仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2024.11.25
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カテゴリ: 宮城


1 宮城県の粘板岩

県西部の三陸海岸地域には、 粘板岩 の石脈がある。薄く板状に割れやすい粘板岩は、古くから石碑や硯の材料にされた。特に、雄勝の硯石は品質が高く、藩の保護を受けたとされ、封内風土記にも硯の産地であったことが記されている。

粘板岩は明治時代になると、 石盤 天然スレート葺き屋根 の2つの使い道で、日本の近代化を支えた。

2 石盤

板状の粘板岩に木枠を付けたもの。蝋石の筆で文字を書き布などで拭き取ることで、ノートの代用品だった。学制発布以降、西洋から伝えられて全国で使用が推進された。

当初は輸入に頼っていたが、横浜の商人・ 山本儀兵衛 (ぎへえ)が雄勝を訪れた際に粘板岩と出会い、雄勝で会社を興して採掘と石盤製造を始め、東京に支社を置いて販路を拡大させた。需要増大のなか、山本らは宮城県監獄署に採掘製造作業への出役を要請、1878年(明治11)には雄勝に監獄署分監が設置されるに至る。分館では天雄寺(てんゆうじ)に囚人の寄宿舎を建設して採掘と生産を増加させた。

3 天然スレート

天然スレート葺き(石盤葺き)は、厚さ5mm程度の粘板岩を切り揃えて屋根を葺く技術で、明治時代に西洋建築とともに日本に伝わり、国内では東京駅丸の内駅舎(1914年、大正3)が有名な建築例である。

石盤と同様に輸入が中心だったが、ドイツで技術を学んだ 篠崎源次郎 が1889年(明治22)に東京でスレート商会を設立、雄勝の天然スレートの販売と施工を行い、全国の官公庁、銀行、教会などを中心に広く流通した。

天然スレートは、雄勝のほか、登米、女川、陸前高田でも生産された。採掘される山で品質や色が微妙に異なり、東京駅丸の内駅舎では建築当初は雄勝産、以降は場所を変えて雄勝産と登米産が使われている。

4 宮城県の景観

全国の建築の洋風化に応えるため生産された天然スレートだが、宮城県内では、むしろ従来の住宅の建て替えや葺き替えの使用例が多くみられる。さらに母家のみならず長屋門、倉庫、風呂など付属屋で天然スレートが葺かれるのも特徴である。登米市登米町や石巻市北境などでは建物群として残り、宮城県特有の景観をつくりだしている。

■関口重樹編『日本史の中の宮城県』山川出版社、2024年
(関口重樹氏の執筆部分)から

公益社団法人日本建築士会連合会の会誌「建築士」(2019年2月号から同年11月号)に、CPD講座として「陸前地方の天然スレート建築」の連載がある。
(大沼正寛氏(東北工業大学)、阿部正氏(ノーマルデザインアソシエイツ)による)

私は建築の素人ながら、幅広い視点と豊富な資料と画像をもって、スレート産地と地域産業の実態、災害との関係、産地周辺の民家の特徴、さらには保全活動など、たいへん面白い内容だった。以下にリンクを引用させていただく。

第1回  東京駅のスレート屋根をみつめながら (2019.2)
第2回  雄勝─スレート産業の黎明 (2019.3)
第3回  近代洋風建築を包んだ陸前スレート (2019.4)
第4回  石巻地方と仙台 ─産地周辺での波及と近代化の風 (2019.5)
第5回  登米スレートの登場と大正昭和の普及 (2019.6)
第6回  入谷と矢作の石材開発─雄勝と登米の間(あわい)で (2019.7)
第7回  スレートへの「屋根替え」がつくる景観 (2019.8)
第8回  天然スレート屋根の構法と技術 (2019.9)
第9回  文化的景観と産業遺産の両義性 ─台湾・英国をみる (2019.10)
第10回  スレート千軒講 ─ゆるやかな活用保全をめざして (2019.11)





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最終更新日  2024.11.25 21:38:58
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