。でもねえ、人のお金を勝手に売っちゃっていいのかしら?」「ココハリョウガエスルトコロ、ミタイナトコロデスカ?」「いったい何言ってるの、この人」「この人は遠山記念館に行きたいのよ」「どうするつもり?」「あした、連れてってあげる」「ふーん…今夜の宿泊代、もらっとくよ…はい、おつり」 男は持ってきた紙幣ではなく、引き出しから取り出した10枚近くの紙幣と3枚の硬貨を僕に渡す。「オー! アリガトウゴザイマス」
2010年05月20日
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それにしても何が起こっているのだろう? 僕の紙幣を持った男が階段を昇っていった。「アノヒトハナニヲシニイッタノデスカ?」「お金の研究家だなんて、そんなの、いったい何なのかしら」「ボクノオカネハココデモオカネデスヨネ?」 あれをお金と思ってくれないと、僕は無一文だ。 このとき、どういうわけだか、ふと頭に浮かんだ「藁人形」に引きつづき、どういうわけだか、洗濯機に残してきたひろしの姿を目に浮かべたとき、男がうれしそうに階段を降りてきた。 見たことのない紙幣(たぶん)を持っている。
2010年05月18日
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このあたりでは、言葉が通じないように、お金も通じないのだろうか? 案内人は黙っている。 このとき、どういうわけだか、お金にまつわる怖い落語、「藁人形」という言葉が頭に浮かんだ。機会があったら聴いてみてくださいね。■ というわけで、五代目古今亭志ん生さんの「藁人形」を聴いたのですが、これがホント、コワイ。 どうコワイかと言いますと、数日後、もういちど聴こうとしたところ、「これから藁人形を聴く」と考えただけでなんだかザワッザワァッとコワイ、のですよ。 そしていまから3回目、聴くところなんです…ザワザワァッ… …というわけで、聴きましたよ、聴いちゃった…それでですね、聴いたけど、やっぱりコワカったです…いつか4回目を聴くんだろうな…コワイ…
2010年05月16日
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「何これ?」「お金みたいね」「悪いけど、こんなので泊まってもらうわけにはいかない」「困ったわね。立て替えてあげるにしたって、わたしもちょっとしか持ってきてないし」「あ、ちょっと待って。いいこと思い出した。いま泊まってるお客さんにお金の研究家がいるんだ。ためしに見せてくるよ、ちょっと待ってて」 紙幣を持って階段を昇っていった。
2010年05月12日
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入ってすぐ、ホテルのフロントのような受付のようなところにひとりの男がいて、案内人と何やらしゃべりはじめた。 どういう事情ならそのようなことがありえるのか具体的には思いつけないが、僕を刑務所のようなところに入れるとか処分するとか、そういう話し合いをしている可能性もありえるが、男の表情からはまあ、そんなことではなさそう。 手間取っているようすなのは、予約もしておらず言葉も通じない客なので、宿泊費を前払いしてもらいたがっているのかもしれない。僕は財布から紙幣を抜き出して男に渡す。
2010年05月12日
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「ああ、そうね、あなたは泊まるところがわからない」「アナタヲアンナイニントヨンデイイデスカ?」「どこがいいかしら」「ドコニトウハアルノデショウ?」「遠山記念館からさほど遠くない宿屋がいいわね」 案内人は歩き出し、僕はついてゆく。嫌がっているようには見えないから、つきまとわれているとは思っていないだろう。ああそうか、「バスデミタポスターニカンケイシタトコロニムカッテイルノデスカ?」 まわりを歩いている人たちの話し声が聞こえてくる。やはり知らない言葉たちだ。 案内人は妙な具合の建物に入ってゆく。塔でもなく、ポスターに関係した場所でもなさそう。
2010年05月09日
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目的の塔はいったいどんなのだろう?「もう遅いわ。遠山記念館はきっと閉館してるでしょう。今夜、あなたはどこかに泊まって、あしたの朝、待ち合わせましょう。記念館の入口まで連れてってあげるわ」 通じもしないのにまたしゃべっている。「オナマエハ?」と僕も、通じもしないのにしゃべり返している。 バスに乗っている間はこの人のこと、隣の客とか隣の人とか呼んでいたけど、塔へ行きたくてもどこへ行けばいいのかわからないし、少し状況がわかるまでついて行くとして、この人を案内人と呼ぶことにしよう。
2010年05月05日
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「着いたわよ」 隣の人の声で起こされる。居眠りしていたらしい。いつのまにやら外は暗い。乗客たちは立ち上がりバスから出てゆく。終点なんだろう。「ツイタノデスカ?」 隣の人が立ち上がり僕も立ち上がり、バスから降りる。風が心地よい。見まわすと、片側は暗いコンクリートの平面のひろがり、もう片側は立ち並ぶ建物の連なり。塔を探すがここからは見あたらない。塔と言っても名ばかりで、きわだってそびえているわけではないのかもしれない。それとも予想通り、まちがった地区に来てしまったのかもしれない。とにかく、探すだけは探してみなくては。
2010年05月04日
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隣の人ははしゃいだようにしゃべっている。コトバが通じないおかげで安心して心から話せるのかもしれない。飼ってる動物相手にしゃべっているようなものか。やはり、僕が乗るべきだったのは、このバスではなくあのバスだったか。これはまったくまちがった方角かもしれない。迷路でいつのまにやら反対方向に進んでいるようなものか。バスは塔へ向かってはいないのかもしれない。それにしたって、もうずいぶん走っている…ずいぶん遠い…
2010年05月03日
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「ボクノイッテルコト、チョットハワカリマスカ」「心配しなくてもいいわ。遠山記念館にはきっと連れてってあげるから」「アア。ヤッパリコトバ、ムリナンデスネ」「そう、ずいぶん前になるわね、わたしが遠山記念館へ行ったのは。たしか学校の遠足だったかそれとも家族旅行だったかしら、ひょっとしたら弟と二人きりでこっそり出かけたのかもしれない。どちらから誘ったのでしょうね、わたしはあまり楽しくなかったけど、どういうわけだかあのころは何をしててもあまり楽しくなかった気がするわ、だけど弟はね、学年がひとつ下なんですけど、ずいぶん仲のいい弟だったわね、二学年いっしょの遠足だったのでしょうね、何がおもしろいのだか、ひとつ年下の弟はね、わたしはちょっと離れて見てたのだけれど、なんだかとても楽しそうで、通路は走るわ、人様の迷惑になるようなことはしてはいけないぞ、ってきつく言ってたおとうさんなのに、二人だけで行ったこと、家に帰ってからばれなかったのかしら、しかられはしなかったわ、秘密だったからよけいにおもしろかったのかもしれないわね、遠足の前の晩から弟はね、それはもうはしゃいでしまって……」
2010年05月01日
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