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2007.04.17
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カテゴリ: I write
(1)ゴキブリとおやじ その1

清貧一家の住む家は、そのほとんどがゴキブリの
ウジャウジャいる巣窟だった。
ゴキブリは地面にいる。越冬するために、土の中に潜る。
よって、地面に接する家には、ゴキブリがいるものだ。

わかってはいるが、夏場は戦々恐々の毎日を送ることに
なる。私はゴキブリがすこぶる嫌いだ。いまでこそ、
スリッパを履いた足で踏みつぶすことができるが、
高校生前後のころは、その姿を見るだけで、身の毛が
よだった。

「お父ちゃん! 出た」
天井近くを這うゴキブリを目撃するごとに、おやじを呼びに
走った。
「何がや」
「ゴキブリに決まってるやんか」
ゴキブリ以外のことで、おやじに頼るわけがない。ふん!
「面倒臭いのぉ、自分でとれや」
できないことがわかっていて、そう言う。余計に
嫌いになる。

ある日、高校から戻った私は、「ただいま」という
私に背中で返事をするおやじを目撃した。
“シャッ、シャッ、シャッ”
不気味な金属音がしている。
『何だろう』
不審に思いながら、自分の部屋へ入った。

果たして、いつものようにゴキブリの襲撃を受けた。
天井近くの壁に、黒々とした大きな塊が蠢いている。
長く、鋭敏な触覚が、縦横無尽に動いている。
私が動くと、触覚が敏感に私の方に向く。
ぞっとした。
「おとうちゃん! 出た」
おやじを呼びに走る。
「ゴキブリか」
そういって部屋から出てきたおやじの手には異様なものが
握られていた。使わなくなったテレビのアンテナを
解体して保管していた緑色のポールだった。しかも
その先には尖ったものが……。サンドペーパーで研いで
尖らせた針金をポールに装着した小さなモリのような
棒だった。その棒を手におやじが言った。
「これで突け!」
そんなことができるのなら、新聞紙を丸めた棒でも、
スリッパでも叩けるだろう。
「どうやって!!!?」
「見とけ、こうやるんや」
そう言うと、おやじはゴキブリに正対し、肩の上にモリを
掲げた。
“シュッ”
次の瞬間、親父の手を離れたモリは、ゴキブリの背中を
貫通した。
“ビョン、ビョン、ビョン”
モリはゴキブリとともに壁に突き刺さり、ビョンビョン
揺れている。

「こうするんや。わかったか」
そう言うと、おやじはモリを壁からはがし、その先に
突き刺さっているゴキブリを素手で抜き取り、モリを
私の部屋の隅に置いた。

ゴキブリを持つおやじの素手もすさまじいが、部屋の
片隅に置かれたモリの先に、ゴキブリの体液がついて
いると思うと、それもすさまじかった。

高校生の私には、衝撃的過ぎる出来事だったが、
おやじのゴキブリに対するスタンスはこれ以降も
変わることなく、エスカレートするばかりだった。

                    つづく





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Last updated  2007.04.17 21:06:04
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