全6件 (6件中 1-6件目)
1
2021年1月刊エンターブレイン・eロマンスロイヤル著者:椎名さえらさん王都に住む子爵令嬢・クラリスは、「ファーレンハイトの宝石」とも称される美しい姉と常に比較され、家族に虐げられ、目立たないよう陰で生きてきた。クラリスが十九の歳、「人食い辺境伯」と呼ばれるジークフリート・グーテンベルグの戦果の褒賞として姉の身代わりで嫁ぐことになる。ところが辺境伯ジーンは、無口で無表情ながらもクラリスを思いやる、包容力に溢れた魅力的な人物だった。しかし「身代わり花嫁」であることに負い目を感じるクラリスは、なかなかジーンへ心を預けられないでいた。そんな折、王都より姉の結婚の知らせが届き、ジーンと王都に向かうことになるのだが……。実はクラリスの生家には重大な秘密があり、さらに、ジーンとの婚姻のいきさつも知っている事実とは違っていて!?不遇の令嬢が辺境の地で最愛の人と幸せになる王道ラブファンタジー! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用不遇ヒロインものです。父と姉から虐げられ育ったヒロインは、ある日、姉の身代わりとして辺境伯(ヒーロー)に嫁げと命じられます。美しい姉を溺愛する父は、なにかと良くない噂のある辺境伯に彼女を嫁がせるなどとんでもないということらしい。だが、この結婚は王命らしく断るなど以ての外。そこで白羽の矢が立ったのがもう一人の娘であるヒロインでした。横暴な命令ではあったけど、この家から離れられるならばと辺境伯の領地へ。姉ではないことに責められるかと思いきや、そんな様子は微塵もなく心なしか歓迎されていることに戸惑いつつ、気難しいながら、不器用な優しさを見せるヒーローに徐々に惹かれて行きます。そして、屋敷で穏やかに過ごしていたある日、姉の結婚が決まったと知らされ、ヒーローを伴い実家に戻ったヒロインは、母から姉の出生の秘密と父と結婚した経緯を聞かされます。溺愛されているはずの姉が、父にとってはまさかの憎しみの対象だったと知り・・・。途中、ヒーローの見目の良さに姉がその妻になろうとヒロインを脅迫したり、子爵家でトラブルがあったりするのですが、最終的にはヒロインはヒーローに嫁いでハッピーエンド。不遇ヒロインもののセオリー通りに話が進行するので、展開の予想は大体つくんですけど下手に外さないのが良かったと思います。ただ、ヒロインを慕うメイドの恋物語も同時進行することもあり、あちこち目線が飛ぶのがちょっと・・・。不遇ヒロインのシンデレラストーリーとして王道のお話です。評価:★★★★ヒロインとメイドのお話は別々にしてほしかった。そこだけ惜しい気が。
2022.04.26
コメント(0)
2019年4月刊PASH!ブックス著者:三沢ケイさん美貌を見込まれ、伯爵家の養女となったサリーシャ。王太子妃候補として育てられるものの、王太子のフィリップが選んだのはサリーシャの友人・エレナだった。かすかな寂しさの中で迎えた2人の婚約者発表の日、賊に襲われたフィリップとエレナを庇ってサリーシャは背中に怪我を負う。消えない傷跡が体に残り、失意に沈むサリーシャのもとに、突然10歳年上の辺境伯・セシリオ=アハマスから結婚の申し込みがあり!?ーーお会いしたこともない方が、なぜ私に求婚を?戸惑いつつも、寡黙な彼が覗かせる不器用な優しさや、少年のような表情にサリーシャは次第に惹かれていく。ずっと彼のそばにいたい。でもこの傷跡を見られたらきっと嫌われてしまう。悩むサリーシャだが、婚礼の日は次第に近づいてきて ↑楽天ブックスより、あらすじ引用王太子暗殺未遂事件に巻き込まれ、背中に傷跡が残ってしまったヒロイン。彼女は幼い頃、その美貌を見込まれ伯爵家に引き取られた平民だったので、意図せずとも傷物となってしまった今、その価値は無くなってしまった。どうやら義父はどこぞの老齢な貴族の元へ後妻として嫁がせるつもりのようだったが、ある日そんな彼女の元に先の戦の英雄である辺境伯(ヒーロー)から結婚の打診が届きます。この婚姻、どうも王太子が一枚噛んでいるらしく断るのは論外。かくて早々にこの縁談は決まり、辺境伯の領地へ輿入れするヒロイン。しかし、この背中の傷を見られたら破談になるかもしれないと、式まで手を出さないと言うヒーローに感謝しつつも、どうせバレるなら式の前の方がいいのでは、と思い悩む日々。でも、ヒーローは彼女の傷跡のことは承知の上で求婚したのでした。実はヒロインは覚えていないようだけれど、まだ社交界デビューする前の彼女とヒーローは王宮で会った事があって・・・。中盤、ヒーローの元婚約者がやって来て屋敷に居座ったり、王太子暗殺未遂事件の真相などが合わさってじれじれ展開もありますが、ヒロインが割と強い子なのでそこまでモヤることはありませんでした。とは言え、ヒロインがずっと引け目感じてたんだから、ヒーローも傷跡のことも知ってて結婚の打診をしたんだと先に話してやれよとは思いました。このお話、「新婚編」と言う続編もあるようですが、そちらも読むかどうかは検討中です。一応、1巻だけでも問題ない終わり方はしています。評価:★★★★ストーリーは面白いのですが、事件もあったりする割に妙に淡々としてる印象。
2022.04.24
コメント(0)
2020年6月刊スターツ出版・ベリーズファンタジー著者:徒然花さん平凡女子のレイラは、部屋で転びあっけなく一度目の人生を終える。しかし…目が覚めると…なんかゴツゴツ…これって鱗?どうやらイケメン竜王様の背中の上に転生したようです。そのまま竜王城で働くことになったレイラ。暇つぶしで作ったまかない料理(普通の味噌汁)がまさかの大好評!?普段はクールな竜王をも虜にしてしまい…!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用kindle unlimited会員向けの読み放題にて読了。ベリーズカフェでも無料で読めます。タイトルが少々変わってますが、ピッコマ等コミックサイトにてコミカライズ版が公開されてますね。TL小説ではなく女性向けのラノベです。グータラOLのヒロインが汚部屋で転んでそのまま亡くなり、異世界転生してしまったと言うお話。このヒロイン、前世の記憶を持っていたおかげで異世界でやり直し人生を始めても当然為人は変わらず、厄介になっている竜王様の城でもドジばかり。そんな彼女にも唯一出来ること、それは料理でした。ひょんなことからヒロインの作った豚汁がヒーローである竜王に気に入られたことから、少しずつ交流が始まるのだけど、ヒーロー狙いの隣国の女王が彼を振り向かそうと過激な手段に打って出ます。実はヒロインは隣国の女王と繋がりがあって・・・。途中あれこれ騒動は起こるも、ヒロインはヒーローに妃にと望まれて近いうちに結婚するんだろうなって感じで幕。何とも恥ずかしい亡くなり方をして異世界でやり直し人生となったヒロイン。元々友人の薦めで通っていた料理教室で培ったスキルにより、とんでもないハイスペックな男性を捕まえてしまったと言う何とも羨ましいストーリーです。評価:★★★★転生先のヒロインの正体(?)など、意外な展開もあって面白かったです。惜しむらくはヒーローとの絡みが少ない事。
2022.04.09
コメント(0)
2017年11月刊角川ジュエルブックス著者:白ヶ音雪さん異世界トリップしたら、いきなり魔王のイケニエに!絶体絶命っ!食べられちゃう…って別の意味で!?魔王様はカラダもごっつい悪のカリスマ…と思いきや、めっちゃウブで初恋が私!?しかも怖~い見た目とギャップありまくりの情熱家!?気づけば結婚まで決められ、新婚ライフに強引突入!ダンナ様になった魔王は精力絶倫モードに覚醒!!昼も夜も濃厚&情熱Hが止まりませんっ!!「全身全霊で叫び続けよう!愛してるぞー!!」コワモテ魔王が幼妻にメロメロで溺愛一直線。ギャップ萌え山盛り。ハイテンション新婚ラブコメ!! ↑楽天ブックスより、内容紹介引用先日購入品として紹介したノベルスです。所謂異世界召喚モノ。ここからネタバレと感想。十二歳の時に両親を事故で亡くした香月沙羅は、十歳違いの妹の美沙と共に現在伯母の家に厄介になっている。祖父母がまだ存命であったならまだマシな生活も出来たのであろうが、伯母の元にくるまで姉妹は親戚たちの間をたらい回しにされていた。とは言え、今の住まいも決して居心地の良い場所ではなく、必死にバイトをしても世話代名目で伯母に取り上げられた挙句、心無い言葉で傷つけられる日々であった。でもあと二年もしないうちに自分は高校を卒業する。就職先さえ決まれば妹を連れて出て行けるのだ。それだけを目標に頑張っていた沙羅は、帰宅を嫌がる美沙をアイスで釣って帰路に就こうとしたその時、二人は眩い光に包まれたのだった。気付くとそこは中世ヨーロッパのような甲冑や服装をした者たちが居並ぶ神殿めいた場所であった。ちゃんと妹もいたことにホッとしつつも、周りにいた連中は聖女召喚の儀式が成功したと沸いている。戸惑う沙羅に声を掛けた人物はバルドゥイン二世と名乗り、ファランディア聖王国の国王であると言う。どう見ても外国人に見えるのに日本語で聞こえるのも混乱するが、王の隣にいた神官長のエーベルトと名乗る人物が事情説明を買って出た。どうやらここは異世界で、言語に関しても意思の疎通が図れるように術式に組み込んでいたおかげだと言う。そして、沙羅は聖女としてこの国に召喚されてやって来たらしい。まだ半信半疑の彼女に、彼らが聖女の力に反応すると言う球を触らせると成程確かに光る。エーベルトはその反応に感動していたようだが、沙羅にしてみれば何かのトリックに見えてどうにも信じられない。しかも、とある役目を果たしてもらいたいがための召喚のようだが、最悪なことに帰還の方法が無いと来た。勝手に呼び出しておいてと怒りが沸いたけれど、ここが本当に異世界ならば幼い妹と二人、頼れるのは彼らだけなのだ。一先ず聖女の役目とやらはどういったものなのか尋ねると、詳しいことはまた明日にでもとはぐらかされ、姉妹は神殿に用意された一室にて手厚い歓待を受けたのであった。翌朝目覚めるとこれが夢でないことを実感し落胆した沙羅は、約束通り王と神官長に召喚理由と役目の概要を尋ねた。エーベルトの話によれば、ここ最近のことであるがこの国では若い娘の行方不明事件が続いているのだそうだ。被害者が神力のある巫女ばかりと言うこともあり、犯人は悪魔ではないかと言うことらしいが、元々は古からの契約によりこの国では有事の度に魔族へ生贄として巫女を差し出していた。悪魔の蛮行を止めるために今回も生贄を用意したいところであるが、条件に見合う者が国王の娘のサラベルしかいないことに彼らは慌てた。ここまで聞けば沙羅にも自分が召喚された理由が判る、親として娘を差し出すのは我慢ならないであろう。要はサラベル王女の身代わりとして自分は喚ばれたのだ。余りにも身勝手な言い分に猛烈に腹が立ったが、美沙を人質として取られてしまったことにより、沙羅には生贄になるという選択肢しか残されていない。とは言え、彼らもそこまで悪人ではないようで役目を引き受けてくれるなら美沙のことは一生手厚く遇すると約束してくれた。神に誓うとまで言い切ったのならその言葉に嘘は無いだろう。そして、沙羅は魔王の元に行くことを承諾した。二日後、彼女を労う為の盛大な宴が催され、そこで沙羅は自分は仕事に行くから暫く会えないと妹に告げた。案の定美沙は駄々をこねたが、ここのおじさん達の言うことをちゃんと聞くよう言い含めることしかできなかった。翌日、妹が寝ているうちに抜け出した沙羅は王たちに美沙のことを頼むと魔族の国との国境らしい森へと踏み入った。人間の侵入はすぐに魔王・ヴァルドールに察知されていた。五十年ほど前にファランディアで干ばつ被害が起きた時、何故か自分宛てに生贄と言う名目の巫女を寄越された。どうやら魔族は人間を食べると思われているようで、神力のある巫女を差し出すから雨を降らせてほしいと言うことらしい。そもそも人を食うなど迷信以外の何物でもなく、彼らにしてみれば侮辱である。憤慨した彼は知ったことかとばかりに早々に巫女を解放してやった。その後巫女はどこに行ったのかは知らないが、偶然にもそのすぐ後に雨が降ったらしい。おかげであれ以来、あの国は何かある度に生贄とやらを寄越して来るのでヴァルドールはいい加減迷惑していた。今回もその類であろうと、森を進む少女を追い返すべく小魔獣をしかけて追い返してやろうと目論んでみたものの、水晶玉で垣間見た少女の顔を見てヴァルドールは衝撃を受けた。思わず「天使だ」と呟いてしまう程に少女は可憐で美しかった。産まれてこの方初めての胸の高鳴りに彼は戸惑ったが、魔獣に追いかけられて逃げ惑う彼女を救うべく彼は森へと向かった。自分が脅しの為にけしかけたのを忘れて小魔獣たちを追い払ったヴァルドールは、実物の彼女を見て更にときめいていた。少女はファランディアの王女でサラだと名乗り、王から遣わされたと言っていることからやはりいつもの生贄として寄越されたようだ。自分への贄と言うことは彼女を貰い受け、好きにしていいと捉えて問題は無いはず。ヴァルドールはサラに自分の妃となれ、と告げるのだった。城に連れ帰られた沙羅は手厚くもてなされていた。自分付きの世話係まで付けられて混乱していると、ミリアムと名乗った侍女は魔王様のお妃ならば当然の待遇ですよと言う。魔族には生贄=妃と言う認識なのだろうかとも思ったけれど、ヴァルドールの反応を見るにどうも違うようだ。見た目は物語に出てくるようないかにも悪魔なルックスをしているけれど、彼はとても優しく初夜だと言いながら沙羅の決心がつくまではと最後までしなかった。翌朝、今まで浮いた噂一つ無かった魔王がついに妃を迎えたと城内の魔族たちは喜びに沸いていた。人間の女などと蔑んでいる者もおらず、このウエルカムムードに沙羅は戸惑いを隠せない。しかも、自分付きになるために侍女たちが熾烈な争いをしていたらしく、結局昨夜世話をしてくれたミリアムがそのまま就任することになったようだ。待ち焦がれた王妃のお世話係になれて光栄だとミリアムは随分嬉しそうだったが、昨夜まで悲惨な気持ちで赴いただけに沙羅は複雑だ。それに、彼らに聞き及んだ話によれば基本魔族は人間たちと変わらない食生活だと言う。取り敢えず、食べられる心配はなくなったが、身の安全が保障されると思い出すのはファランディアに置いてきた美沙のことだった。ここに来て一週間も経つと、流石に生活には慣れてきたが妹に会いたい気持ちは日増しに大きくなるばかり。しかも、自分を溺愛しいつも優しく接してくるヴァルドールに段々沙羅も絆されて昨夜ついに一線を越えてしまった。生贄として寄越されたにも関わらず、城内の者たち皆良くしてくれている。それに肉親の縁が薄い自分に出来た初めての妹以外の家族がヴァルドールなのだ、惹かれるなと言う方が無理であろう。だが、沙羅はファランディアの王女だと嘘をついているのが心苦しくもあった。そんなある日、小魔獣に追いかけられた際に落として失くしたものと諦めていたスマホが、彼女の元に戻って来た。魔界では見慣れないものだからとサラのものだと思ったらしい。幸い充電はわずかだが残っており、保存していた美沙の写真も見ることが出来たが、もう会えないと思うと悲しくて仕方がない。そんな彼女の姿を見て、千里眼機能があるアイテムを貸し与えたヴァルドールは、気になる存在がいるのなら様子を覗いてみろと言う。美沙は王宮で世話をされているようで友達らしき子たちに囲まれて楽しそうなのが見て取れた。王たちは約束通り厚遇してくれているのか元の世界にいた時より随分と血色も良く健康そうに見える。沙羅は一先ず安心してアイテムを閉じようとしたら、一人になった美沙が姉を恋しがって泣いているではないか。両親が亡くなって五年以上親戚たちに蔑ろにされながら身を寄せ合ってきただけに、美沙のあの姿は堪えた。落ち込む彼女にヴァルドールは妹に会いに行って来いと告げるのだった。ファランディアまでヴァルドールが送ってくれて、一先ず神殿に向かった沙羅は信者たちに幽霊と間違われて大騒ぎになってしまった。すぐさま報告を受けたエーベルトが飛んできたが、沙羅の姿を見て生贄になるのが怖くなって途中で逃げ出したのだろうと難癖をつけて来た。沙羅はとんでもないと否定したもののもしもの時の証としてヴァルドールから渡された魔界特有の宝石を見せると漸く納得したようだ。美沙に会いたいと言う沙羅の要望を王宮に伝えると、割と早くその願いは聞き届けられて、彼女は妹と再会することが出来た。実物の美沙はアイテムで見た通り元気そうで安心し、その夜は妹の部屋に泊まることにしたのだが、夜中になって沙羅は侵入者によって攫われたのだった。気付くと、どうやらそこは神殿の地下のようで、見回すと巫女と思しき遺体がゴロゴロ転がっており皆一応に心臓を抉り取られているようだった。驚愕する彼女の元に現れたのはエーベルトであり、彼こそ最近頻発している巫女失踪事件の犯人であったのだ。どうやら、神力のある巫女の心臓を食うことで力を付けようとしていたらしい。魔族の仕業と言うことにしておけばやり易いと犯行を重ねて来たものの、大した力にはならなかったらしく、生贄と称して王女の心臓を狙ったが王に拒絶されて無理だった。王に娘を生贄にするくらいならと命じられて執り行った聖女召喚は思ってもみないチャンスであり、沙羅の力の度合いはあの球で実証済みである。彼女の心臓を食らえばさぞかし良い力の源であろうと、部下に命じて沙羅の胸に短剣を突き立てようとするとヴァルドールから渡された宝石が輝き、そこから彼が現れたのだった。ヴァルドールは宝石に潜んで沙羅を守っていたようで、当然ながらエーベルトの話も聞いていた。怒り心頭の彼はエーベルトのを抹殺しようとしたものの、こんな奴の為に手を汚す必要はないと沙羅に止められ思い止まった。沙羅は自分が王女などではないと打ち明けヴァルドールに詫びたが、元々彼女に一目惚れしたのであって身分など彼には関係ない事であった。そのまま気絶したエーベルトを突き出して真相を国王に話したが、魔王の来訪に完全にビビっていた王は果たして話を理解しているのやら。美沙はそのまま魔界へ連れて行けばいいとヴァルドールに許可されて、姉妹は離れ離れにならずに済んだ。妹も魔族たちに大人気で今のうちに婚約者になりたいと申し出る者たちが押し寄せていると言う。一か月後、ヴァルドールと沙羅の結婚式が執り行われ、国民達からも祝福された。ヴァルドールはサラと出会ってからと言うもの愛妻日記を綴っており、今日も新たなページに如何に妃が愛らしいか書き連ねていたのだった。このレーベルのタイトルセンスには首を捻ることが多いんですが、今回のお話はタイトル通りの展開でした。本当に魔王さまが花嫁にきゅんきゅんしてたし、終始コメディタッチな内容となってます。何と言うか、魔族ではあるけれど悪魔と呼ばれるのは業腹らしいヒーローの言葉の意味が判るんですよね。この話に限って言えば魔族の方が優しくて気のいい連中なんですもん。ヒロインがいた元の世界でも親戚連中は酷い人達ばかりだったようだし、ファランディアの面々も己の保身ばかり願う王に、人でなしの神官長。何だよ、人間ダメダメじゃん(苦笑)高校生ながら苦労していたヒロインも運命の相手に愛されて幸せになるというお話でしたが、じれじれ度は皆無だったし、ストレスなく読めるのが素晴らしい。評価:★★★★★ノベルス版は少々お高めですが、電子書籍版は八百円弱で買えるので拘りが無いのならば電子版をお勧めします。読んで損無しなお話です。
2022.03.12
コメント(0)
2021年10月刊クリーク・アンド・リバー社・アマゾナイトノベルス著者:ヤマトミライさんラルトリア国の宝玉とまで呼ばれた、美しい瞳をもつ王女レヴィアーナ。小国であるが、平和な日々に、婚約者との未来を夢見ていた。だが、そんな平穏は一日にして崩れさってしまう。一夜にしてラストリア国は侵略され、レヴィアーナは純潔を奪われてしまったのだ。侵略者から無理やり犯される日々に死を望むレヴィアーナが、鬼将軍として知られるライアスと生きる意味・希望を見つけていくーー ↑楽天ブックスより、あらすじ文引用kindle unlimitedにて読了。完全版は有料ですが、分冊版は読み放題対象のようです。亡国の王女とそれを救った将軍との恋物語。間違いで求婚された女は一年後離縁されるの作者さんですね。ここからネタバレと感想。ラルトリア王国は有数の宝石算出国として知られていたが、ある日隣国のプレデリシア国の侵略により一夜にして滅びた。ラルトリア王族はその日のうちに処刑の憂き目にあったものの、ただ一人17歳になったばかりの王女・レヴィアーナのみ、その美しさと珍しい紫の瞳のおかげで命だけは奪われずに済んだ。だが、彼女にしてみれば命だけ無事でも意味はない。以降半年以上プレデリシアの王太子スタンに体を弄ばれる日々は苦痛でしかなく、いつしか死ばかりを望むようになっていた。そんな屈辱の毎日に転機が訪れた。プレデリシアの蛮行を良しとしないラルトリアの友好国でもあったトアータ王国が進軍し、あっという間にプレデリシア軍は制圧されスタンも取り押さえられた。指揮を執っていた将軍ライアスはとある理由から捕虜になっているレヴィアーナ王女を探しており、間もなく部下によってその身柄は保護されたのだが、半年以上に及ぶ暴行によりその姿は酷いもので、しかも王女は感情を失くしていた。ライアスは王女を手厚く扱い、自国へ連れ帰ると国王であり友のシュヴァルツに引き合わせた。辛い思い出の残るラルトリア城にいるよりはマシであろうとの判断だったが、レヴィアーナの感情が戻ることはなく口も利けない状態のままだった。医師の診察によれば、長い間女性機能を衰えさせる薬を飲まされ続けたせいで彼女は妊娠できない身体であると報告を受け、シュヴァルツも心を痛めた。せめて良い嫁ぎ先を見つけてやりたいところであるが、何にせよ心の傷を治すことが先決と、静かなライアスの領地での静養が決まった。ライアスには三歳下の妹がおり、結婚して幸せに暮らしていたのだが蛮族に襲われて穢されたことを苦にして自殺してしまったと言う過去があった。レヴィアーナと亡くなる直前の妹の症状があまりにも似ていてライアスは放って置くことは出来ず、シュヴァルツに王女の世話をしたいと申し出たためである。邸に連れ帰ると侍女のドイルはラルトリアの悲劇を聞き及んでおり、レヴィアーナに同情したようだ。身の回りの世話は心得ているドイルに任せ、ライアスは毎日足腰の弱った彼女を庭の散歩に連れ出し日光を浴びさせ、就寝の際は寝付くまで傍に付き添っていた。レヴィアーナは度々魘されていたが、それでも三ヶ月も経つと、表情が戻り笑みを浮かべるまでになった。更に二月ほど経ち、ライアスに依存していたレヴィアーナが彼を探して言葉を発した事が切欠となり、彼女は見る見る回復して行くのだった。静養してから一年近くになるとレヴィアーナは本来の彼女に戻ったようで、天真爛漫な振る舞いが多々見られるようになった。ライアスはそんな彼女を見て、ずっと言えなかった事実をレヴィアーナに告げた。ラルトリアのへの侵攻の際、捕らえられていた宝石職人たちを解放したのだが、隙を突かれて襲われそうになった彼を庇って命を落とした職人がいた。彼はキートと名乗り、レヴィアーナを助けてほしいと告げると息絶えたのだが、他の職人達の話によるとキートと王女は恋仲だったと聞き、彼女の恋人を自分は死なせてしまったのだと詫びたのだった。レヴィアーナは内心ショックを受けはしたものの、戦争の結果だと思えば責めることはできず、彼にキートの最後を教えてくれたこと、自分を救出してくれただけでなく今までの献身に対して心からの感謝の言葉を伝えたのだった。健康を取り戻した王女をいつまでも自分の邸に引き留めておくことも出来ず、ライアスはシュヴァルツの元にレヴィアーナを預けると、未だきな臭いプレデリシアの牽制のめたに進軍して行った。シュヴァルツはレヴィアーナに自分の側室になることを提案したが、彼女は既にライアスに心惹かれているのはすぐ判った。そこでシュヴァルツが帰国したライアスに鎌をかけた所、彼もレヴィアーナに惚れていることが判り、褒賞として彼に王女との結婚を薦めたのだった。二人は互いの想いを確かめ、結ばれたが、この婚姻をよく思わない者もいた。妹の悲劇と戦争が続き婚期を逃していたもののライアスは密かに令嬢達に人気があり、レヴィアーナの境遇を知ると汚れた女とあからさまな揶揄も出たのだが、王が二人の婚姻を心から祝福していたこともあってやがてそれも下火になって行った。だが、一人の伯爵令嬢だけは諦めずにレヴィアーナに敵意を燃やし、ある時彼女にこの結婚を止めろと命令して来た。亡国とは言え王女であり、しかも未来の侯爵夫人ともなれば身分は当然レヴィアーナの方が上なのだが、セイナード伯爵令嬢・ルーベラにとってどうでもいい事らしく、高圧的な態度を崩さなかった。だが、本来のレヴィアーナは気の強い娘であったため、そんな脅しには屈せず、報告を受けたライアスも警戒するよう努めた。式を数日後に控えたその日、シュヴァルツからの呼び出しによりライアスが邸を留守にすると、侵入者によってレヴィアーナが浚われてしまった。当然、ルーベラの企てであり、彼女は邸の離れでレヴィアーナに媚薬を飲ませ五人の男に襲わせると言う暴挙に出たのだが、寸での所でレヴィアーナは捜索に来たライアスによって無事に救出されることとなった。ライアスと出汁に使われたシュヴァルツの怒りは凄まじく、ルーベラは罰として被虐趣味のある70歳の公爵の元に後妻として嫁がされることとなったのだった。事件のせいで延期になっていた結婚式は数か月後盛大に行われ、ドラント領で二人は仲睦まじく暮らし始めた。だが、レヴィアーナはライアスの代で侯爵家を終わらせることが忍びなく養子をとるよう常々進言していた。ライアスは頭に入れておくとは答えたものの、自分が死んだら爵位を返還すればいいと言う考えは却って妻に気を遣わせているのかもしれないと考え始めていた。その日、国境の小競り合いで進軍していた帰り道で、部下が崖下に転落する事故が起きた。幸いすぐ部下は見つかり救助されたのだが、近くで泣き声を耳にして行ってみると捨て子らしき赤ん坊を発見。運命を感じたライアスは邸に連れ帰ることにしたのだった。クリスと名付けられた赤ん坊を養子に迎えて三年後、ある日レヴィアーナが体調を崩し食事も出来なくなった。数日間も寝込んでいたことから重い病気かと医師に診察を頼むと子供は望めないと言われていた彼女が身籠り、悪阻の症状によるものだと判った。夫婦は大層喜び、数か月後レヴィアーナは元気な女の子を出産。ローズと名付けられた娘は母譲りの美しい紫の瞳をしていた。 で、了。序盤のヒロインがもう不憫で読んでて気分が悪くなるほどでしたが、頼れるヒーローに救われて本当に良かった。宝石算出国ということで目を付けられ、美人過ぎて命は助かっても性奴隷のように囲われると言う波乱万丈過ぎる人生だけど、まだ十代ということもあり、ここからの長い人生はきっと幸多いことでしょう。しかし、この作者さんの作風なのか、本命とのラブシーンより凌辱シーンに相変わらず力入っててなんだかなぁと(^_^;)媚薬飲ませた上に五人がかりで襲っておいて愛撫にねっとり時間をかけるとか(苦笑)まあ、そのおかげでヒーローが間に合ったわけなんですけど。とにかくあの伯爵令嬢の悪巧みはなぁ。あんな過去のある女性に対してやることがエグすぎるてドン引きっすわ。なぜか途中子爵令嬢にされてて混乱してしまったけど多分誤植ですね。罰としては最初に挙がった身一つで国外追放の方が妥当な気がするけど、過去に妻を五人死なせている公爵の後妻もかなりキツイ罰だな。娘のやらかしのせいで、父親の伯爵まで窮地に晒されて気の毒だけど、監督不行き届きと取られてしまうのも仕方ない。そういう育て方してたんだもんね。評価:★★★★ストーリー自体は面白いんですけど、精神的に読んでて結構辛いお話でした。
2022.02.27
コメント(0)
2020年5月刊メディアソフト・ガブリエラブックス著者:白ヶ音雪さん「「できる限り優しくするが、理性が保つ自信がない」家族に悪魔の子と忌まれていたアイリスは、双子の妹の身代わりで仮面の公爵、ルーカスに嫁ぐことに。だが公爵の素顔は実に美しく、アイリスを宝物のように溺愛する。「大丈夫だ、気持ちよくなるだけで怖いことなどない」優しい彼と結ばれ幸せなアイリス。しかし事実を知った妹が、再び入れ代わりを企てて!?」↑楽天ブックスより、あらすじ文引用リンクは電子書籍版ですが、発売日に書店でノベルス版を購入。つい最近、電子版は書下ろしSS付きなのを知った。(しかも若干値段も安い)そのうちSS部分だけピッコマでポイントチャージして読みます。新規購入品だけでなく、せっかくなので以前から持ってる本の感想も書いていこうかと。そのため、たまに結構前のお話も出て来たりすると思います。そこだけご容赦を。合間に新刊を挟んでいく予定。ここからネタバレと感想。コレット子爵家の長女・アイリスは、とある理由から「悪魔の子」として家族から虐げられ、使用人同然の生活を強いられています。両親は彼女の双子の妹・グレタを溺愛して我儘放題に育てたため、妹は贅沢三昧の上男遊びに明け暮れる日々。そんなアイリスの楽しみは孤児院への慰問。元々、慈善事業の類をグレタが面倒がり彼女に押し付けたのだが、家族から慰問の際はグレタと名乗るよう強要され、逆にグレタは奔放に遊び回っているいる時はアイリスと名乗っているらしい。知らないうちに世間では自分がふしだらな女にされていたのは悲しかったが、いつも手紙でアイリスを励ましてくれているバートンという名の紳士がいました。2年ほど前、孤児院の院長から数冊の本と手紙を受け取ったアイリス。それが孤児院の支援者のバートン氏からの贈り物だと知り、恐縮して本を返そうとしたが、読書仲間が欲しいので内容について語り合いたいのだと手紙に綴られていれば無碍にも出来ず、以来秘密の文通が続いていた。バートンは必ず手紙と一緒に本を数冊添えてくるので、今やアイリスの部屋にある本棚は彼から贈られた本で埋まっていました。彼女もせめてのお礼にと手ずからの刺しゅう入りハンカチを送ったりもした。毎回「水晶の姫君へ」の前書きから始まるその手紙はどれだけ彼女を慰め、励ましてくれていたか。だが、いくらお願いしてもバートンは頑なにアイリスと会おうとはしなかった。そんなある日、自分とは滅多に顔を合わせたがらない父の書斎に呼び出されたアイリスは、ウォルトン公爵に嫁げと命じられます。ウォルトン公爵と言えば王弟殿下だ。何の教育も受けていない自分が王族に嫁ぐなんてあり得ないことだが、よくよく話を聞くと元は妹宛に求婚の申し入れがあったらしい。グレタの奔放さを知らなければ、彼女は慎ましく慈善事業に勤しむレディとして認知されている。ウォルトン公爵はグレタを見初め、是非妻として迎え入れたいと手紙を寄越したのだそうだ。だが、公爵は偏屈で人嫌いという噂があり、しかもかなりの醜男でそれを隠すために普段は顔半分を覆う仮面を付けているらしい。いくら王族でもグレタはそんな男との結婚など願い下げ。とは言え、子爵側から断るなど以ての外である。そこで、そっくりなアイリスにグレタとして嫁げと言っているのだった。結婚は神に誓う神聖なもの、しかも相手は王族。そんな大それたことは出来ないと珍しく逆らうアイリスを従えないのなら彼女の年上の友人でメイドのベロニカをクビにして屋敷から追い出すと脅してきた。ベロニカには足を怪我して働けない庭師の夫がおり、まだ子供も小さいのにここを追い出されたら路頭に迷ってしまう。この脅迫は功を奏し、かくてアイリスはウォルトン公爵にグレタとして嫁ぐことになるのです。三カ月後、ついに結婚式の日。ウォルトン公爵ことルーカス・ローズバロウはこの日を心待ちにしていました。支援している孤児院に出向いた際、子供たちに読み聞かせをしていたグレタに一目惚れし、バートンという偽名で院長を通して彼女と三年近く手紙のやりとりをした。十七歳もの歳の差からグレタが大人になるのを待っていたのに、今年十六歳になった彼女の元には結婚の申し込みが後を絶たないと聞いてルーカスは焦った。そこで、もう一人の娘の贅沢三昧により、かなり子爵家が金銭的に困窮していると聞き及び、多額の援助を申し出た上で求婚の旨伝えると、子爵から承諾の返事が来たのでした。図らずも、愛しいグレタを金で買うような真似をしてしまったルーカスは自己嫌悪に囚われるも、その思いを看過するほど、彼は彼女を愛していたのです。タイトル通り「身代わり花嫁もの」で、お互い知らぬまま最初から二人は両想いです。ルーカスはアイリスに一目惚れして以来手紙のやりとりをしており、今回横から搔っ攫われるのを恐れて結婚に踏み切ったのだけど、家族からの命令によりアイリスは孤児院に行く際はグレタと名乗っていたために少々ややこしいことに。アイリスもいつしかバートンに心惹かれていたのに結婚することを知らせても今回は何の音沙汰も無いので内心がっかりしていました。アイリスの監視として、コレット家からグレタの息がかかったメイドのデイジーが世話係として付いてくることになったが、二人きりになるとデイジーは横柄な態度でアイリスに接した。式の準備の時ですら、結婚後はウォルトン公爵領ベルフォードに移り住まなければならないことに対して文句の言い通しで、アイリスは居た堪れない。そして、教会で初めて出会ったウォルトン公爵は仮面はしていていたが、どう見ても醜男には見えないのだった。無事に式を終え、ベルフォードにある公爵邸に移り住んだアイリスは、改めてルーカスに挨拶するが、随分と素っ気ない態度でさっさと自室に引き上げてしまった。使用人たちはそんな主人の態度に慣れているのか、照れてるだけですよとフォロー。彼女達の言う通り、自室に逃げたルーカスは自分の妻になったグレタの可憐さに「天使だ」と萌え転がっていました。その夜、結婚後初の大仕事である初夜はお互い緊張しつつも滞りなく終わった。行為の最中にアイリスの手がルーカスの顔に当たり、仮面を弾き飛ばしてしまったようで、彼女はおとぎ話の王子様の様な何とも美しい青年の顔を見て眠りに落ちるのでした。翌朝、甲斐甲斐しく新妻の世話を焼いていたルーカスはもう仮面を付けていたが、朝食の際に彼女に醜いものを見せてすまないと謝罪されます。彼が言うには、二十年以上前に初めて夜会に出た際、ルーカスの顔を見た招待客達から悲鳴を上げられた挙句、口々に恐ろしいだの目が瞑れるだの言われたらしい。ルーカスは大層ショックを受け、以降自室の鏡全てを処分させ引き籠った。そんな弟を励まし、兄のロータスは仮面を作ってくれて、どうしても社交の場に出ないといけない時は自分の後ろにいれば良いとまで言ってくれたのだと言う。だが、そんなロータスとも今は疎遠らしい。数年後、兄の恋人の令嬢を紹介された時、いずれ家族になるかもしれないから失礼になってはいけないと仮面を外して挨拶したら、後日兄は令嬢にフラれたそうだ。そのことで、あんなに優しかった兄にお前のせいだと責められ、二度と顔を見せるなとまで言われてしまったルーカスは益々引き籠るようになった。その後、冷静になった兄から何度も謝罪の手紙が来て、王位を継いでからもあれこれ気にかけてくれているのに、自分勝手に不義理を続けて田舎に引っ込んでいることをルーカスは恥じていた。自己嫌悪の塊の様になってしまった彼をアイリスは宥め真摯に説くのでした。ルーカスは明らかに自分の容姿を誤解していますね。悲鳴を上げられたのも、兄が恋人にフラれたのもルーカスの容姿が美しすぎたからなんですが、碌に鏡を見ない彼に、家族や近しい者たちがいくら宥めても聞き入れなかった。そんなルーカスはこの日アイリスと語り合ったことで徐々に変わっていきます。でも、綺麗ごとを言いながらもルーカスに嘘をついてる現実がアイリスを苦しめるのです。アイリスが嫁いで三週間ほど経った頃、デイジーからまだ子供は出来ていないのかと明け透けに聞かれ戸惑います。どうやら、グレタからの手紙でアイリスが嫡男を産んだらデイジーはコレット邸に帰ってきていいと書かれていたらしい。きちんと毎晩励めと、何とも下世話な物言いにゾッとし吐き気がこみ上げる程だった。彼女を気遣うメイドのポピーはあからさまにデイジーを嫌っており、元孤児院出身で以前からアイリスと顔見知りだったことから、彼女に誘われてちょくちょく一緒にお茶のご相伴に預かっていた。今日の話題はもうすぐ開催の薔薇祭りのこと。薔薇が名産のベルフォードの祭りで、行商人もやってくるから毎年盛況なのだとか。ポピーは後にルーカスにアイリスと一緒に出掛けては、と提案するが、あの日以来避けられている気がして彼女は気が気ではない。だが、そんな心配を他所にルーカスは薔薇祭りに一緒に行こうと誘うのだった。祭り当日。仮面をしていると即身バレするため、ルーカスは素顔だった。どうやらあの日のアイリスの言葉に思う所があったようだ。お忍びでの参加は思っていたより楽しく、大人気の飴細工の行列にルーカスは並んでくれたりもしてくれた。その最中、列から外れて待っていた彼女は迷子になっていた外国人の子供を保護。幸い巡回していた警吏にすぐ引き渡せたが、言葉が通じなくて難儀していた。言葉のニュアンスから、本を読み独学で学んだラダムーン語のようで、片言ながら話しかけると名前とどこに住んでるのかが判った。どうやら、近くにある大使館に滞在しているラダムーン国大使の息子らしい。身元が分かり無事男の子は大使館へ送り届けられていった。待ち合わせ場所におらず、ルーカスに随分心配かけてしまったが、この騒ぎで二人が領主夫妻だとバレてしまったものの初デートは二人にとって良い思い出になるのでした。そして、この少年との出会いが後にアイリスの立場を守ることになります。祭りから暫く経ち、いつものようにポピーとお茶をしているとデイジーに見つかり、思わぬ諍いになります。アイリスがポピーを庇ったことが更に火に油を注いだようで、デイジーの口撃は止まらず、ポピーを泥棒扱いまでし始めた。そのことでついにアイリスがキレて厳しく諫めるとデイジーが激昂し彼女を突き飛ばすと首まで絞めて来た。人目があるのも忘れ、口汚くアイリスを罵しりながら首を絞め続けたデイジーは、騒ぎを聞きつけやって来たルーカスと男性の使用人たちにより引き剝がされます。静かに怒るルーカスがデイジーに事の次第を尋ねると、自棄になったのかデイジーは花嫁の入れ替わりを暴露し始めた。しかも、これはアイリスの企みによるものだと嘘をつき、彼女は窮地に立たされます。アイリスは騙していたのは事実なのだからと、敢えて悪者を装い罪を被ろうとしたがルーカスは彼女こそ自分が見初めた「グレタ」だと言い放ち、デイジーを屋敷から追い出します。彼は改めてアイリスに自分の想いとバートンという名で手紙でやり取りしていたことを告げると、アイリスもまた感謝しその想いに応えるのでした。戸籍上はグレタとの婚姻になっているため、こちらは急いで訂正させるが、問題はコレット家の面々だった。ルーカスは先手を打ち、今後アイリスに関わらないことを条件に詐欺については不問にすること、金銭の返還も求めないと子爵家へ通達して釘を刺した。だが、大事な金蔓を易々と手放すはずが無いと警戒は緩めないことにしていたある日、ルーカスは王家主催の夜会にて久しぶりに兄弟の再会を果たし、今までの蟠りを捨てるのでした。その二日後、ラダムーン国大使一家を招いた舞踏会の夜、グレタが現れ、自分こそが公爵の妻であると騒ぎ立てた。やはり、あの騒ぎでルーカスの素顔を見たデイジーが報告したようで、今になって美男の公爵の妻という地位が惜しくなったのだろう。不味いことに社交界ではアイリスが金遣いの荒い悪女扱いだったため、途端に招待客達はグレタに同情し始めたが、元より困窮しているグレタが乗り込んでくるのは想定済み。ノリがいい国王も一役買ってグレタを追い詰めるが中々にしぶとい。アイリスにグレタと名乗らせて慈善事業に参加させ、当の本人は遊び惚けていたという証拠を提示してもどこ吹く風であった。そこで、あの大使の子息が呼ばれ、彼を助けたのが公爵夫人だという警吏の証言を実証するため、子息に姉妹へ話しかけさせます。当然グレタは会話が成り立たず、片言ではあるが子息とラダムーン語で会話するアイリスこそルーカスの妻だと国王の宣言の元に認められるのでした。その後、釘を刺したにも関わらず騒動を起こした子爵家は罪に問われたが、全てグレタに押し付けて罰を逃れようと必死だったらしく、アイリスはなんだか妹が可哀そうになった。一年後、兄と和解したルーカスは政務を担うようになり忙しい日々を送っていたが、夫婦仲は良好。その日帰宅した夫にアイリスは妊娠したことを告げるのでした。で、終わり。とんでもないクソ家族でしたが、娘に罪を着せて逃れようなんて一番のクズは両親だけだったようです。グレタはああいう風に育てられたせいでもあるのと、公衆の面前で大恥かいたことでもう充分な気はする。火遊びの末に妊娠までしちゃった以上苦労するだろうなぁ。あとディジーは追い出すだけでなく立派な殺人未遂なんだからきちんと裁いて欲しかった気はします。このメイドも色々立場を勘違いしてた人だった。ルーカスとアイリスは終始ラブラブしてたので、この作家さんの割にはじれじれ度はかなり少な目。ストレスなく最後まで読めました。人質扱いだったベロニカ一家も公爵邸で雇って貰えて良かった(*^-^*)思えば、コレット家の面々(+デイジー)以外はみんなハッピーに収まってますね。書き下ろしのSSもタイトルを見るにただのイチャラブ話だろうことは予想が付く(笑)評価:★★★★☆電子も紙媒体も若干お高めの本ですが、身代わり花嫁ものが好きならオススメできます。
2022.02.13
コメント(0)
全6件 (6件中 1-6件目)
1