[Stockholm syndrome]...be no-w-here

2018.08.06
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カテゴリ: 宝塚
実は、花組【MESSIAH(メサイア)】の感想がなかなか上手く纏らず、どうしたものかと困っていたのだが、宙組【WEST SIDE STORY】に感動し、一気に感想を書き上げた勢いそのままに、その後は花組もすんなりと纏める事ができた。
言葉が浮んで来るかどうかは、ある程度その時の気分に左右される事を、改めて実感…(笑)。



今回の【MESSIAH】で一番印象的だったのは、100期生の聖乃あすか。
登場シーンは少ないものの、徳川幕府の将軍という権威ある立場を演じ、また物語の色合いを決める重要な役回りだったが、これがなかなか堂に入っており感心した。
柚香光と水美舞斗のスター2人を相手に、気後れしなかったのも立派なもの。
今後の更なる成長が楽しみだ。



柚香光は、今回の配役で最も難しい立場にいる山田右衛門作(リノ、祐庵)役だったが、その心情を丁寧に演じており、好感が持てた。
リノの流雨(仙名彩世)への想いや、領民達との関係を考えると、いきなり現れて自分の居場所を踏み荒らす四郎は、まるで生態系を乱す「外来種」のように映ったに違いない。
しかし、海賊風情にも拘わらず、四郎は流雨や領民達の信頼を得て行く…。
そんな四郎に対するリノの複雑な心境を、柚香は台詞としではなく、表情や仕草に滲ませながら、しっかりと表現していた。

歌唱力も申し分無く、2番手として着実な成長を感じさせる。
元々、類い稀なオーラを持つスターだけに、それに見合う実力を身に付ければ、誰からも異論の出ないトップになれるだろう。



一方の水美舞斗も、静かな佇まいの中に徳川幕府の重鎮としての貫禄を存分に感じさせる演技で、脇役以上の存在感を放っていた。
また、敵の総大将でありながら、窮状に喘(あえ)ぐ領民達にも理解を示し、温情を滲ませる細やかな表現も素晴らしかった。
江戸城内での、裃(かみしも)を着ての所作も見事。

星組の瀬央ゆりあと同様に、これまでは圧倒的キラ星の同期の影に隠れがちだったが、最近は確かな個性と実力を身に付けつつある。
今後が更に楽しみだ。



物語の元凶となる松倉勝家を演じる鳳月杏は、圧巻の芝居で魅せてくれた。
普段の慈愛に満ちた眼差しとは真逆に、今回の舞台で見せるのは、天草の人々に地獄のような苦しみを与えながら、それをせせら嗤(わら)う無慈悲な外道の眼差し。
宝塚という事で、さすがに残酷な拷問のシーンは無かったが、彼の言動からどれだけ残忍な人間だったかはしっかり伝わって来た。

そう言えば、先月の話になるが、朝日新聞の夕刊とスポニチ新聞に彼女のインタビューが載っていて驚いた。
普段は、トップコンビや別公演で主演する男役しか登場しないコラムに、2番手でもないジェンヌのコメントが載るのは異例中の異例。
(今年は1度しか彼女に会えない憐れな僕に、同情してくれたのだろうか…笑)
インタビューでは「共感できる部分が全くない人物だったので、役作りに苦労した」と話していたが、舞台では本当にちょっと怖くなる程の悪人振りを、見事に体現していた。



その家臣である田中宗甫を演じた天真みちるも、憎々しい表情で見応えがあった。
僕は何故か、ずっと彼女を専科の人だと勘違いしていて(笑)、今回退団すると知って初めて花組の男役だと気付いた。
彼女と言えば、【金色の砂漠】でのゴラーズが印象に残っている。

更に、他の人達のブログを読んで、彼女が実はあの「タンバリン芸人(?)」だった事も知り(笑)、何だか色々と驚かされた。
(動画を見た記憶はあるのだが、誰かまでは覚えていなかった)
悪人役ではあるが、最後までしっかりと存在感を示していたと思う。



主演の明日海りおは、流石の演技力で、元海賊という猛々しさと、子供達から好かれる人懐っこさとを矛盾無く表現していた。
そこからは、夜叉王丸(四郎)の自由で邪心の無い生き方が透けて見え、それが第13場の説得力に繋がったのではないかと思う。
また、領民達の心を束ねて力強く導く姿が、トップスターのカリスマ性とも上手く重なり、天草四郎時貞をただのシンボルではない真のリーダーとして蘇らせていた。



仙名彩世も、聖母マリアの絵のモデルとなる美しさと、困難な状況にも挫けない芯の強さを持つ女性、流雨を好演していた。
恋愛要素が薄いので、気付くと物語の中に埋没してしまいがちな役柄ながら、トップ娘役としての存在感をしっかり出していた。
第5場B(だったと思う)での歌声も美しく、もっと聴いていたいと思った。


ありがとう!!


今回、個人的に注目していた若手の亜蓮冬馬が怪我のため休演したのは残念だが、1日も早く回復して、また元気な姿をファンに見せて欲しい。
気分が出れば、ショー【BEAUTIFUL GARDEN -百花繚乱-】についても書きたいと思う。


そう言えば、流雨をモデルにした聖母の絵は、ラファエロの【大公の聖母】が元じゃないだろうか?

赤子のイエスを抱いていなかったし、遠目なので確証はないが、凄く似ていると思った。





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Last updated  2018.08.07 23:21:44


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