仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2015.03.07
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カテゴリ: 東北
先週だろうか、朝日新聞に載っていた。大蕨の棚田(山辺町)をモンテディオ山形の力で再生しようという取組。

これは、地域づくり(今で言うなら地方創生)に大きなヒントを与えていると思う。よく、このような個別の取組事例を評して、それはそれで評価するとしても地方の過疎や衰退の歯止めにはならないだろうね、というしたり顔の反応がみられる。

しかし、たしかにミクロの動きかも知れないが、その地の産物や風物をどう生かしているか、地域と外部との関わりはどうだろうか、何よりも動かし役のキーパーソンは誰か、などなどの点で大きな示唆を与えてくれる。活性化のためのポイントというのは、実はその規模やインパクトの大小にかかわらず、本質的なところでは同じなのだと思う。

また、あそこでは巧くいったかも知れないがウチでは条件が違うね、という割り切りも多く聴かれる。条件が違うのは当たり前で、だったら何が違うのか、応用できることはないのか、いくらでも手本にできる。

そんな観点で、大蕨の運動からどう学ぶことができるのか。新聞記事程度の知識で情けないのだが、気がついたことを記してみたい。

じつは、私、昨秋に棚田に行ってみた。道路に車を留めて眺めてみただけなのだが、モンテの旗があちこちに立っているのが面白かった。ああ、こういう訳だったのか、と記事で合点がいった次第だ。

ポイント1  土地の資源を生かす

日本の棚田百選に選ばれている地域の資源だ。一時は耕作放棄が進んで3分の1にまで減ったという。美田と景観を生かそうという視点。

■関連する過去の記事  日本の棚田百選 椹平の棚田 (08年9月11日)

ポイント2  モンテとのコラボ

モンテの選手が田植えや稲刈りを手伝っている。なぜ、棚田とプロサッカーチームか。理由はあるようで、ないのではないか。それで結構。掛け合わせる発想が面白い。チームからすれば、地域密着。地域からすれば、まさに若い人が来てくれている。

ユニホームのような包装で棚田の米を売り出すことなどにも発展しているようだ。

ポイント3  大学の活用

雪中のサッカー大会を開催。山形の大学生と考えた企画だという。高校生や農協など12チームが参加。賞品は棚田の米。この発想も面白い。

学生の考えや行動力は、貴重だ。また、昨今の大学や学生は、地域に出て実践や交流を志向していることも、ありがたいことで、地域としては活用しない手はない。

ポイント4  交流人口の拡大

上記のイベントもそうだが、仕掛けによって知名度があがる。活性化で魅力がよみがえる。周辺の人たちや一度は都会に出た人も、ふるさとを見直す機会になる。定住は無理でも、週末や何かの際に、この地を支えようという動きが出てくる。

ところで、震災に見舞われた宮城の沿岸部地域では、これまでにない形での交流人口が脚光を浴びているように思う。震災の年からボランティアに入った方が、今でも継続的に町を訪れて、人の輪ができているという。ラジオなどで体験談を聞くことも多いのだが、たとえば定年後に虚無感を抱いていた人が、ボランティアに入って活動を続けていて、人を支えて感謝されることで、逆に自身も生き甲斐や居場所を取り戻すということがあるのだそうだ。考え方や生き方が変わったという話もあった。

大げさかも知れないが、「地域」が相対化して場所や位置としてのみ見なされたり、あるいは人のつながりが希薄化してきた現代にあって、そこに生きる暮らしと取り巻く地域というものを住む人も来る人もともに再発見し、これからのコミュニティを一緒に形作っていく。

あたらしい交流人口と、それに支えられて沸き起こる新しいコミュニティ、さらに言えば人の心の復興のような姿が、描かれ始めているのではないか。

大蕨の例は地域の努力だが、今、宮城県の沿岸地域では、外からの厚意をもとに交流人口が沸き上がってくれるという、その意味では「ありがたい」状況だと言えるかも知れない。

これをこの先に向けて、どう定着させていけるか。換言すれば、もともと沿岸の人と、あらたに目を向けてくれた人たちとが、住まい方や関わり方で違いはあれど(あって良い)、その地を愛するという一点を軸に末永く町を支えていくような、そんなあり方を実証していけないものか。

大蕨の場合は、稲村さんという方がキーパーソンだと記事で学んだ。人材こそ宝と思わせるのだが、じつはスーパーマンを捜すより、その地を良くも悪くも知り、何とかしていこうという意志を持っている人は少なくないだろう。いかにして、こうした意志を表に出して、育てて、組織化するか、というノウハウや技法は、それが大切だといわれ続けてきた割には、意外と実践されていないのだ。

この面でも、被災地は格別だ。内外のさまざまな団体や個人が活動してきた。素地は豊かにある。コーディネーションやオーソライゼーションの機能をうまく活用して、方向性を統合していく、それはやはり行政の役割も大きかろう。





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最終更新日  2015.03.10 21:33:33
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