仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2016.12.11
XML
カテゴリ: 東北
神社の祭りには「防災訓練」の意味があるとの指摘がある。

新潟工科大学の深澤教授が、新潟県内の神社で行われる裸祭りを調査したところ、
(1)構造線、活断層と位置的に関係がある
(2)いずれも内陸の豪雪地帯(冬にこそ男が裸で火災や地震に備える必要)
(3)川の災害に悩まされた地域という共通性
などから、地震や水害や雪崩などの防災訓練と、健康祈願の儀礼として行われたものと推測している(2004年)。

伊豆大島の三原山は何度も噴火を繰り返しているが、1986年の大噴火でも、山頂にある三原神社の直前で溶岩の流れが分かれて、神社を避けて両側を下っていった。

安政の東海地震の研究では、被災地の中にぽっかりと地震被害の軽微なところがあり、そこには鹿島の神が祀られているという。ある所で調査すると、その地盤は砂礫層で局地的に地震に強いことが解明された。

地震や津波を除ける神として知られる鹿島神宮(鹿嶋市)には、ナマズを押さえつける要石が祀られている。もっとも、全国約600の鹿島神社の総本社は、東日本大震災で石造りの大鳥居が倒壊したが。

地滑り地帯にあるほとんどの神社では、神殿前に杉の巨木が育っている。神社の建つ場所は、滑らない安全な場所なのだ。京都造形芸術大学の原田教授は山形県の地滑り地帯の神社を調査し、また、九州の災害多発地帯でも神社が災害を免れる傾向を発見。さらに、ニュージーランドの地滑り地帯でマオリ族の聖地が堅固な地盤に建っていることを明らかにした。

なぜ、わざわざ神社があるのか。地滑り地帯の米はうまいというように、植物が豊富のため、人々は地滑り地帯に住み着くという。地域の中でわずかながら地盤の堅固なところにすぐに避難するために、神社を建てたというのだ。

昔の人は、自然の動きや変化への鋭敏な対応力を備えていたに違いない。



以上は、高世仁他著『神社は警告する-古代から伝わる津波のメッセージ』(講談社、2012年)の記載をもとに記したものだ。

今回の東日本大震災でも津波が神社を除けたとか、貞観地震による津波に際しても被害を免れたところに神社があるとの伝承などが、クローズアップされた。この本を手がかりに、どんな事実や伝承があるのか、まとめてみたい。

○福島県南相馬市から新地町まで、国道6号より海側の神社仏閣84を現地確認したところ、17社が被害、他の67はすべて無事。相双地域の津波浸水線と神社の分布が、よく符合している。神社が高いところにあるという見方もあるが、残った神社は浸水域ギリギリの位置にあり、地区毎に立地する標高が一致している。なお、8社が流失・全壊した南相馬市鹿島区の場合は、起源や来歴の記載が残っている比較的新しい神社が流された。千年以上も歴史を持つ名も無き祠が、幾多の天災を経験して立地場所や存在意義を確立したと言えるのでないか。
○相馬市原釜の津(つのみつ)神社では、50人ほどが避難して助かった。津波が来れば、津神社に逃げれば助かるという言い伝えがあった。慶長津波では相馬領内で700人が死亡。
○宮城県内の言い伝え。浪切不動堂(仙台市宮城野区)、蛸薬師堂(太白区、慶長津波で蛸のついた観音様が打ち上げられた)、千貫神社(岩沼市)。鼻節神社(七ヶ浜町)には千年以上前の津波で沈んだ大根明神の伝説がある。(飯沼勇義先生)
○浪分神社(仙台市若林区)。ギリギリにまで津波が来たが、過去にもそこまで津波が来てそこに神社を建てたと思われる。(今村文彦教授)
○延喜式の式内社、陸奥国100座のうち、津波で流されたのは3社。海に近いところでも古い神社が被害を免れている。延喜式は927年なので、貞観津波(869年)が立地に影響したと考えられるのでないか。とすれば、式内3社はなぜ流されたか。
例えば、宮城郡には式内社4つがあった。鼻節、伊豆佐賣、志波彦(移転前)、多賀(同)。いずれも丘陵と平野部の境目の高台に位置しており、貞観でも津波を免れただろう。
全壊・半壊した式内社3社とは、石(いその)神社(石巻市雄勝)、伊去波夜和気命神社(石巻市大宮町)、くさ(草冠に召)神社(浪江町)。石神社はご神体の石は山にあり、被災したのは麓の参道入り口に立つ里宮の葉山神社。伊去波夜和気命神社は、内陸の水沼地区から分祠されたという見方がある。浪江の場合も、延喜式当時の鎮座地ではないようだ。
○仙台平野や石巻では、貞観津波と今回の海水到達ラインはほぼ重なる。
○津波遡上限界ラインには神社仏閣がある。(福島県職員吉田さん)
○三陸海岸の各地にある記念碑(ここより下に家を建てるな、など)
○津波を避けて設けられた街道と宿場。慶長津波の経験から山沿いに移したのでないか(平川新教授)
○災害地名(太宰幸子先生)





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2016.12.11 13:27:40
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

コメント新着

おだずまジャーナル @ Re:仙台「6時ジャスコ前」の今むかし(11/14) 仙台フォーラスは来月3月から長期休業。再…
クルック@ Re:黒石寺蘇民祭を考える(02/18) ん~とても担い手不足には見えませんけどネ…
おだずまジャーナル @ Re:小僧街道踏切(大崎市岩出山)(12/11) 1月15日のOH!バンデスで、不動水神社の小…

プロフィール

おだずまジャーナル

おだずまジャーナル

サイド自由欄

071001ずっぱり特派員証

画像をクリックして下さい (ずっぱり岩手にリンク!)。

© Rakuten Group, Inc.
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: