inti-solのブログ

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2016.09.18
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テーマ: ニュース(100322)
カテゴリ: 戦争と平和
ロンドン中心部に「百年前」の戦車展示
第1次大戦中の1916年、英軍が世界で初めて戦車を実戦投入してから100年になるのを記念して、ロンドン中心部のトラファルガー広場で15日、当時の戦車を再現した複製が展示された。
英軍は、ドイツ軍との間で第1次大戦最大の激戦となった「ソンムの戦い」で、歩兵を支援したり、塹壕を乗り越えたりするため、開発した最初の戦車「マークI」を使用した。
展示は英南部ボービントンにある「戦車博物館」などが企画。マークIを改良し数年後に戦闘で使われた「マークIV」が展示された。
突然、観光名所の広場に登場した珍しい「戦車」を外国人観光客らが取り巻いて、熱心に写真を撮っていた。

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第2次世界大戦が終わってから、去年で70周年だったわけですが、第一次世界大戦からは約100年が経過しています。したがって、その第1次世界大戦の最中に登場した戦車も、百周年を迎えた、というわけです。
戦車、戦闘機をはじめとする軍用飛行機、潜水艦、毒ガス、これらの兵器が初めて戦場に登場したのが、いずれも第1次世界大戦で初登場しています。ということは、これらの兵器も初登場からほぼ100周年ということになります。しかし、まさか毒ガスの登場100周年を好意的に扱うことはできません。戦闘機は何をもって「史上初」の戦闘機とするか、定義があいまいなのではっきりしません。飛行機に銃器を持ち込んで相手の飛行機と撃ち合いをするところから、前方に向けて固定式の機関銃を装備するまでの幅があるからです。潜水艦も、兵器として意味のある実用的な潜水艦の登場は第1次世界大戦だったものの、その原型はもっと古くから存在します。
それらに比べて、戦車の場合は、エンジンと無限軌道によって走行し、大砲を装備した戦闘車両と定義すれば、その第1号が引用記事にあるイギリスのマーク1であることは明らかです。同じ技術的基盤から開発されたその他の装甲車両(装甲兵員輸送車や装甲戦闘車、各種自走砲)は、戦車より後に登場しています。

引用記事の写真にある戦車は、最初の戦車であるマーク1ではなく、その改良型のマークIVだそうですが、素人目には両者の差はよく分かりません。ひし形の外観で回転砲塔を持たず、左右両側面に2門の主砲を配置するデザインは、両者同じです。そして、この形状は、これ以降の戦車には採用されることはありませんでした。実用面で色々な欠陥があったからでしょう。容易に分かるのは、正面に対して砲を向けにくいことです。そして主砲を複数装備すること(多砲塔戦車)は、第二次大戦直前まではいくつか例があったものの、実用性が低くて消えていきました。
そういう意味では、現在に続く戦車のデザインという意味では、戦車第1号は1918年に登場したフランスのルノーFT17だ、とも言えます。

ルノーFT17

ちなみに、最初の戦車であるマークI(マークIVも同じ)の主砲は57mm砲2門でした。それが第2次大戦になると、75mm砲が中心となり、有名なタイガー戦車は88mm砲を装備しました。(一方で、 47mm砲でがんばっていたどこかの国の戦車 もありますが)
戦後も戦車の主砲はどんどん強力になり、1950年代には100mmクラス、60年代には120mmクラスの主砲が装備されるようになりました(冷戦時代、戦車砲の口径は、西側陣営より旧ソ連の戦車のほうが一足先に大口径砲を採用する傾向があった)。しかし、そのまま70年代には140mm、80年代には160mm・・・・・・とは、ならなかったのです。
1970年代末から80年代前半にかけて、120mm砲を装備するドイツのレオパルドIIや米国のM1戦車が開発されると、それ以来30年以上にわたって、もうそれ以上強力な戦車や戦車砲は登場しなくなります※。

※威力に関しては、口径は同じでも砲身の長さを伸ばしたり、発射薬の改良で、多少の進歩はありました。

それ以降現在に至るまで、搭載するコンピュータなどソフト面の性能向上はあっても、戦車砲の威力やエンジンの馬力など、ハード面の性能向上は、もはやほとんどありません。これ以上強力な砲(ということは、必然的に、もっと重い車体ということになる)を搭載する戦車は実用性が乏しい、ということでしょう。
先ほど、日本は第2次大戦中、47mm砲という当時としても極めて非力な主砲しか持たない戦車を主力としていたことに触れました。戦闘機や軍艦では、緒戦期の一時期だけとはいえ、日本陸海軍は米英ソ独などに匹敵するか上回る兵器を開発しましたが、戦車に関しては、旧日本軍はまったくダメでした。その理由は様々ですが、もっとも大きいのは、道路や橋梁、戦車を運ぶ輸送船のクレーンの吊り上げ能力などの制約から、日本軍は戦車の重量を15t程度に制限したことです。

かのドイツ軍のタイガーII型(キングタイガー)は、重さが70tもあって、現在に至るまで、量産された戦車としては史上最も重い戦車でした。現在最も重い戦車は、やはりドイツのレオパルド2で約60tあります。一方エンジンの馬力はタイガーIIが700馬力、レオパルド2は1500馬力ですから、タイガー戦車は現在の戦車より重い車体を半分の馬力で動かしていたわけです。戦場で敵に撃破された戦車より、戦場に着く前に動けなくなって放棄された戦車のほうがはるかに多かった、というのもうなづける話です。

ところで、日本でも戦前の89式中戦車というものが陸上自衛隊によって復元されています。



さすがに、太平洋戦争時にはすでに旧式化して生産終了していましたが、1937年ノモンハン事件の際には主力戦車でした。旧ソ連のBT戦車には歯が立たず、大損害を受けて早々に撤退しています。どうみたって、対戦車戦闘などまったく念頭においていないような短い主砲、いかにも装甲が薄くて軽そうな車体、下手すると、正面装甲以外なら重機関銃でも貫通できるんじゃないか、と思えます。どう見たって敵の戦車と戦って勝てるような代物ではありません。ただ、世界初の戦車マークIの登場が1916年で、この89式が1929年ですから、13年後には国産化しているんですね。

マークIにしても89式にしても、今の戦車から見ればおもちゃのような代物ではありますが、生身の人間から見れば、凶暴な「戦う車」であることには違いありません。





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最終更新日  2016.09.18 21:12:03
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