愛し愛されて生きるのさ。

愛し愛されて生きるのさ。

2003.11.10
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○『どついたるねん』

1989年度作品。監督は『傷だらけの天使』『顔』『KT』の阪本順治。

通天閣でおなじみの、大阪「新世界」が舞台。天才ボクサーがタイトルマッチの前哨戦で脳にダメージを受け挫折するが、持ち前の根性で再びボクシングの道への復活を目指すというストーリー。

ストーリーはものすごく単純だが、心が奮い立たされるような映画である。非常に面白い。
主人公である安達エイジは挫折に次ぐ挫折を経験する。しかし彼はそんなどん底から雑草のように何度も何度も這い上がるのである。それもひとえにボクシングに賭ける情熱が成せることである。その頑固で向こう見ずで自分勝手なところに周囲の人々は愛想を尽かしたりもするが、結局は彼の情熱に同調する。そんなバイタリティ溢れる主人公がとても魅力的である。

主演の安達エイジ役は元プロボクサーだった赤井英和。これが彼の役者としてのデビュー作品となる。決して巧みな芝居ではないが、ボクシングをしているときの表情は本物である。今よりもだいぶ痩せていて精悍な顔つきが、映画にリアリティを与えている。

脇を固める役者もそれぞれ魅力的だ。

安達の幼馴染でボクシングジムの1人娘を演じるのは相楽晴子。チャキチャキした大阪娘で安達に劣らず負けん気が強いが、実は密かに安達のことを想っているのである。ここでの相楽晴子はとてもいい。ガチガチのボクシング映画になりがちな作品に、相楽晴子が彩りを添えている。

安達の後輩で、対戦相手になってしまった清田役に大和武士。大和武士も元々ボクサーで、こちらも映画にリアリティを与えるのに一役買っている。今でこそヤクザ映画の常連である印象が強いが、この頃はやはり精悍でどこかまだ初々しさが残る。安達とは対照的な心優しいボクサーを好演している。

そして安達のコーチとなる、元日本チャンピオンである左島役に原田芳雄。この左島も安達と同じく怪我によってボクシングの道を断念した男である。そのため安達の気持ちに共感できる唯一の人間である。ここでの原田芳雄は妙に腰が低く、カッコつけた芝居をしているわけではない。しかしそれが逆にカッコいい。さすが原田芳雄である。内に秘めた情熱のようなものを巧みに表現している。

他にも麿赤児・正司照枝・笑福亭松之助・芦屋小雁などが脇を固める。どの役者も味のある、笑える芝居を見せてくれる。

意表を突かれたキャストが、安達のスポンサーを買って出るオカマバーのオーナー・美川憲一である。もうほとんど地で出演している。15年近く前の映画であるが、美川憲一だけは全く変わらないというのが凄い。髪型もね。ってこれは禁句かも。

クライマックスである試合シーンは迫力満点。これはやはり本物のボクサーを映画に引っ張り出しただけのことはある。ただただボクシングだけを生き甲斐にしている安達の姿に、生きることの切実さを感じる。

まさに「男の美学」である。
阪本順治、快心の一撃。


○『刑務所の中』

花輪和一の同名漫画を原作に、崔洋一が映画化。2002年度作品。

刑務所を舞台に、小さなエピソードを積み重ねたどこか淡々としつつも毒っ気たっぷりの映画である。

主演は山崎努。共演は香川照之・松重豊・田口トモロヲ・村松利史。その他にも強烈な個性派がぞろぞろ出演している。

刑務所の中ということで、もちろん出てくるのは男だけである。しかしそれが決してむさ苦しくなく、軽やかな雰囲気さえ感じられる。ムダに笑わせよう笑わせようとしていない、とても自然に笑いがこぼれる娯楽映画に仕上がっている。

登場人物は実はみんなそれぞれとんでもない罪で入獄している人々なのだが、塀の外では些細であろうことで一喜一憂している。その様はとてもチャーミングである。

たとえば夕食の春雨スープに具がたくさん入っていたり、テレビのコマーシャルで大福が出てきてボーっとなったり。
この映画での囚人たちは大人でありながらも子供のようである。規則でがんじがらめでありながらも、そこから小さな幸せを見出していく様がとても面白い。

刑務所という場をこのようにユーモアたっぷりに描いた映画は前代未聞ではないだろうか。だって刑務所を「一日三食昼寝つき」と表現し、テレビも観れて模範囚は菓子・ジュース付きで映画も観られる。懲罰房ですら「意外と快適な空間」と言わせている。また出てくる食事がとても旨そうに見える。「クサイ飯」と表現されることが多い刑務所の食事であるが、この映画の中の囚人たちは実に旨そうに飯を食う。他愛も無いメニューではあるが、この映画を観た後は無性に腹が減った。

とにかくこの映画は、囚人たちがユーモアとペーソスたっぷりに描かれている。こんなにチャーミングな山崎努は初めて見た。それは監督である崔洋一の手腕であろう。また強烈な個性の持ち主である役者たちを山崎努がまとめあげていることで映画としての完成度も高い。ワンシーンだけの登場にも関わらず、窪塚洋介と椎名桔平も印象深い芝居を見せている。

刑務所という場を舞台にしながらも、クスッと笑わされたり時にはワクワクさせられたりと、エンターテイメントに満ちている。
刑務所がこんな快適でいいのかと思ってしまう。
もの凄く面白い映画であるが、同時にもの凄くアンモラルな映画である。





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最終更新日  2003.11.11 01:06:37
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