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2008.09.03
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カテゴリ: Movie
1962年、ジャン・コクトーとフランシーヌ・ヴェズヴェレール夫人の友情に亀裂が入り始める。2人の仲たがいについては、当事者が長い間いっさい口を閉ざしていたため、何があったのか謎だった。だが、フランシーヌの一人娘キャロルが1996年に出版した 『ムッシュー・コクトー』(東京創元社、花岡敬造訳) で、ある程度当時の事情を明らかにした。

「美しく魅力的なフランシーヌも今では45歳、自分の誘惑の力に不安を感じたのか、『伊達男』と渾名された二流作家に口説かれた。この作家はママを通して、コクトーに取り入ろうとしたが、ママはその罠にはまり、彼を家族に押しつけようとした。ムッシュー・コクトーはその男がサント・ソスピールに住みつくことに反対した。すると『伊達男』はコクトーへの復讐を誓ったのだ。ヴェスタの巫女は神殿に独裁的に君臨しようとした。ゲームの規則を破ったのは、フランシーヌのほうだった」

早い話がフランシーヌに愛人ができた。そして、新たな「家族」として彼をサント・ソスピール荘に入れようとした。ところがコクトーは彼を拒否し、それがもとでフランシーヌはコクトーが煙たくなったということだ。

「彼女(=フランシーヌ)は生きたかった、そして愛したかった。彼女は自分自身の力で存在したかったのだ。コクトーがそんな彼女の邪魔をしているとママは信じた」

コクトーのほうは、フランシーヌとドゥードゥー(=デルミット)の3人でサント・ソスピール荘で1年の大半を過ごし始めた1950年の10月に、ジャン・マレーにフランシーヌとの関係について、こんなふうな手紙を送って説明していた。

「君のため、ドゥードゥーのためだけに生きていたい、そういう思いがますますつのります。ぼくがフランシーヌを愛しているのも、あの人の願いがただ1つ、このぼくの愛する人たちが幸せでいるのを見ることだからです」 (『ジャン・マレーへの手紙』より)

だが、12年たって、フランシーヌはジャン・コクトーを自分の別荘の闖入者と見なし始めた。かつてコクトーが「フランシーヌは天使です」とマレーへの手紙で書いた裕福で寛容なパトロンヌは、明らかにコクトーに従順であることに疲れ、コクトーの友人たちをもてなすことに多大な時間をさいてきた自分の人生に懐疑的になり、45歳という年齢にあせりを感じ始めていたのだ。

新しい男性とこれまでとは違った自分自身の人生を生きたいと考え始めたフランシーヌ…… コクトーとの間に言い争いが多くなり、それはコクトーと父と慕うキャロルの心を深く傷つけた。キャロルは仲裁に入ろうとするが、自分が原因で母子の間にまで亀裂が入ることを恐れたコクトーが、キャロルをたしなめ、思いとどまらせる。

1963年に入ると2人の訣別は決定的になっていく。サント・ソスピール荘を出る出ないでフランシーヌともめているときのコクトーのマレーへの手紙。

「1963年2月18日 ぼくのジャノ ずっと手紙を書かずにいました。そうしないと、君にまでぼくの悲しみを押しつけてしまいそうでした」
「サント・ソスピールから引っ越すなんて、どんなことになるか、思ってもみてください。ぼくの人生はあそこと1つでした。家財道具を持ち出すどころか、あそこに自分の人生を残していかねばならないでしょう。あの家をフランシーヌが留守になったら出かけていく便利なホテルなみには、どうしても考えられません。彼女の家を自分の家のように思えばこそ、あそこで暮らしてきたのでした」
「運のいいことに、フレジュで小さな別荘が提供されました(注:この時期、コクトーはフレジュのチャペルの壁画制作を依頼された)。チャペルの仕事をする間はあちらで過ごせます。気に入るようだったら、ミリィとともに、あちらも郵便のあて先にすることを考えています。そうなれば、君がコート・ダジュールで仕事中にも、あまり離れずにすみます」
「いささか陰気な手紙になってしまいました。君だっていろいろ大変なことが多いのに、こんなことで心を痛めさせて、本当に恥ずかしく思います」
「ぼくのジャノ、ほんの数行でいい、手紙をください。もう何日も隠れたきりの太陽の代わりに、君の太陽があらわれてほしい」


男女のケンカで、かたくななのはいつの時代も、常に女…… フランシーヌは、コクトーとの対話すら拒否するようになる。結局コクトーは3月14日に、ドゥードゥーとともにサント・ソスピールを引き払った。

キャロル・ヴェズヴェレールはそのときの悲しみを、『ムッシュー・コクトー』で次のように書いている。

「ムッシュー・コクトーとドゥードゥーがあたかも解雇された使用人のようにサント・ソスピールを去らなければいけないという考えは、私には耐えられないものだった」
「私にとってもコクトーにとっても、サント・ソスピール荘はママのものではなく、コクトーのものだったのだ」


一方、ジャン・マレーも、フランシーヌとの訣別がコクトーを深く傷つけ、体まで蝕んでいく様子を間近に見て、なんとか元気づけようしていた。ときにセルジュとともにコクトーの家を頻繁に訪ね、一緒に食事をして話を聞くなど、できるだけコクトーと時間を過ごすよう心を砕いていたマレーは、4月も半ばを過ぎたある晩、不思議な夢を見る。

昔住んでいた家の母の部屋で、ジャン・コクトーが死んだのだ。マレーはコクトーを両腕で抱き上げ、階下のサロンへおりていき、子供のころ使っていたサラマンドル・ストーブの前にコクトーを横たえて、その両足をマッサージしたところ、コクトーが生き返る――

あまりに生々しい夢だった。衣装係とメイク係に話すと、マレーを安心させたい彼女たちは、
「親しい人の死ぬ夢を見ると、その人の寿命を10年延ばすんですよ」
と言ってくれた。

ところが数日後、マレーが恐れていた事態が起こる。
パリに戻っていたコクトーが、モンパンシエ通りのアパルトマンで、再び心臓発作に襲われたのだ。

<明日へ続く>





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最終更新日  2008.09.03 16:49:03


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