仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2016.12.31
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カテゴリ: 仙台
活断層の本を読んでみた。
■國生剛治ほか監修『活断層が分かる本』技報堂、2016年

活断層は、阪神・淡路大震災でもクローズアップされたが、今年4月の熊本の地震で、いっそう脚光を浴びたと思う。また、秋には鳥取中部の地震があり、これは未確認の活断層とされた。さらに、年末にかけては、東日本大震災の余震ともされる福島や茨城の地震があって、地下深くで断層がいまだに動いているということのようだ。

原発、病院、学校などなど、活断層の影響はないか、などと気にする向きがある。気にするのは正しいことだが、そもそも未発見の断層も相当あるのだろうから、およそ活断層がすべて危険だとしているばかりでは、社会生活が成り立たない。把握と予測も大切だし、活断層がどれだけ危ないか(とりあえずはどの程度まで不活動を予想して良いか)、公共施設やインフラの施設安全基準やリスク管理のソフト対応をどうするか、など、ここは技術者と科学者の力を合わせて、現在までにわかることと不可測なことを明確にしながら、社会的な合意を作りながら進んでいくしかないだろう。

この本の中で、断層のずれに対する備えの説明が、大変興味深かった。ことに、断層があると分かっても横断せざるをえない線形インフラとして、パイプラインや道路・鉄道などが、どうリスクに対処しようとしているか。

例えば米国の石油パイプラインは、断層のズレを想定して、パイプがスライドできる構造にするなど可撓性をもたせて、2002年のデナリ地震に対処した。東海道新幹線の富士川橋梁は、入山瀬断層を横断するが、落橋防止のための橋脚を拡幅し、また橋の横に構造部材を備蓄して、早期の復旧に備えている。

そして、仙台市地下鉄東西線について。大年寺山断層を横切って建設されたが、この活断層は平均変位速度0.1ミリ/年、平均活動間隔も3千年以上と長く、一回のズレは平均で数十cmと推定された。そこで、予めトンネル断面の内径を50cm拡幅して建設しておいて、被災後に掘削し直さなくても早期に復旧できるようにする考え方をとっている。

一般論として、リスクに備える考え方としては、回避、低減、移転、保有の4種類の対応方針がある。
・リスクの 保有  損失を甘受すること。発生可能性と損失が小さい場合(リスク・マトリックスで左下)には、そのまま放置するこの対応が合理的。
低減  リスク発生可能性が高く、発生の際の損失が大きくない場合。リスク発生可能性を下げたり、損失を小さくする対策を講じる。
回避  発生可能性も損失も大きい場合には、規模の大きい対策が実行困難なので、リスクに巻き込まれないようにする。リスク保有によって得られる利益より、保有するリスクが極端に大きい場合に有効。
移転  保険に入ってダメージを低減など。発生の可能性が低いが損失が大きい場合に考える対策。仙台市地下鉄東西線の事例は、リスクの移転だ。





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最終更新日  2016.12.31 12:41:26
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