森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2020.06.24
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2020年5月号の生活の発見誌(52ページ)に次のような言葉がある。

症状を取り除きたいという気持ちはよく分かりますが、私は、症状を完全に取り除くことは難しいのではないかと思うし、その必要もないのではないかと思っています。
むしろ症状が少しぐらい残っているほうが、悩んでいる人の気持ちに一層寄り添える(共感できる)し、森田の学習を続けるモチベーションの維持にもつながるのではないでしょうか。

私はこの意見に同感です。
この話に関連して、山野井房一郎さんは、大勢の人の前で話すことができなかった。
それが修養が進んだころ、ビクビクハラハラしながらなんとかやり遂げることができた。
話しの最後に「これをもって神経症を克服したことを宣言します」といわれたそうだ。
本人としては心の中ではまだまだ苦しかったのではないかと思います。
でもやるべきことから逃げないで、やり遂げることができるようになった時点で神経症克服の宣言をされているのです。この心意気が大切だと思います。

森田では神経症の克服ついては、心の中で折り合いがついているかどうかについて問題にしていないのです。症状を取り除こうとして格闘することを止めて、目の前の日常茶飯事や仕事に取り組んでいるかどうかを見ているわけです。神経症の克服のかぎはまさにそこにあります。

そういう克服の仕方は、症状を取り除いてすっきりした気持ちになりたいと考えている人にとっては、受け入れがたい考え方だと思います。
目的が不安、恐怖、違和感、不快感に動じない人間になることを目指しているので、とても受け入れることはできないと思います。

では神経症の克服に当たってはどういう方向を目指していけばよいのでしょうか。
それは一口に言うと「生の欲望の発揮」に邁進していくことに照準を当てることです。
ではとらわれていることに対して、手をこまねいているだけなのですかという反論が聞こえてきそうです。間違いと思われるかもしれませんが、その通りです。
不安などを目の敵にして、対症療法で軽減させ取り除こうとする考えではありません。
不安を受け入れる、共存するという考え方です。
ここが森田療法と他の精神療法の違いとなっております。

不安というのは、もともと人間が生きていくうえでなくてはならないものです。
自然発動してくるものである。無くすることはできないし、無くする必要もない。
信号機と同じで注意信号を発してくれているのです。
黄色い信号が点滅している時は誰でもスピードを落として、周囲の様子を確認しながら慎重に運転します。これを無視していると、いずれ大事故を起こすことになるでしょう。
このように考えると不安の存在はありがたいものなのです。

それから不安の裏には欲望があるといいます。
欲望のみを追及していくと、弾みがついて暴走し取り返しのつかないことになります。
欲望は車でいえばアクセルです。アクセルを踏み込まないと車は決して前には進みません。
しかしいったん動き出した車はブレーキでコントロールしないと、すぐに事故になります。
命を失ったり、人様に迷惑をかけることになります。
ですから不安は、欲望の暴走を制御するというありがたい機能を果たしているのです。

そこのところを勘違いしてしまうと神経症で苦しむことになります。
生の欲望の発揮を無視して、不安そのものを取り除こうとして、格闘した結果が神経症なのです。
森田理論で不安の特徴や役割、欲望と不安の関係性をしっかりと理解することが肝心です。
これは生活の発見会などの集談会に参加して、集団学習として取り組みましょう。

そして不安を生活の中に活かしていくようになると、神経症とは縁が切れます。
不安、恐怖、違和感、不快感が発生したとき、2つの対応方法があります。
一つは将来に明るい展望が見込まれるものと人様に役立つことには、問題解決に向かって積極的に行動することです。
それ以外の時は、不安を受け入れて、不安と共存共栄を図ることです。
欲望と不安の調和を目指すのです。

そういう治り方というのは、気持ちとしてはすっきりとはしません。
不安がいつも付きまとっていて、うっとうしいと思うのが常であります。
それはたとえて言えば、人間誰にも無数の細菌がとりついています。
腸には無数の細菌が住み着いており、そのおかげで消化吸収が滞りなく行われているのです。
細菌は気持ち悪いと言って、取り除くことはできません。
また仮に取り除いてしまうと、自分の命は守ることはできない。
バランスを取りながら、腸内細菌と共存共栄を目指すことで、自分の身体の健康を維持して、延命できるという事を忘れてはなりません。





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Last updated  2020.06.24 06:49:04
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