仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2016.10.16
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カテゴリ: 雑感
親に似て何かが抜けている高校生の娘。ある朝電車に乗ろうとしたらsuicaも財布も家に忘れたことに気づき、たまたま駅にいた中学の同級生にお金を借りたという。その同級生にお金を返してお礼をしなければならないのだが、携帯番号も聞いていないし、どうしようか。だいたいこの時間の電車だろうからというので、何日かの間、朝すこし早めに駅に行って、改札の前のあたりで立っているようだ。

いまだに念願を果たしていないようだが、駅舎の隅の方でボーッとたたずむ姿は、なぜか昔話の「みそかい橋」を思い出させた。

炭焼きの長吉が夢のお告げで、町に出て「みそかい橋」に立っていると、何日目かに奇妙に思った人に話しかけられる。長吉が正直に訳を話すと、その人は、なんだそんなことか、それなら自分も某村の長吉という家の杉の根っこに大金が埋まっているという夢を見たが、と大笑い。長吉は村に飛んで帰って大金を得る。

こんな話だったと思う。私は子どもの頃、昔話の比較や分類をしてみたことがあった。子どもといっても、専ら聞き手である幼少の頃ではなく、小学校高学年か中学の頃だが、全国の昔話を見渡して、話の筋の類似性、笑い話か、教訓か、悲劇伝承か、意外性をつくストーリーか、など勝手に類別したりしていた。
(なお、大人になってからは、南方系の説話など日本人の起源にせまる分析や、天皇家や豪族などの歴史と関連する神話や記紀の研究などにも興味を持っています。日本の文化の基層をどう理解するか。大きなテーマに対して、私などは生半可な興味だけですが。これらに関する過去の記事も多少あります。)

中でも、「みそかい橋」は岐阜県あたりの昔話というが、何かが「凝っている」と感じていた。だいたいの昔話は、自然な流れで展開するか、あるいは意外性が聞き手を引き付ける場合も多いが、「みそかい橋」のように夢のお告げを偶然で重ね合わせるというダイレクトな反射は、異彩を放つような気がしたものだ。

今朝多少調べてみたら、柳田國男が、味噌買い橋の話の由来を研究しており、ドイツに同様の話があり、さらに古く10世紀頃のアラビア人の記述にも同様の話があるという。最近になって、地元高山の研究者の方が明らかにしたところによると、昭和初期に地元の先生がグリム童話を参考にして創作し、郷土教育資料に発表したというものだそうだ。

私が聞き手だった幼少のころは、大正生まれの祖母が語ってくれた。話の結句は「どんどはれ」だった。あまりレパートリーは少なかったが、郷土に固有の由来譚などではなく、全国的によく知られた話が多かったように思う。祖母が聞き手だった大正や昭和初期には、すでに童話の全国的な普及や画一化が進んでいたのかも知れない。

ともかく、昔話の世界は、世界とつながり、歴史を反映して、奥が深いと思う。我が家の娘はいつ「どんどはれ」を迎えるのか。





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最終更新日  2016.10.16 09:10:27
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