愛し愛されて生きるのさ。

愛し愛されて生きるのさ。

2004.02.09
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○『ふたり』

1991年度作品。原作は赤川次郎の同名小説で、監督は大林宣彦。

ドジでオッチョコチョイな14歳の実加は、優しい両親としっかり者で秀才の姉・千津子と幸せに暮らしていた。
ところがある朝、通学途中で忘れ物に気づいた千津子は家へ引き返す途中で、突然動き出したトラックの下敷きになり死んでしまう。
その事故のショックでノイローゼ気味になってしまう母。そんな母を支えるために実加は努めて明るく振舞う。
そんなある日、暗い夜道で痴漢に襲われかけた実加は千津子の幽霊に助けられる。それ以来、実加のピンチになると千津子の幽霊が現れて助けてくれる。死んだ姉と生きている妹の奇妙な共同生活が始まる…。




赤川次郎の『ふたり』は確か中学生くらいのときに読んだ。きっかけは大したことではなかったような気がしたが、平易ながらも感情移入しやすいストーリーテリングにグイグイと引き込まれ、ラストでは思わず涙腺が決壊した。小説を読んで泣いたというのは初めてだったかもしれない。実加が成長していく中で様々なドラマが起こり、それに読んでいるこちら側も一喜一憂してしまう、非常に楽しい小説であった。

そしてこの映画『ふたり』を観て驚いたのは、原作のイメージが全く損なわれていないこと。
原作を読んだ後に映画を観ると、大体にして「イメージが違う」という印象を抱くことが多い。しかしこの『ふたり』は舞台・キャスティング共に原作のイメージに忠実である。
まあ安っぽい合成などに「ええっ?」と思わせられることもあったが、それを許せるくらいの出来栄えである。
小説という2次元の世界が、見事に映像という3次元の世界に構築された、なかなか稀な例ではないだろうか。

主演の、当時17歳だった石田ひかりが出色。これが彼女にとっての映画デビュー作品になるが、実に初々しくて爽やかである。映画の前半では、どこかボーっとしていて頼りなさげな実加が、様々な経験を積み重ねて成長していく様を実に丹念に演じている。彼女の表情が徐々にしっかりしていく様子が印象的。

死んでしまった姉・千津子役には中嶋朋子。しっかり者で優秀で美人な姉を好演している。実加にあれこれとアドバイスを下すが、実際彼女は死んでしまっているのでどうすることもできない、そんな切なさを見事に体現している。

両親役には岸部一徳と富司純子。家族想いで冷静に家庭のことを見つめている父親役に岸部一徳はピッタリだ。しかし彼は後半である過ちを犯してしまう。冷静なように見えて脆さも見え隠れする父親にどこか哀愁を感じる。
長女を喪ったことで精神のバランスを崩してしまう母親役は富司純子。常に和服で楚々とした雰囲気は古きよき時代の(『プライド』に影響されているわけではない)典型的な日本女性である。富司純子はそんな儚げな女性がよく似合っている。

母はそれまで千津子に依存して生きてきた部分が大きいので、実加に対しては常に不安を抱いていた。しかし長女が死んでしまって喪失感に苛まれている時、実加がしっかりと彼女を支えてくれていた。
そんなしっかりしてきた実加を母が見つめなおす描写が感動的だ。そして母は千津子が死んでしまったことを事実として受け止めていく。悲しいけれど、生きていくには仕方のないことだ。それでも生きていかなければならない人間の「業」のようなものを丁寧に描いている映画である。

ラストで家庭内で大きな事件が起こり、それがきっかけで実加と千津子に別れの時がやってくる。実加にとっては2度目の姉との別れだ。そして今度こそ本当の別れである。そんなシーンに涙を禁じえない。これまた原作のイメージを忠実に再現した、素晴らしいシーンに仕上がっている。

出演者たちが皆若いことも印象的。主演の石田ひかり・中嶋朋子はもちろんのこと、中江有里・島崎和歌子・林泰文・尾美としのりなど、初々しいけど実に真っ直ぐな芝居を見せてくれる。

尾道を舞台とした、どこか懐かしく胸がキュンとなる青春映画である。

★★★★☆

○『バンガー・シスターズ』

2002年制作のアメリカ映画。監督はこの作品がデビュー作となるボブ・ブルマン。

60年代末から70年代にかけて、イケイケのグルーピーとして大物ミュージシャンたちを総なめにしていた「バンガー・シスターズ」ことスゼットとヴィニー。今でもロサンゼルスの小さなライブハウスで「生きる伝説」として一部の客や店員から一目置かれていたスゼットだが、代替わりした若い店長は彼女をあっさりクビにしてしまう。ここでスゼットが思い出したのは、かつての盟友ヴィニーのこと。彼女も今じゃアリゾナのフェニックスで、弁護士夫人として優雅に暮らしているらしい。だが今ではすっかり過去を捨てて地域の名士になったヴィニーにとって、スゼットの出現は悪夢そのものだった…。

ストーリーはなかなか面白いのだが、どうも登場人物たちの行動が唐突で、はっきりした動機に欠ける。それが顕著になってくるのは後半である。
最初、スゼットを拒絶していたヴィニーは突然ブチ切れてファンキーになってしまう。彼女が弁護士夫人という肩書きを捨て、優雅な生活までをも捨てたいという気持ちが全く描かれておらず、ものすごく唐突な展開で観客は戸惑ってしまうのではないか。
そしてそんなヴィニーを観て、娘たちはどう思ったのか。そこらへんの描きこみがとても甘く、予定調和なだけのエンディングになってしまっている。

過去にしがみついて生きているスゼット役はゴールディー・ホーン。この人はすでに50半ばを過ぎているはずなのに、ファニーフェイスにナイスバディと尋常じゃない風貌。スゴ過ぎ。そんな風貌をネタにしている部分もあって、それはそれで笑える。

そんなスゼットとは対照的に、過去をかなぐり捨てて新しい道を見つけ出したヴィニー役にはスーザン・サランドン。正直、彼女にパンクルックは全く似合わない。生まれ持った品の良さや今までの映画のイメージが、このヴィニー役に結びつかなかった。前半と後半のイメージの落差は面白いが。

目の付け所は良いけど、演出と構成の甘さによってものすごく中途半端な出来上がりになってしまった残念な映画。
もっと登場人物の心情の動きを丹念に描いていたら、傑作になっていたのではないかと思う。

★★☆☆☆





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最終更新日  2004.02.10 01:37:56
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