日々のあぶく?
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瀬戸内海の小さな島、冴島に住む池上朱里、榧野衣花、青柳源樹、矢野新の同級生4人は、島に高校がないためフェリーで本土に通う。母と祖母の女三代で暮らす、人の好い朱里。美人で気が強く、どこか醒めた網元の一人娘、衣花。父のロハスに巻き込まれ、東京から連れてこられた源樹。熱心な演劇部員として活動したいのに、フェリーの時間から思うように練習に出られない新。17歳の彼らの故郷を巣立つ直前の物語。「幻の脚本」の謎、未婚の母の決意、Iターン青年の後悔、島を背負う大人たちの覚悟、そして、それぞれの恋は・・・?直木賞受賞、第一作は、”地方・故郷”小説。田舎を出る人、出ない人、島に対するスタンスも違ったり、それでも折り合いをつけて暮らす人、出ていく人・・・。久々に辻村氏の描く”地方・故郷”小説を読んだ気がする。でも、歴代のどこか閉塞感や劣等感があるダークな感じよりも、優しく、どこかほっこりさせてくれたり、明るさのほうが残った。もちろん、綺麗ごとばかりでなく、イライラさせられるところ(人)、島、田舎の人間関係ならではのやり過ごし方にはっとさせられたり、いいことばかりではないけど、読後感は良く、軽やか。なにより、懐かしのあの人が登場するのが嬉しかった!綺麗な終わり方だけど、その後の彼らの様子ものぞいてみたくもあり。--------------------------------------1島にやってきた自称作家・霧崎ハイジは、有名作家が書いた「幻の脚本」を探しに来たらしい。島に溶け込めず、人の心を荒らすばかりの霧崎を早々に追い出そうと、新の書いた脚本を「幻の脚本」だと偽り、彼に渡す。直後、霧崎は姿を消し、後に彼の名で、タイトルを変えた(多少手を加えた?)ものがシナリオコンクールで賞を取っていた。新は無邪気に喜ぶ。遣り手の大矢村長はIターンの受け入れなどに積極的。朱里の母・明実は、職が限られた数しかない島の中で、5年前に大矢村長が作ることを勧めた食品加工会社「さえじま」の社長だ(くじ引きで決めた)。Iターンの人の力や、国土交通省(離島振興支援課)の紹介で知り合ったという村長が連れてきた「地域活性デザイナー」谷川ヨシノの協力もあって会社は軌道に乗ってきている。役場の臨時職員をしていた蕗子も明実のスカウトで「さえじま」で働くことに。村には「兄弟」制度があり、助け合う仕組みがある。Iターンが島に溶け込む段階、素材のおすそ分けをもらう→手の入ったものが届くように誰かの家の庭が井戸端会議の場所みたいになる。2島の案内が届き、Iターンで冴島に暮らすことになったのんびりした本木は、島になじんでいる。シングルマザーの蕗子・未菜親子とフェリー内で話す椎名は、ヨシノの依頼でオリジナルの母子手帳を作ることになり、冴島のオリジナル母子手帳を視察しに来たという。だが、椎名は島を出て行った源樹の母・樹理の恋人で仕事のパートナーだった。冴島の母子手帳をデザインしたのは樹理。源樹は両親が離婚した5歳の時に島に残ることにしたのは、自分と兄弟になろうと言ってくれた朱里の存在のせいで、父を取ったわけじゃないと伝える。住民の間に入り、地域の課題を解決する手伝いをする、人と人を繋ぐのが仕事だというヨシノは島中の人と話し、島に溶け込んでいる。オリンピックメダリストで、地元の期待、栄誉を喜ぶ故郷に疲れ、既婚者だったコーチの子供を身ごもり、逃げなければとIターンで島に来た蕗子。彼女の両親が初めて島に来た。溝があるようだったが、未菜を可愛がる両親に蕗子の心も動く。故郷ほど、その土地の人間を大切にしない場所はない。・・・それまでの小説でも、有名になった人に対する故郷の対応は描かれていたが、直木賞受賞後に痛感したことも蕗子の描写に盛り込まれていたのではないだろうか。3テレビでヨシノが密着取材を受けることになり、「さえじま」も取り上げられることに。だが、村の行政、村長自身が取り上げてもらえないことに大矢村長が反発。それが発端で村に対立構造が。「さえじま」社長の朱里の母も矢面に立たされてしまう。また、村に病院がないのは村長の後援会にも入っている元医者の家の子供が医者になるまで待っているという裏の事情も判明。何も知らなかった朱里はショックを受ける。村活性化のために活躍する大矢村長のダークな面が明らかに。明実は会社を作ったのは居場所を作りたかったからだと、島を離れて亡くなった友人の死を悔やんでいることを話し、取材の話を断ることに。ヨシノは手伝いたい自治体もあり、冴島との契約が3月に満了したら、次は更新しないことを伝える。濃霧でフェリーが出ない日、未菜が血を吐いたと慌てる朱里はヨシノの言葉を受け、本木に知らせる。実は本木は医師免許を持っており、未菜は苺の食べすぎだったと診断。適切に処置する。本木は知らないが、島に医者を呼ぼうと画策していた新の母がヨシノらに相談、医師になる自信をなくし、どこか田舎で暮らそうとしている彼のことを聞き、彼に冴島のパンフレットを送っていたのだった。新の母は反村長派というか、大矢村長に期待してもできないことだけは自分たちで動こうとしていた。ヨシノは専属として福島に2年間住み、復興支援することに。村長はヨシノの契約終了を惜しみつつ、協力を約束。ヨシノは仕事としてではなく、友人として蕗子に自分に小4になる娘・奏がいることを伝える。彼女の仕事のよりどころを朱里らも知る。4網元の娘・衣花は、他の3人とは違い、高校卒業後は島に残る。亡くなった祖母の友人の遺品を、もう一人の同級生に届けられないかと村長に伝えられた祖母は怒った後に落ち込んでいるようで、朱里は心配する。祖母の友人は島が噴火した時に、島を出ざるを得ず、それを裏切られたように感じ、音信不通になってしまっていたのだった。修学旅行を利用して、その友人・千船碧子を探すことにした4人は抜け出すことにした舞台鑑賞の劇場で上演中の舞台の脚本を書いたと言う赤羽環と出会う。ヨシノの知り合いという環の協力を得て、友人探し続行。後に、碧子は亡くなっていたが、島で何人でも対応できるようになっている学校で続く劇の脚本こそが幻の脚本で、祖母と碧子が作家のウエノキクオ先生に頼んで書いてもらったこと、島から離れたのちに先生になった碧子の赴任先の学校でも上演されていたことが分かる。脚本を今でも、20人以上でも対応できるよう書き換えてほしいと環に依頼するも、環は新の才能を認め、新が書くよう提案。新は環の卒業した大学(文学部)、源樹はデザイン工学、朱里は看護学部を目指すことを告白。網元の存在、島に残ることは異存ないが、朱里と離れる寂しさに泣き出す衣花。男子のみで前例はないが、「兄弟」になりたかったという衣花の願いを叶えることに。また、島に戻ってくるつもりだという新は、衣花に待っててほしいと告げる。衣花はここで生きていく、とそっと胸に誓う。両想いなのは感じ取れるが、源樹と朱里のことがはっきり書かれてなかったのがちょっと残念。数年後、フェリー乗り場に迎えに出た衣花は村長に。そして「兄弟」の朱里が島に帰ってくる・・・。あたたかくも切なく、胸がいっぱいになる。
September 25, 2013