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2024.02.12
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カテゴリ: 手塚治虫


上のタイトルは手塚治虫漫画全集(講談社 1982年)『ばるぼら』のあとがきからの引用だが、漫画をテレビの実写化するにあたっての改変が世間の衆目を集めている今、なんともタイムリーな言葉ではないか。

漫画原作者からは、改変にまつわる「嫌な思い出」がさまざま語られているが、里中満智子氏の意見は、非常にニュートラルで冷静だ。

https://dot.asahi.com/articles/-/213175?page=2

私は、ドラマやアニメなどの二次創作は、原作とはまた別の世界だと思っています。

というのも、自分の少女時代を振り返ると、好きな漫画作品がアニメ化されたときに満足したことがなかったんです。原作ファンとしては、「このキャラクターはこんな声のはずがない」とか「原作のこの部分をもっと生かしてほしかった」など否定したくなるポイントが次々と出てきてしまって。

たとえば手塚治虫先生の『鉄腕アトム』は、漫画だと、世の中の不条理に対する独特の絶望感が漂っています。私はその暗さが好きだったんですけど、アニメになると、小さな子ども向けにすっきりとした明るさにまとめられていました。アニメ版も手塚先生が手掛けていたんですけど、夕方にお茶の間で流れるテレビアニメだと、まったく違った表現になるんだなと思いました。

――ご自身の作品も、『アリエスの乙女たち』(1987)『鶴亀ワルツ』(1998~99)などドラマ化されていますが、“改変”をめぐるトラブルはありませんでしたか?

出来上がったドラマは原作通りではなかったけれど、原作が持っているメッセージを伝えたいという気持ちが見えたので、楽しく拝見しました。

私は、たとえ表現方法は変わっても、原作の芯の部分は伝えて頂けるだろうと、映像のスタッフさんを信頼したいタイプなんです。作品の世界をきっちり守る考えの漫画家さんからは「丸投げじゃないか」と言われるかもしれませんが、どっちがいいではなくて、作者によって違うし、同じ作者でも作品によって違うこともあります。みんなが納得できる理想形は、一つの作品ごとに関係者たちが模索して、築いていくものだと思います。

だからこそ、映像のスタッフさんには、是非、ご自身が好きだと思う作品を二次創作して頂きたい。みなさん、お仕事だからいろいろなことを考えなきゃいけないのでしょうけど、「これだけ人気の漫画を実写化すればヒットするだろう」とか「原作のおいしいとこだけつまみ食いしよう」とか、そんなことだけを考えていらっしゃるとは思いたくないです。

​里中氏には同じクリエイターとしての「映像のスタッフ」に対する信頼感があるようだ。だが、そうした気持ちを踏みにじるような「改変」があるのも、また確かだろう。これはもちろん、基本的には「映像のスタッフ」の態度によるものだが、原作者のスタンスによってもその捉え方は違ってくるだろう。

好例が、白戸三平と横山光輝だ。

(Wikiより引用)自作品の映像化に関して、横山はその点については現実的かつ寛容で、商業作品は第一に経済的に成功させなければならないという点に対して理解を持っていた。 白土三平 が『ワタリ』について先に制作された映画版の表現や完成度への不満からテレビドラマ化を拒否し、手配されていたスタッフやキャスト、予算などが宙に浮いてしまった際に、代替企画の原作者として横山に急遽白羽の矢が立てられ、このために『飛騨の赤影』( 仮面の忍者 赤影 )の連載を開始し、こちらは正統派の 忍者

白戸三平はいかにも「孤高の存在」という気がする。といって、横山光輝が「妥協した」というのも少し違うだろう。横山は現実的で、商業作品は経済的に成功させなければならない、それを最も重要だと考えていた。これは妥協というより信念だ。

横山のこうしたスタンスを早い段階で指摘した慧眼のマンガ家がいる。それは

赤塚不二夫

だ。赤塚は売れない時代に、有償で横山光輝のアシスタントをしたことがある。横山の仕事が終わると赤塚は石森章太郎や藤子不二雄など「いちばん気の合う仲間」のところに飛んで帰った。そして、横山について「彼の持論は即物的で、漫画家なんて、大衆小説だけ読んでいればいいとさえ、極言した」と自著『ボクはおちこぼれ』で書いている。

それより前、石森、長谷邦夫と赤塚が手塚治虫を訪ねた時、手塚は3人にこうアドバイスした。「マンガを描きたかったらマンガだけ読んでいてはダメだよ。いい音楽も聴きなさい。いい映画も見なさい。いい芝居も見なさい」。

その場で長谷が『第三の男』の音楽が好きだと言うと、手塚はピアノで弾いてくれたという。

耳コピですかね? スゲー

横山光輝は手塚治虫の作品で漫画家を志した。そして、手塚の推薦でデビューし、デビューに当たっては手塚が原作まで提供している。手塚治虫にここまでの後押しを受けた漫画家はほとんどいない。

その後は『鉄人28号』をはじめ、さまざまなヒット作を世に出し、後期には歴史物で評価を得るが、同じ手塚治虫を出発点としながら、藤子不二雄や石ノ森章太郎といったトキワ荘の有名ストーリー漫画家たちとは、何かが決定的に違う。

それを赤塚は敏感に感じ取ったのだ。

Mizumizu個人は、横山原作のアニメやドラマはよく見ていたが、横山漫画には興味がなく、読んだこともないし、これから読みたいとも思わない。ただ、漫画史に残る巨匠であることは確かだ。

作家の渡辺淳一は「(年を重ねて)想像力がなくなってきた作家にとって歴史物は好都合だ。歴史の経緯を書くことでページを埋めていくことができるから」というようなことを言っているが、晩年になってもオリジナル作品にこだわり続けた手塚治虫やトキワ荘出身の有名漫画家(藤子不二雄、石ノ森章太郎、赤塚不二夫)とは対照的に、横山は後年は原作のある歴史物の漫画化を多く手がけた。

このあたりスタンスの違いは、むしろ手塚やトキワ荘出身漫画家たちとの「インプットの差」のようにも思える。

横山が本当に大衆小説しか読まなかったかどうかは分からないが、「いい音楽、いい映画、いい芝居を」と、幅広いインプットを後輩に奨めた手塚とはくっきりとした境界線が見える。

このインプットの差が、生涯に生み出した作品のジャンルとその傾向に現れているように思うのだ。

だが、横山光輝のように、改変に寛容な、ある意味で「即物的な」漫画家がいたからこそ、『魔法使いサリー』『仮面の忍者 赤影』のような、原作とは離れた改変ヒット作
生まれた。 これは原作者横山の立派な実績だと言って差し支えないだろう。

あるいはそうした成功例が、テレビ局側の「改変」に対する安易な考えを招く元になったという側面も、もしかしたらあるのかもしれないが・・・














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最終更新日  2024.02.12 22:01:00


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