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[1] 読書日記 ~漫画編~ とりあえず犯人ないしトリックが分かるまで、絶対に解決編を読まないというスタンスを、 私の中で、連載当初から貫き通しているミステリ漫画に「金田一少年」シリーズがある。 (「名探偵コナン」は劇場版は一応同スタンスで取り組むも、漫画の方は躊躇なく解決編へ。 あんま考えながらは読んでいないです) というわけで、シリーズ最新作の、 原作/天樹征丸 漫画/さとうふみや 「金田一少年の事件簿 獄門塾殺人事件」<上・下> (講談社コミックス) も、同様のスタンスで取り組み読了。 出題編を一読後、すぐにトリックと犯人の目星はつき、その確認作業の為に再読。 その後、解決編を読んで、過不足なく全ての謎に答えられているのがわかり、満足。 再読回数が、謎を解決する為の盲点となる理由のその質や量に比例し、難易度と置き換えて 良いのであれば、前作「オペラ座館・第三の殺人」のトリックの方が今回よりも、難しく感じ た。犯人あての難易度は同程度。 ただ「論理のアクロバット」という点では、今作の方が断然好み。(以下、ネタばれ有) 先行作品である矢野龍王(著)「極限推理コロシアム」のアイデアであり、トリックを元の 作品よりも何百倍も上手く使っている。 犯人を絞る際の決め手が簡単な事や、犯人を追い詰める為の証拠が弱いのは気になるが、 本格ミステリの醍醐味が堪能できるトリックであり、本格ミステリ好きは嬉しくなる事請け合い のトリック。
2006年12月27日
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[1] 読書日記 ここ最近「読書日記」で取り上げている本に、映画化されている作品が続いているので それならばと浅田次郎「椿山課長の七日間」(朝日新聞社)を積み本の山から探り出し、 読み終えたのだけれども、その後に暇つぶしにと読んだ 西澤保彦 「黒の貴婦人」(幻冬舎文庫) の方を取り上げてみたり。 ミステリ。 匠千暁シリーズの短編集。 時系列的に「スコッチゲーム」~「依存」間の物語と、「依存」以降の物語が 短篇として収められている。 以下、完全に私個人にのみ当てはまる感想文。 ミステリの出来の良し悪しを差し置いて、非常に郷愁を誘われる作品集だった。 まるで同窓会に出席したような心持になったとも言えるし、相変わらず友人達と朝まで 楽しく、馬鹿騒ぎをしながら飲み続けている彼らが正直羨ましかったとも言える。 自分がこのシリーズを読んでいたのが、大学時代のしかも飲み会も盛んに行っていた頃 だっただけに余計に彼らの姿を自分と重ね合わせてしまうのだと思う。 タテの関係や組織に囚われない、気楽な飲み会。 前後の時間に縛られない、完全自由な飲み会。 日頃の愚痴や社会に対する不平の発散の場ではない、飲み会の為の飲み会。 永遠の子供時代を享受し続けるある種のアニメのキャラクター達よりも、終わらない文化祭 を循環し続けたあの映画よりも、メンバーが集まればいつでも飲み会が行える彼らの姿の方が 何倍も妬ましい。 なんてね。 以上、完全に私個人にのみ当てはまる感想文でした。 以下、この本を人に薦める際の説明。 飲み会は一人ではできないというのがポイント。 いくらフリーダムな人間が飲み会を主張しても、メンバーの合意が得られねば叶わないのが、 現実世界(人間社会と置き換えても同義)。 それが幹事である作者の気持ち次第でいつでも執り行えるのが、物語の世界。 要するに、この短編集はこのシリーズを愛好するファンの為に作者が設けてくれた酒宴 であり、ボーナストラック的な一冊。
2006年12月21日
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[1] 読書日記 奇しくも、寺尾聰主演で映画化された作品を立て続けに読む事になった。 小川洋子 「博士の愛した数式」(新潮文庫) 読了。 タイトルは知っていたし、第1回本屋大賞受賞作品だ何だと何かと話題に上る事の 多い本程度の認識はあったが、映画も未見で、作品自体に触れるのが今回が初めて。 読後感想を一言で述べれば、「面白い作品だった」に尽きる。 昨日読み終えた「半落ち」は、世間で言われていた程の感動にまでは至らない小説で あったが、この作品については恐らく世評で騒がれているのと同程度には感動。 ラストの数ページは目頭が熱くなった。 実に巧い小説で、恐らく誰が読んでも面白いと感じるであろう作品。 とまぁ、それはさておき。 実はこの文庫版の本には、実は読後の気分を台無しにされる凄い付録つき。 それは、 <解説 藤原正彦> の文章。 本文が自意識の発露を抑えたストイックな文体であるのとは対照的に、自分の事を話したくて 話したくて仕方のない自意識の塊のような解説。 初っ端から、作者の小川洋子が新潮社を通して、氏に取材を申し込んだ際の事に触れつつ、 <数学者といえば、なぜか「純粋」とか「奇人」が通り相場だ。 もし「純粋」を主題にしたいのなら、 私よりもっと立派な数学者に会った方がよい。 「奇人」を主題にしたいのなら、 余りにも健全な常識と円満な人柄をもった私はまったく参考になりそうもない> と言及し、自分の出演したテレビ番組がそのきっかけになった事を知るや否や、 <番組を見ていたのなら、週一で八時間も出ていたのだから、 私が純粋でも奇人でも大数学者でもないことくらい分かっているはずである> 更に余念なく、謙遜の衣を一応程度に身にまとった自己の喧伝を積み重ねるのである。 その後も、この短い解説の中で、 <時折、数学界の巨星ガウスに似た鋭い視線を私に送ったり、> などと訳のわからない修辞を駆使しつつ、最後まで自分の事を語るので一杯一杯という 風情の自己満足の一品(珍品?)に仕上がっている。 この人物は、「国家の品格」(未読)という大ベストセラーを書き上げた御仁らしいが、 この文章からはとても品格は感じられない。 という訳で、本書を文庫本で読む際には、買うや早々巻末の「解説」部分をびりりと 破いて、ちり紙交換に出す新聞紙と一緒にリサイクルに回す事を強くお薦めします。
2006年12月19日
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[2] 読書日記 旅先で読み始めた、 横山秀夫 「半落ち」(講談社) を読了。 映画化もされたミステリ。 映画の方は未見。 現職警察官による嘱託殺人。 ミステリとして、読者を作品へと牽きつける主な推進力は、その事件に残された謎である、 ・犯行から自首までの二日間に犯人のその男は何をしていたのか、というホワットダニット ・何故彼はそれを明かせないのか、というホワイダニット ・何故彼は自殺しないのか(できないのか)、というホワイダニット そして、その三つの謎をいかにして読者に明かすのか、というハウダニットの四点である。 そのエンジンを搭載する車体に、 <複雑な思いを胸の内に抱えていた。 言い過ぎた。言い足りなかった。 二つの思いが激しく鬩ぎあっていた>(単行本、P.233) 組織の中で生きていくのは何かと大変というドラマを、六人の人物を焦点化人物にして描き、 主題に絡ませた、企業小説の体裁が選ばれており、物語が進展を始めると障害物(組織の思惑、 人間関係)に阻まれるという構成になっている。 謎自体は、そのエンジン音から人によっては早々に見当がついてしまうかもしれないが、 作品自体のその乗り心地は最高。終点まで一気に読者を運んでくれる。 300ページ程度で会話文も多く、さくさく読み進めるので、人にも薦めやすい小説。 まだ映画も見ていないし、読んでもいないという人は、映画と二時間と違わず読み終えられる 作品だけに、一読の時間を割いてみても良いかも。
2006年12月18日
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[1] 読書日記 知り合いに会う礼儀として、こちらから「何か面白い本ある?」と尋ねた以上は、 彼女がよく読んでいると言っていた乙一を読んでおくべきであろう。 というわけで同作者のタイトルは、「GOTH リストカット事件」にハマッた時、 かなり積んだ記憶があったので本棚を漁ると、一応買わずとも事足りる量を発見。 久々に乙一を何冊か読了。 その中から、映画も公開されているようなので、 乙一 「暗いところで待ち合わせ」(幻冬舎文庫) を取り上げてみたり。 ワンアイデア小説。 作者が「あとがき」で述べているように、 <この本は、 「警察に追われている男が目の見えない女性の家にだまって勝手に隠れ潜んでしまう」 という内容です> 「サスペンス・ラブ・ストーリー」というのが映画版のジャンルらしいが、恐らく小説 は原作であって、別物という取り扱いなんだと思う。 少なくとも「ラブ・ストーリー」かどうかは、読者の期待と判断が作り出す物語であり、 小説からは「そうとも読める」程度にしか読み取れない。 完全に「サスペンス」ではない。 ミステリでもあるが、所属ジャンルは「本格」。 恐らく、こうやって何らかのジャンルに括るという行為が無粋。 現に文庫裏を見てみると、内容についての概要はあれど、ジャンルについての明記はなし。 だから、乙一ファンの件の彼女とは、喜んだポイントが違う可能性は大。 短篇のプロットながら、一冊の本の長さまでもたしてしまう作者の手腕には脱帽の一冊。
2006年12月08日
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[1] 読書日記 L・R・ライト 1985 「容疑者」(二見文庫) を読了。 自分で感想を書くまでもなく、本書巻末の「訳者あとがき」が読後の気持ちを 代弁してくれているので、以下に引用する。 <本書はミステリィ中でも、 倒叙といわれるジャンルに入る作品だろう。 第一章で殺人が行われ、 読者には犯人も被害者もわかっている。 そして警察の捜査がはじまり、 犯行の動機が明かされていく、 という構成それ自体は、 決して珍しいものではないが、 犯人、被害者、殺害の動機のいずれの点も、 かなり異色だといえる> 補足しておくと、 犯人 = 80歳の老人 被害者= 85歳の老人 この意外な犯人(犯行)の動機が何なのか、というのが読み進める上で最大の動因となる ホワイダニットミステリ。 犯人のキャラクターが書き進められて行けば行くほどに、こんなにも殺人というものからは 縁遠そうな老人を駆り立てたものは何だったのかが、気になります。 日本のミステリだと、「老人×老人」という素材だけにテーマ偏重、問題提起の 社会派ミステリが落としどころになりそうな感じですが、この作品の場合きちんと ミステリとしての、動機しています。 当然、納得もいきます。 一応、一読後すぐに気に掛かったポイントを拾って読み直してみたものの、 完全に作品を味わいつくす為にはきちんと再読した方が良いであろう一冊。
2006年12月07日
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[1] 読書日記 袖振り合うも他生の縁。 座席が隣になったという程度の関係ながら、その人物に興味があったので、 彼がHP上で挙げていた本、 ろくごまるに 「食前絶後!!」(富士見ファンタジア文庫) を読了。 ライトノベル。 学園ファンタジー。 ただし、本格ミステリ精神含有率8割程度(要はロジックに納得がいく)。 結論から言うと、面白い作品だった。 華美な修辞に満ち、 <俺は『発狂して自分がチーズだと思い込んでいる煎茶味』の黄色いソボロを 口に入れた> たどたどしく、なめらかさに欠ける文章には終始馴染めなかったが、 「何処かで見たような話」感が全くない新しい発想、設定は抜群に良かった。 奇抜な物語が好きで、しかも因果関係に整合性があればなおの事良いという人に 薦めたい一冊。
2006年12月05日
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[1] 読書日記 最近、小説以外ではこの著者の本ばかり読んでいる気がしつつ、 斎藤美奈子 「誤読日記」(朝日新聞社) を読了。 <本は誤読してなんぼです。 深読み、裏読み、斜め読み。 さまざまな読み方が世間では知られておりますが、 さらに一歩先を行く誤読の方法をご紹介いたしましょう> なるほど。 実際、彼女の言うように、コラムの姿を借りたハウツー本であり、啓蒙本。 <◆見立て読み 本には一応それぞれ所属のジャンルがありますが、 指示におとなしく従う必要はありません。 発想を変えてみましょう。 すると、エッセイが実用書として読めてしまったり、 文芸書の思いがけない使い道が見つかったりします> 早速、この本を「見立て読み」。 さしずめ、的確に人(本)を皮肉る為の実践例集、というところ。 日頃的外れな事しか口に出来ず、場の温度を下げている人にお薦めの一冊。 あるいはそういう知人の痛々しい姿を見かねている人が、その自覚のない相手に、 こそっと贈ってあげるのが良い本とも。 P.S. 私は一応読んだので、私宛には贈ってくれなくて結構です。
2006年12月04日
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[1] 読書日記 「訳者のあとがき」に、「お~い! それは書き過ぎ!」と思わずにツッコまずには いられなかった、 サイモン・ブレッド 1985年 「死のようにロマンティック」 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ・ブック) を読了。 読み終わってから「訳者のあとがき」に目を通して良かった。 サスペンス。 30代後半ながら、夢想に耽るあまり、処女を守り通してきた美貌の語学教師。 その教え子にして、彼女に対して妄想たくましい童貞青年。 体の不自由な妻を持ち、男盛りながら満足な性生活を送れていないその同僚教師。 「性」をモチーフに、アイロニカルな視点で描かれた、男女の三角関係を主軸とした物語。 その結果出現した一体の死体。 殺したのは誰で、殺されたのは誰? そして、その理由とは? ここまでが恐らく、書いても良い限界。 人に薦めたいながらも、これ以上は札をさらす事ができない作品。 この一文ですら察しが仮についてしまった人でも、それだけではない技巧的なミステリで 充分楽しめるはず。 勿論、ミステリ以外の要素も充分面白い。 というか、笑いながら読めます。 以下、ネタばれ。 「リチャード・ニーリィ」とか好きな人にお薦め。
2006年12月01日
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