仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2014.03.22
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カテゴリ: 仙台
六丁の目は国道4号仙台バイパスの東側、伊在の北側に位置し、規模は東西3キロ、南北1キロ広大なエリアであるが、形状は複雑で不規則である。

地図では、「六丁の目元町」など、「六丁の目」の後に続けて、元町、西町、北町、南町、東町、中町の地名があるほか、「六丁目」の大字もある。奇妙なことに、附近には四丁目や五丁目は存在しない。代わりに、南目館(みなみのめたて)、霞目(かすみのめ)がすぐ南方にある。

この地名分布を知るには、古代から1千年間続いた条里制を知る必要がある。

六丁の目は、郡山遺跡と多賀城遺跡に挟まれており、少なくとも7世紀から開発されてきた水田地帯と考えることが可能だ。また遠見塚古墳もあり、古墳時代(3世紀末から7世紀)をも視野に入れなければならないほどこの一体の水田開発は古いと考えられる。そして、高度な農地管理法として条里制が求められた。

中国では古くから阡陌(せんぱく)法による農地管理が行われたという。農地を縦横の通路で直行させて生まれたマス目に地番を付けて管理するもので、日本に本格的に水田が伝わると同様に管理されたと考えられる。やがて日本ではそれを条里制と言うようになった。縦横のいずれかが条で他方を里としたものだ。(古墳時代に生まれた言葉とする説もある。)

条と里はそれぞれ6町(60間×6=654m)づつのマス目で仕切られ、この六町四方格36町歩をもって一里とした。読み方は、「いちり」だと長さの単位と紛れるため、「いちのさと」又は「ひとつさと」だったと推定される。この「里(さと)」は行政区画として重要な基本単位に使われた。

大化改新以降、「国郡里」制を敷いていたのだが、715年には新たに「郷」が加わり「国郡郷里」制(単に郷里制と呼ぶ)になった結果、従来の六町四方格=一里は、一郷に改められ、「里」は郷の中に2~3組み込まれて使用されるようになる。また、郷はさらに36の一町方格のマス目に仕切られ、ひとつひとつに坪名(一ノ坪、二ノ坪...)が付けられた。しかし、1つの坪=1町歩の面積が現在とかけ離れている。(現在の1坪=1間四方は、当時は1歩であり、これが1「町歩」の由来でもある。田地については、現在でも、反、畝、の下に「歩」が最小単位として使われている。)

郷里制は25年後の天平12年(740)に廃止され、国郡郷制になった。なぜ「里」が消えたかは次のように解されている。長さの単位である一里=36町=3927mと、面積を示す一里=36町歩は、同じ表記からしばしば混乱を招いていたと思われ、郷里制下でも収まらなかったため、里を廃止し「郷」を里の代わりに「さと」と呼称することで混乱を回避したと思われる。

この時点で公称の「里=さと」は完全に消えたが、俗称としてその後も使われ続けている。

条里制下の長さと面積の呼称単位は同じ文字が使われ混乱が多かったと思われる。長さの「1町=60間=108m」と、面積の「1町=60間×60間=3600歩」は収穫量の把握など計算上問題が多かったろう。天正10年(1582)に実施された太閤検地では、面積計算上の端数は切り落とされ簡明なものになった。
  1反歩  360歩 → 300歩
  1町歩  3600歩 → 3000歩
この結果、これまで1郷、1里を表現していた六町方格は、36町歩ではなく、新単位を使うことで2割増しの「43町歩と2反歩」になってしまった。こうして、「六丁の目」はいつのまにか意味不明の言葉に姿を変えていった。

「六丁の目」とは、古代や中世における1つの里、郷を表す「六町方格の目」であり、極めて一般的な呼称単位だったと推測できる。条里制が衰退すると、「町」の面積単位や「坪」の意味が変化してしまった。そして中世以降の惣村制や太閤検地以降の郷村制への移行を考えるとき、六丁の目は呼称だけが残りその本質的意味合いは誰もわからないものになってしまったのだろう。この意味不明の言葉が、固有、特有の表現とみなされ、公式に地名として認められるようになったと考えられる。

■勝又秀夫「条里制と地名「六丁の目」」(宮城県地名研究会「地名」第31号、2010年から)





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最終更新日  2014.04.26 11:55:03
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