inti-solのブログ

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2014.02.24
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テーマ: ニュース(100295)
カテゴリ: 食の安全
業界「おいしい名前認めて」 サーモントラウト→ニジマスの指針案見直しへ
外食メニューの表示偽装問題を受け、消費者庁がまとめた外食メニュー表示のガイドライン(指針)案で、反発を招いた「サーモントラウト」の表示。「ニジマス」と表示するよう求めていたものだが、反発の大きさに同庁は指針案を見直す方針という。すしネタの「サーモン」は生で食べられるサーモントラウトによって定着した。業界関係者は食品の特性を踏まえたルールを考えてほしいと訴えている。

◆養殖だから生食可
ニジマスはサーモントラウトの標準和名。指針案ではサーモントラウトをサーモンと表記した場合、「標準和名はニジマスなのにサケと認識され、問題」としている。
食の安全・安心財団の中村啓一事務局長は「トビウオは標準和名がトビウオだが、九州や日本海側ではアゴと呼ばれるように、市場に流通する名前と標準和名が異なる魚は多い。食材としての名前と標準和名が異なることが必ずしも消費者を偽っていることにはならない」と指摘する。
サーモントラウトはニジマスを海面養殖(沿岸の海水を使った養殖)で大きくしたもので、ニジマスであることは間違いない。ただ、淡水魚のニジマスは寄生虫の心配から生で食べる習慣は一般的でなく、同様に天然のサケも刺し身で食べる場合は凍らせたルイベにする。すしネタの「サーモンにぎり」は、養殖のサーモントラウトが日本で安定的に供給されるようになったことで定着したメニューともいえる。
「サーモンにぎりとしてサケ科の魚を生で食べることができるのは、寄生虫の心配がない養殖のサーモントラウトならでは。多くの人が淡水魚と認識する『ニジマス』の呼び名ではすしネタで食べたいと思う人はいなくなるのでは」(中村事務局長)

◆アブラガニは減少
標準和名の表示しか認められなくなったことでスーパーなどで販売が減ったものにアブラガニがある。タラバガニと外見が似ているアブラガニは、かつて「タラバガニ」「アブラタラバ」の名前で、タラバガニより2割程度安い値段で販売され、「安くておいしい」と人気があった。
しかし平成16年、アブラガニをタラバガニの名前で売ることが景品表示法違反(優良誤認)となり、これをきっかけに標準和名のアブラガニの名前でしか売れなくなった。スーパー関係者は「タラバもアブラも味はそれほど変わらない。でも、アブラガニの名前では聞こえが悪いので売りにくくなった」と打ち明ける。消費者からすれば、安くておいしい食材を買う機会が減ってしまった。(以下略)

ーーー

なかなか微妙な問題ですが、根本的に、鮭と鱒は生物学的には違いが定義できない、ということなのです。日本で古来から親しまれていた鮭の仲間は、サケ(シロザケ)とサクラマスの2種です。で、もともとの日本語で、サケとはシロザケであり、マスとはサクラマスだったわけです。実はサクラマスの陸封型(一生を淡水の河川で過ごす個体群)はヤマメですが、サクラマスとヤマメが同一種とは、おそらく昔の人は認識していなかったでしょう。日本(北海道を除く)に分布する鮭の仲間には、もう一種イワナがいます。しかし、これもおそらく昔の人はサケ(あるいはマス)の仲間とは思わなかったのでしょう。実際、そうは見えないですから。
一方、英語では鮭の仲間は「サーモン」と「トラウト」です。一般にはサーモンはサケ、トラウトはマスと訳されますが、実際にはサーモンはタイセイヨウサケのことであり、トラウトはヨーロッパに自然分布しているブラウントラウトのことだったのです。
ところが、日本もヨーロッパも、これら「昔から知っている魚」の同類が世界中にいることを知ると(日本の場合は、世界の前にまず北海道に、色々な鮭の仲間がいた)、それぞれが各地の鮭鱒の仲間に、サケだマスだ、サーモンだトラウトだと、それぞれの言語で勝手に名前を付け始めたわけですが、それは生物学的な分類に基づいていたわけではありません。
だから、サクラマス、カラフトマス、マスノスケなどは、日本語ではマスですが、英語ではサーモンです。一方日本語でも、例えば「ベニザケ」の陸封型は「ヒメマス」と呼ばれる(北海道の河川にはヒメマスがわずかに分布する)。同じ種類の魚が鮭になったり鱒になったりするわけです。

分類学的にはサケ(シロザケ)もサクラマスもニジマスもサケ属であり、一方ヨーロッパのタイセイヨウサケやブラウントラウトはタイセイヨウサケ属です。だから、サケとマス、サーモンとトラウトの名前の区別は、生物学的な分類とはあまり関係がないのです。味や見た目も、同様です。
前述のとおり、サクラマスとヤマメは同じ種類ですが、とてもそうは見えません。ベニザケとヒメマスも同様です。むしろ、生物学的に同一種だからと、サクラマスをヤマメと称したら(あるいはその逆も同様)、その方が問題でしょう。「紅鮭です」と言われて、どんなにでかくて赤く染まった鮭が出てくるかと思いきや、全長30センチのヒメマスを出されたら、ちょっとね。

つまり、鮭鱒の仲間は、種類による差より、降海性か陸封性かという違いの方がはるかに重要なわけです。それは、言い換えればエサの種類と量の違いです。海と川ではエサとなる生物が異なるし、量もかなり違います。海の方がエサが豊富なので、海に出たサケの仲間は大きく育つし、えさの種類の関係で身がピンク色になるけれど、同じ種類でも陸封型は狭い河川で乏しいエサで生きるので、大きさも小さいし身は白っぽい場合が多い。
ニジマスは天然状態では陸封魚ですが、他の鮭鱒の仲間と近縁なので、海に下っても生きていける。そこを利用して海で養殖すれば、天然のニジマスよりずっと大きく育ち、身もピンク色になり、元の淡水魚のニジマスとはかなり違った魚に成長するわけです。これを鮭と呼ぶのは、まあ差し支えないと私は思います。
鮭缶だって、実際にはカラフトマスが使われていますが、鱒缶とは言わないですしね。(前述のとおり、カラフトマスは日本語ではマスだが、英語ではサーモン)

こういう、名称と生物学的な分類の不整合は、例えばワシとタカ、フクロウとミミズク、チョウとガ、植物ではカシとナラなどなど、よくあることです。そこに商品価値が関わると、話が厄介になるわけです。

なお、引用記事にあるタラバガニとアブラガニは話が全く違います。この2種は、互いにごく近縁ではあるけれど、別種です。複数の種類の総称でもなく、生物学的な分類と名称に不整合はない。そして、一般的にタラバガニの方がアブラガニより美味と言われ(どの程度の差か、感じ方は人それぞれでしょうが)本来の市価もアブラガニの方が安いのに、それを「タラバガニ」と偽って、タラバガニの値段で販売する業者があり、「買ってみたら美味しくなかった」という事件が多発して問題になったことから、アブラガニをタラバガニと称して販売することは禁じられています。





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最終更新日  2014.02.25 00:16:38
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