全58件 (58件中 1-50件目)
リビアの西部で反政府軍がチュニジアへ逃げ込み、それを追って政府軍が国境を越えたため、チュニジア軍と交戦になったようだ。このチュニジアへ地上軍を派遣することをイギリスのライアム・フォクス国防相が示唆している。難民を保護するという名目のようだが、リビアの反政府軍へ武器を供給するためだとも見られ、場合によっては地上戦へと発展する可能性もある。 今のところ、チュニジア軍は中立な立場を維持しているようだが、イギリス軍を駐留させるようなことになると、本格的な戦争になるかもしれない。リビア政府がアフリカ中南部の自立を支援していることからAU(アフリカ連合)が欧米軍の介入に批判的だが、その欧米側にしてみると、植民地時代から続く利権構造を手放したくないはずで、内乱はしばらく続きそうだ。
2011.04.29
福島第1原発の事故で放射性物質を大量に外部へ放出している。それ以降、日本政府は被曝線量の基準、被曝限度量を引き上げてきた。それだけ多くのリスクを背負い込めというわけで、多くの人から批判されるのは当然だ。 しかし、その一方で「大したことはない」とする宣伝も盛んに流されている。100ミリシーベルトを浴びても1000人の内、5人から10人程度がガンになるだけであり、それ以下の線量で健康に被害が出ることは証明されていないから心配するなということのようである。 ガンで死ぬ人は全体の約3割であり、それに比べると大したことはないとする人もいるようだが、その言い方を使うならば、人間は必ず死ぬ(科学的に証明されているわけではなく、経験則にすぎないが)わけで、戦争などの殺戮も大したことはないということになるだろう。 かつて、薬害エイズが問題になったことがある。エイズ・ウィルスに汚染された血液凝固因子製剤を政府や製薬会社が警告を無視して流通させたため、血友病患者の間にエイズが広まった事件なのだが、当時、厚生省(現在の厚生労働省)の官僚たちは薬害以外のエイズが広まることを想定、その中に薬害を隠してしまおうとしていた疑いがある。当時、厚生省を担当していた記者によると、官僚たちはエイズが予想外に広がらないと焦っていたという。 ところで、今年の4月はチェルノブイリ原発事故から25年目にあたる。事故が起こった後、IAEA(国際原子力機関)は放射性物質の被曝による被害は存在せず、将来にも原発事故の被害者であることがわかる人はでないと報告したようである。 勿論、この結論は間違っていた。作業員は別にしても、事故から5年ほどで小児甲状腺ガンが急増、10年ほどすると妊婦へも影響が出始めたと話す学者もいる。広島や長崎に落とされた原爆の影響などから推測して、ガンが発症してくるのは20年から30年後からだとも言われている。つまり、チェルノブイリ原発の影響が明らかになるのはこれからだと考えるべきだろう。 実は、原爆の影響も長い間、秘密にされてきた。この事実は広く知られていたのだが、その内幕に迫ったのが昨年8月にNHKが放送した「封印された原爆報告書」。日本政府がSCAP/GHQに提出した181冊の「原爆報告書」をテーマにしていた。 ところが、この原本がどこにあるのかが明確になっていない。SCAPに対して「原爆報告書」を提出したという事実を政府は「承知していない」としている。この報告書が存在することを認めると、戦後、日本政府(官僚機構)が主張してきた被曝による被害に関する話が崩れ去るだけでなく、より深刻な被害があることを知っていながら隠してきたことも認めることになるからだろうか。 この原爆被害の調査には公表できない秘密がある可能性が高い。戦後、日本が生んだ代表的な「インテリ」で、戦争に反対する活動を最後まで続けていた加藤周一も原爆が投下されて間もない広島へ「原子爆弾影響合同調査団」の一員として入っているのだが、そのときのことを生前、親しい人にも話さなかったようである。彼にも口にできないような「何か」があったのかもしれない。 青酸カリなどは生体実験で正確な致死量がわかっているようだが、通常、放射性物質に限らず、人体の影響を知ることは難しい。例えば「環境ホルモン(内分泌攪乱物質)」の場合、一般に知られるようになったのは1997年から。この年にシーア・コルボーンらが『奪われし未来』という本を出し、警鐘を鳴らしたのである。 しかし、化学業界では、遅くとも1976年には問題になっていた。当時、ある大学で化学を専攻していた大学院生に聞いた話では、測定限界ギリギリ、おそらく測定できないほど微量でも生殖器に致命的なダメージを与える化学物質が次々に見つかっているということだった。こうした事実は研究者自身が経験的に知ったようだ。 被曝限度量の安易な引き上げは、間違いなく将来に禍根を残すことになる。現在の「科学的な知見に基づく適切な判断」も「将来の知見」で否定される可能性は小さくない。「ヒトの浅知恵」を認識することが人間の知性である。
2011.04.29
リビアの内乱を仕掛けたのはフランスの情報機関だとする情報が注目されている。直接的な発端はリビア政府要人のフランスへの亡命。昨年10月、リビアで儀典局長を務めていたノウリ・アル・マスマリが家族をともない、機密文書を携えてパリに降り立ったのである。マスマリは治療を受けるという名目で出国したようだが、パリで会ったのは医者でなくフランスの情報機関員やニコラ・サルコジ大統領の側近たちだった。 こうした動きをリビア政府も察知、11月にはマスマリを国際手配、その一方でムサ・コウッサ外相がマスマリ出国の責任を問われることになる。 マスマリは滞在していたコンコルド・ラファイエット・ホテルで「軟禁」状態になったとリビア政府には伝えられたようだが、実際は逮捕されていない。逆に、このホテルに入ろうとしたリビア政府の特使は拘束されている。この月、フランスとイギリスは相互防衛条約を結び、リビアへの軍事介入へ第一歩を踏み出している。 マスマリはフランスと結びついたわけだが、サヌーシ教団の影響が強い東部はイギリスと関係が深く、反政府派の中心的な存在だと言われるNCLO(リビア反体制国民会議)は「西側」と関係が深い。NCLOの傘下にあるNFSL(リビア救済国民戦線)はチャドを拠点にしていて、西側諸国や中央アメリカ諸国でイスラエルやアメリカの訓練を受けてきたと言われている。CIAの配下にあるとする情報も流れている。 現在、NFSL以上に注目されている組織がLIFG(リビア・イスラム戦闘団)。1995年に創設されたアルカイダ系の武装グループだ。イギリスの情報機関、MI6(SIS)と関係があるとも言われているが、2004年2月には当時のCIA長官、ジョージ・テネットもアルカイダにつながる危険な存在だと上院情報委員会で証言している。 リビアの現体制を倒そうと必死になっているのはフランス、イギリス、そしてアメリカのネオコン(親イスラエル派)だが、その背景ではアフリカ中南部の利権が絡んでいると見られている。この地域はかつてヨーロッパ諸国の植民地で、現在でも真の意味で独立しているわけではない。(国ではなく、ロスチャイルド・ネットワークの利権と言うべきかもしれない。) ところが、リビアが石油と金という資産を使い、中南部を自立させようとしていたという。ラテン・アメリカ諸国がアメリカによる支配から抜け出そうとしていることとリンクする。ベネズエラがリビアに接近している理由のひとつだ。 もうひとつ、フランスやイギリスが懸念しているのが中国の存在。資源戦略で中国はアフリカへの投資を拡大している。BRIC(ブラジル、ロシア、インド、中国)の台頭を脅威だと感じている米英仏としては、リビアのアフリカ支援を看過できないのだろう。 しつこいようだが、チュニジア、エジプト、あるいはバーレーンなどの民主化運動とリビアやシリアの反政府運動を混同するべきでない。「西側」、特にフランスとイギリスが目指しているのは「民主化」や「虐殺の阻止」などでなく、アフリカを欧米から自立させようとしているリビアの現政権を倒すことにある。ちなみに、西側メディアが流していた虐殺情報は正しくなかったことも明らかになっている。バルカン半島やイラクと同じようなプロパガンダが流されていたということだ。
2011.04.28
2001年9月11日以降、アルカイダは「テロリスト」の代名詞のようになった。そのアルカイダと「西側」の協力関係がこのところ明らかになっている。 本ブログで何度も書いていることだが、リビアの反政府派にはアルカイダ系の武装集団が参加、つまり米英仏などの軍隊と同盟関係にある。ネオコン(新イスラエル派)のジョン・マケイン上院議員もアルカイダを含む勢力を軍事支援するように要求している。 そして最近、別の事実がWikiLeaksによって明らかにされた。注目されている人物は、グアンタナモで拘束されているアルジェリア人、アジル・ハジ・アル・ジャザイリ・ビン・ハムリリ。誘拐や暗殺を実行してきたようなのだが、2001年11月から2003年6月まで、イギリスの情報機関MI6(正式名称はSIS)やカナダのSISに情報を提供していたとCIAは考えているようなのだ。 アルカイダなどイスラム武装勢力は1979年、ソ連軍がアフガニスタンへ軍事侵攻する前にCIAが始めた秘密工作によって生み出されたわけで、アルカイダと西側の情報機関が連携していても不思議ではない。バルカン半島での内乱でもアルカイダは西側と協力関係にあった。(詳しくは拙著『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』を参照) しかし、「9/11」はアルカイダの犯行だとアメリカ政府は主張している。これだけアルカイダと西側との協力関係が明らかになってくると、見直さなければならないことが出てくる。
2011.04.27
先日亡くなった田中好子さんが主演した映画、『黒い雨』は映画史に残る名作であり、田中さんの「矢須子」は屈指の名演技だと個人的には思っている。 この作品では、放射能障害を疑われた矢須子の縁談はうまくいかないのだが、これを「差別」や「偏見」という言葉で片づけることには抵抗がある。勿論、矢須子や周辺の人々にとっては理不尽なことだろうが、相手の立場に立てばやむを得ないことである。 縁談を断った人々を「差別」や「偏見」という言葉で非難するのは簡単だが、偽善ではないだろうか。原作者の井伏鱒二がどのように考えていたかは知らないが、矢須子に向けられた「偏見や差別」を単純に憤ってみても仕方がないと私は思う。 矢須子をこうした不条理な世界に引きずり込んだ直接的な責任は原爆を投下したアメリカ政府にあるのだが、それだけでなく、原爆が投下されるような状況にしてしまった日本政府も責任を免れない。日本軍に侵略され、略奪と殺戮の犠牲になったアジアの人々から見るならば、原爆投下も日本人とは違って見えるだろう。 原爆が投下された当時、日本政府が最も関心を持っていたことは「国体護持」。天皇制官僚国家を維持したいということである。そして、この望みは叶えられた。天皇制は形を変えて生き残り、特高/内務官僚を含めて戦前の支配層は戦後、復活していく。「東京裁判」は本当の「戦犯」たちを免責するためのセレモニーにすぎなかった。
2011.04.27
NATO軍はリビアでの戦闘をエスカレートさせている。ネオコン(アメリカの親イスラエル派)の思惑通りだと言えるだろうが、この展開には少なくともふたつの大きな問題がある。ひとつは「飛行禁止空域の設定」という当初の主張からかけ離れた軍事介入になっているということであり、もうひとつは反政府派の主要グループとしてアルカイダ系の集団が含まれていることである。 リビア攻撃に最も積極的だったのはフランスのニコラ・サルコジ大統領とイギリスのデイビッド・キャメロン首相。サルコジは現在、ヨーロッパ諸国で最もイスラエルよりの政治家と言われ、イギリスは歴史的にイスラエルとの関係が深い。 イギリスの場合、1982年にイスラエル軍がレバノンへ軍事侵攻、サブラとシャティーラの難民キャンプにおけるパレスチナ人虐殺に加担して以降、労働党はイスラエルから離れようとしていた。この流れを引き戻したのが「ニュー・レーバー(新労働党)」というキャッチ・フレーズで登場したトニー・ブレア。イスラエル政府を資金的なバックボーンにするブレアが党首になると、再びイスラエルべったりになったのである。 また、ロシアでウラジミール・プーチンが大統領に就任すると、ボリス・エリツィン時代にロシアの政治経済を支配していたボリス・ベレゾフスキー(イギリスへ亡命した後、プラトン・エレーニンと改名)たち「オリガーク(寡占支配者)」の一部はロンドンやイスラエルへ亡命するのだが、その多くは「イスラエル系」だった。イギリスではロスチャイルド卿などと手を組んでいる。 こうしたイギリスやフランスが先導、アメリカのバラク・オバマ政権も引きずられる形でリビアへの軍事介入は始まった。その端緒は「飛行禁止空域」の設定だったが、すぐに政府派への本格的な空爆を開始、4月25日にはムアンマル・アル・カダフィ邸を空爆している。NATO側はカダフィの命を狙ったわけでないとしているが、少なくとも殺しても構わないと思っての攻撃だったはずだ。 その次に狙われているのがシリア。本コラムでは何度か書いているが、シリアの反政府派はネオコンが主導権を握っていたジョージ・W・ブッシュ政権から支援を受けていた。オバマ政権は軌道修正を図っていたようだが、その先手を打つ形でシリアの反政府活動が激しくなり、政府側の弾圧も厳しくなりつつある。シリア攻撃を主張していたネオコンの思惑通りの展開だと言えるだろう。
2011.04.27
シリアでは24日に治安部隊が反政府派の拠点を襲撃、リビアでは25日にムアンマル・アル・カダフィの邸宅が空爆された。リビアはすでに内乱状態に入っているが、シリア国内も不安定化している。 アメリカのネオコン(親イスラエル派)やイスラエルの思惑としては、アフガニスタンやイラクに続き、リビア、シリア、あるいはイランが不安定化することは好ましい傾向なのかもしれない。 ただ、そうした波はサウジアラビアやバーレーンをはじめとする独裁産油国、あるいはイスラエルへも波及する可能性がある。何らかの工作には反動がつきものだ。 ところで、リビアやシリアの反政府派は外部勢力、特にアメリカのネオコンと緊密な関係にあり、チュニジア、エジプト、イエメン、バーレンなどと同列に論じられない。このことは本コラムで何度か書いた通り。 最近、2008年の大統領選挙でバラク・オバマと争ったジョン・マケイン上院議員はカダフィを殺せと叫んでいる。「飛行禁止空域」の設定以来、軍事介入を強く主張しているわけだが、もし選挙でマケインが勝っていたなら、今頃は地上軍を投入していたかもしれない。 シリアの反体制派に米国務省が資金を提供していたことはWikiLeaksが公表した外交文書で明らかになっている。例えば、ロンドンに拠点を置き、シリアの現体制を攻撃している衛星放送局バラダTVに対し、2006年から2009年まで600万ドルを提供したという。 チュニジアやエジプトなどとは違い、シリアの「民主化運動」は組織的な反政府活動。中でも、現大統領のオジにあたるリファート・アル・アサドの勢力、あるいは父親時代の政府要人で今はパリを拠点にしているアブドゥル・ハリム・カーダムの勢力が有名。 反体制派は「MEPI(中東協力イニシアティブ)」や「民主主義会議」なる組織を通して米国務省から資金を得ているのだが、サウジアラビア政府も絡んでくる。つまり、チュニジアやエジプトで民主化運動が盛り上がったの利用し、サウジアラビアはイラン、レバノン、そしてシリアで体制転覆を謀っているというのだ。サウジアラビアにはヨルダン、アメリカ、そしてイスラエルが協力しているともいう。 かつて、日本のマスコミは東ヨーロッパの反体制運動を「民主化」と表現していたのだが、実態は違った。「左翼」の中にはポーランドの連帯を英雄視している人たちもいたのだが、その事務所にCIAの人間が出入りしていたことは有名で、バチカン銀行が違法資金を流していたことも明らかになっている。「民主化」の呪文は今でも日本で有効なようである。
2011.04.25
アメリカはキューバのグアンタナモを「実効占領」、そこに海軍基地を建設している。そこにジョージ・W・ブッシュ政権は2002年に収容所を設置、アフガニスタンやイラクで拘束した人々を送り込んできた。このグアンタナモに関係する文書をWikiLeaksは公表し、欧米の各紙が報道している。 ブッシュ政権は「敵戦闘員」なる用語を作り出し、収用された人々に捕虜や刑事被告人としての権利を認めずに拷問を繰り広げ、殺された人もいるようだ。タリバンやアルカイダと無関係の人々、中には老人性痴呆の患者や誘拐されていた14歳の少年も拘束されていた。カシオ製の時計を持っているだけで「テロリスト」だと疑われ、拘束された人もいうようだ。グアンタナモに移送された人の内、約100名は躁鬱病、あるいは精神疾患があるともいう。 アメリカがISI(パキスタンの情報機関)をテロ組織と認識していることも明確になったのだが、アメリカはアフガニスタンでISIを手を組んで秘密工作を実行している。1979年当時はジミー・カーターが大統領。カーター大統領の補佐官を務めていたズビグネフ・ブレジンスキーの主導でCIAがアフガニスタンでの工作を始めるのが1979年4月。5月にCIAのイスタンブール支局長がISIの紹介でアフガニスタンの武装グループと会い、麻薬業者と手を組んでいる。(詳しくは拙著『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』を) そうした挑発工作に乗ったソ連軍がアフガニスタンに侵攻してくるのは同年12月。その後、CIAやアメリカ軍はイスラム武装勢力を育てていくのだが、そうした中からアルカイダは生まれた。 また、アルカイダのある幹部は、ヨーロッパに核兵器を隠し持っていると主張、もしオサマ・ビン・ラディンが拘束されたり暗殺されたなら、その核兵器を爆発させると脅しているという。実際に核兵器を持っているのかどうかは不明だが、アルカイダが核物質の入手を何度か試みているという情報はアメリカ側もつかんでいるようだ。イギリスでは、化学兵器や細菌兵器での攻撃を計画していたともされている。
2011.04.25
インターネットを情報が飛び交う時代に入り、「サイバーウォー」という用語を見聞きするようになった。シナイ半島のネゲブ砂漠にイスラエルが設置した施設では、こうした新しい時代の兵器を開発している。 1970年代に入ると通信傍受システムが張り巡らされ、80年代にはイスラエルやアメリカは各国政府、国際機関、あるいは金融機関などの情報を自動的に入手する仕組みも築いてきた。 つまり、ダミー企業を使い、トラップドアなどを組み込んだコンピュータ・システムを各国政府や金融機関、国際機関へ売って情報を秘密裏に集める仕組みを作ってきたのである。「動力炉・核燃料開発事業団(動燃)」(現在の日本原子力研究開発機構)が導入したシステムにもトラップドアが組み込まれ、プルトニウムの保有状況はCIAの監視下にあったとも言われている。 そうしたコンピュータ・システムの研究、開発、そして製造をアメリカでは先住民保留地を活動の拠点にしていた。ここは一種の治外法権になっているので、秘密工作にうってつけなのである。そして現在、ネゲブ砂漠の施設ではイスラエルとアメリカが共同でサイバー兵器の研究開発を進めているという。 ネゲブ砂漠でのプロジェクトに参加している情報技術の専門家は約300名で、イスラエルのさまざまな政府機関、つまり治安機関のシン・ベト(シャバク)、対外情報機関のモサド、そして軍情報機関のアマンなどから集められている。 イランの核施設を動かすプログラムへ秘密裏に組み込まれたワーム(不正プログラムの一種)、Stuxnetはここで開発されたのだという。ニューヨーク・タイムズ紙が今年1月に掲載した記事によると、ネゲブ砂漠でイスラエルとアメリカはイランの核開発を阻止するためにStuxnetの効果を試験していた。 Stuxnetは工業システムに侵入して情報を入手するだけでなく、プログラムを書き換えてしまうプログラム。話題になったのは今年1月だが、ベラルーシのセキュリティー会社が発見したのは昨年7月のこと。このバグが作り出されたのは、そのさらに1年前の2009年6月頃のようだ。 全世界でStuxnetに攻撃されたコンピュータの約60%はイランのものだということもあり、シーメンスの制御システムを使っているイランの核施設がターゲットだと見られている。 当初、シーメンスはStuxnetでシステムは影響を受けていないとしていたが、イランは核関係のプログラムがダメージを受けていると昨年11月に発表、施設の始動を遅らせた。 このワームをロシアの専門家は「サイバー兵器」だとしている。ドイツがまだ統一される前、シーメンスは西ドイツの情報機関BNDと緊密な関係にあり、必然的にアメリカのCIAともつながる。かつて、イランへ「秘密のカギ」を組み込んだ暗号をシーメンスの管理下にあった会社が売り、大きな問題になったこともある。Stuxnetのケースでも、同社が協力した可能性は排除できない。 さて、イギリスのテレグラフ紙によると、イランに技術的なアドバイスをしているロシアの科学者はロシア政府に対し、バグを放置してスケジュール通りに動かそうとしたら、「もうひとつのチェルノブイリ」になるとロシア政府に報告したという。Stuxnetの存在をロシアの専門家が気づかなかったなら、福島第1原発と同じような大事故がイランで起こる可能性もあったということだ。 ところで、Stuxnetはすでにブラック・マーケットで売買されているともいう。
2011.04.24
福島第1原発が大事故を起こす可能性があることは多くの人から指摘されていた。原子力工学の研究者、原子力発電所の設計者、あるいは地震学者などが訴え続けてきたのであり、政府、官僚、電力会社、そしてメーカーは警告を無視して原発を建設してきたのである。そうした政策を推進するうえで教育と報道の果たした役割は大きい。 しかし、専門外の人々にも責任はある。原発を誘致した町や村がリスクの代償として多額の資金を受け取ってきたことは事実であり、原発のリスクを認識していなかったとは言えない。事故が起こったあとでも原発に執着していることを見てもわかる。 福島原発の事故がきわめて深刻だということを隠しきれなくなった後、4月4日に「全国原子力発電所在市町村協議会(全原協)」の河瀬一治会長(敦賀市長)、井戸川克隆副会長(双葉町長)、山口冶太郎副会長(美浜町長)らは、政府や与党の幹部に対して「緊急要望書」を手渡し、原子力政策については「ぶれないでほしい」と要求したという。同日、三村申吾青森県知事も定例記者会見で全原協と同じ趣旨の発言をしていた。原発を推進して欲しいということだ。 現在、日本政府の原発事故に対する姿勢は国際的に非難され、放射性物質の汚染も隠しきれなくなっている。そうした中、双葉町、富岡町、大熊町、浪江町、楢葉町、南相馬市、川内村、田村市、葛尾村を政府は「警戒区域」として設定、立ち入りを禁止するように関係自治体へ指示、また浪江町、葛尾村、飯舘村の全域、また南相馬市と川俣町のそれぞれ一部を「計画的避難区域」として指定したという。こうした事態になっても全原協に参加している町村は原発推進を主張するのだろうか? なお、全原協の会員になっているのは福島県:双葉町、富岡町、大熊町、浪江町、楢葉町、南相馬市北海道:泊村青森県:東通村、大間町宮城県:女川町、石巻市新潟県:刈羽村茨城県:東海村静岡県:御前崎市福井県:敦賀市、美浜町、おおい町、高浜町石川県:志賀町島根県:松江市愛媛県:伊方町佐賀県:玄海町鹿児島県:薩摩川内市、 また、準会員は北海道:神恵内村、共和町、岩内町青森県:六ヶ所村、むつ市滋賀県:長浜市、高島市 双葉町など全原協を構成している町村は、そうでない町村、つまり川内村、田村市、葛尾村、飯舘村、川俣町とは立場が全く違う。救済などで両グループを差別すべきでないことは言うまでもないが、全原協町村と非全原協町村との違いを忘れてもならない。厳しいようだが、これは動かしがたい事実である。
2011.04.23
中東/北アフリカで支配体制が揺れている。その根底には独裁体制に対する反発という共通した要因はあるのだろうが、それで全てを説明できるわけでもない。チュニジアから始まってエジプトやバーレーンなどへ波及していった波は民主化運動という傾向が強いのに対し、リビアやシリアの場合は権力抗争という側面が色濃い。 そうした違いはネオコン(アメリカの親イスラエル派)の反応にも現れている。エジプトの体制転換に強く反対していたのに対し、リビアやシリアに対する態度は全く違う。リビアの内乱では軍事介入を強く求め、シリアは以前から敵視していた国で、体制転覆を望んでいる。 シリアの反体制派にアメリカ国務省が資金を提供していたことは本コラムでも指摘した通り。WikiLeaksが公表した米外交文書によると、ロンドンを拠点とする衛星放送「バラダTV」へ2006年から2009年までの期間(ジョージ・W・ブッシュ政権)だけで600万ドルを提供したという。 このテレビ局は2009年4月以来、バシャール・アル・アサド体制を倒すためのキャンペーンを続けている。そのほか、「MEPI(中東協力イニシアティブ)」や「民主主義会議」なる組織を通して米国務省はシリアの反体制派へ資金を提供している。シリアとの関係修復を目論んでいたバラク・オバマ政権としては頭の痛い問題になっているようだ。 シリアの反体制派にもいくつかの勢力が存在している。例えば、バシャールの伯父にあたるリファート・アル・アサドを中心とするグループ、あるいは父親の政権で要職にあった人物で今はパリを拠点にしているアブドゥル・ハリム・カーダムを中心とする勢力などだ。 4月に入り、シリアでは反政府活動が激しくなっているのだが、その背景ではサウジアラビア王室の思惑が働いているとも言われている。民主化運動の盛り上がりを利用し、イラン、レバノン、そしてシリアで体制転覆を謀っているというのだ。サウジアラビアにはアメリカ、ヨルダン、そしてイスラエルが協力しているともされている。「民主化」というキーワードを使い、アメリカのバラク・オバマ政権を引きずり込みたいという考えもあるのだろう。 4月22日の金曜日にもシリアで抗議行動があり、治安当局によって88名以上が殺されたとも報道されているのだが、その一方で消防車が反政府派に襲撃されて隊員が重傷を負うという出来事もあったようだ。チュニジア、エジプト、バーレーンなどとは違い、シリアでもリビアのような「武装闘争」の雰囲気が漂い始めた。ネオコンにとっては好ましいことなのかもしれないが、現地の人々だけでなく、アメリカにとっては悪い方向だ。 リビアの場合、「飛行禁止空域」の設定が空爆に変化、それでもムアンマル・アル・カダフィ政権を倒せないため、イギリス、フランス、そしてイタリアはそれぞれ10名程度の将校を「軍事顧問」として派遣すると伝えられている。つまり軍事介入の度合いを強め、泥沼の中へと突き進んでいる。 もっとも、すでにアメリカのCIAだけでなく、イギリスのMI6(情報機関)やSAS(特殊部隊)も秘密工作を展開中だとも報道されている。今回の「顧問団派遣」の表明は軍事介入に本腰を入れるという宣言だと理解すべきかもしれない。 アメリカの場合、ネオコンとは違い、リビア内戦への介入に抵抗している勢力が存在している。アフガニスタンやイラクでも手に余る状態なわけで、リビアでも泥沼へ足を踏み入れることは避けたいということだ。無人機での攻撃を打ち出したのも、そうした思惑が働いたのかもしれないが、それでも内乱に引きずり込まれようとしている。「国家存亡の危機」にアメリカは直面している。 ところで、リビアの反政府勢力には、元内務大臣のアブデルファター・ユニス将軍をはじめとする軍からの離反組、サヌーシ教団の影響を受けているというベンガジの分離独立派も存在する。石油が生み出す富を国の西部地域が独占していると不満を持っているのだという。東西の対立は歴史的なもので、イギリスは東部と関係が深い。この地域にはサヌーシー教団の影響もある。 ちなみに、サヌーシ教団とはイスラム系の宗派で、1837年(1840年とする説もある)にサイード・ムハンマド・イブン・アリ・アッサヌーシーが創設したという。第1次世界大戦の頃、この教団を指導していたのがムハンマド・イドリースで、1951年にリビアが独立する際には、この人物が国王(イドリース1世)に選ばれた。この王制を1969年に倒したのがカダフィだ。 リビアの反政府派で中心的な存在だとされているのがNCLO(リビア反体制国民会議)で、その傘下にはNFSL(リビア救済国民戦線)が存在している。NFSLは西側諸国や中央アメリカ諸国でイスラエルやアメリカの訓練を受けてきたとも言われ、CIAの下でカダフィ体制の打倒を目指してきた。この武装組織に所属する約2000名がチャド軍に拘束されたこともある。1984年5月にはカダフィ暗殺を試みて失敗している。 現在、最も注目されている組織がLIFG(リビア・イスラム戦闘団)。1995年に創設された武装グループだが、それ以前にはアフガニスタンでソ連軍と戦っていた。MI6(イギリスの情報機関)と関係があるとする情報もあるが、2004年2月にはジョージ・テネットCIA長官(当時)、もLIFGをアルカイダにつながる危険な存在だと上院情報委員会で証言している。米英仏伊はアルカイダと手を組んでいるようにも見える。
2011.04.23
Googleのアンドロイドで動いているスマートフォンやAppleのiPhoneは利用者の行動に関するデータを記録していることが明らかになった。 GoogleやAppleという会社に限らず、外部から特定の人物を追跡することができるということだが、これは長い間、アメリカの情報機関や軍が行ってきたこと。GPSを搭載した携帯電話を国家機関が容易に追いかけられることは以前から(日本以外では)大きな問題になっていたことだ。 ただ、スマートフォンの場合、機械の内部に行動が記録されているため、紛失すると、拾った人物が所有者が数カ月間、どのように動いたかというデータを手にすることも可能なわけで、そうしたリスクも加わったとは言える。 アメリカのDARPA(国防高等研究計画局)が開発していたTIA(総合情報認識)の場合、個人の学歴、銀行口座の内容、ATMの利用記録、投薬記録、運転免許証のデータ、航空券の購入記録、住宅ローンの支払い内容、電子メールに関する記録、インターネットでアクセスしたサイトに関する記録、クレジット・カードのデータなどあらゆる個人情報を集め、分析することを目的にしていた。 このプロジェクトが発覚すると、新たにMATRIXというシステムが登場・・・というように、国民監視システムは国民の目が届かないところで強化されてきた。GPSつきの携帯電話が権力システムにとって「追跡ツール」だということは常識である。こうした世界の波に乗る形で、日本では1999年に「通信傍受法(盗聴法)」が制定されたのである。住基ネットがこうした監視システムと無関係だとは到底、思えない。 Googleが集めている個人情報は「位置」にとどまらない。提供しているサービスは全て個人情報の収集に活用できる。例えば、どこのサイトへアクセスしたのか、誰に電子メールを送ったのか、どんなブログを書いているのか、どんな写真を手に入れているか、どんな地図を見ているか、どんなニュースを読んでいるのかという情報を集められるのである。Google Desktopの場合、Search Across Computersの設定を許すとコンピュータのファイルはGoogleのサーバーにコピーされてしまったという。 Googleで少なからぬ情報機関からの「転職組」がGoogleで働いていると言われているのだが、情報機関員には「退職」も「引退」もない。Googleに限らないだろうが、コンピューターや通信に関係した会社には情報機関や捜査機関のエージェントが入り込み、会社にも知らせないで何らかのバグをプログラムに組み込むことも可能だ。 現在、庶民の社会運動では携帯電話での会話だけでなく、TwitterやFacebookなどが利用されている。エジプトでの民主化要求運動でもそうしたツールが威力を発揮したと言われているのだが、そのエジプトではインターネットや携帯電話を監視するためにNarusが開発したシステムが使われていた。つまり、携帯電話、Twitter、あるいはFacebookが弾圧の道具にもなっている。こうした事実は認識しておく必要があるだろう。 要するに、今回発覚したスマートフォンの問題は「想定内」だということである。現代人は、そうした世界で生きているわけだ。
2011.04.22
福島第一原発事故は綱渡りの状態が続いている。事故の悪化を防ぎ、終息へ向かわせるために現場で働いている人々の過酷な状況も断片的に伝えられている。そうした中、チェルノブイリ原発事故から25年目の4月26日を迎えようとしている。 日本では政府や東京電力だけでなく、テレビや有力紙をはじめとする「有力マスコミ」に登場する学者たちは「安全」を宣伝しているが、こうした人々は別として、世界では政府も科学者も、福島原発の事故はスリーマイル島原発事故(1979年3月28日)を上回る深刻なものだと早い段階で認識していた。 原子炉の数などから「潜在的」にはチェルノブイリ原発事故よりも危険な状態だと考える人も少なくなかった。そうしたひとりがニューヨーク市立大学で物理学を教え、メディアにもよく登場するミチオ・カク。福島原発の事故から1週間後の3月18日にCNNの番組に登場、「チェルノブイリ方式」を主張していた。つまり、空軍(航空自衛隊)を投入して「石棺」で封印することを考えろというのである。 現在、日本では原子炉を冷却するために人海戦術で水を回しているようだが、その際に作業員は大量に被曝、まさに命を削りながらの仕事を続けている。月単位か年単位かわからないが、多くの作業員が必要になることは間違いない。そうした意味も含め、カク教授は軍隊(自衛隊)の投入を考えたようだ。 チェルノブイリの場合、最も過酷な状況だった1986年から87年にかけて動員された人は約20万人、全体では約83万人に達すると言われている。これから日本はどのようにして作業を続けるのか、大きな問題になることは言うまでもない。 ロシア科学アカデミー評議員のアレクセイ・V・ヤブロコフ氏たちのグループがまとめた報告書『チェルノブイリ:大災害の人や環境に対する重大な影響』では事故が原因で死んだり生まれられなかった人や胎児は98万人に達するとしているが、IPPNW(核戦争防止国際医師会議)のドイツ支部がまとめ、4月8日に公表された報告書でも事故の重大な影響が指摘されている。 ガンだけでなく、様々な疾患が増加しているようだが、多くのガンは発症するまで20年から30年はかかるようなので、これから被害が顕在化してくる可能性がある。その影響はチェルノブイリ周辺だけにとどまらず、ヨーロッパ全域に及ぶ恐れもあるようだ。つまり、浜岡原発をはじめ、日本に乱立している原発がこれから大事故を起こさないとしても、現在、ヨーロッパが直面しているような事態が20年から30年後の日本にも訪れるということである。
2011.04.22
民主化を要求する声をバーレーン政府は暴力的に押さえ込もうとしている。その暴力装置として中心的や役割を果たしているのがサウジアラビア。アメリカ第5艦隊の拠点であり、中東における金融システムの中心的な存在でもあるバーレーンへサウジアラビア軍を中核とする1000名規模の部隊(現在では1500名以上と言われている)が送り込まれ、抗議活動を抑え込もうとしている。 4月19日にはふたつの病院を治安部隊が襲い、医師やスタッフなどを連行している。政府側は抵抗運動で負傷した人々を探し出そうとしているほか、シーア派の医師が運動を組織しているとも疑っているようだ。これまでに約499名が逮捕、拘留されていると見られている。中には、拷問で殺された疑いのあるケースもある。 言うまでもなく、イスラム教にはシーア派とスンニ派という大きな宗派が存在、権力集団と結びついて対立している。イラクと同じように、バーレーンではシーア派が多数を占めているのだが、支配層はスンニ派。植民地時代、欧米が意識的に少数派を支配者にしたことが原因のようだ。ちなみに、イランの支配層はシーア派。 イギリスのインディペンデント紙によると、バーレーンに展開しているサウジアラビア軍はシーア派の7つのモスク、50カ所の宗教的な集会所を破壊したという証言がある。こうした行為は国境を越えて、イラクやイランのシーア派をも刺激して中東を不安定化させている。 シーア派弾圧に対する怒りの矛先は欧米諸国にも向けられている。こうした国々はリビア政府の反対勢力弾圧を激しく非難、「人道」を口実にして軍事介入しているにのだが、バーレーン政府の「反人道的な行為」を容認しているからである。 アメリカや西ヨーロッパの国々がサウジアラビアやバーレーンの弾圧に寛容な理由は、言うまでもなく、石油にある。スンニ派が支配するサウジアラビアや湾岸の産油国の独裁体制が崩壊することを恐れているのである。最近見つかったイギリス政府の秘密メモによると、イラク侵攻でも石油が念頭におかれていた。 ただ、イラクの場合は「イスラエル」という大きな要因があった。1980年代からサダム・フセイン体制をめぐってアメリカとイスラエルが対立していたのである。ジョージ・H・W・ブッシュ(シニア)やロバート・ゲーツはイスラム革命から湾岸の産油国を守る防波堤としてイラクを位置づけ、フセインとも友好的な関係を結んでいたのだが、イスラエルやネオコン(アメリカの新イスラエル派)はフセインを危険な存在だと敵視、排除するべきだと考えていたのだ。 イスラエルやネオコンには、フセインを排除し、ヨルダン、イラク、トルコという「親イスラエル派」の帯を形成し、イランとシリアを分断するという戦略があった。1990年代にネオコンは繰り返し、フセインの排除を主張している。ジョージ・W・ブッシュ(ジュニア)はこうしたネオコンの戦略に従ってイラクを先制攻撃し、フセインを排除している。こうした戦略に石油資本も乗ったということかもしれない。 ちなみに、2009年の石油生産量は次のようになっている。1)ロシア 1003.2万バレル2)サウジアラビア 971.3万バレル3)アメリカ 719.6万バレル4)イラン 421.6万バレル5)中国 379.0万バレル6)カナダ 321.2万バレル7)メキシコ 297.9万バレル8)アラブ首長国連邦 259.9万バレル9)イラク 248.2万バレル10)クウェート 248.1万バレル(BP Statistical Review of World Energy, June 2010) あと数十年で石油が枯渇する可能性があるということを度外視しても、中東諸国が石油生産の中心的な存在だということも大きな問題になっている。今後、中東/北アフリカの民主化が進めば、日欧米にとって都合の良い生産体制は崩れる可能性がある。日米欧にとって、石油の依存度を低下させることは重要なテーマだと言えるだろう。福島第1原発の事故で原子力発電の復活が困難になった今、ヨーロッパを中心に、自然エネルギーへ舵を切る国が増えるだろう。日本も「核武装の夢」を捨て、自然エネルギーを目指す時だろう。
2011.04.20
福島第1原発の事故に関し、日本では政府も東京電力もマスコミも事実から目を背け、国民をミスリードしてきた。これまで深刻な事故でもマスコミを丸め込み、何とか誤魔化せたという「成功体験」があるためなのか、今回のような大事故でもデータを隠し、誤った情報を流している。ただ、今回の場合、これまでのような情報操作では隠せないほどの大事故だったため、日本という国自体が世界から嘲笑される対象になってしまった。 政府/東電/マスコミは事故の規模を小さく見せようと努力を続けてきたが、その一方で放射性物質の影響も小さく見せようと必死だ。すでに本コラムでも指摘したように官邸は、チェルノブイリで「134名の急性放射線傷害が確認され、3週間以内に28名が亡くなっている。その後現在までに19名が亡くなっているが、放射線被ばくとの関係は認められない。」のだとしている。 IAEAやWHO(世界保健機構)などで編成された「チェルノブイリ・フォーラム」なる集まりが出しているデータに基づいているのだが、このフォーラムでさえ、「放射線被曝にともなう死者の数は、将来ガンで亡くなる人を含めて4000人である」としている。つまり、日本の官邸はフォーラムの主張を否定する文書を掲載しているのだが、その文書の根拠、出典は示されていない。 前にも書いたように、チェルノブイリ事故によるガン死数をWHOは9000件、IARCは1万6000件、キエフ会議は3万から6万件、グリーンピースは9万3000件と見積もっているのだが、こうした数字を大幅に上回る推定をしている報告書『チェルノブイリ:大災害の人や環境に対する結果』がアメリカのニューヨーク科学アカデミーから出版されている。 この報告書によると、チェルノブイリ原発事故による影響で死んだ人や胎児は98万人に達し、健康などにも影響が出ているという。グリーンピースの推定値に比べても桁違い。しかも、そうした影響は人だけでなく動植物全体に及んでいるとしている。 この報告書を執筆したのはロシア科学アカデミー評議員のアレクセイ・V・ヤブロコフ氏など3名で、特徴のひとつとして調査対象の広さがある。例えば、英語の論文や報告だけでなく、ロシア語をはじめとして様々な言語の文献にあたり、実際に患者を治療している医師などにもインタビューしている。報告書の編集を担当したジャネット・シェルマンがこの辺の事情を説明している。なお、ヤブロコフはミハイル・ゴルバチョフやボリス・エリツィンの顧問を務めた経験もあり、ソ連/ロシア政府の内情にも詳しいようだ。 勿論、こうした報告書は欧米でも大きくは取り上げられない。内部被曝と外部被曝を区別しない(できない)原子力担当記者もいるようだ。 公的な機関を見ると、IAEA(国際原子力機関)だけでなく、WHO(世界保健機関)も無視している。1956年以来、WHOは放射線の人体への影響について積極的に発言しなくなった。その理由とされているのが1959年にIAEAとWHOとの間で結ばれた合意。例えば、WHOがIAEAの扱っているテーマに重大な関心も持った場合、WHOはIAEAに相談しなければならなくなった。つまり、WHOはIAEAが望まない報告書を出すことはできないということだ。
2011.04.19
避難地域の範囲は不十分だということが汚染調査で明らかになっているのだが、それでも福島第1原発の事故を受けて多くの住民が避難を余儀なくされている。そうした避難民が差別され、被曝調査証がなければ「避難所や病院などの出入りを拒否されている」とも伝えられている。勿論、医療機関の差別的な姿勢は論外なのだが、避難民が「差別」される背景を理解しなければ問題を解決することは難しいだろう。 言うまでもなく、避難民の多くは原子力発電所の周辺に住んでいた人々であり、少なくとも自治体としては原発を受け入れ、リスクの代償として多額のカネを受け取ってきたわけである。 しかし、今回の原発事故では、こうした町村を越えた地域に深刻な被害をもたらしつつある。県レベルなどではなく、放射性物質は海や大気を通じて地球規模で広がり、諸外国から非難されているのが現状。 当然のことながら、原発を引き入れた町村の周辺も放射能汚染は深刻になっている。そうした地域に住む人々に対し、原発を受け入れた町村からの避難民を快く受け入れろと要求することには無理がある。原発立地の経緯を見聞きしていないような、もっと離れた地域に避難先を設定する方が問題は大きくならないだろう。例えば、原発推進を公言してきた人物を知事に選んだ東京。福島県の原発は東京のために建設されたとも言える。 また、政府、東京電力、マスコミが事実をきちんと公表してこなかったことも差別の一因になっているだろう。こうした原子力推進派は「安全神話」の崩壊を恐れてなのか、事故を過小評価することに熱心だったのだが、こうした宣伝活動は事実によって粉砕され、国民の間に不信感を広めることになった。 政府/東京電力/マスコミが信頼できないとなれば疑心暗鬼になり、自らの「想像力」で危険を回避しようとしても仕方がない。科学的に正しくない判断も少なくないだろうが、そうした事態を招いた責任は政府/東京電力/マスコミにあることを忘れてはならない。
2011.04.19
ユーゴスラビアが解体される過程で少なからぬ残虐行為があった。「西側」のメディアはセルビア人側の行為のみを攻撃していたが、クロアチア人やコソボのアルバニア系住民の残虐行為も目にあまるものがあった。そうした行為の責任を問われていたクロアチアの将軍ふたりにハーグの国際法廷は有罪判決を言い渡したのだが、これに怒ったのがクロアチアの人々。約3万人が街頭に出てEUに抗議した。戦争になると、「敵」に対して残虐なことを行った人物は「英雄」として崇拝されるようだ。
2011.04.18
アメリカの国務省がシリアの反体制派に資金を提供していたことを示す外交文書が公表された。中でも注目されているのがロンドンに拠点を持つ衛星放送のバラダTV。外交文書によると、2006年から2009年まで、放送だけでなく反政府活動の資金として600万ドルを提供したという。 このテレビ局は2009年4月に放送を開始、バシャール・アル・アサド体制を倒すためのキャンペーンを続けている。このテレビ局はロンドンにいる亡命シリア人のネットワーク「正義発展運動」から産み落とされた。 シリアの反体制派は「MEPI(中東協力イニシアティブ)」や「民主主義会議」なる組織を通して米国務省から資金を得ているという。2009年4月の文書によると、この民主主義会議は国務省から630億ドルを受け取り、「市民社会強化イニシアティブ」を動かすために使っているようだ。 また、2005年からシリアの工作に使うため、750万ドルがMEPIへ割り当てられていると国務省は話しているが、外交文書によると2005年から10年までに1200万ドルが流れている。 こうした秘密工作の存在をシリアの情報機関が察知しているとアメリカ側が気づいたのは2009年のこと。この工作はジョージ・W・ブッシュ政権が始めたわけだが、支援をすぐにやめるわけにもいかず、シリアとの関係修復を目論んでいたバラク・オバマ政権としては頭の痛い問題になった。 ところで、シリアの反体制派として注目されているのは、バシャールの伯父にあたるリファート・アル・アサドを中心とする勢力、あるいは父親の政権で要職にあった人物で今はパリを拠点にしているアブドゥル・ハリム・カーダムを中心とする勢力など。カーダムはレバノンのハフィク・ハリリ元首相やサウジアラビアのアブドゥラ国王と親戚関係にあるという。また、その背後にはムスリム同胞団が存在しているとも言われている。 4月に入り、シリアでは反政府活動が激しくなっているのだが、こうした反体制派の動向を無視することはできないだろう。サウジアラビアはチュニジアやエジプトで民主化運動が盛り上がったの利用し、イラン、レバノン、そしてシリアで体制転覆を謀っているとも言われている。このサウジアラビアに協力しているとされている国にはヨルダン、アメリカ、そしてイスラエルが含まれ、ベルギーを拠点にしている。 つまり、シリアの反政府運動は「民主化」と無関係。現体制を倒し、新たら支配体制を樹立しようという動きということである。リビアの内戦と同様、権力抗争だということである。
2011.04.18
官邸が「チェルノブイリ事故との比較」(4月15日付け)なる文書をサイトで公開している。この文書を書いたのは長崎大学の長瀧重信名誉教授と日本アイソトープ協会の佐々木康人常務理事。文書の内容は、「チェルノブイリ・フォーラム」なるグループが出しているデータに基づいている。 なお、このフォーラムは2003年、IAEA、WHO(世界保健機構)など国連8機関にウクライナ、ベラルーシ、ロシアの代表が加わって結成された。 官邸が掲げているということは日本政府の見解でもあるのだろうが、文書の内容を見ると、チェルノブイリでは「134名の急性放射線傷害が確認され、3週間以内に28名が亡くなっている。その後現在までに19名が亡くなっているが、放射線被ばくとの関係は認められない。」のだとしている。つまり、「直ちに健康に影響」する被曝で死亡した人のうち、フォーラムが確認した人数はこれだけということのようだ。 フォーラムによると、1986年から87年にかけて動員された事故処理作業者約20万人のうち2200人、事故直後に30キロメートル圏にいた11万6000人のうち140名、高汚染地域に住んでいた27万人のうち1600人がガンで死んでいるという。そして、「放射線被曝にともなう死者の数は、将来ガンで亡くなる人を含めて4000人である」としている。 ところが長瀧、佐々木両氏の文書によると、「チェルノブイリでは、高線量汚染地の27万人は50ミリシーベルト以上、低線量汚染地の500万人は10~20ミリシーベルトの被ばく線量と計算されているが、健康には影響は認められない。例外は小児の甲状腺がんで、汚染された牛乳を無制限に飲用した子供の中で6000人が手術を受け、現在までに15名が亡くなっている。」とされている。フォーラムの主張を否定しているわけだが、その根拠は示されていない。結論として「福島の周辺住民の現在の被ばく線量は、20ミリシーベルト以下になっているので、放射線の影響は起こらない。」とも書いているのだが、これも理由が明らかにされていない。 京都大学原子炉実験所助教の今中哲二氏によると、「ベラルーシやウクライナの専門家やNGO、さらにはベラルーシ政府からも報告書のへの抗議を受け」、WHOやIARC(国際ガン研究機関)からも、「もっと大きなガン死数推定値」が発表されている(「原子力資料情報室通信」2006年8月)という。 ちなみに、チェルノブイリ事故によるガン死数をWHOは9000件、IARCは1万6000件と見積もっているが、キエフ会議は3万から6万件、グリーンピースは9万3000件と推定している。(今中氏からの孫引き) 水俣病など公害病でもそうだったが、日本の支配層は被害を少なく見せるため、調査しないことになっている。調査しなければデータはなく、データがなければ被害はないという理屈(?)だ。「薬害エイズ」のケースでは、エイズが蔓延すれば、その中に薬害の被害は埋もれてしまうと厚生官僚は考えていた節があるのだが、予想外にエイズは広がらず、薬害の事実が浮かび上がってしまった。 事実が積み重なってくると、妄想が入り込む余地が少なくなってしまう。旧日本軍で情報部門が軽視され、破滅へと突き進んだのだが、今でも同じことが繰り返されている。人間は「信じたいことを信じる」そうだが、権力者に逆らえば不利益を被ると考えている人たちは、逆らわずにすむ道を探す。つまり、原発は安全であり、外部被曝は勿論、放射性物質を体内に取り込んでも大したことはないと信じたいというわけだ。そうした人々を当て込んだ報道もよく目にする。
2011.04.18
中東/北アフリカで民衆の抗議運動が活発化している。欧米各国、特にアメリカの資本が利権を維持、拡大するために独裁政権を支えてきただけでなく、各国の支配層が富を効率的に独占するために新自由主義経済システムを導入、庶民の貧困化が進んだことも運動の一因になっている。そうした中、リビアやイエメンではアルカイダ系武装グループの動きが注目されている。 リビアでは、西側諸国や中央アメリカ諸国でイスラエルやアメリカの訓練を受けてきたと言われている武装組織NFSL(リビア救済国民戦線)が反政府派の主軸になっているようだが、LIFG(リビア・イスラム戦闘団)というアルカイダ系の勢力も大きな影響力を持っている。 このLIFGはアルカイダとの関係を隠してはいない。イギリスの情報機関MI6と関係があるとする情報もあるのだが、2004年2月には当時のCIA長官、ジョージ・テネットから危険な存在だと指摘されていることも事実。 また、イエメンではAQAP(アラビア半島のアルカイダ)と呼ばれる組織が注目されている。2009年にアルカイダのサウジアラビア支部とイエメン支部が合体して誕生、アメリカ生まれのアンワール・アルアウラキが指揮していると言われている。この人物の暗殺をバラク・オバマ米大統領が承認したとニューヨーク・タイムズ紙が昨年4月に報じている。 こうした武装勢力が影響力を強めている背景には、アメリカをはじめとする欧米各国の中東/北アフリカ支配がある。この地域から富を吸い上げるために独裁体制を樹立して庶民を貧困化させている。 それだけでなく、欧米が作り上げたイスラエルという「人工国家」は先住のアラブ系住民(パレスチナ人)を追い出し、ガザ地区では地域全体を封鎖して兵糧攻めするだけでなく、軍事侵攻で虐殺と施設/住居の破壊を繰り返してきた。ヨルダン川西岸でも違法な入植活動を強硬し、「アパルトヘイト政策」を推進している。こうしたパレスチナ人に対する理不尽な扱いへの怒りもイスラム武装勢力を支えている。 湾岸の独裁産油国などで民衆が弾圧されるのを欧米各国は黙認する一方、気に入らない体制は「人道」を口実として軍事介入しているわけだが、こうしたことがさらに中東/北アフリカの人々を反欧米へと走らせることになる。アルカイダのような武装勢力をある時は支援し、ある時は攻撃するという身勝手な態度も事態を複雑化させる一因だ。福島第1原発ではないが、中東/北アフリカはコントロール不能の状態になりつつある。
2011.04.17
内部告発を支援しているWikiLeaksへ映像や外交文書を提供したと疑われているブラドレー・マニング特技兵に対する処遇が問題になっている。夜間、全裸でいることを強要され、服を渡されるときにも独房の外で全裸のまま立たされていると報道されたのは3月の上旬。事実ならジュネーブ条約に違反している可能性が高く、人道上の問題があることは論を待たない。こうした状況を「愚か」と表現した国務省のPJ・クロウリー国務次官補は辞任に追い込まれ、マニングとの面会を求める国連特別報告官の要求はアメリカ政府に拒否されている。 4月11日に開かれた国務省の記者会見で記者からこの点を質問された。中国の人権問題を批判するアメリカ政府がなぜ国連の報告官をマニングに面会させないのかと尋ねたのである。それに対し、マーク・トナー副報道官代理は責任を国防総省に押しつけるだけ。国連と国防総省との仲介もしていないと発言している。アメリカにおける人権侵害には興味がないというように聞こえる。 アメリカに限らないが、支配者は情報を独占し、隠そうとする。しばしば「国家安全保障」を理由にするが、言うまでもなく、真の理由は自分たちの悪事がばれなようにすることにある。 ところが、WikiLeaksは秘密にしていた映像や文書を明らかにしつつある。支配者が隠してきた情報が一般市民に知られると支配体制は揺らいでしまう。そこで、WikiLeaksに圧力を加えるだけでなく、新たな内部告発者の出現を阻止しようとアメリカ政府は必死。そのため、見せしめのためにマニングを屈辱的に扱っているのだろう。 要するに、アメリカの支配層は人道や人権などに興味がない。だからこそ、アメリカはパレスチナ人弾圧を続けるイスラエルと友好的な関係を維持し、エジプトのムバラク体制を支援、サウジアラビアやバーレーンの民主化運動弾圧にも寛容な姿勢を見せていると言えるだろう。リビア攻撃も人権や人道以外に理由があると考えるべきだ。CIAのテロリスト、ルイス・ポサダ・カリレスを自由放免にしたことも、アメリカが人権や人道を軽視していることの現れだろう。
2011.04.17
福島第1原発の事故の後、温室効果ガスの排出量を削減することは難しいという話が流されてる。例えば、福島第1原発の事故を受け、4月4日に枝野幸男官房長官は、温室効果ガス排出量に関する国際的や約束を「検討」すると表明している。 実は、原子力発電の推進派と気候変動否定派をさかのぼっていくと、同じ人たちたどり着く。例えば、昨年12月、カンクンで開かれた国連気候変動会議(COP16)の初日に日本政府は「いかなる条件、状況下でも京都議定書の第2約束期間の下で目標を書き込むことは絶対合意しない」と表明しているのだ。そうした方針を決めたのは経産省であり、その背景には大企業(財界)の要求がある。気候変動の話は原発を推進するために作られたという「仮説」は成り立たない。 温室効果ガスに関する議論が出てくるのは19世紀。その後も研究は続き、1973年になると、イギリスの科学者、ジェームズ・ラブロックはフロンガスが温室効果の大きな要素だと主張している。 1980年代に入ると気温の上昇が注目されるようになり、エルニーニョ現象(ペルー沖の海水温が上昇する現象)の頻度に関する問題、あるいは北極圏の先住民やその地域の学者たちから北極圏で氷が溶けているという指摘なども出てくる。 1980年代の後半になると、自然のサイクルでは説明ができないとして、温室効果ガスが気候の温暖化をもたらしているという説が広まっていくのだが、反対意見も出てくる。その代表格がポーランドの物理学者、ズビグネフ・ヤボロスキー。1990年頃から気候変動説を批判しはじめた。 そうした批判はあったものの、二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、ハイドロカーボン類、パーフルオロカーボン類、6フッ化硫黄など「温室効果ガス」を規制する議定書が1997年12月、京都で議決されている。これが、いわゆる「京都議定書」。2004年に、ロシア連邦が批准し、2005年に発効した。 ただ、最大の排出国であるアメリカは議定書を批准していない。本コラムでは何度か書いたが、アメリカの大富豪、コーク兄弟が気候変動を攻撃するために資金を投入し始めるのは、議定書が発効した頃からのようだ。 ロシアの批准に最も慌てたのは、おそらく日本である。議定書に調印して以来、何も対策を講じていないことを考えると、議定書は発効しないと高をくくっていたとしか思えない。そこで幅を利かせてくるのが、原発は温室効果ガスを出さないという「神話」を撒き散らすことと、京都議定書の無効化を狙った工作である。原発を推進すると同時に、温室効果ガスを自由に排出したいというのが日本政府の本音ということだ。 ラブロックと同様、ヤボロスキーも原発には好意的な見方をしている人物で、放射能障害についても楽観的な見方をしている。 また、ヤボロスキーは福島第1原発の事故が発生して間もなく、スリーマイル原発程度で事故はおさまり、チェルノブイリ原発のようになることはないと主張していた。日本政府の言動やヤボロスキーの発言を見ても、原発推進と気候変動を対立させる「解説」は、あまりに単純すぎると言えるだろう。
2011.04.16
「ロビン・フッド税」を求める声が世界の経済学者の間で広まっている。富裕層に課税し、低所得層へ回そうという仕組みだ。世界の富が投機(博奕)の世界に吸い込まれていることに対する危機感がそれだけ強まっているのだろう。 言うまでもなく、ロビン・フッドとはイギリスの伝説的な義賊で、シャーウッドの森に住んでいたとされている。 マーガレット・サッチャー英首相やロナルド・レーガン米大統領の時代に導入された新自由主義経済によって、富が一部の大企業や富裕層に集中する仕組みが作られた。その結果、「カネ余り」による投機市場の肥大化と貧困の深刻化が進み、貧富の差は拡大し、社会システムを崩壊させつつある。資本主義経済は「自爆」の危機に瀕しているとも言える。 こうした危機感を全く感じさせないのが日本の「エリート」たち。アメリカでさえ、強欲の行き過ぎを修正しようとしているのだが、大地震に続く福島第1原発の大事故があっても、日本経団連の会長にしろ、東京電力の重役たちにしろ、欲ボケは直っていない。政治家、官僚、学者、マスコミも同様だ。(XXは死ななきゃ直らない?)
2011.04.15
ハーグの国際法廷でふたりのクロアチア軍幹部に有罪判決が言い渡された。1990年代、ユーゴスラビアが解体される過程で、虐殺を含むセルビア人に対する「戦争犯罪」があったと判断されたのである。 当時、ユーゴスラビアは内戦状態になっていた。まず、1991年6月にスロベニアとクロアチアが、また9月にはマケドニア、翌年の3月にはボスニア・ヘルツェゴビナが相次いで独立を宣言、4月にはセルビア・モンテネグロがユーゴスラビア連邦共和国を結成している。このユーゴスラビア連邦共和国から独立し、アルバニアと合体しようとしたのがコソボのアルバニア系住民。この分離派を「西側」は支援、NATO軍の軍事介入につながった。 この内乱では、イギリスの情報機関MI6(SIS)がセルビア側の指導者、スロボダン・ミロセビッチの暗殺を1992年に計画している。セルビアの反体制ゲリラを使うか、イギリスの特殊部隊SASに暗殺させるか、自動車事故に見せかけて殺害するか、そうしたシナリオを検討したというのだが、結局暗殺は実行されず、1993年3月のNATO軍によるユーゴスラビア攻撃が始まった。 この内乱で「西側」はセルビアの「人道的犯罪」を強く非難していたが、その背後にはイスラエル系ロビー団体、HRWなる「人権擁護団体」、メディア、そしてPR会社が存在していた。イラクがクウェートへ軍事侵攻したときと同じで、このチームはセルビアによる残虐な行為を世界に発信したのだが、そこにはふたつの問題があった。宣伝された事件が捏造されたものであり、セルビア側の犠牲は問題にされなかったということである。(拙著『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』で触れている。) 問題の根を探っていくと、少なくとも第2次世界大戦までさかのぼることができる。クロアチアの反セルビア勢力は「ウスタシャ」と呼ばれた民族主義者の流れをくんでいるのだが、このグループはナチスと協力関係にあり、大戦中に大規模な虐殺事件を起こしている。 犠牲になったのはセルビア人のほか、イスラム教徒、ユダヤ教徒、そしてロマたちで、射殺されるだけでなく、絞め殺されたり、溺れ死にさせられたり、焼き殺されたり、刺し殺されている。中にはセルビア人の眼球や臓器をコレクションしている者もいたと言われている。 ちなみに、独立後のコソボでは武器、麻薬、そして臓器の密売が横行しているのだが、こうした取り引きで稼いでいる犯罪グループのトップがハシム・サチ首相だとする報告書を欧州会議が発表、臓器密売ではイスラエルとの関係も浮上している。 また、1995年8月にクロアチア軍は「民族浄化」を目的として「嵐作戦」を実行、セルビア側を4日以上に渡って攻撃し、約10万人のセルビア人を追い出している。この軍事作戦はハーグの法廷で審理されたのだが、途中でアメリカの民間軍事会社MPRIの人間が登場、責任は問われないまま終わった。MPRIの人間とは、アメリカ軍の退役将軍だ。 要するに、「西側」の諸国が「人道」を持ち出したときには注意しなければならないということ。勿論、人権を守ることは大切なのだが、それを侵略や虐殺を正当化する口実に使うことが珍しくないのである。リビアへの軍事介入でもそうした側面がある。 このリビアでの内乱について、「西側」のメディアはチュニジアやエジプトと同列に報道、「人道」を前面に出しているのだが、これには疑問がある。リビアの場合、民衆の民主化要求というより権力抗争という側面が強く、しかも反政府派にはアルカイダ系のグループが参加している。 そういえば、原子力に関しての「安全報道」は「みんなウソだったんだね」と歌われている。原子力だけの話ではないだろう。
2011.04.15
福島第1原発で綱渡りが続く中、4月11日にスウェーデンのSIPRI(ストックホルム国際平和研究所)は、2010年度における世界各国の軍事費について報告している。言うまでもなくトップはアメリカで6983億ドル(名目値)。世界全体の42.8%を占める。第2位は7.3%の中国で、3.7%のイギリス、3.6%のフランス、3.6%のロシアと日本が続く。 もっとも、この「軍事費」が何を示しているのかは曖昧。例えば、国務省やAID(国際開発庁)の対テロ活動費、退役軍人プログラム、年金、金利の支払いは含まれず、航空宇宙局、エネルギー省などに割り当てられた軍事関連の予算も含まれていないようだ。 そうした事情はあることを前提としてアメリカの軍事費を眺めてみると、減少したと言えるのは第2次世界大戦が終わった直後だけ。朝鮮戦争の前、1948年度から上昇に転じている。ドワイト・アイゼンハワー、ジョン・F・ケネディ両政権のときには横ばいになのだが、リンドン・ジョンソン政権ではベトナムへの本格的な軍事介入で再び急増した。 デタントを志向したリチャード・ニクソン政権でまた横に這うのだが、好戦派が主導権を握ったジェラルド・フォード政権で急上昇、この流れはロナルド・レーガン政権が終わるまで続いた。言うまでもなく、ジョージ・W・ブッシュ(ジュニア)政権でも軍事費は大きく膨らんでいる。 ブッシュ・ジュニアの時代に軍事費が急増した理由は、アフガニスタンやイラクに対する先制攻撃とアメリカ国内における治安強化(ファシズム化)にある。ブッシュ・ジュニアが大統領に就任した2001年度には3127億ドルだったのだが、バラク・オバマに交代した2009年には6686億ドル、つまり2.1倍になっていた。そして2010年度にはさらに4.4%増えて6983億ドルに達した。 アメリカの現状を見ても明らかなように、軍事費の増大は国力を弱める。アフガニスタンやイラクは典型的だが、国際問題にしろ国内問題にしろ、軍事力で解決することは不可能に近いことが明らかになっている。戦争は戦争ビジネスを儲けさせるだけのことだ。
2011.04.15
バラク・オバマ米大統領は13日、支出の削減と同時に、富裕層への課税強化を呼びかけた。2023年までに財政赤字を4兆ドル減らすために必要だということだが、大企業や富裕層の負担が増える内容が含まれていることから、議会で激しい抵抗が起こることは避けられないと見られている。 ロナルド・レーガン政権以降、アメリカでは「新自由主義経済」という信仰が幅を利かせ、富が一部の人間に集中する仕組みが築かれてきた。フランクリン・ルーズベルト政権から富の集中が緩和され、1950年代から80年代の半ばにかけての期間、所得上位1%の層が得ていた所得が全体に占める割合は10%を下回っていたようだが、それ以降、比率は急上昇している。 本コラムではすでに紹介済みだが、バニティー・フェア誌の5月号にも、そうした実態を批判する論文が掲載されている。アメリカでは1%の人間が全年間収入の4分の1を手にし、富の約4割を支配しているのだという。そうした仕組みを維持するため、大企業/富裕層から政治家やメディア、あるいは学者へ多額の資金が流れている。実際の国家運営をコントロールし、情報操作/プロパガンダで庶民を操ってきたわけだ。 言うまでもなく、オバマは決して庶民の代弁者ではない。庶民の利益を考える人間が政界で台頭することなど至難の業である。 そこで、「だからオバマはダメだ」と言うことは容易いのだが、今のシステムではオバマでなくてもダメだ。選挙だけで問題を解決するためには、大企業/富裕層から資金を得る必要がなく、メディアからの攻撃を跳ね返せる力を持ち、庶民の利益を考える人間の出現を待つしかないのだが、そんな人間は存在しないわけで、選挙では「よりマシ」な人間を選ぶしかない。 だから選挙は無駄だという意見もあるが、そういう人の中に選挙以外の手段で世の中を変えようと行動している人は皆無に近いだろう。体制を批判しているように装いながら、体制の中で無難に生きていきたいと考えているだけにしか見えない。いわば、「サラリーマン金太郎」への憧れ。 それはともかく、アメリカで推進された新自由主義経済は破綻、社会から公正さや機会の平等という理念は消え去り、共同体の連帯感などはなくなってしまった。国外では平然と先制攻撃で気に入らない国へ侵攻、戦費負担は庶民に押しつけている。 そうした軍事加入の口実として「人道」が用いられることもあるが、実際のところは利権を欲しがっているにすぎない。そうした政策がアメリカという国を揺るがしているわけだ。一部の支配層が危機感を持っても不思議ではない。オバマの言動にもそうした状況判断が働いているのだろう。 東日本地震と福島第1原発の事故に絡み、日本経団連の米倉弘昌会長は法人税率5%引き下げに言及した。「やめていただいて結構」という「欲ボケ発言」をしたのである。そもそも法人税率の引き下げが問題なのであり、あらゆる優遇措置を止め、法人税率を引き上げ、高額所得者への課税を強化しなければならない。日本の支配層は、原発事故の状況判断だけでなく、日本経済に関する状況判断もできていない。
2011.04.14
イスラエルの軍事強硬路線を象徴する人物といえば、アビグドル・リーバーマン外務大臣だろうが、このリーバーマンを詐欺、背任、マネーロンダリング、買収の容疑で訴追しようと司法大臣が検討しているのだという。 リーバーマンを含む勢力が行ってきたことは国際関係を無視した独善的なもので、イスラム世界の庶民を怒らせているだけでなく、西ヨーロッパに反イスラエル感情を広めることになった。アメリカ議会でさえイスラエルにとって好ましくない意見が出始め、モサド(イスラエルの情報機関)やシン・ベト(イスラエルの防諜/治安機関)からも批判されるようになってきた。 例えば、ガザ支援船の襲撃に関してモサドのメイア・ダガン長官は軍を批判している。こうした行為はアメリカ政府を窮地に陥らせ、イスラエルにとってマイナスになるというわけだ。 また、3月にイスラエル議会で承認された新しい市民法には、シン・ベトが不必要な法律だと反対している。この法律によって、「イスラエルの主権を害する」と認定された人間から市民権を剥奪できることになった。 すでに、イスラエルには「反人道的な国家」というイメージが定着している。国家存亡の危機が迫っていると感じている人が支配層に増えても不思議ではない。
2011.04.13
リビアの内戦は膠着状態に入っている。アメリカやイスラエルの後押しを受けていた独裁者、ホスニ・ムバラク大統領を民衆が倒したエジプトとは違い、リビアでは武装集団の抗争という側面が強い。しかも、反政府派にはアルカイダ系のグループが参加している。一時期は勢いのあった反政府派が劣勢になった一因は、民衆が離反したことにあるのではないだろうか? アメリカ、イギリス、フランスといった国々の軍隊が介入し、エジプト経由で武器が反政府派へ流れている。こうした外部からの支援がなければ反政府派は今頃、敗北しているだろうが、一般市民の犠牲はもっと少なくすんだ可能性は小さくない。 リビアに君臨してきたムアンマール・アル・カダフィにしてみると、欧米軍の介入がなければ、という思いだろう。2003年に核開発を放棄しなければ、アメリカも介入できなかったのではないかと臍をかんでいるに違いないと想像している人もいる。 アメリカやイギリスを中心とする軍隊がイラクを先制攻撃したのも、イラクが「大量破壊兵器」を持っていないことを知っていたからである。イスラエルがイスラム諸国の核開発に敏感なのは、自分たちが保有する核弾頭の威力、爆発力というだけでなく外交的な武器としての威力を理解しているからに違いない。 しかし、「核爆弾」を製造するためには技術的な壁が存在することも事実。簡単には手にできないのだが、報復手段としての兵器としてならば、「放射能爆弾」でもかまわないわけだ。放射能(放射性物質)の恐ろしさは福島第1原発の事故でも明らかになっていくだろう。アメリカの侵略戦争は世界に核兵器を広めることにつながっている。
2011.04.13
福島第1原発が事故を起こした後、世界的に原子力発電を見直すべきだとする意見が強まっているのだが、例外的な存在が日本。アメリカではジョージ・W・ブッシュ政権が原発推進策を再スタートさせ、バラク・オバマ政権もその政策を引き継いでいるのだが、一般市民の間では原子力発電と決別すべきだとする声が高まっている。 日本の場合、「原子力」が一貫して国策として推進され、その国策に庶民はしたがってきた。世の中の「流れ」を見抜き、逆らわないという処世術が古来、日本では幅を利かせてきたが、明治時代に自由民権運動が潰されて以来、特にそうした雰囲気が強まり、国策に逆らうのはごく少数にすぎなくなる。そうした雰囲気が原子力利権を支えてきたことは否定できない。その利権には核武装したいという支配層の思惑も結びついている。 そうした「国策」は1954年3月に始まる。中曽根康弘が原子力予算案を国会に提出、修正を経て4月に可決されたのである。 ちなみに、中曽根が政界で頭角を現してくる切っ掛けは1950年6月のスイス旅行。CIAのダミー団体と見られているMRA(道徳再武装運動)の世界大会へ出席することが目的だった。政治家としては岸信介もこの団体と結びついている。その3年後、中曽根は「ハーバード国際セミナー」に参加している。このセミナーの責任者はヘンリー・キッシンジャーだった。 原子力予算が通った翌年、1955年12月に原子力基本法など原子力3法が成立、翌年の4月には通産省工業技術院に原子力課が新設され、経団連は「原子力平和利用懇談会」を発足させた。日米原子力協定が結ばれたのは6月で、アメリカは原子炉と濃縮ウランを日本に提供することが決まった。 中曽根は両院原子力合同委員会の委員長を務め、1956年1月に原子力委員会が設置されると、正力松太郎が初代委員長に就任している。言うまでもなく、正力は読売新聞の社主で、日本テレビを創設した人物。この時点から、マスコミは原子力推進の宣伝装置としての役割を果たすことになった。 そして1957年5月、首相になって間もない岸信介は参議院で「たとえ核兵器と名がつくものであっても持ち得るということを憲法解釈」として持っていると答弁、1959年3月には参議院予算委員会で「防衛用小型核兵器」は合憲だと主張している。 1964年、中国が始めて核実験を実施すると、日本政府の内部で核武装を目指す動きが出てくる。当時の首相は岸信介の実弟、佐藤栄作だ。当時の米大統領、リンドン・ジョンソンはそうしたプランに反対したという。1967年には「動力炉・核燃料開発事業団(動燃)」が設立されているが、アメリカの情報機関、CIAはこの組織が核兵器開発に関係していると強く疑っていた。 ただ、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュによると、リチャード・ニクソン政権で補佐官を務めたキッシンジャーは日本の核武装を中国との交渉で「切り札」として使ったとも言われている。つまり、当時のアメリカ政府は日本の核武装をある程度、容認していた可能性が高い。 NHKが2010年10月に放送した「“核”を求めた日本」によると、佐藤政権の時代に政府内で核武装を検討するグループが形成され、西ドイツ政府に秘密協議を申し入れている。このグループは10年から15年の期間、つまり1970年代の後半から1980年代の前半に核武装を実現するというプランを立てていた。 核兵器を実用化するためには、核爆弾を作るだけでなく運搬手段も必要。ロケット技術の開発がこうした核武装計画に無関係だとは言えないだろう。 原爆の原料として考えられていたプルトニウムは日本原子力発電所の東海発電所で生産できると考えていた。この原子力発電所はGCR(黒鉛減速炭酸ガス冷却型原子炉)で、高純度のプルトニウムを年間100キログラム余り作れると見積もっていたという。高速炉の「もんじゅ」や「常陽」も核兵器製造システムに組み込まれていると疑われてきた。常陽の燃料を供給していたのが臨界事故を起こしたJCOだ。東海再処理工場の付属施設として建設されることになったリサイクル機器試験施設(RETF)も注目されている。現在、日本が核武装計画を放棄していることを示す証拠はない。 日本が原子力発電を放棄するということは、巨大な利権を手放すというだけでなく、核武装という一部支配層の「夢」が打ち砕かれるということでもある。核武装に否定的だった西ドイツ(現在はドイツ)が自然エネルギーへシフトし、核武装に憧れていた日本が原発に執着していることを偶然で片づけることはできない。
2011.04.13
改めて書くまでもないだろうが、福島第1原発の事故はINES(国際原子力事象評価尺度)で「レベル7」に相当すると経済産業省の原子力安全・保安院は4月12日にやっと認めたという。 多くの専門家(テレビには出てこないような人々)は早い段階で指摘していた話だが、同院はレベル4だ、5だと過小評価してきた。事故が発生した直後に毎時1万テラベクレルの放射性物質が数時間に渡って放出されたというので、この段階でレベル7に達していたということになる。この事実を東電も、原子力安全・保安院も、内閣も知っていたと考えるべきだろう。 福島第1原発から放出された放射性物質はチェルノブイリ原発の1割程度だと安全・保安院は主張しているようだが、3月下旬には違う数字がオーストリアで公表されている。福島で放出された放射性のセシウムはチェルノブイリ原発の20から60%(現在の推計によると、セシウム137は50%)であり、ヨード131は20%に達するとZAMG(気象地球力学中央研究所)は報告しているのだ。 トータルではどういう比率になるかわからないが、多くの国では今でも日本の政府や電力会社は事故を小さく見せようとしていると思っているかもしれない。 フランスやドイツなどのヨーロッパ諸国は自国民に避難するように勧告しているらしいが、アメリカ軍の関係者もかなり避難しているという。アメリカ大使館くらいなら、いざとなればヘリコプターなどを利用してすぐにでも逃げることができるだろう。
2011.04.12
エジプトの「革命第2幕」では、「民主化」とともに「パレスチナ」がキーワードになりそうだ。 チュニジアで始まり、エジプトに波及した民主化運動にはいくつかの要素がある。独裁体制に対する怒り、その独裁体制が私腹を肥やすために導入しつつあった「新自由主義経済」への反発、そして理不尽な弾圧で苦しんでいるパレスチナ人に対する連帯感である。エジプトの場合、ホスニ・ムバラク時代のエジプト政府はパレスチナ人に対するイスラエルの兵糧攻めに協力していた。エフライム・ハレビー元モサド長官も民主化運動とパレスチナ支援の動きがリンクしていると指摘している。 エジプトの支配層はムバラクを退場させ、「ムバラクなきムバラク体制」へ移行したいと思っていたように見えるが、この思惑通りに進んでいないことは、4月8日にタハリール広場を10万人以上が埋めた事実でも推測できる。その抗議行動を潰すために軍や治安当局が武力行使に出たのも危機感の表れだろう。政府を批判したブロガーを軍事法廷は懲役3年を言い渡したともいう。 バーレーン、サウジアラビア、あるいはイエメンなどはエジプトと似た構図があると思えるが、リビアやシリアの場合は違った側面を無視できない。勿論、ベースには民主化を求める思いはあるだろうが、特にリビアの場合は権力抗争の色彩が濃く、この実態が明らかになったことも反政府派の退潮に影響しているだろう。 何度か本コラムでも指摘しているように、リビアの反政府派にはアルカイダ系の勢力が加わり、「武装闘争」を展開している。エジプトの民主化運動に批判的だったネオコン(アメリカの親イスラエル派)がリビアへの軍事介入に積極的な理由もこの辺にあるだろう。
2011.04.12
ルイス・ポサダ・カリレスという「テロリスト」がアメリカで無罪放免になった。この人物はキューバ出身の反革命派。CIAの訓練を受けて1961年のキューバ侵攻作戦に参加し、後にキューバの旅客機を爆破したことでも知られている。 1976年10月6日にキューバの旅客機、CU-455便がバルバドス沖で爆破されて73名が犠牲になっている。この旅客機はガイアナからキューバへ向かっていたのだが、途中、トリニダード、バルバドス、そしてキングストンに立ち寄ることになっていた。バルバドスを飛び立って9分後、高度約5500メートルのところで爆破されたのである。 爆破から数時間後、トリニダード当局はふたりのベネズエラ人を爆破容疑で逮捕している。ふたりはトリニダードで爆弾を仕掛けた鞄を機内に持ち込み、バルバドスで下りてトリニダードへ戻っていた。 取り調べの中で浮かび上がったのがポサダ・カリレスとオルランド・ボッシュ。工作はポサダらの命令だったとふたりのベネズエラ人は証言したのだ。10月14日にポサダらはベネズエラのカラカスで逮捕され、その際に武器、爆発物、無線機も押収されている。ポサダが住んでいたベネズエラのアパートでは、キューバ航空の時刻表などが見つかった。この爆破計画をポサダはCIAに知らせていたとされているが、勿論、キューバ政府にこの情報は知らされていない。 ポサダとボッシュはベネズエラで起訴されるのだが、1985年に脱獄し、すぐにCIAのフェリックス・ロドリゲスと会っている。ロドリゲスは当時の副大統領、ジョージ・H・W・ブッシュと親しく、コントラを支援する秘密工作で重要な役割を果たしていた。ポサダもコントラ支援工作に加わっている。 もうひとつ、ポサダが注目されている理由がある。彼が持っていたワシントンDCの地図には、1976年9月に暗殺されたチリの元外相、オルランド・レテリエルの移動経路が書き込まれていたのだ。この暗殺をCIAも事前に知っていた疑いがるのだが、そのときの長官はジョージ・H・W・ブッシュ。レテリエル暗殺にポサダらが関係していた可能性は高いと考えられている。 ポサダらの活動は1990年代に入っても続く。例えば1994年にはキューバのフィデル・カストロの暗殺を企て、94年と95年にはホンジュラスで軍の右翼将校に協力して十数回の爆弾事件を起こし、97年にはキューバのホテルやレストラン、11カ所を爆破している。 1994年とは別のカストロ暗殺計画をパナマ当局が暴き、2000年11月にポサダは逮捕された。2004年4月に8年から9年の懲役が言い渡されたのだが、特赦となっている。その翌年の3月にはメキシコ経由でアメリカへ不法入国し、アメリカへ「亡命」を求めた。 当然、ベネズエラ政府はアメリカ政府に対し、ポサダの引き渡しを求めるが、アメリカ側は拒否してテキサス州の刑務所に収監して引き渡しには応じなかった。そして今回、無罪放免になったわけである。 ところで、2006年3月にジョージ・W・ブッシュ大統領(当時)は演説の中でこんなことを言っている。「テロリストを匿い、食事を与え、寝床を提供する人間はテロリストと同じだ。」やはり、アメリカは「テロ国家」だった。
2011.04.12
日本経団連の米倉弘昌会長が何を言おうと驚かないが、無視するわけにはいかない。4月11日に行われた記者会見で、福島第1原発の事故で国が東京電力を支援すべきだと米倉会長は主張したのである。国民にカネを出せというわけだ。 電力会社だけでなく、日本には原子力利権で稼いできた企業は多く、官僚や政治家はそのお零れにあずかってきた。そうした利権システムを築き上げる過程でコストの実態を国民に知らせず、不都合なデータを改竄し、事故を隠し、現場では労働者を大量被曝させてきた。個人的な利益のために国民を危険にさらしてきたわけだが、困ったらカネをよこせというわけだ。この無神経さには恐れ入る。 本来なら、賠償は東京電力をはじめとする法人だけでなく、各社の歴代経営者、あるいは原子力行政を推進してきた政治家や官僚も個人として賠償させなければならない。東電の免責など言語道断。それだけ犯罪的なことを行ってきたのである。とりあえず、法人税率を大幅アップさせ、富裕層への課税を強化しなければならない。インチキ情報を流して国民を騙したマスコミ、原発に反対する人々を弾圧してきた警察、検察、そして裁判所の責任も問わなければならない。
2011.04.11
エジプトで「革命第2幕」が始まった可能性がある。4月8日にタハリール広場を10万人以上が埋めたが、10日になっても1000名以上が広場を占拠している。軍や治安当局の部隊が9日午前三時頃、広場にいた数千人を排除するために襲撃、その際にひとり、あるいはふたりが射殺されたという情報もある。それでも広場を完全に制圧することはできなかったわけだ。 デモ隊が第1に求めているのは、ホスニ・ムバラク前大統領や取り巻きの起訴。そのムバラクの弁明を10日にアルアラビヤが放送している。9日に録音されたものだという。検察当局はムバラクの取り調べを行っているというが、民衆側から見ると遅々として進んでいない。 力で民主化運動を押さえ込もうとすれば、国内の混乱を招き、経済活動が停滞することは避けられない。「財閥化」しているエジプト軍としては好ましい展開ではない。後ろ盾のアメリカもリビアとの兼ね合いがあり、運動の鎮圧に協力しにくい状況だが、ムバラクに厳しく対処すれば国内の支配層内で混乱が起こり、アメリカやイスラエルとの関係も悪化する可能性がある。現在、エジプトを介してリビアの反政府派へ武器が渡っているのだが、エジプト情勢によってはリビアへも影響が波及するかもしれない。
2011.04.11
石原慎太郎は原発を東京湾に作っても良いと発言してきた。最初は2000年4月に開かれた日本原子力産業会議(現日本原子力産業協会)の年次大会。「完璧な管理技術を前提とすれば、東京湾に立派な原子力発電所を作ってもよいと思っている」と講演している。「完璧な管理技術を前提」という条件をつけたところが小賢しい。「東京湾に立派な原子力発電所を作ってもよい」などと思っていないことは明らかだ。原子力産業会議、つまり「強者」に対するリップサービスということ。 それ以降も、記者会見で「適地があれば東京につくったっていい」、「東京湾に原子力発電所を造ってもいいというぐらい原子力発電所は安全だ」などと繰り返し、テレビ番組でも「本当に東京湾に原発をつくってもいいと、僕は思っている」と発言してきた。 実際に原発を東京に建設しようなどという話になるはずはないと見越しての原子力反対派(弱者)への挑発であり、原子力推進派(強者)へのおもねりにすぎない。本当に原発を東京湾に作って良いと思うなら、今回の選挙でもそう主張すべきだったし、議会に提案しなければならない。それは最低限の責任だ。 とは言っても、石原は無責任を絵に描いたような人物であり、石原的な人々は原子力について深く考えていない。原発の破滅的な事故だけでなく、放射性廃棄物の処理をどうするかも真剣に検討しているわけでなく、「原発賛成」という信仰を正当化するための理屈をひねり出そうと必死になっているだけのことだ。理屈の破綻は「信じなさい」ということで誤魔化している。 石原にしろ、その同調者にしろ、所詮は「原子力カルト」の信者にすぎない。彼らに「脱原発」を説くのは、狂信的なカルト信者に信仰を捨てろと説得するのと同じで難しい。そのことを近隣諸国や欧米の人々は実感し始めているだろう。
2011.04.11
福島第1原発の事故は多くのことを明らかにした。そのひとつは、報道機関が支配層、つまり大企業の経営者、有力政治家、官僚(キャリア組)のプロパガンダ機関にすぎないということを再確認させたことだろう。そのマスコミが「権威」として便利に使っている「旧帝大」の有名教授たちは「御用学者」と呼ばれるようになった。そして形成されたのが財政官学報の利権集団。ちなみに、原発事故で信頼度が急降下した経産省は原子力発電を強引に推進する一方、温室効果ガスの削減に強く反対してきたことを忘れてはならない。 勿論、原子力以外の問題、政治、経済、外交、軍事、科学、あらゆる分野でもこうした構図は存在している。例えば経済の場合、最大のスポンサーである自動車産業、特にトヨタのマイナス情報をマスコミが取り上げないのは有名な話であり、融資という切り札を持つ銀行に暗部に触れることもタブー。電力会社の場合、「国策」という背景が力の源泉だ。原発にはエネルギー問題だけでなく「核兵器」という要素もある。 福島第1原発の事故が続いている中で行われた今回の東京都知事選で、原発推進派の石原慎太郎が東京都知事選で勝利した。石原が勝った原因のひとつは、マスコミが石原にとって都合の悪い話には触れないということにある。 石原は多くの問題を抱えている。例えば、開発問題、築地移転問題、金融問題、あるいは教育のファシズム化等々。こうした問題に都民の多くは反応しなかった。将来、その責任が問われることになるだろう。「騙された」ですむ話ではない。 石原知事、おどおどした表情が特徴なのだが、その一方で罵詈雑言でも注目を浴びてきた。もっとも、相手が弱いと思えば嵩にかかって攻撃するのだが、相手が権力者なら口先だけで中身はともなっていない犬の遠吠え、つまり空威張りにすぎない。結局、日本に巣くう財政官学報の利権集団、あるいはアメリカの支配層に対する庶民の憤りを拡散させてきただけだ。 石原慎太郎は作家でもあるらしい。『太陽の季節』なる小説で1955年に「芥川賞」を受賞していると記録に残っている。作品の評価は人それぞれ、受賞自体にコメントはない。ただ、その時に選考委員のひとりだった佐藤春夫の評は次のようなものだった。「反倫理的なのは必ずも排撃はしないが、こういう風俗小説一般を文芸として最も低級なものと見ている上、この作者の鋭敏げな時代感覚もジャナリストや興行者の域を出ず、決して文学者のものではないと思ったし、またこの作品から作者の美的節度の欠如を見て最も嫌悪を禁じ得なかった。」としたうえ、「僕はまたしても小谷剛を世に送るのかとその経過を傍観しながらも、これに感心したとあっては恥しいから僕は選者でもこの当選には連帯責任は負わないよと念を押し宣言して置いた。」とまで言っている。 東京都民の多くは原発事故に無反応である。原発反対の声が高まっている世界の中で異質の世界だ。これも石原にとってはよかった。都民の多くは原発に賛成し、つまり自分たちの責任で破滅的な事態を招いたのだが、反省しているようには見えない。(例外的な人たちがいることは言うまでもないが。)これは日本の「文化」なのかもしれない。 ところで、堀田善衛は『上海にて』の中で、上海から佐世保へ引き上げるとき、日本では「リンゴの唄」なる歌謡曲が流行っていることを知り、「なんという情けない唄をうたって」と怒りをもって考えたという。当時、戒厳令状態の上海で「起て、奴隷になりたくない人々よ、我等の血肉をもって新しい長城を築こう」というような歌がうたわれていたようで、それとのギャップを感じてのことらしい。 また、1945年12月には占領地から兵士を乗せた船が浦賀港へ入港しているが、そうした兵士を歓迎する特別番組「外地引揚同胞激励の午後」をNHKは企画、その時、「星月夜」を元に作られた歌が「里の秋」だった。日本がなぜ戦争へ突入していったのかを当時の日本人が真剣に考えていたなら、こうした曲が流されることはなかっただろう。 竹中労によると、後にエルネスト・チェ・ゲバラはこんなことを言ったという。「ニッポンはすばらしい工業国だ。繁栄している。だが、この国の若ものたちの目には、理想に生命をかけて闘うものの光がない。」そうした若者が「おとな」になり、原発を日本中に作り、社会を破壊し、そして石原の4選を許したのだろう。残された希望は今の若者たち。
2011.04.10
日本では、アメリカのNRC(米原子力規制委員会)は50マイル(約80キロメートル)圏外へ退避するように勧告していたが、その見直しを検討しているのだという。勧告が実測の放射線量に基づくものではなく、2号機の核燃料が完全に損傷したとの想定に基づくものだったからだとしているのだが、エドワード・マーキー下院議員によると、2号機では溶融した燃料棒の一部が圧力容器から格納容器へ漏れ出ているかもしれないとNRCは疑っているようだ。 バブコック日立で原子炉の圧力容器を設計していた元エンジニアの田中三彦氏は3月26日、1号機で配管が損傷して冷却材喪失事故が起こり、圧力容器から格納容器へガスが噴出、燃料棒が空焚き状態になって損傷したのではないかと指摘している。また、京大原子炉実験所の小出裕章助教によると、この圧力容器内にある燃料棒の損傷は激しく、再臨界が断続的に起こっている可能性があるらしい。 バラク・オバマ政権とジョージ・W・ブッシュ政権には違いもあるが、同じ部分も少なくない。そのひとつが原子力発電の推進。利権構造の問題もあるだろうが、中東/北アフリカを支配してきた仕組みが揺らぐ中、この地域の石油に対する依存度を下げたいという思惑も働いているだろう。そこで、アメリカ国民の中で原発に反対する比率をできるだけ小さく押さえたいはずだ。この点、日本の原子力利権集団と思惑が一致している。日米の原子力人脈が一致団結して情報を統制しようとしているようだ。
2011.04.09
エジプトで民主化運動が再び熱気を帯びてきた。ホスニ・ムバラク前大統領が起訴されていないことも一因。4月8日の昼にはタハリール広場を10万人以上が埋め、数千人が夜間も広場を立ち去らなかったようだが、9日の午前3時ころに数百名の軍や治安当局の部隊が8台の装甲車をともなって現れ、上空に向かって威嚇射撃、デモ隊を棍棒で殴打したと証言する人もいる。その後、治安部隊は催涙弾を発射、ひとりが殺されたという目撃談もある。 ムバラクが退陣した後、治安当局は民主化運動に参加した人々を逮捕、拷問していると言われている。運動ではTwitterやFacebook、あるいは携帯電話が利用されていたが、当局はこうした通信手段を監視するためのシステムを持っていた。このシステムで入手した情報を反政府派狩りに利用している可能性もあるのだが、こうした弾圧とエジプトの人々は戦っている。 リビアの反政府派へ武器を提供しているエジプト政府の市民弾圧に対し、アメリカ、イギリス、あるいはフランスの政府はどう対処するつもりだろうか?
2011.04.09
リビアへの地上軍派遣に消極的なロバート・ゲーツ米国防長官だが、その一方でイラクへのアメリカ軍派遣を延長する可能性を口にしている。昨年の秋頃、アメリカ政府は「完全撤退」の期限、つまり今年12月をすぎても1万5000名から2万名の正規軍、さらに相当数の特殊部隊をイラクに残す意志のあることをイラク側へ伝えていたが、最近では占領継続の希望は当時よりも強くなっているようだ。 今年に入り、エジプトで親アメリカ/親イスラエルのホスニ・ムバラク政権が倒れ、サウジアラビアをはじめとする親アメリカ/親イスラエルの独裁産油国、あるいはイエメンでも民主化要求が高まっている。 とにかく、民主化はアメリカやイスラエルの支配層にとって悪夢。実際のところ、アメリカは中東だけでなく、ラテン・アメリカやアフリカの国々でも民主化の芽を暴力的に摘み、独裁体制を樹立してきた。 西ヨーロッパでは「左翼」を潰すため、秘密部隊のネットワークを張り巡らせ、イタリアでは「偽装テロ」を実行、フランスではシャルル・ド・ゴール暗殺を試みたことも明らかにされている。(拙著『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』でも触れている) エジプトのEGIS(エジプト総合情報局)で長官を務めていたオマール・スレイマンはアメリカで特殊工作の訓練を受けている親米派だが、その一方でイスラエルとも親密な関係にあり、EGISとイスラエル国防省を結ぶホットラインで連日、連絡を取り合っていたという。そのスレイマンも失脚した。アメリカ支配層は2008年に反ムバラク派の「4月6日運動」のリーダーと接触しているのだが、その人脈を使ってエジプトに影響力を行使できているのかどうかは不明だ。 かつて、イスラエルはトルコやヨルダンと友好関係にあり、イラクのサダム・フセイン体制を潰せば「親イスラエル帯」でシリアとイランを分断できると考え、フセインの排除に熱心だった。WikiLeaksの公表したアメリカの外交文書によって、バーレーンもモサド(イスラエルの情報機関)と友好的な関係にあることが確認された。そのバーレーンでは現在、サウジアラビアを中心とする産油国の軍隊が入り、軍事力を使って民主化運動を弾圧している。 アメリカとイスラエルの中東支配構造が崩れ始めている。新たな支配構造を築き上げるため、軍事介入と民主化運動の弾圧をアメリカは繰り広げているが、こうした姿勢はさらに反米感情を高める。まさに泥沼状態だ。
2011.04.09
福島第1原発1号機の格納容器に窒素ガスを注入しているという。枝野幸男官房長官によると、「高くない水素爆発の可能性、それを限りなくゼロに近づけることを検討していただいた上」でのことだというのだが、ニューヨーク・タイムズ紙の報道を読むとそれほど楽観できる状況ではないようだ。 同紙によると、2号機では炉心が圧力容器から格納容器に漏れ出ている可能性があると、アメリカのNRC(原子力規制委員会)は懸念しているらしい。炉心の損傷が最もひどい1号機で格納容器に漏れ出ているかもしれない。ならば、水素爆発で格納容器が吹き飛ぶ可能性があり、早急に窒素ガスを注入する必要があったとも考えられる。 圧力容器の本体が融けて穴が空かなくても、炉心が格納容器に漏れ出る可能性はある。圧力容器の底には制御棒などを差し込むために多数の穴が開けられているため、接合部分に問題が生じれば、そこから炉心が融け出ることもありえるようだ。 東京電力は地震直後に水位が下がった事実は認めたものの、炉内の圧力を減らしたら上昇に転じたので、地震で損傷した可能性は低いとしている。 それに対し、少なくと1号機では配管が損傷して冷却材喪失事故が起こったのではないかと田中三彦氏は3月26日に指摘している。その根拠とされたのは圧力の変化。つまり、地震から間もなく、圧力容器内部の圧力が約7メガパスカル(通常運転時)から約0.8メガパスカルへ急減、格納容器は0.1メガパスカル弱(通常運転時)から約0.7メガパスカルへ急増している。つまり、圧力容器から格納容器へガスが噴出していることをデータは示している。そして水位が低下し、炉心が「空焚き」状態になった可能性が高い。 配管が損傷していたとなると、揺れが原因なわけで、事故の原因を「想定外の津波」に全て押しつけるというシナリオが成り立たなくなってしまう。そうなると、日本にある全ての原子力発電所が問題になるわけで、原子力利権派は認めたくない話だろう。(その前に格納容器が吹き飛ぶ恐れもあるのだが) しかし、NRCも田中氏と同じ結論に到達しているのかもしれない。配管の損傷、冷却材喪失、炉心溶融、そして格納容器へ漏れ出たという流れだ。本来なら、格納容器の圧力を高めることにはリスクがともなうわけで、圧力が高まれば放射性物質を含むガスを放出することになる。「高くない水素爆発の可能性、それを限りなくゼロに近づける」というようなことではないだろう。 日本への観光客が激減している?当然でしょう。
2011.04.08
日本社会を破壊してきた「神話」、あるいは「教義」のひとつは原子力発電所が安全だというものだった。この神話/教義は東日本地震で大きなダメージを受けたが、カルト教団と同じで、原子力利権集団は決して神話/教義を捨て去ろうとはしない。自分たちの支配的な立場が崩壊してしまうからだ。 そこで、神話/教義を検証するようなことはしない。神話/教義を前提とした話で誤魔化そうとする。原発の場合、破滅的な事故を避けることは不可能だという現実には目をつぶり、「より強固な原発」を作れば問題ないかのように主張するわけだ。 大企業を儲けさせ、「国際競争力」を強めれば日本社会が繁栄するという神話/教義も日本人の頭に叩き込まれてきた。そうした洗脳で重要な役割を果たしたのは、原発の「安全神話」と同じでマスコミ。 国際競争力という神話/教義に基づき、政府は庶民から教育や適切な医療を受ける権利を奪い、劣悪で不安定な条件で働くことを強制し、社会保障などは「贅沢」だとして取り上げ、様々な口実で負担を押しつけるる一方、大企業や富裕層の負担を軽減してきた。環境規制を廃止させるため、大企業/富裕層が多額の工作資金を投入していることも確かである。 その象徴的な存在がコーク(日本ではコッホなどと書かれることもあるが、コークが原語に近い表現)兄弟。彼らの財団は気候変動否定論を広めることにも熱心で、否定論を主張しそうな学者に研究費を出している。そうした学者のひとりがカリフォルニア大学バークレー校のリチャード・ミュラー教授なのだが、コークたちの思惑に反する結論に到達しているようだ。コークたちの「証言偽造」にほころびが見える。 それはともかく、富を集中させれば「カネ余り」と貧困の深刻化が進む。だぶついた資金は社会に還流されることなく、投機資金として世界を徘徊し、人々の生活を破壊していく。投機とは所詮、博奕にすぎないわけで、早晩行き詰まり、破綻する。そうなったときには貧困化した庶民からさらに富を搾り取るだけのことである。 世界的に見れば、こんな神話/教義はとうの昔に破綻しているのだが、日本ではまだ影響力を保持している。その大きな原因は、日本の「宗主国」的な存在であるアメリカがこの神話/教義を維持しているからだろう。その実態は少なからぬ人によって指摘されてきたが、バニティー・フェア誌の5月号にも、そうしたアメリカの実態を批判する論文が掲載されている。 そのアメリカでは1%の人間が全年間収入の4分の1を手にし、富の約4割を支配しているのだという。そうした資金の一部は政界へ流れ、政治家をコントロールするために使われる。そして作り出される「社会」では、公平さ、機会の平等、共同体の連帯感などは失われてしまう。1%の人間にとっては心地良い環境だ。 2001年にノーベル経済学賞(アルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン国立銀行賞)を受賞したジョセフ・スティグリッツに言わせると、こうしたアメリカの状態は「1%の、1%による、1%のための」システムということになる。
2011.04.08
予想されていたことではあるが、リビア上空における「飛行禁止空域」の設定は地上軍の派遣へとつながろうとしている。 NATO軍による反政府派への誤爆が続く中、米陸軍のカーター・ハム大将(米アフリカ軍司令官)は7日、リビアへ地上軍を派遣する必要性について言及した。内乱が膠着状態にある中、イスラム世界の反発を考慮しても地上部隊を投入しなければならなくなるかもしれないということだ。 こうした展開になることは、飛行禁止空域を設定する際に見通されていた。そうしたこともあって、ロバート・ゲーツ国防長官は消極的な姿勢を見せていたわけだろう。おそらく、軍事介入に積極的だったネオコン(親イスラエル派)もこうなると予想していた。 もっとも、すでにアメリカやイギリスは情報機関員だけでなく、特殊部隊のメンバーもリビア国内に潜入させ、秘密裏に工作を実行している。反政府派への武器供給も第三国を介して実行しているようだ。サウジアラビアは不明だが、エジプトはすでに武器を反政府派へ提供を提供しているようだ。 リビアの反政府派の主要勢力のひとつはアルカイダ系。1980年代のアフガニスタンと同じようになってきた。
2011.04.08
昨年1月、ベネズエラのウーゴ・チャベス大統領はアメリカと地震との関係について語っている。地震エネルギーのたまっている地域で「引き金」を引き、地震を誘発しているということのようだ。根拠が薄弱で、触れるべきかどうか迷っていたのだが、事実だけを伝えることにした。 チャベスの発言はハイチで起こった地震を受けて飛び出した。この地震はマグニチュード7.0なので「巨大」とは言えないのだが、約31万6000人が犠牲になっているというので、被害は大きかった。チャベスの言わせると、この地震は練習にすぎず、本当のターゲットはイランだという。インターネット上では3月の「東日本震災」も怪しいという話が流れていたようだが、この件に関してコメントするだけの情報はない。 チャベスの話が気になっていた理由は、1980年代前半に情報機関員の間で「地震兵器」が噂になっていたからである。地震学者や地質学者からは一笑に付されていたが、いつ地震が起こっても不思議でない場所で引き金を引く程度のことはできるのでは、と思った記憶がある。 勿論、この話は真偽不明。ちょっとした「世間話」ということで書いてみただけなので、軽く受け流してもらえるとありがたい。
2011.04.07
4月6日、スーダンで自動車が空爆され、乗っていたふたりが殺された。タイム誌などによると、攻撃したのはイスラエル。領空を侵犯しただけでなく人を殺しているわけで、主権国家に対する戦争行為、あるいは「テロ行為」と言わなければならない。国連はどのような「制裁」を行えるのか、とくと拝見。これを黙認するようなら、国連は侵略や虐殺を非難することができなくなる。
2011.04.07
相変わらず、日本経団連の米倉弘昌会長は原子力発電に執着している。ウォール・ストリート・ジャーナル(日本版)は4月6日付けで米倉会長に対するインタビューを掲載しているのだが、その中で彼は「原発の今の問題がどういうことで生じたのか、徹底的に解明して、再発防止の手を打っていくべき」だと発言、原発政策を継続する意志を表明した。英語版をみると、脱原発を嘲笑していたという。 米倉会長は原発を推進する口実として「二酸化炭素排出量」の問題を持ち出しているのだが、原発はエネルギーを大量に使うわけで、削減に役立たない。昨年12月にカンクンで開かれた国連気候変動会議(COP16)の初日、日本政府は「いかなる条件、状況下でも京都議定書の第2約束期間の下で目標を書き込むことは絶対合意しない」と表明している。つまり、日本経団連は原発の推進と石油の使用、両方を望んでいると言うべきなのである。 北海道新聞によると、米倉会長は3月16日に福島第1原発は「千年に1度の津波に耐えている」と主張し、「素晴らしい」と絶賛している。さらに、「原子力行政が曲がり角に来ているとは思っていない」とも発言したという。 言うまでもなく、この時点で諸外国政府は事態の深刻さを認識、自国民に日本からの避難を勧告している。圧力容器の圧力が急低下し、格納容器の圧力が急上昇したという事実だけでも大きな配管に重大な損傷があったと判断するのが自然であり、冷却水喪失事故を疑わなければならない。そんな時に福島第1原発を「素晴らしい」と発言する神経がわからない。 今回の事故で、原発の安全基準なるものがいかがわしさが白日の下にさらされた。事故の直接的な責任は東京電力にあるが、原子力政策を推進してきた政治家、官僚、大企業経営者、そうした政策を宣伝してきた学者、マスコミの責任も重い。 ところが、米倉会長はウォール・ストリート紙に対し、東電が「甘かったということは絶対にない。要するにあれは国の安全基準というのがあって、それに基づき設計されているはずだ。恐らく、それよりも何十倍の安全ファクターを入れてやっている。東電は全然、甘くはない。」と言い張っているのだが、国の責任は当然だが、東電が地震や津波に関する警告を無視してきたことも事実。米倉会長が能天気なコメントをしている間にも、事故の被害は拡大、1号機で再臨界が断続的に起こっている可能性を指摘する人もいる。
2011.04.07
放射線障害に詳しいわけではないので専門的な話はできないが、内部被曝と外部被曝の違いくらいは理解できる。福島第1原発の事故では放射性物質が放出されているわけで、当然のことながら内部被曝が問題になる。そうしたときに外部被曝の影響を論じても意味のないことは多くの人の共通認識だろう。にもかかわらず、2種類の被曝について、日本の政府やマスコミはいけしゃあしゃあと一緒くたに論じている。 イラクをはじめ、多くの国に劣化ウラン弾を撃ち込んでいるアメリカとしては、放射線障害の実態を隠しておきたいだろうが、そうした事情は日本の原子力利権派にとっても好都合であるに違いない。広島や長崎に落とされた原爆の被害状況についてもアメリカ政府は長い間隠していたことも思い出す。日本政府もアメリカ政府も放射性物質による環境汚染に鈍感である。 東京電力は4月4日から約1万1500トンの放射性廃液を太平洋へ流したが、こうした廃液の処理が問題になることは、かなり前から指摘されていた。そうした汚染水を運び出すため、タンカーなり艀なりを用意すべきだと主張していた人は少なくなかった。にもかかわらず、電力会社も政府も手を打っていなかったということは、はなから放射性廃液を海に垂れ流すつもりだったと思われても仕方がない。 日本はおろか、世界を放射能で汚染する可能性がある原発を地震と津波の国に乱立させてきた原子力利権派には刑事責任だけでなく、民事的な責任も課せられて当然だ。関係企業の歴代経営者だけでなく、原発を推進してきた政治家、官僚、学者、そしてマスコミ幹部たちには損害を補償する義務がある。 こうした人々の中には有り余る資産を国外に隠している人もいるだろう。国内外の資産を凍結する準備を始めるべきである。中小企業の場合、通常のビジネスで破産しても、銀行は私有財産を含めて身ぐるみ剥いでいくのだ。
2011.04.06
バラク・オバマ米政権はリビアの内戦にのめりこみつつある。早い段階からネオコン(親イスラエル派)はリビアへの軍事介入に積極的で、ジョン・マケイン米下院議員やジョセフ・リーバーマン米上院議員はリビアの反政府勢力へ武器を供与し、飛行禁止空域を作れとアメリカ政府に要求していたわけだが、オバマ大統領はそうした要求を実現しようとしている。 4月4日には2001年の世界貿易センターへの航空機の突入やペンタゴンに対する攻撃、一般に「9/11」、日本では「同時多発テロ」と呼ばれている出来事の容疑者とされているハリド・シェイク・モハメドを一般法廷でなく、グアンタナモ刑務所で軍事法廷にかけると米司法省は発表しているが、これもネオコンへの屈服と見られている。事件に関する情報が外部へ漏れないようにしたいという思惑が働いていると考える人は少なくない。 ホワイトハウスでこうしたネオコン流の政策を推進している人物がデニス・ロス。パレスチナ人が国連を利用して一方的に独立を宣言することに反対すると言明したことは本コラムでも書いた通り。 軍事介入正当化するため、手をこまねいているとリビアは血の海になるとネオコンは主張してきた。ムアンマル・アルカダフィ政権が70万人近いリビア人を虐殺するかもしれないというわけだが、その根拠は示されていない。オバマ政権内で同調していたのはロスくらいだったという。そのロスの主張が通った形だ。 ネオコンと緊密な関係にあるイスラエルでは、このところ「民族浄化」の動きが活発化している。パレスチナ人居住地域を壁で囲って収容所化を進めて兵糧攻めを続ける一方、軍事侵攻で住居や諸施設を破壊、住民を虐殺してきたのだが、昨年10月には「非ユダヤ系住民」に対して「ユダヤ人国家」への忠誠を誓わせる法律を作成、今年3月には「イスラエルの主権を害する」と認定された人間から市民権を剥奪できる新しい「市民法」を議会が承認している。こうした「民族浄化政策」の背景には、オバマ大統領のイスラエルへの擦り寄りがあるのだろう。 本コラムでは何度も指摘しているが、リビアの反政府派にはアルカイダ系の武装集団が参加、アルカダフィを排除しても問題は解決しない。アルカダフィ政権と反政府派の戦いが続くにしろ、アルカダフィが排除されるにしろ、軍事力で解決しようとするならば、内乱は泥沼化しそうだ。
2011.04.06
バラク・オバマ政権で中東政策のアドバイザーを務めているデニス・ロスは4月4日、シオニスト団体のADL(名誉毀損防止同盟)で、パレスチナ人が国連を利用して一方的に独立を宣言することに反対すると言明した。イスラエルは1948年5月に建国されて以来、パレスチナ人国家を認めようとはしてこなかったわけで、ロスの発言はパレスチナ人国家をアメリカ政府は認めないと宣言したことに等しい。 このロスは、筋金入りの親イスラエル派で、イランを攻撃するべきだと主張してきた人物。つまり、彼はネオコンに分類できる。 政治の世界に入ったのはジミー・カーター政権の時代で、国防副次官補だったポール・ウォルフォウィッツの下にいた。ロナルド・レーガン政権では国務省や国防総省、ジョージ・H・W・ブッシュ政権では国防総省、そしてビル・クリントン政権では中東特使として活動、オバマ政権の中東政策にも大きな影響力を及ぼしている。 言うまでもなく、イスラエルが存在している地域にはアラブ系の人々が生活していた。そのアラブ系住民を虐殺し、恐怖で追い出すことからイスラエルの歴史は始まる。パレスチナ難民の帰還を認めるべきだと考えていた国連調整官のフォルケ・ベルナドッテ伯を1948年9月に暗殺、67年6月には軍事力を用いて領土を拡大した。その後も兵糧攻めや軍事侵攻による住居/施設の破壊と虐殺などにより、ガザ地区やヨルダン川西岸に住むパレスチナ人を苦しめている。 1980年代から徐々にイスラエルの残虐行為を批判する声がヨーロッパでも強まっているのだが、支配層の世界では親イスラエル派の力はまだ強く、オバマ大統領もコントロールできていない。リビア攻撃に関しても、結局は親イスラエル派が求めるように軍事介入することになった。 大統領再選のため、オバマ大統領は親イスラエル派の資金をあてにしているとも言われているが、その結果、オバマ自身だけでなくアメリカの信頼度はさらに低下している。中東/北アフリカの民主化が進めば、アメリカに対する不満が爆発する可能性もあり、どうしても親米独裁体制は維持したいことだろう。
2011.04.05
原子力発電には大きなリスクがともなう。そうした危険な存在を受け入れている市町村は「全国原子力発電所在市町村協議会(全原協)」なる団体を設立している。その全原協の河瀬一治会長、井戸川克隆副会長、山口冶太郎副会長らは4月4日、政府や与党の幹部に対して「緊急要望書」を手渡し、原子力政策については「ぶれないでほしい」と要求したという。原発廃止に反対するというわけだ。 また同日、三村申吾青森県知事も定例記者会見で全原協と同じ趣旨の発言をしている。日本政府を盲目的に信じているのか、あるいはカネに目がくらんでいるのか、彼らの心の中はわからないが。 全原協にしろ、青森県知事にしろ、世界の動きから見ると異様だ。原発事故は発電所周辺の市町村だけでなく、日本という国、大事故になれば地球規模の汚染が問題になる。福島第一原発の事故で避難している人々、全原協の会員/準会員になっている市町村の住民は被害者であると同時に加害者でもあることを忘れるべきではない。【全国原子力発電所所在市町村協議会】(2011年1月1日現在)《会員》会長敦賀市長:河瀬 一治(福井県)副会長双葉町長:井戸川 克隆(福島県)東海村長:村上 達也(茨城県)美浜町長:山口 冶太郎(福井県)薩摩川内市長:岩切 秀雄(鹿児島県)理事泊村長:牧野 浩臣(北海道)東通村長:越善 靖夫(青森県)女川町長:安住 宣孝(宮城県)御前崎市長:石原 茂雄(静岡県)志賀町長:小泉 勝(石川県)松江市長:松浦 正敬(島根県)伊方町長:山下 和彦(愛媛県)大間町長:金澤 満春(青森県)石巻市長:亀山 紘(宮城県)南相馬市長:桜井 勝延(福島県)浪江町長:馬場 有(福島県)富岡町長:遠藤 勝也(福島県)楢葉町長:草野 孝(福島県)刈羽村長:品田 宏夫(新潟県)おおい町長:時岡 忍(福井県)高浜町長:野瀬 豊(福井県)監事大熊町長:渡辺 利綱(福島県)玄海町長:岸本 英雄(佐賀県)《準会員》神恵内村長:高橋 昌幸(北海道)六ヶ所村長:古川 健治(青森県)共和町長:山本 栄二(北海道)長浜市長:藤井 勇治(滋賀県)岩内町長:上岡雄司(北海道)高島市長:西川 喜代治(滋賀県)むつ市長:宮下 順一郎(青森県)
2011.04.05
今から43年前、つまり1968年の4月4日にマーチン・ルーサー・キングが暗殺された。言うまでもなくキングは人種差別に立ち向かった公民権運動の指導者だが、貧困や戦争という問題に取り組んでいたことでも知られている。当時はベトナム戦争の最中だったが、キングはこの戦争に反対し、抗議行動の先頭に立っていた。 軍需産業は勿論、その他の大企業にとって戦争はカネ儲けのチャンスである。第1次世界大戦のとき、帝政ロシアの支配層が分裂した理由のひとつはここにある。つまり、農民を必要とする地主階級は戦争を好ましく思っていなかったが、資本家階級は願ってもないことだったのである。 ベトナム戦争で有色人種の若者が最前線に送り込まれていたようだが、その一方で資本家など支配階級の子供たちには戦場へ行かずにすむ抜け道が用意されていた。「志願制」になった現在、アフガニスタンやイラクで殺人の道具にされている兵士の多くは低所得層の出身者である。戦争は人種差別や貧困問題と密接な関係にある。 現在、日本の支配層は富を独占するために不公正な仕組みを築きつつあるが、そうした日本の支配層が手本にしているアメリカの貧困問題も深刻である。ここにきて労働者の権利を奪う動きも活発化してきた。そうした動きの最前線にいるのがティー・パーティー。 一般に「草の根保守主義」と表現されている勢力だが、その実態は巨大資本の別働隊にすぎない。富裕層は自分たちに対する庶民の反感を巧妙に利用し、自分たちにとって都合の良いカネ儲けの仕組みを作り上げようとしているとも言える。アメリカのウィスコンシン州で行われている労働者の権利剥奪もそうした流れでの出来事。 そのウィスコンシン州のスコット・ウォーカー知事が大富豪のコーク兄弟をスポンサーにしていることは本コラムでもすでに指摘しているが、そのウォーカー知事、今度はウィスコンシン建築協会のロビーストで、知事への大口寄付者でもあるデリー・デシャンの息子、ブライアンに年収8万1500ドルという仕事を提供した。このブライアンは20代の半ばで、大学は中退、仕事の経験もほとんどないという。庶民の所得は多すぎると考えているウォーカー知事だが、仲間には気前が良い。
2011.04.05
全58件 (58件中 1-50件目)