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シリアの要衝、アレッポの北西部で侵略軍が化学兵器を使ったと伝えられている。この戦闘集団は2015年に登場、ジェイシュ・アル・ファテ(征服軍)というタグが付けられている。アル・カイダ系のアル・ヌスラを含む統合司令部のような存在で、サウジアラビアやトルコから支援を受けているとされている。アメリカ政府が言うところの「穏健派」で、司令部があるのはイドリブだ。児童22名と教師6名が攻撃で死亡したとUNICEFのアンソニー・レイク事務局長が10月26日に主張した学校のある場所だ。 西側ではロシア軍やシリア軍の空爆で学校が破壊されたとされているが、ロシアのビタリー・チュルキン国連大使は西側の主張を否定、10月18日からロシアやシリアの航空機はイドリブから10キロメートル以内の空域を飛行していないとしている。 アレッポでも侵略軍によって住民が殺されているとしてロシア軍はウラジミル・プーチン大統領に対して空爆の再開を求めているが、その時ではないとして認めていないと伝えられている。これまでの流れを考えると、ロシア軍が空爆を再開していたなら、西側ではアレッポで多くの住民が犠牲になっていると大々的に「報道」されたことだろう。 アメリカをはじめとする侵略勢力は2013年8月、リビアのような軍事介入をシリアでも行うため、化学兵器の使用を口実に使おうとした。ダマスカスの近くで実際に使われたのだが、攻撃の直後にロシアのビタリー・チュルキン国連大使は反シリア政府軍が支配しているドーマから2発のミサイルが発射され、ゴータに着弾したと国連で説明、その際に関連する文書や衛星写真が示されたとジャーナリストがフェースブックに書き込んでいる。 それだけでなく、メディアも化学兵器とサウジアラビアを結びつける記事を掲載、すぐに現地を調査したキリスト教の聖職者マザー・アグネス・マリアムはいくつかの疑問を明らかにしている。 例えば、攻撃のあった午前1時15分から3時頃(現地時間)には寝ている人が多かったはずだが、犠牲者がパジャマを着ていないのはなぜか、家で寝ていたなら誰かを特定することは容易なはずであるにもかかわらず明確になっていないのはなぜか、家族で寝ていたなら子どもだけが並べられているのは不自然ではないのか、親、特に母親はどこにいるのか、子どもたちの並べ方が不自然ではないか、同じ「遺体」が使い回されているのはなぜか、遺体をどこに埋葬したのかといった疑問を発している。(PDF) 12月になると、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュもこの問題に関する記事を発表、反政府軍はサリンの製造能力を持ち、実際に使った可能性があるとしている。また、国連の元兵器査察官のリチャード・ロイドとマサチューセッツ工科大学のセオドール・ポストル教授も化学兵器をシリア政府軍が発射したとするアメリカ政府の主張を否定する報告書を公表している。ミサイルの性能を考えると、科学的に成り立たないという。 また、トルコの国会議員エレン・エルデムらは捜査記録などに基づき、トルコ政府の責任を追及している。化学兵器の材料になる物質はトルコからシリアへ運び込まれ、そこでダーイッシュが調合して使ったというのだ。この事実を公表した後、エルデム議員らは起訴の脅しをかけられている。 この間、ロシア政府が主導する形でシリア軍は保有する化学兵器を全て処分しているので、化学兵器の使用をシリアに対する軍事介入の口実にすることは難しい。手先のアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)に高性能兵器を提供するなど、テコ入れすることが基本になるだろう。 ベンヤミン・ネタニヤフ首相の側近として知られるマイケル・オーレン駐米イスラエル大使は2013年9月にシリアのアサド体制よりアル・カイダの方がましだと語っているが、アメリカの副大統領が軍の元幹部はダーイッシュとアメリカの同盟国との関係を隠していない。 例えば2014年9月、空軍のトーマス・マッキナニー中将はアメリカがダーイッシュを作る手助けしたとテレビで語り、マーティン・デンプシー統合参謀本部議長(当時)はアラブの主要同盟国がダーイッシュに資金を提供していると議会で発言、10月にはジョー・バイデン米副大統領がハーバーバード大学で中東におけるアメリカの主要な同盟国がダーイッシュの背後にいると語った。2015年にはウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官もアメリカの友好国と同盟国がダーイッシュを作り上げたと述べている。 そして2015年8月、マイケル・フリン元DIA局長はアル・ジャジーラの番組へ出演した際、自分たちの任務は提出される情報の正確さをできるだけ高めることにあり、情報に基づく政策の決定はバラク・オバマ大統領が行うと指摘している。つまり、オバマ政権の決定がダーイッシュの勢力を拡大させたというわけだ。 2001年9月11日以降、アメリカ政府は「アル・カイダ」という傭兵リストを「テロリスト」にでっち上げて軍事侵略を正当化してきたが、その話は破綻した。嘘の上に嘘を塗り重ねてきたが、その嘘は支離滅裂になっている。それでも嘘を信じている風を装っている人は少なくないが。
2016.10.31
FBIのジェームズ・コミー長官は10月28日、ヒラリー・クリントンの電子メールに関する捜査を再開したと連邦議会に通知したと伝えられている。クリントンの側近中の側近として知られているフーマ・アベディンの元夫、アンソニー・ウィーナーが所有するパソコンから数万件に及ぶアベディン当ての電子メールが発見され、それが問題になっているという。電子メールはバックアップとして記録されていたようだ。 電子メールの問題でコミー長官は7月5日、クリントンが機密情報の取り扱いに関する法規に違反した可能性があることを認めたうえで、司法省に対して彼女の不起訴を勧告している。疑惑の存在を承知の上で不起訴の判断を出したのだが、その理由として証拠となる万2000件近い電子メールが削除されていたことが挙げられていた。証拠隠滅と言われても仕方がないだろう。 ただ、NSAの内部告発者であるウィリアム・ビニーも指摘しているように、NSAは全ての電子メールを記録しているので、クリントンが電子メールを消去しても、FBIがその気になれば、そうしたメールも入手できる。7月に起訴しないと決めたのは、疑惑を解明する意思がないからにほかならない。 FBIが捜査の再開を決めたのは、不起訴の判断を翻す何か重大な事実が浮上したからではないかとも推測されている。すでに民主党の内部で不公正な候補者選びが行われていたことが判明、最近では巨大金融機関を含む富裕層との緊密な関係を示すものも公表されているが、それ以上の事実が明らかになり、それを隠しきれないと判断した可能性がある。 現在、WikiLeaksがハッキングされた電子メールを公表し続けているほか、10月5日にチェコでハッキングの容疑者が逮捕されたことも関係しているかもしれない。本ブログでも書いたように、この逮捕の発表は18日。13日間、秘密にされていた。その理由も興味深いところだ。 容疑者逮捕の2日後、国家情報長官のジェームズ・クラッパーはWikiLeaksなどの背後にロシアの高官がいると主張、アメリカの選挙に介入しようとしていると批判しているのだが、その根拠は示さなかった。いわゆる「主流メディア」も人びとの目をロシアへ向けさせようと必死だ。 このタイミングだと、投票日までに何らかの動きがある可能性は小さいだろう。クリントンが当選した場合、次の大統領が問題になる。通常は副大統領だが、リチャード・ニクソンの場合、副大統領も排除されていた。フランクリン・ルーズベルトやジョン・F・ケネディの場合、政治力学で副大統領が決まっている。ちなみに、ハリー・トルーマンとリンドン・ジョンソンのスポンサーはエイブ・フェインバーグ。エドムンド・ド・ロスチャイルドと同じように、イスラエルの核兵器開発を資金面から支えていた富豪だ。
2016.10.30
シリア北部のイドリブにある学校が攻撃され、児童22名と教師6名が死亡したと10月26日にUNICEFのアンソニー・レイク事務局長は語った。アメリカ軍、あるいはアメリカ軍が主導する軍隊はユーゴスラビア、アフガニスタン、イラク、リビア、シリアを含む世界の国々で子どもを含む無数の人びとを虐殺してきたが、今回は「戦争犯罪」という表現を使うなど、特別扱いしているようだ。 攻撃された教室だとされる写真も流れているのだが、壁に大きな穴が空いているにもかかわらず、机や椅子は整然と並び、瓦礫も少ないように見え、本当に爆撃現場の写真なのかどうか疑問に感じる人もいるだろう。 この攻撃はロシアやシリアによる空爆だったと証拠を示すことなく主張しているのは、例によってロンドンにあるSOHR(シリア人権監視所)。この「団体」は2006年に創設された当時からひとりで運営され、その背後にはイギリスのMI5、アメリカのCIA、アメリカの情報機関と緊密な関係があり、NSAと密接な関係にあるブーズ・アレン・ハミルトン、またプロパガンダ機関として有名なラジオ・リバティが存在していると指摘されている。つまり米英支配層のプロパガンダ機関。 2011年3月にアメリカをはじめ、イスラエル、サウジアラビア、トルコなど外国のシリアのバシャール・アル・アサド政権を倒したい勢力が侵略戦争を始めた当初、ダニー・デイエムなるシリア系イギリス人が「アサド政権による弾圧」を発信、それを西側の有力メディアは垂れ流していたが、この仕組みは2012年3月に破綻する。「シリア軍の攻撃」を演出する様子を撮した部分を含む映像がインターネット上へ流出、西側メディアの伝えていた「報道」が嘘だということを多くの人が知ってしまったのだ。現在、SOHRと手を組んでいるのは「白ヘル」だ。 イドリブの攻撃に関し、ロシアのビタリー・チュルキン国連大使は西側の主張を否定している。国連の呼びかけに応じ、18日からロシアやシリアの航空機はイドリブから10キロメートル以内の空域を飛行していないというのだ。ロシア国防省は問題の日にアメリカのUAV(ドローン)のプレデターが飛行していたと主張、その事実は記録されているとしている。ロシアが上空から撮影した写真によると、学校の屋根に損傷は見られず、爆撃によるクレーターもないようだ。 1991年12月にソ連が消滅、翌年の2月の世界制覇プラン(ウォルフォウィッツ・ドクトリン)を作成してから、アメリカの支配層は有力メディアに偽情報を広めさせながら軍事侵略を繰り返してきた。ユーゴスラビアやアフガニスタンは人権、イラクは大量破壊兵器、ウクライナ、リビア、シリアは民主化だが、いずれも侵略を正当化するための口実に使われただけだ。 しかし、アメリカ支配層を中心とする勢力はシリアで躓いた。ロシアが立ちはだかっているのである。昨年9月30日にロシア軍が空爆を始めてから侵略勢力の手先であるアル・カイダ系武装勢力やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)は劣勢になり、要衝を奪われつつある。モスル奪還を演出、イラクから9000名程度を援軍としてシリアへ向かわせようとしているが、成功するかどうかは不明。 ここにきて西側が神経を尖らせているのは重航空巡洋艦(空母)クズネツォフ提督を中心とする艦隊。10月15日にセベロモルスクを出港、北海で3日間にわたる演習を実施した後、地中海のシリア沖へ向かっている。途中、北アフリカにあるスペインの港で給油することになっていたが、スペインは難色を示し始め、ロシアは給油を取り消した。アメリカ支配層の圧力があったということだろう。イドリブの攻撃を使った反ロシア宣伝とリンクしている可能性もある。 ちなみに、イドリブでの攻撃をいち早く批判したレイクの現在の肩書きはUNICEF事務局長だが、アメリカの外交官という経歴も持つ。元国務省政策企画本部長であり、元国家安全保障担当大統領補佐官なのだ。アメリカの国際戦略に深く関与してきたということである。
2016.10.28
中国は10月27日の0時0分から24時0分まで南シナ海、海南島の南で軍事演習を行うと発表した。21日にアメリカ海軍が駆逐艦のディケーターを南シナ海の西沙群島近くを示威航行させたことに対する中国側のメッセージだろう。 この海域では中国、フィリピン、ベトナムの間で領海をめぐる対立があり、軍事的な緊張が高まっていたが、フィリピンが中国との関係修復に乗り出し、22日には中国の艦隊がベトナムのカムラン湾を訪問するなど風向きが変わってきていた。 中国との間で領海をめぐる対立があり、軍事的な緊張の高まっているもうひとつの国は日本。尖閣諸島の領有権が問題になっているが、これは1970年代に田中角栄と周恩来との間で「棚上げ」になっていた。この問題を棚から引きずり下ろしたのが民主党の菅直人政権だ。 2010年9月、菅政権の時に海上保安庁は尖閣諸島付近で操業していた中国の漁船を取り締まり、漁船の船長を逮捕しているが、これは「日中漁業協定」を無視する行為だった。当然、海上保安庁は協定を熟知しているはずで、国土交通大臣だった前原誠司の意思がなければ不可能な行為だ。 この逮捕で日本と中国との関係は険悪化するが、2011年3月11日に東北の太平洋側で巨大地震が起こり、日本と中国の対立は緩和されそうになる。そうした雰囲気を消し去って関係悪化の方向へ戻したのが石原親子だ。 2011年12月に石原伸晃が「ハドソン研究所で講演、尖閣諸島を公的な管理下に置いて自衛隊を常駐させ、軍事予算を大きく増やすと発言、今年4月には石原知事が「ヘリテージ財団」主催のシンポジウムで尖閣諸島の魚釣島、北小島、南児島を東京都が買い取る意向を示したのだ。こうした言動の背後にはネオコンの大物、I・ルイス・リビーがいたと言われている。リビーはハドソン研究所の上級副所長だった。安倍晋三もハドソン研究所と関係が深いが、そのつながりを築いたのもリビー。石原親子と安倍首相を操っているのがネオコンのリビーだとするならば、ふたりと同じ流れの中で動いていた菅直人の背後にもネオコンがいることは想像できる。 ソ連が消滅してロシアを属国化することに成功、アメリカは唯一の超大国になったという認識で1992年2月に書き上げられたのが国防総省のDPG草案、いわゆるウォルフォウィッツ・ドクトリン。執筆のは国防総省のポール・ウォルフォウィッツ次官とリビー副次官補らだったようだ。 この前提から出発すれば東アジアを重視するのは必然だが、その東アジアでは今年6月にネオコンの戦略を揺るがす出来事が起こった。フィリピンの大統領がアメリカの傀儡だったベニグノ・アキノ3世からロドリゴ・ドゥテルテに交代、アメリカの属国という地位から決別することを宣言したのである。「口が悪い」という次元の話ではない。 ドゥテルテの親友でブレーキ役も務めているフィリピンの外相は9月15日、CSISでアメリカ支配層に対し、自分たちはいつまでも「ちびで茶色い仲間」であるわけにはいかないと公演後の対談で述べていた。しかも、実際に中国と話し合いを進めている。 その日、稲田朋美防衛相もCSISで講演していた。司会進行はマイケル・グリーンで、稲田はアメリカ海軍が行っている「航行の自由作戦」への支持を表明、両国は共同で「巡航訓練」などを南シナ海で実行すると語っている。 「航行の自由作戦」に加わるように聞こえるが、今年6月後半、中国の程永華駐日大使は南シナ海に関する要求で譲歩したり主権を放棄することは戦争が勃発する事態になってもありえないと日本側に警告したと言われ、稲田の発言は中国との戦争を厭わないという宣言と理解されても仕方がない。中国と戦争を始めるということは、ロシアとも戦争することを意味する。 日本政府は自らがアメリカ軍の作戦に加わるだけでなく、フィリピンも引き込もうとしている。8月には、日本政府がフィリピン政府と巡視船2隻の貸与に関して話し合いを進めているとする外務副報道官の大鷹正人の発言が伝えられた。その巡視船は全長90メートル程度とされていたので、おそらく「ひだ型巡視船」3隻のうち2隻を貸し出す意向だったのだろう。偵察機も貸したかったようだ。 しかし、今回はアメリカの駆逐艦1隻。ネオコンが思い描くようには進んでいないように見える。東アジアでネオコンに逆らっているドゥテルテ大統領をアメリカ支配層は排除したいだろう。これまでの手口を見ると、買収は無理そうなので、経済を混乱させて失脚させるか、イラクのようにアメリカ軍が軍事侵略するか、ウクライナのネオ・ナチと同じような国内勢力を使うか、リビアやシリアのように傭兵を投入するか、暗殺するといったところだろうが、人びとが注目している中で仕掛けるのは難しい。
2016.10.27
アメリカの支配システムが揺らいでいる。東アジアではフィリピンが自立を宣言、ベトナムやタイもアメリカの属国であることを拒否する動きを見せ、中東ではアメリカの「友好国」だったはずのトルコとイスラエルがロシアとの結びつきを強めようとしている。それに対して日本人の米好戦派に対する忠誠は揺らいでいない。そうした忠誠心が安倍晋三政権を支えている。 本ブログでは何度も書いてきたが、日本の体制は戦前も戦後も基本的に同じで、天皇制官僚国家。「国体」は護持されたと言えるだろう。そのつながりを象徴する人物が1932年6月から41年12月まで駐日大使を務めたジョセフ・グルー。そのいとこにあたるジェーンはジョン・ピアポント・モルガン・ジュニア、つまり巨大金融機関J・P・モルガンを率いていた人物の妻だ。 J・P・モルガンと最も近い関係にあった井上準之助は1932年2月に射殺されているものの、松岡洋右のように親しい日本人は残っていた。松岡の妹が結婚した佐藤松介の甥にあたる岸信介や佐藤栄作もグルーとはつながっていた。 1932年にアメリカでは大統領選挙があり、ニューディール派のフランクリン・ルーズベルトがウォール街に支援されていた現職のハーバート・フーバーを破って当選している。そこで、J・P・モルガンをはじめとするウォール街の金融資本がファシズム体制の樹立を目指してクーデターを計画した。この計画はスメドリー・バトラー少将の議会証言で明るみに出ている。 J・P・モルガンが日本を属国化する切っ掛けは1923年の関東大震災。復興資金の調達を引き受けたのがこの金融機関だった。「適者生存」、つまり弱者切り捨てを主張していた井上がこの金融機関と結びつくのは必然だったのかもしれない。 震災後、1925年に「治安維持法」が制定されて思想統制が本格化、27年には第1次山東出兵、翌年に第2次山東出兵と張作霖爆殺があった。1928年には日本共産党関係者らが大量に検挙されている。 そして1931年、関東軍参謀の石原莞爾中佐(当時)と板垣征四郎大佐(当時)が立案した計画に基づいてい満鉄の線路が爆破され、いわゆる満州事変が勃発、32年には日本の傀儡国家である満州国の建国が宣言された。この満州国について、アジアにコミュニズムが広がるのを食い止める防壁だとウォール街の大物弁護士で、ロックフェラー財団の理事長でもあったジョン・フォスター・ダレスは考えていたという。(Mainichi Daily News, September 14, 1971) ウォール街がイデオロギーだけで動くとは考え難く、満州国の建国を中国略奪の一環として捉えていたのではないだろうか? それはともかく、グルーと親しくしていた日本人は少なくない。その中には吉田茂や白州次郎も含まれ、外務大臣だったことから豊田貞次郎海軍大将も親交があった。豊田の親戚の中には日本開発銀行の頭取になる小林中がいる。 また、グルーを中心に活動していたアメリカ対日協議会(ジャパン・ロビー)を支えていたひとりであるウィリアム・ドレイパー(ディロン・リード銀行の出身で、陸軍次官を経験)は池田勇人と親しく、その池田の子分にあたる人物が福田赳夫。つまり、吉田、岸、池田、佐藤、福田はジャパン・ロビー、つまりウォール街に直結している首相だった。そして、岸の孫が安倍晋三だ。 現在、アメリカが進めている政策は1992年2月に作成されたウォルフォウィッツ・ドクトリン(DPG草案)に基づき、日本の軍事化はその流れの中でのこと。日本が進む方向を戦争へと導いてきた人物として、ジョセフ・ナイ、リチャード・アーミテージ、マイケル・グリーン、パトリック・クローニンといった名前が挙がっているが、安倍を操っているのはI・ルイス・リビーだとも言われている。リビーはウォルフォウィッツと一緒にドクトリンを書いたネオコン/シオニストの大物でもある。 日米関係は戦前も戦後も基本的に同じだ。戦後はニューディール派の影響で民主的な要素も加わったのだが、それは数十年かけて消されてきた。その間、民主主義を破壊する作業を大半の日本人は傍観、戦前以上のファシズム体制が迫っている。
2016.10.26
アメリカの選挙が公正に行われていないことは以前から指摘されていることだが、ここにきて新たな事実が明らかにされた。11月に予定されている大統領選の投票でフロリダ州やアリゾナ州を含む16州が使用する投票機械に疑惑の目が向けられているのだ。 この機械を製造しているのはイギリスのスマートマティック社だが、問題はその会長を務めるマーク・マロック-ブラウン。元国連職員なのは良いとして、オープン・ソサエティ基金の幹部なのだ。この基金は投機家のジョージ・ソロスが1979年に設立、各国の体制を巨大資本のカネ儲けに適した仕組みへ変える、つまり新自由主義化する「レジーム・チェンジ」を仕掛ける拠点である。 その主なターゲットはロシアを含む旧ソ連圏で、例えば2003年にジョージア(グルジア)で引き起こされた「バラ革命」、2004年から05年にかけてウクライナであった「オレンジ革命」の背後にもソロスはいたと言われている。 ウクライナの場合、「オレンジ革命」の実体が明らかになると反動があり、新自由主義路線からそれていく。そして引き起こされたのはネオ・ナチを前面に出したクーデター。2013年11月21日に約2000名がユーロマイダン(ユーロ広場、元の独立広場)に集まってビクトル・ヤヌコビッチ大統領に対する抗議活動を開始する。 反ヤヌコビッチ派は2月18日頃からチェーン、ナイフ、棍棒を手にしながら石や火炎瓶を投げるだけでなく、ブルドーザーなど大型車両を持ち出し、中にはピストルやライフルを撃つ人間も出始めた。 2014年2月21日にヤヌコビッチ大統領と反ヤヌコビッチ派は混乱の平和的な解決を実現するための協定に調印するのだが、現場でクーデターを指揮していたアメリカのビクトリア・ヌランド国務次官補がそうした方法を嫌っていることは2月4日の段階で明らかになっていた。 ヌランドがジェオフリー・パイアット駐ウクライナ米国大使と「ヤヌコビッチ後」の閣僚人事について電話で話し合っている音声がYouTubeへアップロードされたのだが、その中で「EUなんかくそくらえ(F*ck the EU)」と口にしている。なお、ヌランドが強く推していた人物がアルセニー・ヤツェニュク。実際にクーデター政権で首相を務めている。 また、欧州対外行動庁(EEAS)のヘルガ・シュミット事務次長と駐ウクライナEU大使のヤン・トムビンスキーとの会話もアップロードされ、その中でシュミット事務次長はアメリカからEUの対応が生ぬるいと言われていることを明らかにしている。 平和協定が結ばれた直後に狙撃が始まり、多くの死者が出始めた。西側では大統領側が銃撃していると宣伝していたが、憲法の規定を全く無視した形で大統領が解任された2日後、つまり25日にキエフ入りしたエストニアのウルマス・パエト外相はそれを否定する。反ヤヌコビッチ派で医師団のリーダー格だったオルガ・ボルゴメツなどからパエトは聞き取り調査、その結果を26日にEUのキャサリン・アシュトン外務安全保障政策上級代表(外交部門の責任者)へ電話で報告したが、それによるとスナイパーは反ヤヌコビッチ派の中にいるというものだった。 「全ての証拠が示していることは、スナイパーに殺された人びと、つまり警官や街に出ていた人たち双方、そうした人びとを同じスナイパーが殺している。同じ筆跡、同じ銃弾。実際に何が起こったかを新連合(暫定政権)が調査したがらないほど、本当に当惑させるものだ。スナイパーの背後にいるのはヤヌコビッチでなく、新連合の誰かだというきわめて強い理解がある。」としたうえで、「新連合はもはや信用できない」としている。 この報告によると、アメリカ政府が支援している勢力が狙撃している可能性が高いことになってしまい、クーデターに反対しなければならなくなる。アメリカの支配層から睨まれることは必至だ。そこで、アメリカ政府に忠実なアシュトンは「議会を機能させなければならない」と応じた。つまり、事実を隠して嘘を突き通せということだ。 こうしたクーデターの背後にいると考えられているソロスの電子メールも最近、外部に漏れた。その中で、ソロスが国務長官時代のヒラリー・クリントンに対してアルバニア情勢に対する対処の仕方をアドバイスしている。そのメールが書かれたのは2011年1月24日で、国務長官だったクリントンはソロスのアドバイスに従って動いたようだ。 こうしたことを考えると、スマートマティック社の問題は無視できない。
2016.10.25
アメリカ海軍は駆逐艦のディケーターを西沙群島の近くを10月21日に航行させた。この群島は南シナ海にあり、中国とベトナムが領有権をめぐって対立しているのだが、アメリカとの「離別」を宣言したフィリピンに続いてベトナムも中国との関係を修復する動きがある中でのことだ。その翌日、は中国の艦隊がベトナムのカムラン湾を訪問している。ただ、10月2日にはアメリカ海軍の駆逐艦ジョン・S・マケインと潜水母艦フランク・ケイブルもカムラン湾を訪れているので、フィリピンとは違ってアメリカからの「離脱」の姿勢は見せていない。 アメリカ政府はネオコン/シオニストをはじめとする好戦派の戦略に基づき、東シナ海の尖閣諸島(釣魚台群島)、南シナ海の西沙(パラセル)群島や南沙(スプラトリー)諸島での領土紛争を煽り、この地域を不安定化させようとしている。 ポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)がふたりの国防次官補、I・ルイス・リビーやザルメイ・ハリルザドといったネオコンと一緒にDPGの草案という形で世界制覇プラン、いわゆるウォルフォウィッツ・ドクトリンを作成したのは1992年2月。 1991年12月にソ連が消滅したことでアメリカは唯一の超大国になったと認識、潜在的なライバルを押さえ込もうというプランで、潜在的なライバルとして旧ソ連圏のほか、西ヨーロッパ、東アジア、南西アジアなどを想定している。 日本の支配層もアメリカのこうした流れに対応しようとしたのか、1992年にPKO法を公布/施行、カンボジア(92年)、モザンビーク(93年)、ルワンダ(94年)、ゴラン高原(96年)などへ自衛隊を派遣している。また、1994年には細川護煕政権の諮問機関「防衛問題懇談会」が「日本の安全保障と防衛力のあり方(樋口レポート)」というタイトルの報告書を発表した。 しかし、こうした対応にネオコンは満足せず、国防大学のスタッフだったマイケル・グリーンとパトリック・クローニンが動き始める。このふたりは日本が自立の道を歩き出そうとしていると主張、友人のカート・キャンベル国防次官補を説得してジョセフ・ナイ国防次官補たちに彼らの考えを売り込み、その結果として1995年にナイが「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」を発表した。 その後、1996年4月に橋本龍太郎首相はビル・クリントン大統領と会談、「日米安保共同宣言」が出されるのだが、これによって安保の目的が「極東における国際の平和及び安全」から「アジア太平洋地域の平和と安全」に拡大、97年にまとめられた「日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」は、「日本周辺地域における事態」で補給、輸送、警備、あるいは民間空港や港湾の米軍使用などを日本は担うことになった。 1999年に「周辺事態法」が成立するのだが、そこで考えられている「周辺事態」は、「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」を意味し、「周辺」は「地理的なものではない」という。 日本に対する直接的な武力攻撃がなくても、その恐れがあると誰かが判断すれば始動するということ。その「誰か」とは、言うまでもなくアメリカ政府だ。当時、防衛庁長官を務めていた野呂田芳成は、アメリカの判断を日本政府がノーと言うことは「実態上はないと思います」と答えている。 2000年になると、ナイはリチャード・L・アーミテージたちと「米国と日本-成熟したパートナーシップに向けて(通称、アーミテージ報告)」を作成、集団的自衛権の行使に踏み込み、武力行使を伴った軍事的支援を行うように求めている。 この報告書を作成したメンバーの中にはナイ、アーミテージ、キャンベル、グリーン、そしてウォルフォウィツが含まれ、「日本が集団的自衛権を禁じていることが両国の同盟協力を制約している。この禁止を解除すれば、より緊密かつ効果的な安保協力が見込まれる。」としている。(“INSS Special Report The United States and Japan: Advancing Toward a Mature Partnership”, 11 October 2000) この報告書が出された2000年には、ネオコン系シンクタンクPNACが1992年に作成されたDPGをベースにした報告書『米国防の再構築』を公表、その翌年にはニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンにある国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃され、アメリカは国内でファシズム化が進められ、国外では軍事侵略が本格化する。 そして2010年9月、菅直人政権の時に海上保安庁は「日中漁業協定」を無視する形で尖閣諸島付近で操業していた中国の漁船を取り締まり、漁船の船長を逮捕した。この逮捕劇の責任者は国土交通大臣だった前原誠司。この後、田中角栄と周恩来から始まる日中友好の流れは断ち切られ、軍事的な緊張が高まる。 しかし、2011年3月11日に東北の太平洋側で巨大地震が起こり、日本と中国の対立は緩和されそうになるが、それを関係悪化の方向へ戻したのが石原親子。2011年12月に石原伸晃が「ハドソン研究所で講演、尖閣諸島を公的な管理下に置いて自衛隊を常駐させ、軍事予算を大きく増やすと発言、今年4月には石原知事が「ヘリテージ財団」主催のシンポジウムで尖閣諸島の魚釣島、北小島、南児島を東京都が買い取る意向を示したのだ。 この親子に大きな影響を及ぼしていたのがハドソン研究所の上級副所長だったI・ルイス・リビー。ウォルフォウィッツ・ドクトリンを作成したひとりで、安倍晋三とハドソン研究所を結びつけたのもリビー。ナイ・レポート以降、日本の支配層は東アジアの軍事的な緊張を高めようとしてきたが、その背後にはネオコンがいるということだ。 バラク・オバマ政権も日本、ベトナム、フィリピンを中心とする国で中国を封じ込めようとしているが、これはロシアを周辺から締め上げようというハートランド理論とも重なる。中国の目には、自分たちの基本戦略である「一帯一路(シルク・ロード経済ベルトと21世紀海のシルク・ロード)」のうち、南シナ海から始まる海のシルク・ロードを破壊しようとしているように映るだろう。 アメリカは日本、ベトナム、フィリピンに韓国、インド、オーストラリアを結びつけようと考え、7月8日には韓国へTHAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システムを配備することが決まったという。このシステムは攻撃用へすぐに変更できる。 ところが、ここにきてフィリピンがアメリカからの離脱を宣言、ベトナムも中国との関係を修復しようとしている。アメリカ支配層の命令に従っている韓国の大統領は国内の評判が良くない。インドはBRICSのひとつであり、アメリカに絶対的な従属を誓うような状況ではないだろう。 1946年6月から国王の座にあったラーマ9世(プーミポン・アドゥンヤデート)が死亡したタイの情勢も注目されている。王位を継ぐと見られているワチラロンコン皇太子は2014年にクーデターで倒されたインラック・チナワットやその兄のタクシン・チナワット元首相と親しいとされ、チナワット家はアメリカの支配層、特にブッシュ一族と深く結びつき、巨大ファンドのカーライル・グループとも関係が深いとされている。アメリカ軍が2003年3月にイラクを先制攻撃した際、タクシンは軍部や国民の意思に背いてイラクへ派兵している。ラーマ9世の死は現体制にも何らかの影響を及ぼしそうだ。 ところで、ラーマ9世はアメリカのマサチューセッツ州で生まれ、兄のラーマ8世(アーナンタマヒドン)が寝室で急死したことを受けて即位している。額から後頭部にかけて銃弾が貫通していた。アメリカとイギリスの情報機関が暗殺したと信じている人は少なくない。
2016.10.23
ロシア海軍の重航空巡洋艦(空母)クズネツォフ提督を中心とする艦隊が10月15日にセベロモルスクを出港、北海で3日間にわたる演習を実施した後、地中海のシリア沖へ向かっている。以前から予定されていたことではあるが、アメリカ政府に従属しているEUの「リーダー」にとっては大きなプレッシャーだろう。ヒステリックになるのは当然だ。 リチャード・ニクソン米大統領は他国を従属させるため、アメリカは何をしでかすかわからない国だと思わせるべきだと考えた。また、イスラエルのモシェ・ダヤン将軍は狂犬のように行動しなければならないと語っている。「触らぬ神に祟りなし」だと思わせるという手口だが、それをロシアや中国に対しても使っていることが全面核戦争の危険性を高めている。 こうした脅しのほか、賄賂でアメリカ支配層の傀儡になっているEUの「リーダー」から見ると、「凶人理論」や「狂犬戦術」が通用しないロシアは自分たちの富と地位を危うくする存在。アメリカの支配層に屈してくれないと困ると思っているだろう。 1991年12月にソ連が消滅した直後、ネオコンは世界制覇のプランを作成しているが、その前提はアメリカが唯一の超大国になったということで、潜在的なライバルと潰す作業に入った。最初は旧ソ連圏のユーゴスラビアだが、この時はNATOを使っている。2001年9月11日に世界貿易センターと国防総省本部庁舎が攻撃されると、好戦的な雰囲気を利用して攻撃には無関係のアフガニスタンとイラクをアメリカ軍が主導する連合軍が先制攻撃した。 しかし、このあとサラフ主義者/ワッハーブ派やムスリム同胞団を使った侵略に切り替えている。1970年代の終盤にズビグネフ・ブレジンスキーが始めた秘密工作を復活させたとも言えるだろう。そうした戦闘員を登録したデータベースがアル・カイダ。 2007年3月5日付けのニューヨーカー誌に掲載されたシーモア・ハーシュの記事によると、アメリカはサウジアラビアやイスラエルと手を組み、サラフ主義者やムスリム同胞団を使って意に沿わぬ政権、つまりシリアやイランの現政権やヒズボラを倒そうとし始めている。 2012年8月にアメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)が作成した報告書は、シリアで政府軍と戦っている戦闘集団の主力をサラフ主義者/ワッハーブ派、ムスリム同胞団、そしてAQI(アル・カイダ系武装集団)で、西側、ペルシャ湾岸諸国、そしてトルコからの支援を受けているとしている。その報告を受けた上でバラク・オバマ政権はシリアで政府軍と戦っている集団を支援したわけだ。 この報告書が作成された当時のDIA局長、マイケル・フリン中将は2015年8月、自分たちの任務は提出される情報の正確さをできるだけ高めることにあり、情報に基づく政策の決定はバラク・オバマ大統領が行うと指摘している。ダーイッシュの勢力を拡大させたのはオバマ政権の決断が原因だというわけだ。 こうした流れを懸念する人物がアメリカ軍を統括している統合参謀本部にもいた。そのひとりが議長だったマーティン・デンプシー大将だが、2015年9月25日に退任する。後任はロシアを敵だと公言しているジョセフ・ダンフォード。2015年2月から国防長官を勤めているアシュトン・カーターと一緒に軍事的な緊張を高めていく。 デンプシー退任の3日後、9月28日にロシアのウラジミル・プーチン大統領は国連の安全保障理事会で演説、その中で「民主主義や進歩の勝利ではなく、暴力、貧困、そして社会的惨事を我々は招いてしまった。生きる権利を含む人権を少しでも気にかける人はいない。こうした事態を作り上げた人びとに言いたい:あなたは自分たちがしでかしたこと理解しているのかと。しかし、誰もこの問いに答えないでしょう。うぬぼれや自分は特別で何をしても許されるという信念に基づく政策は、捨てられることがなかった。」 その2日後、9月30日にロシア軍はシリア政府の要請に基づいて同国内で空爆を開始、アル・カイダ系武装勢力やダーイッシュを本当に攻撃、戦況は一変してしまった。武装勢力は敗走、彼らが資金源の重要な資金源のひとつだった盗掘石油の輸送ルートも寸断されている。 ロシア軍が軍事介入してからアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュは劣勢になる。アメリカ政府はさまざまな手段を講じてロシアの動きを止めようとしてきたが、決定的なものはなかった。 9月17日にアメリカ軍が主導する連合軍はデリゾールでシリア政府軍をF-16戦闘機2機とA-10対地攻撃機2機で攻撃、80名以上の兵士を殺している。その攻撃から7分後にダーイッシュの部隊が地上でシリア政府軍に対する攻撃を開始した。28日には2つの橋を、30日にも別の橋2つをそれぞれ爆撃して破壊、政府軍の進撃を止めようとしている。 アメリカ政府は開き直り、空爆を「ミス」だと主張しているが、現在の戦闘技術や当時の状況を考えると、意図した攻撃だった可能性はきわめて高い。「ダーイッシュの空軍」として行動したのだ。この攻撃でロシア政府はシリアでの戦乱をアメリカ政府との話し合いで解決することを諦めた可能性がある。 ロシア系メディアによると、シリア北部の要衝、アレッポの山岳地帯にある外国軍の司令部を、シリア沖にいるロシア軍の艦船から発射された3発の超音速巡航ミサイルが9月20日に攻撃、約30名が殺されたという。死亡者はアメリカ、イギリス、イスラエル、トルコ、サウジアラビア、カタールから派遣された軍人や情報機関の人間で、デリゾールででの空爆を指揮したのはこの司令部だとも言われている。 10月5日にアメリカ政府はシリアのバシャール・アル・アサド政権に対する軍事攻撃を検討すると4日付けのワシントン・ポスト紙は報じた。バラク・オバマ政権はロシア政府に対して軍事行動の可能性を通告、その反応を見ようとしたのだろう。 それに対し、ロシア国防省はアメリカ側のリークを重く受け取り、シリアに配備されている防空システムのS-300やS-400は侵入してきた航空機やミサイルを撃墜すると6日に発表している。ロシア海軍の基地があるタルタスへS-300を移動させたともいう。そして15日に重航空巡洋艦クズネツォフ提督が出港、シリアへ向かった。 ロシアはヒラリー・クリントンが大統領に就任することを見越して応戦の準備を進めているように見える。ソ連消滅後のアメリカによる軍事侵攻の幕開け、ユーゴスラビアへの先制攻撃はヒラリーの同志とも言えるマデリン・オルブライトが国務長官にしてから動き始めた。そのとき、ふたりにはもうひとりの仲間が政権に入っていた。ビクトリア・ヌランドだ。現在、ヒラリーの側近中の側近として知られているヒューマ・アベディンがインターンとしてホワイトハウス入りしたのもこの時代だ。
2016.10.22
アメリカに対するハッキングの容疑者を10月5日に逮捕したとチェコの当局は18日に発表した。逮捕から発表まで13日間。逮捕された人物はロシア国籍を持ち、プラハのホテルに滞在中で、FBIの要請に基づいてICPO(国際刑事警察機構)から逮捕令状が出されていたという。チョコの当局者は「戦術的な理由」から2週間近く逮捕を隠したとしているが、アメリカの大統領選挙に関係していると見る人もいる。 その間、10月7日に国家情報長官のジェームズ・クラッパーはWikiLeaksなどの背後にロシアの高官がいると主張、アメリカの選挙に介入しようとしていると批判しているが、その根拠は示さなかった。「反ロシア・キャンペーン」にテコ入れした形だ。 ところで、FBIのジェームズ・コミー長官は7月5日、ヒラリー・クリントンが機密情報の取り扱いに関する法規に批判した可能性があることを認めていた。それにもかかわらず、司法省に対して彼女の不起訴を勧告したわけだ。 FBIが彼女を起訴しないと決めた一因は証拠となる万2000件近い電子メールが削除されていたことにあるという。その中には記録として残すことが義務づけられているメールも含まれ、違法行為の事実を隠すための隠蔽工作だと見られているが、FBIは大きな問題として捉えていない。 サウス・カロライナ州選出の下院議員トレイ・ゴウディによると、クリントンは削除のためにブリーチビットというソフトウェアを利用している。これを使うと、削除した文書を回復させられないだけでなく、削除した痕跡を消すこともできるという。ヒラリーの行為は悪質だと言われても仕方がない。 しかし、NSAの内部告発者であるウィリアム・ビニーは、NSAが全ての電子メールを記録していると指摘する。つまり、FBIがその気になれば、問題のメールも入手できるというわけであり、何をしたかに関係なく、FBIは彼女を起訴する意思がないということだ。ハッキング容疑者の逮捕発表を遅らせたことにも通じる。 公表された電子メールによって、民主党の内部で不公正な候補者選びが行われていたことが判明、最近では巨大金融機関を含む富裕層との緊密な関係を示すものも公表されている。 民主党だけでなく、バラク・オバマ政権や有力メディアは明らかにされたメールの中身には触れず、証拠を示すことなく「ロシア政府が悪い」と叫び続けている。ロシアと戦争する意思を示し、巨大資本が支配する体制を築こうとしていることは無視されている。 その手口はかつて、1940年代の後半から50年代の前半にかけてジョセフ・マッカーシー上院議員が行った「赤狩り」を彷彿させると言う人もいる。ちなみに、マッカーシーを背後から操っていたのはFBI長官だったJ・エドガー・フーバーだ。 アメリカの政府やメディアから「ロシアの傀儡」だと言われているWikiLeaksはゴールドマン・サックスでの講演内容を明らかにしたが、その直後にエクアドル大使館は匿っているジュリアン・アッサンジのインターネットへのアクセスを断っている。エクアドル政府に対し、ジョン・ケリー国務長官が個人的に要請したとする情報も流れている。
2016.10.20
イラクのモスルからシリアのラッカへ向かっていたダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)の車列をイラク軍が空爆、約30輌を破壊したという。アメリカとサウジアラビアが移動を黙認しても、イラクは違った。 2014年6月にダーイッシュがモスルを制圧した際、武装勢力はトヨタ製小型トラック「ハイラックス」を連ねて走行、自分たちの存在をアピールしていたが、アメリカ軍はそのパレードに手を出していない。アメリカにはスパイ衛星、偵察機、通信傍受、そしてエージェントによる情報網などで動きはつかんでいたはずで、知らなかったという言い訳は通用しない。今回もアメリカとサウジアラビアはモスルから脱出する戦闘員に手を出さないことにしていたようだが、イラク軍は攻撃したわけだ。 2014年3月、イラクの首相だったヌーリ・アル・マリキはアメリカの同盟国であるサウジアラビアやカタールが反政府勢力へ資金を提供していると批判、ロシアへ接近する姿勢を見せていた。そうした中、ダーイッシュが舞台の中央へ登場してきたわけだ。 4月には議会選挙があり、マリキが党首を務める法治国家連合が第1党になる。本来ならマリキが首相を続けることになるのだが、指名されなかった。アメリカ政府が介入したと見られている。マリキはペルシャ湾岸産油国を批判しただけでなく、アメリカ軍の永続的な駐留やアメリカ兵の不逮捕特権を認めなかった人物で、アメリカ支配層が危険だと考えても不思議ではない。 しかし、新しく首相になったハイデル・アル・アバディ首相もアメリカに背く。昨年9月30日にロシアがシリア政府の要請で空爆を始めると、イラクもロシアに空爆を頼みたいという意思を示した。 こうした言動にアメリカ政府は危機感を持ったのか、10月20日にジョセフ・ダンフォード米統合参謀本部議長がイラクへ乗り込む。同議長はイラク政府からロシアへ支援要請をするなと恫喝したようだが、その後もロシア、シリア、イランとの連携は続く。 現在、シリアではアル・カイダ系武装集団やダーイッシュは崩壊寸前のようで、アメリカやサウジアラビアは約9000名の戦闘員をモスルからラッカへ移動させる腹づもりだったようだが、イラク軍の動きを見ると、どの程度の戦闘員がシリアへ行けるかは不明。シリア側でもシリア軍やロシア軍が待ち受けているはずだ。シリアへは向かわず、出身国へ戻る戦闘員も出てくるだろう。
2016.10.19
イギリスではロシア系の放送局RTの銀行口座が閉鎖される一方、内部告発支援グループのWikiLeaksの象徴になっているジュリアン・アッサンジがインターネットに接続できなくなっているという。民主主義の衣を脱ぎ捨て、情報統制を強化しているわけだが、それだけのことをしなければならない何かが迫っているのかもしれない。 また、フランスのフランソワ・オランド大統領はシリアに飛行禁止空域を設定するように、つまり西側に制空権を握らせるように要求、10月19日に予定されていたロシアのウラジミル・プーチン大統領との会談をキャンセルした。シリアにおける飛行禁止空域の設定はロシアやシリアとの戦争になると、好戦派のジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長でさえ言っていること。オランド大統領はフランス国民の意思には関係なく、ロシアとの関係断絶を狙っている。 アメリカ軍の中にもロシア軍との核戦争を望むかのような発言をする人物もいる。そのひとりがマーク・ミリー陸軍参謀総長で、ロシアに対し、かつて経験したことがないほど激しく叩きのめしてやると演説した。第2次世界大戦でドイツ軍に攻め込まれたソ連では2000万人以上の国民が死亡し、工業地帯の3分の2を含むソ連全土の3分の1が荒廃に帰している。それ以上の破壊が可能だとすれば、核戦争しかない。 それに対し、ロシア政府は外交官や社会的地位の高い人びとに対し、西側で生活している家族を帰国させるように呼びかけたと伝えられている。西側と中露との間で軍事的な緊張が高まっていることにともなうメッセージのようだ。 そのシリアでは昨年9月30日からシリア政府の要請を受けたロシア軍が空爆を開始、外国勢力に雇われた傭兵部隊、つまりアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュが劣勢になり、アメリカ政府の要請で攻撃の手を緩めたりしたが、それでもシリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すことは困難になっている。 シーモア・ハーシュがニューヨーカー誌の2007年3月5日号に掲載された記事で書いていたが、その当時にはアメリカがサウジアラビアやイスラエルと手を組み、サラフ主義者やムスリム同胞団を使って意に沿わぬ政権、つまりシリアやイランの現政権やヒズボラを倒そうとしていた。 この構想は、1991年にポール・ウォルフォウィッツが口にしたプランに合致する。元欧州連合軍最高司令官のウェズリー・クラークによると、彼はシリア、イラン、イラクを5年から10年で殲滅すると口にしていた。 その翌年の初めには国防総省のDPG草案という形で、アメリカの世界支配プランが作成されている。旧ソ連圏だけでなく、西ヨーロッパ、東アジアなどの潜在的なライバルを潰し、膨大な資源を抱える西南アジアを支配しようというものだ。 こうしたプランに拘束され、ネオコンは身動きがとれなくなっている。侵略軍が崩壊しつつあるシリアへのテコ入れとして、アメリカやサウジアラビアはイラクから9000名以上の戦闘員をシリアへ移動させることにし、「モスル奪還」を演出してバラク・オバマ政権の得点にしようと目論んでいるようだ。 その演出がヒラリー・クリントンへの支援になるとも考えているだろうが、それで彼らの妄想、世界制覇が現実になるとは思えない。この好戦派はイギリスやフランスの子分たちを従え、ロシアと核戦争する姿勢を見せているのだが、彼らが本気なのかどうかに関係なく、核戦争に突入する可能性はある。ブレーキが間に合うかどうか不明だが、この危機から脱するためには人びとが欧米信仰から目覚めねばならない。
2016.10.18
アメリカのミサイル駆逐艦ニッツェはフーシ派が紅海に面した場所に設置していた3カ所のレーダー施設を巡航ミサイルで破壊した。別の駆逐艦メーソンの近くにミサイルが撃ち込まれたことに対する報復だとされているが、アメリカ軍のスポークスパーソンのピーター・クックは誰がミサイルを発射したのかは不明だと13日に発言している。誰が撃ってきたのか不明だが、サウジアラビアと戦っているフーシ派をとりあえず攻撃したというわけだ。なお、フーシ派はアメリカの艦船に対する攻撃を否定している。 アメリカ側はイエメンでの戦闘に介入したのではなく、防衛的な攻撃だったとしているようだが、苦境のサウジアラビアを助けるための攻撃だった疑いは濃厚。ベトナム戦争へ本格的に介入する切っ掛けになったトンキン湾事件を思い出した人もいる。10月8日にサウジアラビアが主導する軍隊がイエメンで葬儀を爆撃して140名以上を殺害、500名以上を負傷させ、問題になっていたことも関係しているだろう。 トンキン湾事件とは、1964年8月2日にアメリカの駆逐艦マドックスがトンキン湾で北ベトナムの魚雷艇に砲撃されたというもの。リンドン・ジョンソン大統領は宣伝、65年2月には「報復」と称して本格的な北爆を始めた。 しかし、この事件はアメリカ側が仕掛けたものだった。1964年1月にジョンソン大統領はOPLAN34Aと名づけられた計画を承認、その一環として64年7月30日に南ベトナムの哨戒魚雷艇が北ベトナムの島、ホンメとホンニュを攻撃した。それに対し、北ベトナムは高速艇を派遣したが、すでに攻撃した哨戒艇は姿を消していた。残っていたのは情報収集活動中のマドックスだ。 翌31日にはアメリカ海軍の特殊部隊員が約20名の南ベトナム兵を率いてハイフォン近くにあったレーダー施設を襲撃、この襲撃に対する報復として北ベトナムは8月2日にマドックスを攻撃したと言われている。マドックスを攻撃した北ベトナムの艦船はアメリカ軍機などの攻撃で撃沈された。 この戦闘をアメリカでは北ベトナムが「先制攻撃」したということにされ、8月7日にアメリカ議会は「東南アジアにおける行動に関する議会決議(トンキン湾決議)」を可決したわけだ。(Douglas Valentine, "The Phoenix Program," William Morrow, 1990) サウジアラビアが戦闘機を100機、15万名の兵士、さらに海軍の部隊を派遣して攻撃を始めたのは昨年の3月。アラブ首長国連邦、バーレーン、カタール、クウェートなどの国も参加したようだ。その際、フーシ派を指揮していた3名の幹部を殺害したという。 サウジアラビアは2009年、フーシ派を倒すために特殊部隊や空軍をイエメンへ派遣、その年に同国ではAQAP(アラビア半島のアル・カイダ)が組織されているのだが、それでもフーシ派は勢力を拡大、サウジアラビアは大々的な空爆をする必要に迫られたようだ。アル・カイダ系武装勢力とサウジアラビアの雇用関係は本ブログで何度も書いてきた。この武装勢力はアブド・マンスール・ハーディー派と連携している。 フーシ派の攻勢がアメリカやサウジアラビアを慌てさせる事態になった一因はCIAのイエメンにおける活動内容が漏れたことにあるとも言われている。イエメンの情報機関とCIAは緊密な関係にあるが、治安機関のオフィスが制圧された際に機密文書の一部がフーシ派へ渡ったというのである。
2016.10.17
東京の駒込駅そばにある「東京琉球館」で10月22日18時からアメリカ支配層が行ってきたテロ活動の仕組みについて話します。興味のあるかたは次のサイトまで:http://dotouch.cocolog-nifty.com/
2016.10.16
ハッキングされたヒラリー・クリントンに関係した電子メールが公開され続けている。国務長官時代、機密情報の取り扱いに関する法規に違反していたと指摘されたのが始まりで、捜査の対象になった。ジェームズ・コミーFBI長官は7月5日の声明で、そうした違反があった可能性があることを認めたのだが、司法省に対して彼女の不起訴を勧告する。証拠となる万2000件近い電子メールが削除されていたことが不起訴になった理由のひとつだというのだが、NSAの内部告発者であるウィリアム・ビニーは、電子情報機関のNSAが全ての電子メールを記録しているので、FBIがその気になれば調べられるとしている。つまり、彼女の行動には関係なく、起訴する意思がないということだ。 その後、内部告発支援グループのWikiLeaksが彼女に関係した電子メールを公表した。対抗して民主党やアメリカ政府は有力メディアを使い、証拠を示すことなくロシア政府がハッキングしていると叫び、中身に人びとの関心が向かないように必死だ。かつて、「沖縄返還」に関する密約の存在を明らかにした西山太吉記者に対するマスコミの攻撃を思い出させる手法だ。 ロシアがサイバー攻撃しているとアメリカのメディアは宣伝しているが、サイバー攻撃の本家本元はアメリカのNSAとイスラエルの8200部隊だ。この2機関は緊密な関係にあり、イランの核関連施設を攻撃するためにコンピュータ・ウィルスを感染させた。侵入したコンピュータ・システムに関する情報を入手して外部に伝えるFlameとそのプラグインであるStuxnetだ。この攻撃をニューヨーク・タイムズ紙が初めて伝えたのは2012年6月のことだが、ウイルスが発見されたのは10年のこと。発見が遅れたなら、深刻な核事故が起こっていた可能性が高い。 NSAはイギリスのGCHQと共同でUKUSAも組織している。1946年3月に締結された協定に基づいて作られ、その下にカナダ、オーストラリア、ニュージーランドの電子情報機関があり、各国政府の指揮系統から外れて活動、一種の国家内国家として機能している。ドイツ、フランス、イタリア、南ベトナム、日本、タイなどは「第三当事国」に分類されているが、アングロ・サクソン系5カ国とは全く立場が違う。 実は、NSAやGCHQは創設からしばらくの間、その存在が秘密にされていた。初めて公にされたのは1972年だ。この年、ランパート誌の8月号にNSAの元分析官の内部告発記事が掲載され、その中で明らかにされている。電子技術が飛躍的に発達した現在、各国要人の通信などを盗聴、脅しにも使っているようだ。 GCHQに関する詳しい報告を初めてしたのはふたりのジャーナリスト、ダンカン・キャンベルとマーク・ホゼンボールだ。1976年にふたりはイギリスのタイム・アウト誌で調査結果を発表したのだが、アメリカ人だったホゼンボールは国外追放になり、キャンベルは治安機関のMI5から監視されるようになる。 そのダンカンは1988年にECHELONという全地球の通信を傍受するシステムの存在を明らかにした。ロッキード・スペース・アンド・ミサイルに勤めていたマーガレット・ニューシャムの内部告発が調査の発端だったようだ。アメリカのストローム・サーモンド上院議員の電話をNSAが盗聴していたと暴露したのである。盗聴に使われたのはイギリスにある巨大通信傍受基地メンウィズ・ヒルだという。(Duncan Campbell, 'Somebody's listerning,' New Statesman, 12 August 1988) アメリカとイギリスの情報機関が連携するメリットのひとつは、自国民の監視が法律で禁止されている場合、もうひとつの国の機関に監視を依頼すれば法律に違反しないということにある。 1990年代になってヨーロッパ議会もECHELONに関する報告書を出しているが、その中で監視システムや暴動鎮圧技術のターゲットは反体制派、人権活動家、学生運動の指導者、少数派、労働運動指導者、あるいは政敵になる可能性が高いと警告している。日本でも通信傍受、CCTV、車両認識システム(Nシステム)の監視網は広がっているため、人の動きを詳細に記録することが可能だ。 それだけでなく、個人の学歴、銀行口座の内容、ATMの利用記録、投薬記録、運転免許証のデータ、航空券の購入記録、住宅ローンの支払い内容、電子メールに関する記録、インターネットでアクセスしたサイトに関する記録、クレジット・カードのデータなどあらゆる個人データの収集と分析をしている。 また、市スーパー・コンピュータを使って膨大な量のデータを分析、「潜在的テロリスト」を見つけ出そうともしている。つまり、どのような傾向の本を買い、借りるのか、どのようなタイプの音楽を聞くのか、どのような絵画を好むのか、どのようなドラマを見るのか、あるいは交友関係はどうなっているのかなどを調べ、思想を監視しようというわけだ。 第2次世界大戦の終盤にアメリカの情報機関は「テロ部隊」を編成、その人脈によってOPC、CIAの計画局、作戦局(1973年から)、NCS(国家秘密局/2005年から)、そして2015年にCIAは大々的な組織再編を行い、デジタル・スパイに焦点を当てようとしているとされている。サイバー攻撃に力を入れるということだ。
2016.10.16
朝鮮の核兵器開発を抑えなければアメリカは中国をミサイル防衛システムで取り囲むとヒラリー・クリントンが私的な席で話していたという。この話はWikiLeaksの公表した電子メールで明らかになったが、朝鮮の話は中国を攻撃するための口実にすぎないだろう。 クリントンは支配層の意向を口にした可能性が高い。7月8日にアメリカと韓国はTHAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システムを韓国に配備することで合意したというが、これもその一環だとしか考えられない。すでにアメリカ/NATOはロシアとの国境近くにミサイル防衛システムを配備、ロシアと中国を包囲しようとしている。 朝鮮の核兵器開発はアメリカの支配層にとって願ってもないこと。そこで思い出すのは、ビル・クリントンが大統領だった時代に考えられたマーリン作戦だ。アメリカは不完全な核兵器の設計図をイランへ渡そうとしたのである。アメリカ側はイランが核兵器を開発していないことを知っていたはずで、イラン側を刺激して核兵器を開発させ、それを口実にして攻撃しようとしたとも言われている。同じことを朝鮮に対して行っている可能性がある。 フォーリン・アフェアーズ誌(CFR/外交問題評議会が発行)の2006年3/4月号に掲載されたキール・リーバーとダリル・プレスの論文には、ロシアと中国の長距離核兵器をアメリカの先制第1撃で破壊できると書かれている。それを事実だとアメリカの支配層が信じているとするならば、残されたわずかなミサイルを撃ち落とすことは可能だと考えても不思議ではない。 しかし、ミサイル防衛システムに防衛用のミサイルが装備されるとは限らない。アメリカのシステムの場合、射程が1000キロメートルから2400キロメートルという攻撃的なミサイルへ切り替えることも難しくないのだ。 ロシアや中国を包囲して締め上げるという戦略は20世紀の初頭に出現している。ハルフォード・マッキンダーの「ハートランド理論」だ。1904年に発表されたもので、世界は3つに分けられている。第1にヨーロッパ、アジア、アフリカの「世界島」、第2にイギリスや日本のような「沖合諸島」、そして第3に南北アメリカやオーストラリアのような「遠方諸島」だ。「世界島」の中心が「ハートランド」で、具体的にはロシアを指している。ここを制圧することが世界制覇につながるという考え方だ。 彼はハートランドを支配するため、ふたつの三日月帯で締め上げていくという戦略を彼は立てた。西ヨーロッパ、パレスチナ(1948年にイスラエル建国を宣言)、サウジアラビア(1932年に出現)、インド、東南アジア諸国、朝鮮半島をつなぐ内部三日月帯と、その外側の外部三日月地帯だ。 朝鮮半島から中国を狙う拠点としてもイギリスは日本を重視していたが、兵力の不足分を日本に化代わりさせようともしていた。フランス、ドイツ、ロシアに対抗するために約14万人の兵士が必要だと見られていたが、実際の兵力は7万人。足りない分は日本人で補うということだ。ちなみに、「明治維新」の背後にはイギリスが存在、1902年には日英同盟協約が結ばれている。 「明治政府」は1871年7月に廃藩置県を実施して中央集権化を進めるが、琉球国を潰して琉球藩をでっち上げるのは72年。そして1879年に沖縄県が作られた。この琉球処分、つまり琉球併合は1871年10月の宮古島漁民の難破事件が引き金になっている。 1872年に厦門のアメリカ領事だったチャールズ・リ・ジェンダーが来日しているが、この人物は外務卿だった副島種臣に台湾への派兵を勧めたとされている。その後、リ・ジェンダーは1875年まで外務省の顧問を務めた。 日本は1874年に台湾へ派兵、75年には李氏朝鮮の首都を守る要衝の江華島へ軍艦を派遣して挑発、「日朝修好条規」を結ばせて清国の宗主権を否定させることに成功する。無関税特権を認めさせ、釜山、仁川、元山を開港させた。条規の批准交換にル・ジェンダーも陪席したようだ。 1894年に朝鮮半島で甲午農民戦争(東学党の乱)が起こると日本政府は「邦人保護」を名目にして軍隊を派遣した。それに対して朝鮮政府は清(中国)に派兵を依頼、日清戦争につながる。この戦争に勝利した日本は大陸侵略を本格化させていく。 当時、朝鮮王朝をコントロールしていたのは閔妃(高宗の妻)の一族。閔妃はロシアへ接近すると考えた日本政府は三浦梧楼公使を使い、閔妃を含む女性3名を惨殺する。暗殺に加わった三浦公使たちは「証拠不十分」で無罪になっているが、この判決は暗殺に日本政府が関与している印象を世界に広めることになった。なお、その後、三浦は枢密院顧問や宮中顧問官という要職についている。 そして1904年に日本は帝政ロシアと戦争を始めるのだが、戦費はロスチャイルド系金融機関のクーン・ローブのジェイコブ・シフが用立てた。日本に対し、約2億ドルを融資しているのだ。当時、日銀副総裁だった高橋是清はシフと親しくなる。 現在、アメリカは中国を封じ込める枢軸として日本、フィリピン、ベトナムを考え、そこへ韓国、インド、オーストラリアを結びつけようとしている。東シナ海や南シナ海で軍事的な緊張が高まっている原因はここにある。ネオコン/シオニストはシリアでもリビアと同じように飛行禁止空域を設定し、アメリカ/NATOに政府軍を空爆させようとしている。 クリントンも同じ主張をしているが、そうした空域の設定は好戦派と言われる統合参謀本部議長もロシアやシリアと戦争になるといわれていることだ。それを主張しているということは、ロシアと戦争したがっていることを意味する。 ところが、ここにきてフィリピン政府がアメリカ離れしている。今年6月から大統領を務めているロドリゴ・ドゥテルテはフィリピンを植民地扱いするアメリカ政府を露骨に非難、バラク・オバマ大統領に対して「あの野郎(son of a bitch)」という表現を使っている。その一方、中国とは交渉を進め、中国はフィリピンのインフラを整備するために多額の投資を提案しているという。 アメリカの好戦派がロシアや中国を核戦争で威圧しているうちにアメリカの足下が崩れ始めている。プロパガンダ機関として機能している有力メディアへの信頼度は低下、軍隊の内部でも反発は強まっているようだ。ヒラリー・クリントンが大統領になった場合、核戦争で自爆しなくても、アメリカという国を維持できなくなるかもしれない。
2016.10.15
イラクのモスルから9000名以上の戦闘員をシリアのデリゾールやパルミラへ移動させることをアメリカとサウジアラビア両政府は承認していると伝えられている。勿論、移動の間、アメリカは攻撃しない。 10月中にイラクのモスルをアメリカ軍とイラク軍がダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)から奪還するという形を作れたならバラク・オバマ米大統領の得点になり、来月の大統領選挙ではヒラリー・クリントンが有利になると見られている。オクトーバー・サプライズだ。 一方、シリアでは現在、アメリカ、ペルシャ湾岸産油国、イスラエルなどが手先に使っているアル・カイダ系武装勢力やダーイッシュは劣勢。アメリカ軍が主導する連合軍は9月17日、シリア北東部の都市デリゾールでF-16戦闘機2機とA-10対地攻撃機2機を使って攻勢に出る直前だったシリア政府軍を空爆、80名以上の兵士を殺した。勿論、ミスではない。 その後、28日と30日に侵略軍が支配する地域と政府軍を分けている河に架かっている橋を空爆で破壊したと報告されている。アメリカの特殊部隊もシリア領内で拠点作りを進めているようだが、戦況はアメリカ側にとって不利。ダーイッシュの戦闘員を増派する必要があるのだろう。 ただ、イラクで戦っているダーイッシュやアル・カイダ系武装集団の戦闘員はイラク出身が多く、サダム・フセイン時代の将兵も含まれていると言われている。こうした人びとがシリアへ素直に移動するかどうかは不明。また、シリアで戦っているダーイッシュにはトルコ軍の兵士が含まれていると言われ、反バシャール・アル・アサド政権の外国勢力に雇われているという共通項はあるものの、細かく見ると中身に違いがある。 元々、シリアへ侵攻したアル・カイダ系武装集団や、そこから派生したダーイッシュの主力はサウジアラビアなどペルシャ湾岸産油国が雇っているサラフ主義者/ワッハーブ派やイスラム同胞団。さまざまな国がそれぞれの思惑で戦闘員を投入したことから内紛も起こっているようだ。 サウジアラビアはシリアだけでなくイエメンに軍事介入して泥沼状態。サウジアラビアの財政を圧迫する一因だ。最近、真偽不明の怪しげな理由でアメリカ軍はイエメンを攻撃したが、自分たちも泥沼へ足を踏み入れるつもりだろうか? アメリカ支配層は苦境から脱するため、軍事的な緊張を高め、相手が恐れをなして降りるのを待っているのだが、相手(ロシアや中国)は降りない。核戦争の脅しを始めているが、それも効果がなさそうだ。途中、アメリカが降りるチャンスを相手は与えていたのだが、富の独り占めを妄想して降りず、もう引き返せな所までアメリカは来てしまった。ヒラリー・クリントンは核戦争に向かって突き進もうとしている。
2016.10.14
ロシア外務省の広報担当、マリア・ザハロワはアメリカ支配層のロシアに対するプロパガンダ攻勢を批判、その中でアメリカ軍がイラクのファルージャで使った兵器に触れた。これまでアメリカ政府の立場を考慮して沈黙していた情報を開示すると警告したのかもしれない。 ウルスター大学のクリストファー・バスビー教授は2011年10月にファルージャでの調査結果を明らかにしているのだが、その中で濃縮ウランが人の髪の毛や土の中から検出されたと語っている。劣化ウラン弾ではない何らかの核兵器が使われた可能性があるということだ。 ファルージャやバスラでは新生児に奇形や脳の障害などが多発しているという報告がある。環境汚染毒物学紀要という専門誌に掲載された論文によると、ファルージャで2007年から10年にかけて生まれた新生児の場合、半数以上に先天性欠損があったという。 それに対し、1990年代以前には2%以下、2004年に占領軍から攻撃される前は約10%だとされている。バスラの産院における先天性欠損の割合は、1994年から95年にかけて1000人のうち1.37人だったが、2003年には23人、そして2009年には48人に増えている。また、ファルージャやバスラの子どもたちの頭髪から鉛が通常の5倍、水銀が通常の6倍と異常に高いともいう。 こうした症状が出ている原因として劣化ウラン弾が疑われてきたが、別の原因がある可能性があるということ。その事実を隠すために劣化ウラン弾が利用されたと考えることもできるだろう。 こうした濃縮ウランはファルージャだけで発見されているわけではない。2006年7月にイスラエル軍が軍事侵攻した後のレバノンに入ったバスビーはクレーターを調査、濃縮ウランを見つけたという。レバノンやガザを走っていた自動車のフィルターからもそうした物質が発見されたともしている。アフガニスタンでも濃縮ウランを残す兵器が使われ、バルカン半島でも使用された可能性があるという。 シリアで小型の中性子爆弾が使われた可能性が高いと主張する核兵器の専門家もいる。2013年5月や14年12月にあった爆発は地震のような揺れがあり、「巨大な金色のキノコに見える炎」が目撃されるほど大きなものだった。爆発の様子を撮影したCCDカメラに画素が輝く現象(シンチレーション)もあり、そうした推測にたどり着いたようだ。この推測が正しいならば、実行したのはイスラエル軍だった可能性が高いだろう。 1986年にイスラエルの核兵器開発を内部告発、18年の間、刑務所で拘束されていたモルデカイ・バヌヌによると、イスラエルは150から200発の原爆や水爆を保有しているだけでなく、中性子爆弾の製造を始めていたという。その中性子爆弾を使ったとしても不思議ではない。 ヒラリー・クリントンやジョン・マケインのような好戦派はロシアとの核戦争へ向かって暴走し続けている。国防長官や統合参謀本部議長も好戦派だが、それ以上に危険な存在がマーク・ミリー陸軍参謀総長。この人物は先日、ロシアに対してかつて経験したことがないほど激しく叩きのめしてやると演説、事実上、核戦争を始めると宣言したのだ。本人は圧勝するつもりかもしれないが、アメリカも終わり。当然、アメリカ/NATOが戦争を始めれば中国も参戦、東アジアも火と血の海になるだろう。
2016.10.13
世界的に軍事的な緊張が高まる中、アメリカのマーク・ミリー陸軍参謀総長はロシアに対し、かつて経験したことがないほど激しく叩きのめしてやると演説した。アメリカは先住民を殲滅、ラテン・アメリカを侵略、日本には勝利したが、戦争に強いとは言えない。ベトナム戦争で敗北、朝鮮戦争では旧日本軍の協力で巻き返したと言われている。中東でも勝てていない。「はったり」だが、核兵器を持っていることは事実。どのような見通しで戦争を始めるにしろ、最後は核兵器を使わざるを得なくなるだろう。 これまでロシアが最も大きなダメージを受けた戦いは第2次世界大戦でドイツ軍が行ったバルバロッサ作戦だろう。1941年6月から始まり、スターリングラードの攻防戦でドイツ軍が壊滅、1943年1月に降伏するまで続いている。その間、ソ連側は2000万人以上が殺され、工業地帯の3分の2を含む国土の3分の1が破壊されている。それ以上の破壊と殺戮を味わわせると言っているわけだ。 この人物も威嚇すれば相手は怖じ気づくと考えているのかもしれないが、ロシアや中国をそうした国だと考えてはならない。ロシアと中国の連携は強まっている。シリア、ヨーロッパ、東アジア、どこかで火がつけば全体に燃え広がる可能性が高い。 ジョン・マケインのようなネオコンやフランス政府はシリアに飛行禁止空域を設定するべきだと主張している。ロシア軍やシリア軍が行っているアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)に対する空爆を止めさせ、アメリカ主導の軍隊がシリア政府軍を空爆して地上の武装勢力にシリアを制圧させようということだが、そうしたことを行えばジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長が上院軍事委員会で語ったようにロシアやシリアと戦争になる可能性が高く、世界大戦に発展すると覚悟しなければならない。 昨年、アメリカは国防長官や統合参謀本部議長を好戦派に交代させたが、陸軍参謀総長はそのふたり以上というより、高をくくってロシアからの警告を無視しているように聞こえる。愚か者は恐ろしい。
2016.10.12
アメリカの大統領選挙で有力メディアはヒラリー・クリントンと友好的な関係にあり、彼女を支援している。その対立候補であるドナルド・トランプも決して誉められた人物ではないが、巨大金融資本や戦争ビジネスを後ろ盾にし、イスラエルと緊密な関係にあり、ロシアや中国との核戦争に向かって驀進中のクリントンよりはましだろう。そのクリントンと有力メディアの友好的な関係を再確認させる電子メールが公表されている。 勿論、驚くような話ではない。有力メディアが支配層のプロパガンダ機関にすぎないことは公然の秘密だと言っていいだろう。1932年の大統領選挙でニューディール派を率いるフランクリン・ルーズベルトが巨大金融資本の担いでいた現職のハーバート・フーバーを破って当選した後、ウォール街の大物たちはファシズム体制の樹立を目指すクーデターを計画した。この計画はアメリカ海兵隊の伝説的な軍人、スメドリー・バトラーの議会証言で明らかにされているが、クーデターでは新聞を情報操作の道具として使うことになっていた。 第2次世界大戦後、アメリカではメディア支配をシステム化するため、支配層が「モッキンバード」と呼ばれるプロジェクトをスタートさせる。1948年のことだ。その中心にはアレン・ダレス、フランク・ウィズナー、リチャード・ヘルムズ、そしてフィリップ・グラハムがいた。(Deborah Davis, “Katharine The Great”, Sheridan Square Press, 1979) ダレスは大戦中からアメリカの破壊活動を指揮していた人物で、ウィズナーやヘルムズはその側近。グラハムはワシントン・ポスト紙の社主だった。ダレスとウィズナーはウォール街の弁護士でもあり、ヘルムズの祖父にあたるゲイツ・ホワイト・マクガラーは国際的な投資家で、アスター財団の理事。ニューズウィーク誌にも大きな影響力を持っていたという。グラハムの義理の父、ユージン・メイアーは金融界の大物で、世界銀行の初代総裁だ。つまり、このプロジェクトは金融資本と深い関係がある。 グラハムは1963年8月、ジョン・F・ケネディ大統領が暗殺される3カ月前に自殺、会社は妻のキャサリン・グラハムが引き継いだ。新社主にはポリーという友人がいたが、この女性はフランク・ウィズナーの妻である。 プロジェクトには有力メディアの幹部が協力している。例えば、CBSの社長だったウィリアム・ペイリー、TIMEやLIFEを発行していたヘンリー・ルース、ニューヨーク・タイムズ紙の発行人だったアーサー・シュルツバーガー、クリスチャン・サイエンス・モニターの編集者だったジョセフ・ハリソン、フォーチュンやLIFEの発行人になるC・D・ジャクソンなどだ。ジョン・F・ケネディ大統領暗殺の瞬間を撮影した「ザプルーダー・フィルム」を隠すように命じたのは、このC・D・ジャクソンだ。 ウォーターゲート事件の影響なのか、日本ではキャサリン・グラハムを「言論の自由」の象徴だと思い込んでいる人がいるようだが、実体は違う。同紙はベトナム戦争に賛成するなど好戦的だ。21世紀に入り、その傾向は強まっている。そうした視点からデタント(緊張緩和)へ舵を切ったリチャード・ニクソン大統領を失脚させたウォーターゲート事件を見直すことも無意味ではないだろう。 このスキャンダルの調査で中心になったのは若手記者だったボブ・ウッドワードとカール・バーンスタイン。ウッドワードの情報源「ディープスロート」から得た情報を利用してバーンスタインが取材し、記事を書いていたようだ。 ウッドワードは海軍出身で、トーマス・モーラー海軍作戦部長(後に統合参謀本部議長)とアレキサンダー・ヘイグとの連絡係として1969年から70年までホワイトハウスに出入りしていた。当時、ヘイグはヘンリー・キッシンジャー大統領補佐官の軍事顧問だ。 そしてウッドワードをメディアの世界へ導いたのはワシントン・ポスト紙のポール・イグナチウス社長。(Russ Baker, “Family of Secrets”, Bloomsbury, 2009)イグナチウスは1969年まで海軍長官を務めていた。 ウッドワードの上司になるベンジャミン・ブラドリーは大戦中、海軍情報部に所属していた人物。ブラドリーが再婚した相手、アントワネット・ピノチョトの姉、マリーが結婚した相手はCIAの幹部だったコード・メイヤー。パリのアメリカ大使館で働いていた際、ブラドリーはアレン・ダレスの側近で秘密工作に関わっていたジェームズ・アングルトンに協力している。アングルトンの部下で、平和運動を監視していたリチャード・オバーともブラドリーは親しかった。(Deborah Davis, “Katharine The Great”, Sheridan Square Press, 1979) 一方、バーンスタインは1977年にワシントン・ポスト紙を辞め、その直後に「CIAとメディア」という記事をローリング・ストーン誌に書いている。それによると、400名以上のジャーナリストがCIAのために働き、1950年から66年にかけて、ニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員に架空の肩書きを提供しているとCIAの高官は語ったという。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977) また、最近では、フランクフルター・アルゲマイネ紙(FAZ)の元編集者、ウド・ウルフコテもドイツを含む多くの国でジャーナリストがCIAに買収されていることを明らかにした。人びとがロシアに敵意を持つように誘導するプロパガンダを、そうしたジャーナリストは展開しているのだという。 情報操作のシステムとしては、1980年代に作られたBAPを忘れてはならない。イスラエルのパレスチナにおける破壊と殺戮がエスカレートし、イギリスの労働党が親イスラエルから親パレスチナへ転換、ヨーロッパの内部でもイスラエル批判が高まった時代のことだ。 そうした状況を懸念したロナルド・レーガン米大統領は1983年にルパート・マードックとジェームズ・ゴールドスミスといった親イスラエル派で知られるメディア界の大物を呼び、軍事や治安問題で一緒に仕事のできる「後継世代」について語ったのが始まりだとされている。BAPメンバーには米英の有力メディアの幹部が参加、イギリスではイスラエル政府やネオコンの傀儡だったトニー・ブレア英首相を支えた。 そして、このメディア人脈は今、ヒラリー・クリントンを支援している。
2016.10.11
ヒラリ・クリントンがウォール街と緊密な関係にあることは有名な話だと思うが、その事実が具体的に現れると怒りを呼び起こすようだ。民主党は「全てロシアが悪い」という宣伝で乗り切るつもりのようだが、バーニー・サンダースを支持していた人々は離反する可能性が高まった。 7月12日にサンダースがクリントン支持を表明した際、最低時給15ドルの実現、社会保障制度の拡充、死刑制度の廃止、炭素税の導入、マリファナの合法化、大規模な刑事裁判改革、包括的な移民制度改革、アメリカ先住民の人権擁護などのほか、大きすぎて潰せないという銀行の解体、21世紀版のグラス・スティーガル法(銀行業務と証券業務の分離)を成立させることなどで合意したというが、そうした「約束」を守るような人間ではないことが再確認されたと言える。TPPについての発言も信用はできないだろう。 ドナルド・トランプと自分しか選択肢はないという前提で、クリントン陣営はトランプの過去を必死に暴き、相対的優位に立とうとしている。クリントンは金融資本のほか、戦争ビジネス、ネオコン/シオニスト、ムスリム同胞団など支える柱は多いのだが、その中に庶民は含まれていない。 万一の場合はロシアがハッキングして選挙結果を操作したというようなキャンペーンを始めそうだが、そうした主張をする人びとはハッキングできることを知っているのだろう。現在、アメリカで使われている投票システムは操作できると指摘されてきたが、実際にアメリカの支配層が操作している可能性もある。
2016.10.10
10月4日付けのワシントン・ポスト紙は、5日にアメリカ政府はシリアのバシャール・アル・アサド政権に対する軍事攻撃を検討すると報じた。バラク・オバマ政権はロシア政府に対して軍事行動の可能性を通告、その反応を見ようとしたのだろう。 それに対し、ロシア国防省はアメリカ側のリークを重く受け取り、シリアに配備されている防空システムのS-300やS-400は侵入してきた航空機やミサイルを撃墜すると6日に発表している。ロシア海軍の基地があるタルタスへS-300を移動させたともいう。 アメリカ軍が主導する連合軍は9月17日、シリア北東部の都市デリゾールでダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)に対する大規模な攻勢の準備をしていたシリア政府軍をF-16戦闘機2機とA-10対地攻撃機2機で空爆、80名とも言われる兵士を殺し、多くを負傷させた。 アメリカ側はミスだと強弁しているが、現在の戦闘システムや現場の状況から考えて計画的な攻撃だった可能性はきわめて高い。今後もシリア政府の承認を受けずに軍事作戦をシリア領内で展開している、つまり侵略している連合軍がシリア政府軍を攻撃することは十分にありえる。S-300やS-400を使うと宣言された中、パイロットが乗った戦闘機や爆撃機が侵入してくる可能性は小さいが、巡航ミサイルによる攻撃はあると見られている。 これまでもS-300やS-400は配備されていたのだが、使用されていない。9月17日もそうだが、イスラエル軍はシリアに対する空爆を繰り返しているわけで、使う局面はあったはず。当然、シリアやイラン側には不満があっただろう。 ジョン・マケイン上院議員のようなネオコン/シオニストはリビアの時と同じように飛行禁止空域を設定して地上の手先の武装集団(アル・カイダ系にしろ、そこから派生したグループにしろ、タグを付け替えただけで基本的には同じ傭兵集団)を守り、アメリカ主導の連合軍がシリア政府軍を攻撃するという戦術を繰り返そうとしている。 それに対し、好戦派のジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長でさえ、ロシアやシリアと戦争になると警告しているが、ワシントン・ポスト紙のリーク記事を見ると、ネオコンはリビアの再現に執着しているようだ。 2013年には3月と8月に化学兵器が使われたと見られる攻撃があり、それをシリア政府軍の責任にしてアメリカ政府は軍事侵略を狙った。いずれもアメリカ側の主張は嘘で、自分たちが手先として使っている武装勢力が使った可能性が高いことが判明している。(これは本ブログで何度も指摘しているので、今回は詳細を割愛する。) アメリカ側の主張が嘘だということは判明しつつある中、9月3日に地中海からシリアへ向かって2発のミサイルが発射されている。このミサイル発射はロシアの早期警戒システムがすぐに探知、明らかにされるが、ミサイルは途中で海へ落下してしまった。イスラエル国防省はアメリカと合同で行ったミサイル発射実験だと発表しているが、事前に警告はなく、攻撃を始めたとも見られている。ミサイルはジャミングなど何らかの手段で落とされたのではないかと推測する人もいる。 この当時、アメリカの国防長官はチャック・ヘーゲル、統合参謀本部議長はマーティン・デンプシー。ふたりともアル・カイダ系武装集団やダーイッシュを危険だと考え、シリアへの軍事侵略には消極的だった。それに対し、今はアシュトン・カーターとジョセフ・ダンフォードで、いずれも好戦派だ。 その前年、2012年にはシリア政府軍がホムスでの住民を虐殺したと西側の政府やメディアは宣伝、軍事侵略の口実にしようとしていたが、これも嘘がばれてしまう。当時、現地を調査した東方カトリックの修道院長はそうした宣伝を否定、住民を殺したのは反政府軍のサラフ主義者や外国人傭兵だと報告している。 そして、その修道院長は「もし、全ての人が真実を語るならば、シリアに平和をもたらすことができる。1年にわたる戦闘の後、西側メディアの押しつける偽情報が描く情景は地上の真実と全く違っている。」と書いた。また、現地で宗教活動を続けてきたキリスト教の聖職者、マザー・アグネス・マリアムも外国からの干渉が事態を悪化させていると批判している。 最近、アレッポからアメリカへ帰ったジャーナリストも西側で語られているシリア政府を悪玉にする話が嘘だと報告している。
2016.10.09
アメリカの石油生産量が減少しているようだ。2015年6月のピーク時は日産960万バーレルだったが、今年は9月9日時点では11%減の日産850万バーレル。原油価格の大幅な値下がりで生産コストの高いシェール・ガス/オイル業界が壊滅的なダメージを受けているはずでこうしたことも影響しているだろう。 原油価格の下落を仕掛けたのはアメリカとサウジアラビアだと言われているが、サウジアラビアの経済も危機的な状態。政府から巨大建設企業へ支払われるべきものが支払われず、兵士や労働者の中には賃金を7カ月にもわたり、受け取っていない人もいるという。この兵士はインド、パキスタン、スリランカの出身者が多く、労働者の大半も出稼ぎ。賃金の支払いは国際問題につながる。 石油に依存しているサウジアラビアだけでなく、アメリカも経済基盤は弱く、現在の状態が続けば遠くない将来に崩壊する。アメリカの場合、ベトナム戦争の終盤、1971年にリチャード・ニクソン大統領はドルと金の交換を停止すると発表、73年から世界の主要国は変動相場制へ移行しているが、この段階でアメリカ経済は身動きのとれな状態になっていたと言える。 基軸通貨のドルを発行する特権を利用、生き延びるしかなくなったのだが、単純に大量発行すればドルの価値が暴落、ドルは基軸通貨の地位から陥落してしまう。そこで考えられたのがペトロダラーの仕組みだった。 アメリカは産油国に対して決済をドルにするように求め、集まったドルでアメリカの財務省証券や高額兵器などを購入させ、だぶついたドルを還流させようとしたのだ。このシステムでは、例えば、石油が欲しければドルの発行量を増やし、産油国へ流れたドルを回収するだけのこと。日本や中国が財務省証券を大量に購入してきたのも同じ理由だろう。一種のマルチ商法だ。 その代償としてニクソン政権がサウジアラビアに提示したのは、同国と油田地帯の軍事的な保護、必要とする武器の売却、イスラエルを含む中東諸国からの防衛、そしてサウジアラビアを支配する一族の地位を永久に保障するというもので、この協定は1974年に調印されたという。これと基本的に同じ内容の取り決めを他のOPEC諸国も結んだという。 1970年代に始まったドル回収システムのひとつは投機市場の拡大。現実世界に流通するはずのドルを投機市場へ流し込もうということだ。そのために規制緩和が推進され、「金融ビッグバン」ということになる。新自由主義をアメリカやイギリスの支配層が拡大させた一因はそこにあるだろう。 アメリカに限らず、資本主義世界の巨大企業はため込んだ儲けを社会に還流させようなことはしない。そこで「カネ余り」になり、経済活動は行き詰まる。その滞留した資金の受け皿として投機市場が用意され、「バブル」になる。 投機市場では実際に流れ込んだ資金量を遙かに上回る数値が表示され、大儲けした気になる人もいるが、それは幻影にすぎない。市場へ流入する資金量が減れば相場は下がり、幻影は消えていく。例えば、2008年9月にリーマン・ブラザーズが破産法第11条(日本の会社更生法、あるいは民事再生法に相当)の適用を申請、つまり倒産したのもそうした結果だ。 通常はそれで幻影が消え、本来の姿が現れるのだが、この時、アメリカの当局は「大きすぎて潰せない」として巨大金融機関を救済、「大きすぎて処罰できない」ということで責任者が適正に処罰されることはなかった。現実を幻影に合わせることにしたのだが、それには資金が必要になる。当然、尻ぬぐいは庶民に押しつけられた。 新自由主義の仕組みは残り、同じことを繰り返すことになる。安倍晋三首相は日銀の黒田東彦総裁と組んで「量的・質的金融緩和」、いわゆる「異次元金融緩和」は推進、資金を世界の投機市場へ流し込んだが、目的は投機市場へのテコ入れ。日本経済を立て直すことなど不可能だ。これは政府も日銀も承知しているだろう。 投機市場へのテコ入れにはETF(上場投資信託)やGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も利用され、庶民がリスクを負うことになった。大損することは最初から見通されていたはずだ。 アメリカにしろ、日本にしろ、支配層が目指している方向は一貫している。世界を支配し、富を独占することだ。国という仕組みは庶民の意思も反映されるようになっているので、彼らは破壊したがっている。ファシズムを欧米の巨大資本が支援していた理由もそこにある。 フランクリン・ルーズベルト大統領は1938年4月29日、ファシズムについて次のように語っている。「もし、私的権力が自分たちの民主的国家より強くなるまで強大化することを人びとが許すなら、民主主義の権利は危うくなる。本質的に、個人、あるいは私的権力をコントロールするグループ、あるいはそれに類する何らかの存在による政府の所有こそがファシズムだ。」 1932年の大統領選挙でウォール街はハーバート・フーバー大統領の再選を目指していた。この人物はスタンフォード大学を卒業した後、鉱山技師としてアリゾナにあるロスチャイルドの鉱山で働き、利益のためなら安全を軽視するタイプだったところを見込まれて「出世」している。(Gerry Docherty & Jim Macgregor, “Hidden History,” Mainstream Publishing, 2013) ところが、このフーバーが1932年の大統領選挙でニューディール派のルーズベルトに負けてしまう。そこで、JPモルガンを中心とする巨大金融資本は1933年から34年にかけて反ニューディール派のクーデターを計画している。バトラーの知り合いで、クーデター派を取材したジャーナリストのポール・フレンチによると、彼らはファシズム体制の樹立を目指すと語っていたという。この計画はスメドリー・バトラー海兵隊少将らが議会で証言で明らかになっている。 このJPモルガンは日本の支配層とも深い関係がある。切っ掛けは関東大震災。復興資金を調達するため、日本側はJPモルガンに頼り、それ以降、日本の政治経済はこの金融機関の影響下に入ったのだ。 1932年にジョセフ・グルーが駐日大使として日本へ来るが、この人物のいとこはジョン・ピアポント・モルガン・ジュニア、つまりJPモルガンの総帥と結婚している。それだけの大物を送り込んできた理由のひとつは対日投資にあるだろう。グルーは日本軍が真珠湾を攻撃した後も日本に滞在、1942年に帰国する直前、岸信介からゴルフを誘われている。(Tim Weiner, "Legacy of Ashes," Doubledy, 2007) JPモルガンと最も近い関係にあった日本人は井上準之助と言われている。三井財閥の大番頭を務めていた団琢磨はアメリカのマサチューセッツ工科大学で学んだ人物で、アメリカの支配層と太いパイプを持っていた。 新自由主義に食い荒らされた国々は死が間近に迫っている。支配層はその国を放棄し、直接投資に乗り出そうとしている。そして考えた仕組みがTPP(環太平洋連携協定)、TTIP(環大西洋貿易投資協定)、TiSA(新サービス貿易協定)の3点セット。これは明らかにファシズムであり、第2次世界大戦の前から彼らが目論んでいたことだ。 この長期計画を巨大資本が放棄するとは思えない。安倍晋三政権の動きを見ていると、強引にヒラリー・クリントンを大統領にさせ、屁理屈を使って3点セットを実現するとアメリカ側から言われているようにも思える。 金融システムを巨大資本が支配する仕組みがアメリカに出現したのは連邦準備法が制定された1913年だが、これにはJPモルガンの創設者であるジョン・ピアポント・モルガンが関係している。 ニッカー・ボッカー信託が破綻、その救済をモルガンが拒否したことから連鎖倒産が始まって相場が暴落、それを口実にしてセオドア・ルーズベルト大統領が国家通貨委員会を設立、巨大金融機関の代表がジキル島にあるモルガンの別荘に集まって秘密会議を開催、そこで連邦準備制度の青写真が作り上げられたのだ。この法律によってアメリカの通貨政策は民間の銀行が支配することになり、ドルが基軸通貨になってからは、そうした銀行を世界の金融を支配することになる。 ドルが基軸通貨でなくなると、この仕組みが破綻してしまう。そうした動きの震源地は中国とロシアであり、その意味でもアメリカの巨大資本は中国やロシアを破壊しようと躍起になっている。アメリカの軍部は懸念しているようだが、ヒラリーの周辺にいるネオコンたちはロシアとの核戦争を辞さないという姿勢だ。彼らがその意味を理解しているかどうかは不明だが。
2016.10.08
アメリカ軍が主導する連合軍の攻撃からシリア政府軍を守るため、ロシアは防空システムのS-300やS-400を増強するようだ。連合軍は9月17日にF-16戦闘機2機とA-10対地攻撃機2機を使い、シリア北東部の都市デリゾールでシリア政府軍を空爆して60名とも80名とも90名とも言われる兵士を殺した。その時はミスだと強弁していたが、最近は露骨にシリア政府軍を攻撃する姿勢を見せている。そうした姿勢に対するロシア側の回答だと言えるだろう。 9月17日の攻撃も現在の戦闘システムや現地の状況を考えれば意図的な攻撃だった可能性が高く、その後もシリア軍の進撃を止めるために重要な橋を破壊するなどアル・カイダ系武装勢力やダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)を守ろうとしてきた。「穏健派」のタグをつけるのも面倒になってきたようだ。 シリアの反政府軍に「穏健派」がいないことはアメリカ軍の情報機関DIAが2012年8月に作成した報告書で指摘されている。シリアで政府軍と戦っている戦闘集団の主力をサラフ主義者(ワッハーブ派)、ムスリム同胞団、そしてAQI(アル・カイダ系武装集団)で、西側、ペルシャ湾岸諸国、そしてトルコからの支援を受けているとしている。この報告書はホワイトハウスへ送られているので、バラク・オバマ大統領もそうしたことを承知しているはず。 アメリカ政府が方針を変えず、そうした「穏健派」への支援を続けているとシリア東部にサラフ主義の支配地が作られるとDIAは予測していたが、それはダーイッシュという形で現実になった。そのダーイッシュをアメリカ政府が守ろうとするのは必然だろう。 アメリカがサウジアラビアやイスラエルと手を組み、サラフ主義者やムスリム同胞団を使って意に沿わぬ政権、つまりシリアやイランの体制やヒズボラを倒そうとしていると指摘されたのは2007年のこと。シリアやリビアで体制転覆プロジェクトが顕在化する4年前ということになる。 サラフ主義者(ワッハーブ派)やムスリム同胞団はアル・カイダ系武装集団やダーイッシュの核になっている人びとで、サウジアラビア王室と雇用関係にある。つまり傭兵。シリアやリビアでの戦闘は内乱でなく、傭兵を使った侵略だ。それを「残虐な独裁者に対する民衆の蜂起」というストーリーにして広めているのが西側の有力メディア。 西側の支配層はベトナム戦争や中央アメリカでの独裁体制支援での失敗を反省、プロパガンダを重視している。ベトナム戦争では国内で反戦運動が敗北の原因だと考え、反戦を装ったプロパガンダでロシアやシリアを攻撃、中央アメリカで手先が行った残虐な行為をロシアやシリアが行っているかのような話にしている。そうした演出を広告会社が請け負っていることは本ブログでも指摘した。「大東亜共栄圏」を宣伝しながら侵略したかつての日本と同じことを繰り返している。その時と同じように、少なからぬ日本人はそうした嘘を受け入れているようだ。
2016.10.07
ニューヨーク・タイムズ紙はドナルド・トランプが1995年に約9億1600万ドルの損失を申告、18年間にわたって連邦所得税の納付を逃れられた可能性があると報じた。 ほかの有力メディアと同じように同紙はネオコンの影響下にあり、今回の大統領選挙ではヒラリー・クリントンを支持している。そのクリントンへの援護射撃のつもりだったのかもしれないが、そのクリントンも同じ手法を使って「節税」していることが判明した。ニューヨーク・タイムズ紙も同じことをしているようだ。つまり、問題はトランプ個人にあるのではなく、富裕層に有利な仕組みになっている税制にあるのだ。 現在のアメリカが富裕層や巨大企業の租税回避に最も熱心な国だということは本ブログでも紹介したことがある。2010年にアメリカではFATCA(外国口座税務コンプライアンス法)が発効、アメリカ以外の国の金融機関はアメリカ人の租税や資産に関する情報をアメリカ側へ提供する義務を課されたのだが、その一方でアメリカは自分たちが保有する同種の情報を外国へは提供しないことになっている。この法律によって、アメリカは世界一のタックス・ヘイブンになったのである。 そうしたことから、ロスチャイルド家の金融持株会社であるロスチャイルド社のアンドリュー・ペニーは昨年9月、サンフランシスコ湾を望む法律事務所で講演した中で、税金を払いたくない富豪は財産をアメリカへ移すように顧客へアドバイスするべきだと語ったわけだ。 かつてはスイス、ルクセンブルグ、オランダ、オーストリア、ベルギー、モナコなどがタックス・ヘイブン(租税回避地)として有名だったが、1970年代からイギリスのロンドン(シティ)を中心とするオフショア市場のネットワークが人気を博した。ロンドンのシティを中心に、ジャージー島、ガーンジー島、マン島、ケイマン諸島、バミューダ、英領バージン諸島、タークス・アンド・カイコス諸島、ジブラルタル、バハマ、香港、シンガポール、ドバイ、アイルランドなどがネットワークで結びついている。信託の仕組みを利用して資金を闇の中に沈めている。そして今はアメリカ。 現在の富裕層は自分たちが「社会の一員」だとは考えず、「社会的責任」があるとも思っていない。自分たちは支配者であり、情報と富を独占し、税負担を庶民に押しつける権利があると信じているようだ。安倍晋三たちが望んでいる「新憲法」にもそうした彼らの考え方が反映されている。庶民に基本的人権を認める気はない。日本政府は福祉や学問の予算を減らそうとしている。庶民から学ぶ権利を奪おうとしているのだろう。教育には洗脳という側面があるものの、学ぶ庶民は支配層にとって邪魔な存在。自分たちの使う幻術を見破り、支配しにくくなる。三浦朱門の言葉を借りるならば、庶民は「実直な精神だけを養っておいてもらえばいい」ということだ。
2016.10.06
アメリカの国防総省がプロパガンダのため、イギリスの広告会社ベル・ポッティンガーに5億4000万ドル(約550億円)を支払ったと伝えられている。偽情報を流し、侵略戦争に人びとが賛成するように誘導することが彼らの仕事だ。 昔から情報機関が行っていることだが、3種類のプロパガンダを実行している。第1(白色)は発信源を明示したもの、第2(灰色)は発信源を明示しないもの、第3(黒色)は事実に反する発信源を示すもので、偽映像の制作も含まれている。シリアでダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記する)が登場した際、斬首など残虐な場面が流れたが、すぐにフェイクだと指摘されていたことを思い出す。 広告会社が戦争への道を切り開く宣伝を行ったことで有名な例は、1990年8月にイラク軍がクウェートへ攻め込んだ後にアメリカ下院の人権会議(公的なものではない)における少女「ナイラ」の「証言」だろう。 その「証言」によると、アル・イダー病院でイラク兵が赤ん坊を保育器の中から出して冷たい床に放置、赤ん坊は死亡したという。いかにイラク軍が残虐かを彼女は涙ながらに訴えた。心を動かされた人も少なくないだろう。が、この「証言」には大きな問題があった。「証言者」は駐米クウェート大使の娘で、現場にはいなかったのである。広告会社ヒル・アンド・ノールトンの書いたシナリオに従って作り話をしたのである。迫真の演技だったが、そこに事実はなかった。そして1991年1月にアメリカ軍を中心に編成された連合軍がイラクを攻撃したわけだ。 この戦争は3月まで続くのだが、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領は排除しないまま停戦、ネオコン/シオニストは激怒する。ネオコンの中核グループに属すポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)はその時、シリア、イラン、イラクを5年から10年で殲滅すると口にしたという。これは欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)の元最高司令官、ウェズリー・クラークの話だ。 1991年12月のソ連が消滅、翌年の初めにはアメリカ国防総省でDPGの草案が作成されている。アメリカを「唯一の超大国」になったと位置づけ、新たなライバルの再登場を阻止すると宣言している。潜在的ライバルと想定されているのは、旧ソ連、西ヨーロッパ、東アジア。エネルギー資源が存在する南西アジアも注目地域だと考えれている。 当時の国防長官はリチャード・チェイニー、次官はポール・ウォルフォウィッツで、文書の作成はウォルフォウィッツが中心になっていたことから、このDPG草案は「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。 この世界制覇プランができると、西側支配層の傀儡であるボリス・エリツィンがロシアで独裁体制を強化、国民の資産を略奪してくが、それと同時にNATOを東へ拡大して支配地域を広げていく。これはロナルド・レーガン政権の約束に反する行為だが、アメリカ支配層は約束を守らない。 NATOを拡大するだけでなく、既存の国を破壊しはじめ、ユーゴスラビアが最初のターゲットになった。アメリカ支配層の働きかけもあり、1991年6月にスロベニアとクロアチアが独立を宣言、同年9月にマケドニアが、翌年の3月にはボスニア・ヘルツェゴビナが続き、4月になるとセルビア・モンテネグロがユーゴスラビア連邦共和国を結成し、社会主義連邦人民共和国は解体された。 さらに、コソボのアルバニア系住民が連邦共和国から分離してアルバニアと合体しようと計画、それをNATOが支援する。この活動を主導したイブラヒム・ルゴバ率いるLDK(コソボ民主化連盟)は非暴力で、セルビア側も事態の悪化を懸念して運動を許していた。1991年から92年にかけてLDKは地下政府を創設して選挙も実施しているが、セルビアの治安当局はこれも許容している。 1992年2月にフランスで和平交渉が始まり、セルビア側はコソボの自治権を認め、弾圧もやめることで合意、交渉はまとまりかけたが、平和的な解決を望まないNATOはセルビアが受け入れられない条件を出した。つまり、車両、艦船、航空機、そして装備を伴ってNATOの人間がセルビアを自由に移動できるという項目が付け加えたのだ。つまり、セルビアをNATOは占領、支配するということだ。(David N. Gibbs, “First Do No Harm”, Vanderbilt University Press, 2009) この条件をセルビア政府が受け入れられなかったのは当然。日本の外務省などは「セルビアがNATO軍のコソボ展開を受け入れず決裂」したと説明している。アメリカの属国の官僚はこうした言い方をする。 1994年になると、アル・カイダ系の武装集団がアルバニアで活動を開始、ボスニアやコソボにも手を広げる。アメリカが傭兵を投入して戦乱を広げ、軍事介入しやすい環境を作り始めたわけだ。中東や北アフリカでもアメリカ支配層は基本的に同じ手口を使っている。 先制攻撃を正当化するために西側は軍事的な緊張を高めるだけでなく、セルビアを悪魔化するプロパガンダを開始した。そのキーワードに選ばれたのは「人権」。有力メディアだけでんかう、投機家のジョージ・ソロスと関係がある人権擁護団体のHRWもプロパガンダに参加する。(この辺の事情は拙著『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』に記載してある。) そうした宣伝の背後には、ロバート・ドール米上院議員と密接な関係にあるアルバニア・ロビーが存在、コソボ紛争の宣伝戦で中核的な役割を果たしたのはルダー・フィンという広告会社である。(David N. Gibbs, “First Do No Harm”, Vanderbilt University Press, 2009)コソボのアルバニア勢力は1992年10月に同社と契約を結んでいる。(Diana Johnstone, "Fools' Crusade," Monthly Review Press, 2002) 当初、ビル・クリントン政権はコソボに興味を持たず、1995年にデイトンで和平交渉が行われた際にもコソボに関心を示していない。この態度はLDKのルゴバを窮地に追い込み、KLA(コソボ解放軍、UCKとも表記)の台頭を招いた。この武装勢力は1996年2月にコソボの北部にいたセルビア人難民を襲撃することから活動をスタートさせた。(Gregory Elich, 'The CIA's Covert War,'CovertAction Quarterly, April-June 2001) クリントン政権はユーゴスラビアに対する軍事介入に消極的だったが、ネオコンは諦めない。例えば、クリントンが大統領に就任した1993年の9月、彼らはボスニアへの軍事介入を求める公開書簡を発表、ウォール・ストリート・ジャーナル紙に掲載されている。 その書簡に署名した人物には、イギリスのマーガレット・サッチャー元首相、アメリカのジョージ・シュルツ元国務長官、フランク・カールッチ元国防長官、ズビグネフ・ブレジンスキー元国家安全保障問題担当大統領補佐官、ポール・ニッツェ、ジョージ・ソロス、ジーン・カークパトリック、アルバート・ウールステッター、ポール・ウォルフォウィッツ、リチャード・パールが含まれている。(Wall Street Journal, September 2, 1993)ネオコンのオンパレードだ。 西側の有力メディアや「人権擁護団体」はセルビアを攻撃するキャンペーンを展開するが、アメリカ政府は動かない。状況が変化したのは、国務長官がクリストファー・ウォーレンからマデリーン・オルブライトへ交代した1997年1月から。ウォーレンは戦争に消極的だったが、オルブライトは逆だった。このオルブライトを国務長官にするよう働きかけたのはヒラリー・クリントン、つまりビルの妻だとされている。 そして1998年にモニカ・ルウィンスキーのスキャンダルが浮上、ビル・クリントンは身動きのとれない状態になる。この年の秋にオルブライトは空爆を支持すると表明、1999年3月にNATO軍は偽情報に後押しされる形でユーゴスラビアを先制攻撃した。 決して親セルビアとは言えないヘンリー・キッシンジャーでさえ、1998年10月から99年2月までの期間における停戦違反の80%はKLAによるものだと語っている。(David N. Gibbs, “First Do No Harm”, Vanderbilt University Press, 2009)西側メディアが盛んに宣伝していた人権話も嘘で、NATOには先制攻撃する正当な理由はなかった。 その後、ウォルフォウィッツ・ドクトリンを作成したグループには好都合なことに、2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンにある国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃され、国内のファシズム化、国外での軍事侵略が始まる。途中、グルジア(ジョージア)の南オセチアへの奇襲攻撃でロシアが予想以上に強いことが判明、その後はアル・カイダ系武装集団など傭兵を前面に出すようになった。 シリアでのプロパガンダはシリア・キャンペーンなる団体が中心的な役割を果たしている。この団体と連携している白ヘルの主要な資金源であるUSAIDはCIAの資金を供給する機関として設立された。シリア・キャンペーンは白ヘルと同じように国連や赤十字を敵視、シリアに飛行禁止空域を作るように要求している。つまり、シリア上空はアメリカ軍とその同盟軍のみが飛行、ダーイッシュやアル・カイダ系武装集団を空爆するロシアやシリアの飛行は禁止させるべきだというわけだ。そうしたことを強行すれば、ジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長が上院軍事委員会で語ったように、ロシアやシリアと戦争になる可能性が高い。 シリア・キャンペーンを創設したのはパーパスという広告会社だとされている。そうした関係からか、シリア・キャンペーンのプロジェクト・ディレクターをしているアンナ・ノランはパーパスの上級戦略担当だった人物。 そのパーパスはアバーズというキャンペーン会社からスピンオフしたようだが、そのアバーズはリビアに飛行禁止空域を設定するように主張していた。その結果、NATOの空爆とアル・カイダ系武装集団の地上戦(イギリスなどが特殊部隊を潜入させていたが)の連係プレイでムアンマル・アル・カダフィを倒し、「テロリスト」が跋扈する破綻国家を作り上げた。 2001年9月11日以降、西側メディアはプロパガンダ機関化が急速に進み、「報道」は嘘で溢れている。その中から事実を探し出すのは至難の業だ。そうした状況を作り出した原因は、現代人の大半が騙されたがっていることにあるとも指摘されている。広告会社は人びと、特に「リベラル」や「革新」に色分けされている人びとが好む話、居心地良く感じる幻想を作り、プロパガンダに利用、効果を上げている。そもそも、支配層と本当に対立するような主張をしたくない人が大半だろう。西側の有力メディアを有り難がっている人は、肩書きや経歴が何であれ、信用しないことだ。
2016.10.04
アメリカ軍が主導する連合軍はシリア北東部の都市デリゾールでの軍事作戦を活発化させている。9月17日にシリア北東部の都市デリゾールでシリア政府軍をF-16戦闘機2機とA-10対地攻撃機2機で攻撃、62名とも80名以上とも90名以上とも言われる兵士を殺したのに続き、28日には2つの橋を破壊、30日にも別の橋2つを爆撃した。政府軍の進撃を止め、ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)を守ることが目的だと見られている。 17日にはダーイッシュに対する大規模な攻撃を準備中だったシリア政府軍を空爆、それから7分後にはダーイッシュの部隊が地上でシリア政府軍に対する攻撃を開始している。空と陸で連携していた可能性が高いことは言うまでもない。アメリカの好戦派は形振りを構っていられなくなっているようだ。 シリアを侵略してバシャール・アル・アサド政権を倒すため、アメリカをはじめとする国々はサラフ主義者/ワッハーブ派やイスラム同胞団を中心とする傭兵集団を投入してきたが、その目論見は昨年9月30日にロシア軍が空爆を始めてから大きく揺らいでいる。停戦を利用して侵略軍の態勢を立て直し、携帯型の防空システムMANPADや対戦車ミサイルTOWを大量に供給して反撃させようとしてきた。最近では特殊部隊をシリアへ増派、いくつもの拠点を作りつつあると伝えられている。 イランのメディアによると、シリア北部にある7つの基地に特殊部隊を派遣、そのうちマブロウカには少なくとも45名、アイン・イッサには100名以上、コバネには300名以上、タル・アブヤダには少なくとも200名だとされている。勿論、こうしたアメリカ軍の軍事作戦をシリア政府は承認していない。
2016.10.03
9月30日に開かれた衆院予算委員会で稲田朋美防衛相は涙ぐみ、言葉を詰まらせたと報じられている。辻元清美議員から8月15日の全国戦没者追悼式に出席しなかったことなどを問われた結果だ。 稲田が欠席したのは8月13日から16日にかけてジブチを訪問したためだが、その訪問が必要だったのかどうかが疑問視されている。その時に置かれた立場で言動がくるくる変化するのは政治家にありがちなことだが、彼女も例外ではなかった。 稲田防衛相は9月17日から南スーダンを訪問することになっていたが、これは15日に防衛省が訪問の中止を発表している。稲田が抗マラリア薬服用の副作用によるアレルギー症状を発症したのが原因だという。 しかし、彼女は15日に羽田空港からアメリカへ向かい、その日にCSISで元気に講演している。このシンクタンクは1962年にジョージタウン大学の付属機関として設立されたが、CIAとの緊密な関係が知られるようになり、1987年に関係は解消されたことになっている。現在はネオコン系と見られている。 そのCSISで稲田は15日、元気に講演した。司会進行は日本でおなじみのマイケル・グリーン。その講演の中で彼女はアメリカ海軍が行っている「航行の自由作戦」への支持を表明、両国は共同で「巡航訓練」などを南シナ海で実行すると語っている。 「航行の自由作戦」に加わるように聞こえるが、そうなると日本と中国との関係は決定的に悪化する可能性がある。今年6月後半、中国の程永華駐日大使は南シナ海に関する要求で譲歩したり主権を放棄することは戦争が勃発する事態になってもありえないと日本側に警告したと言われ、稲田の発言は中国との戦争を厭わないという宣言と理解されても仕方がないからだ。中国と戦争を始めるということは、ロシアとも戦争を始めるということだ。 非常に挑発的な内容なのだが、演説の様子から判断すると、彼女は自分の発言を理解できていなかったようだ。「先生に与えられた課題をこなそうと一生懸命の生徒」にしか見えない。子どもの演説だ。そうした人物が予算委員会で立ち往生しても不思議ではない。 ところで、アメリカはジブチをアフリカ支配の拠点にしている。その国へアメリカはJCTF(統合連合機動部隊)約1800名を駐留させ、無人機(ドローン)の基地もあり、偵察だけでなく攻撃も実行されている。そこへ自衛隊も派遣されているわけだ。 南スーダンは2011年7月にスーダンから分離独立した国。1983年から2005年にかけての内戦を経てのことだ。 内戦が始まった大きな理由は油田の発見にある。アメリカの巨大石油会社シェブロンが1974年に現在のスーダンと南スーダンの国境周辺で油田を発見、南スーダンにあたる地域でSPLM(スーダン人民解放軍)が反政府活動を開始したのである。SPLMを率いていたジョン・ガラングはアメリカのジョージア州にある特殊部隊の本拠地、フォート・ベニングで訓練を受けた人物だ。 内戦の途中、1990年代の終盤にスーダンでは自国の石油企業が成長、アメリカの石油企業は利権を失っていき、中国やインドなど新たな国々が影響力を拡大し始めていく。言うまでもなく、アメリカの巨大資本にとっては好ましくない展開だ。 そうした状況の中、アメリカでは2001年1月にネオコン/シオニストに担がれたジョージ・W・ブッシュが大統領に就任した。この年の9月11日にニューヨークの世界貿易センター、バージニア州アーリントンにある国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃され、国内ではファシズム化の推進、国外では侵略戦争を開始する。 攻撃から10日後、統合参謀本部を訪れたウェズリー・クラーク元欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)最高司令官はかつての同僚から、ドナルド・ラムズフェルド国防長官の周辺がイラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そしてイランを攻撃する計画を立てていることを聞かされる。(証言はココやココ) ジョージ・W・ブッシュ政権はイギリスやノルウェーと手を組み、スーダンの南部を拠点にしていたSPLMとスーダン政府を停戦させ、油田地帯は両者で分け合う形で南部は独立した。所期の目的、石油利権の獲得を一応、手にできる状況になったので、戦闘を止めたと言えるだろう。戦乱が続くかどうかは、欧米の巨大資本が自分たちの取り分に満足しているかどうかで大きく左右される。こうした展開を見れば、国境線に油田がある理由がわかる。(ウォルフォウィッツ・ドクトリンにあるように、ネオコンは最終的に世界の富全てを自分たちの取り分にしようとしている。) ちなみに、スーダン西部にあるダルフールでも資源をめぐる戦闘が2003年から激しくなった。当初、欧米の国々は南スーダンの石油利権に集中、ダルフールの殺戮を無視していたが、アメリカのネオコン/シオニストはダルフールへ積極的に介入した。その資源に目をつけた隣国チャドの政府が反スーダン政府のJEM(正義と平等運動)へ武器を供給したことも戦闘を激化させる一因になった。チャドの背後にはイスラエルが存在していると生前、リビアのムアンマル・アル・カダフィは主張していた。
2016.10.02
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