全11件 (11件中 1-11件目)
1
[1] 読書日記 <一九六九年は我々にとって記念すべき年である。 哲学者たり、理学者たり、詩人、刺客、音楽家たる我が「読書クラブ」から、 “王子”が生まれたのだ。 これは偽王子であって、後々、学園に不幸をもたらす事件になったが、 我々としてはまずまずの満足である> との書き出しから始まる第一章「烏丸紅子恋愛事件」を皮切りに、5編の連作短編が 収められた、 桜庭一樹 「青年のための読書クラブ」(新潮社) を読了。 本の装丁は、いかにも「青年のための読書クラブ」というタイトルの響きをそのまま表現 したかのようで、古めかしく、美しい。 物語は、東京山の手のお嬢様学校・聖マリアナ学園の、あらゆる年代で起こった読書倶楽 部絡みの5つの事件を、その当事者たる読書倶楽部の面々が、自分たちの視点からその事件 を記録、記述したもので、寓話的。 それぞれの物語(事件)はどれも、華美で、饒舌な文体をもって単純化、戯画化されてお り、いかにも文学少女たちの書き残した手記であるよう。 年代と共に、その時代に合わせた文体が取り入れられており、年を経ることで文章がくだ けてくるのも面白い。 <ポニーテールにバルーンスカートを穿いて、 薄化粧でおしゃれして待ち合わせの場所に現れた。 学園にいるときとは別人の如き女っぷりであった。 くわえ煙草で、ハイヒールを輝かせてディスコクラブに入っていき、 馴染みの不良少年にしなだれかかった> <ここにいると、アポロが月に飛び出す音も、安田講堂で戦う声も、 すべてが聞こえる気がした。 新宿の花園神社に誘われて顔を出すと、 白塗りの男たちが暗黒神話の真っ最中だった> (→参照:唐十郎) ただ戯画化され過ぎている為に、各時代の空気的なものが、イメージままの(ステロタイ プ的な)60年代の学園紛争やアングラ、ジャズ喫茶であり、80年代バブル期の様相で、執筆 者(文章を綴っているの)が主に当時の女子校生という設定なのに、同時代的なリアリティ には欠けている。 連作短編集としての配列・構成は綺麗で、各編合わせて一本の長編として読める。 というか、一本の長編だけども連作短編集としても読める、と言った方が正しいか。 著者引用文献 エドモン・ロスタン 「シラノ・ド・ベルジュラック」(岩波文庫) シェイクスピア 「マクベス」(新潮文庫) ホーソン 「緋文字(ひもんじ)」(岩波文庫) バロネス・オルツィ 「紅はこべ」(創元推理文庫) 外部リンク 桜庭一樹『青年のための読書クラブ』|新潮社 桜庭一樹オフィシャルサイト Scheherzade - Entrance
2007年07月12日
コメント(0)
[1] 読書日記 パット・マガー「被害者を捜せ!」のメフィスト賞版。 <僕たちが忘れてしまった、 あの日死んだ僕のクラスメートの名前を教えてください> という趣向のミステリ、 辻村深月 「冷たい校舎の時は止まる」<上>(講談社ノベルス) 辻村深月 「冷たい校舎の時は止まる」<中>(講談社ノベルス) 辻村深月 「冷たい校舎の時は止まる」<下>(講談社ノベルス) を読了。 面白かった。 けど、多少「長い」と感じる。
2007年04月30日
コメント(0)
[1] 読書日記 <「あとは自分で考えろ」> と犯人(作者)に突き放されてしまった暗号の解読が、ほとんどできなかった 海猫沢めろん 「左巻キ式ラストリゾート」(イーグルパブリシング) を読了。 記憶喪失の主人公が、海沢猫めろんを助手にして、理事長から依頼された、学園でおこる 連続レイプ事件の捜査・解明を目指す物語。 エロ小説。 ジャンルは、ミステリ。 メフィスト賞受賞作家が、3作目くらいに書いた作品と言われても納得してしまう内容。 ミステリとしてはよくできているだけに「エロ小説」として出版され、それ故に認知の 対象外だったり、敬遠の理由になっていたりするのであれば、勿体無い。 ただこの解決であり仕掛けだと、講談社ノベルスでは読者層の幅が広くなりすぎてしまう のが逆にネックとなるであろうから、この手のレーベルから出ているからこそ出来た作品と も言え、それ以外だと発表の場は同人誌くらいしかないだろうから仕方がないとも言える。 という文面から察してもらえれば分かるように、一般にはお薦めしない。 でも、このニュアンスでなんとなく言わんとすることが分かる人には是非読んでもらい たい作品。 以下、私信。 私の友人たちにであれば、83-kunには薦めても190-kunにはまず薦めない。 更に言えば、83-kun以上に11-kunに読んでいただきたい。 そして、私が半分も分からなかった暗号の答えを、是非教えていただきたい。
2007年04月26日
コメント(0)
[1] 4月22日(日) 競馬予想 祖父の入院を聞き、 年を考えると明日が今日よりも元気になっている、という状態はないだろうと判断し、 ゴールデンウィークを迎えてからの帰省よりも、一刻も早い帰省を選択。 というわけで現在、一時帰省中。 到着したのは、昨日の競馬のメインレース前で、カーナビのテレビで実況を見ながら、 そのまま病院に向かう。 今日も今から病院に行く予定なので、取り急ぎ予想結果だけを以下に記す。 東京11R フローラS(G2・芝2000) <今日の勝負レース> ◎2 ベッラレイア ○7 チャイニーズフレア 桜花賞はウォッカ、ダイワスカーレット、アストンマーチャンによる三強対決、 オークスはウォッカ、ダイワスカーレット、ベッラレイアの三強対決とは、今年の クラシック戦線開幕前から言われていたこと。 逆らわず。 → ベッラレイアとチャイニーズフレアを二頭軸とした三連複総流し 各100円 → 07年「今日の勝負レース」これまでの結果 試行回数 28回 累計収支 -10,300円 的中率 25% 回収率 75% ついに回収率が、馬連の控除率を考えた際の平均的な値に。 昨日の勝負レースを、東京のメインではなく、福島のメインにしなかったのは、 実際の馬券の回収額的にも、このブログ上の企画的にも今さらながら美味しくない 結果だった。 (基本的に、勝負レースとそれ以外のレースでは賭ける金額の単位が、およそ 3~5:1程度なので、どうしても勝負レースでの結果がトータル的な回収率を 大きく左右してしまう) 京都11R アンタレスS(G3・D1800) ◎4 キクノアロー ○13 カイトヒルウインド 京都D1800狙いのセオリー通りに、京都実績があり、先団~中団前目でレースが 今回できそうな馬達で。
2007年04月22日
コメント(1)
[1] 読書日記 先日書店に入ったら、本屋大賞2位に選ばれていた。 それを見て、部屋に積みっぱなしにしておくのは宝の持ち腐れ、とばかりに、 森見登美彦 「夜は短し歩けよ乙女」(角川書店) 読了。 <これは私のお話ではなく、彼女のお話である。> と述懐する語り部たる「私」が、物語の主役たらんと「彼女」に対し果敢にナカメ作戦 を実施するお話。 と、書いても表層部すらなぞっておらず、全くもって説明したことにならないお話。 さしずめ、京都版「不思議の国のアリス」。 時代を引き寄せて例えるなら、大人が楽しめる、面白みのある「千と千尋の神隠し」。 古本市を舞台に展開する第二章「深海魚たち」は、恒川光太郎の「夜市」よりもファ ンタスティック。 <おともだちパンチ>は一発K.O.の破壊力。 現在、やはり我が家でホコリを積もらせていた、同作者の「きつねのはなし」を続けて 読んでます。 というか、読まずにはいられなかった。 やばい。
2007年04月16日
コメント(0)
[1] 読書日記 <「なんもねべ」 二人の心の内を見透かしたように悟がいう。 と、村崎にゴンベ汁のおかわりをよそってやっていた信子が、悟に何か言った。 「リウジンヌマサイッタダカ?」 悟が生返事を返すと、信子は呪文のように繰り返した。 「リウジンヌマサイッタダカ?」 「あの~富山さん、お母様はいま何と?」 石井が尋ねた。 「ああ、リウジンヌマサイッタダカって」 「あの~富山さん、いま何と?」> 荻原浩 「オロロ畑でつかまえて」(集英社文庫) 荻原浩 「なかよし小鳩組」(集英社文庫) の2冊を読了。 ユーモア小説。 倒産寸前のプロダクション、ユニバーサル広告社が超過疎化にあえぐ日本の秘境・大牛郡 牛穴村の村おこしに協力する「オロロ畑でつかまえて」と、その続編で同広告社がヤクザ小 鳩組のイメージアップを頼まれる「なかよし小鳩組」。 読んでいて、井上ひさしの小説を彷彿とさせられた。 楽しい。
2007年04月12日
コメント(0)
[1] 読書日記 昨日から読み始めた本5冊のうちの3冊を読了。 そのうちから2冊ばかりを紹介する。 1冊目。 角田光代 「幸福な遊戯」(角川文庫) <三人での共同生活を始める際に、同居人同士の不純異性行為禁止と、それだけを 決めた。> と始まり、続く段落で、 <禁止事項を破ったのは、私とハルオだった。> と繋がる冒頭部で一気に物語へと引き込まれる。 なんとも上手い。 2冊目。 北森鴻 「桜宵」(講談社文庫) 世界は作為と陰謀に充ち満ちている。 そんなお話ばかりが集まった短編集。 作品の舞台であるビアバーで出される、アルコール度数12度のロックで飲むビールに心 惹かれる。
2007年04月10日
コメント(0)
[1] 読書日記 とにかく面白い、としか言いようがない、 北森鴻 「触身仏 蓮丈那智フィールドファイル〈2〉」(新潮文庫) を読了。 ミステリ。 民俗学的な謎と、現代に起こる殺人事件の同時解明を扱う短編集の第2集。 その両謎の解釈(あるいは真相)もさることながら、探偵役の美貌の民俗学者・蓮丈那智 とその助手・内藤三國の、助教授と研究室所属の助手という表面上の主従関係以上の三國の 精神的な隷属っぷりが読んでいて楽しい。
2007年04月05日
コメント(0)
[1] 読書日記 <本というのは、未読のものがあれば、 卑屈にならずに読みさえすればいいのである。 それで、その瞬間から、 これまで読んでいた人と何も変わらなくなるのだから> その通りである。 ただ、別に本に限った話でもないが。 平野啓一郎 「本の読み方 スロー・リーディングの実践」(PHP新書) を読了。 少し前に、森見登美彦の作品を思い出したように読み直したので京大つながりと いうことで、本棚から掘り出してみた。 小説の方は気分ではなかったので、この本で代用。 題名まま「本の読み方」(特に小説の読み方)を丁寧に解説してくれた本。 石原千秋「大学受験のための小説講義」(ちくま新書)と、本書にさえ目を通して おけば、受験国語の現代文で難なく点数を稼げるはず。 小説を読むレベルアップが目的ならば、村上春樹「若い読者のための短篇小説案内」 (文春文庫)との併読もお薦め。
2007年04月04日
コメント(0)
[1] 読書日記 「両村上の差とは何か?」を、 村上春樹 「パン屋再襲撃」(文春文庫) を読みながらボーっと考える。 読み終わった後、 「ブック●フでいつでも入手できるのがRで、たまにしか見かけないのがH」 という答えに思い当たる。 生活圏内にある4軒ものブッ●オフが揃いも揃ってそうなのだから、自分的には十分 納得のいく回答を得たと考える。 特に105円コーナーで顕著。 ちなみに件の古本屋の105円コーナーにおける直近の買出しの中では、 堂高しげる 「全日本妹選手権」<5>(アッパーズKC・講談社) が最大のヒット。 目新しくないあるあるネタも多いけど、それでも面白かった。 オタク教養入門書。
2007年04月03日
コメント(0)
[1] 読書日記 高野秀行「ワセダ三畳青春記」(集英社文庫)を読んでいて、不意に再びページを捲り たくなった、 森見登美彦 「太陽の塔」(新潮文庫) を再読。 時折、部分部分拾い読むことがあったが、全文通しての再読は今回が初めて。 「ワセダ三畳青春記」は読みさしではあったが、ちょっと「太陽の塔」に寄り道をして いる間に、狭い部屋ながら半端じゃない本の山の中に姿をくらましてしまい、目下捜索中 といった状況。 三ヶ月前に、同様な状況で神隠しにあったJ・ゴアズ「野獣の血」は未だ発見されてお らず、ある意味では続きを読むことは絶望的とも思える。 閑話休題、「太陽の塔」であるが何度読んでも、とにかく大学時代に憧れる。 そして京都という街に憧れる。 何より、京大生に憧れる。 今すぐ過去に戻れるなら、そこさら先の目的は特にはないがとりあえず京大に入りたい。 そんな風に思わされる作品。 私的に、京大受験勧誘度は、万城目学「鴨川ホルモー」よりもこちらが上位。 小説としても、勿論おもしろい。 「東京タワー」よりも断然「太陽の塔」。
2007年04月02日
コメント(0)
全11件 (11件中 1-11件目)
1