ルキーノ・ヴィスコンティ『夏の嵐』(1954年)に将校役で出演したハリウッドの美男俳優ファーリー・グレンジャー。彼は2007年に自伝"Include Me Out: My Life from Goldwyn to Broadway"をアメリカで出版している(邦訳はない)のだが、この中にジャン・マレーとの短い出会いが綴られている。
「翌朝、私はコーヒーとクロワッサンの暖かな匂いで眼を覚ました。昼になっていた。ジャン(=マレー)がベッドのわきにコーヒーを置き、カーテンを開けた。それで私は、ここがセーヌ川に浮かんだジャンの豪華なハウスボートだということを思い出した。前の晩のことは詳しくは憶えていない。だが、ジャンが気遣いのあるやさしい人だとわかったのは確かだ。ルキーノの演出に協力したのではない。ジャンと一緒に過ごすと決めたのは私だった」
(ファーリー・グレンジャー自伝”Include Me Out”より)