日々草

日々草

2005.08.01
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カテゴリ: 教育・子育て
孫娘のことねに英語教材を与えたいということねのママの依頼で、ネットのなかの幼児英語にかかわるところを覗く機会を得た。

驚いた、驚いた、熱狂的な英語育児をしているママたちの狂騒がそこにあった。
まさに恋のから騒ぎならぬ、英語のから騒ぎ状態である。

若いママたちの子育ての関心はここにあったのだ。このオババの日々草など見向きもされぬ理由がわかった。

「英語育児」という言葉があるのも始めて知った。

「英語育児」とは、言葉を獲得し始める0歳から、英語のテープ、ビデオを使用して、たえず英語を赤ちゃんに流して、脳に英語をインプットさせる。赤ちゃんの言葉の発語も英語であるという。
(英語圏で生活しているのではない。日本に生活し、純粋日本人の夫婦の子供にである)
そして其の教材DWE(ディズニーの英語システムの頭文字らしい)は、驚くほどの高額であると言う。

サイトの中に、英語子育て最中のママたちのおしゃべり広場 なるものがあり、其の中で、自分の英語子育てをHPで公開しておられるお母さんがおられる。
0歳から8年間の記録である、と言ってもこの方は英語の出来ない普通の専業の主婦ではなく英語を教える側におられる、英語に関してはかなりのプロの方だ。
まぁこの教材のオピニオンリダー的な方だ。
この方の公開されている「英語子育てノート」から私の感想と、中高生に英語を教えて、私自身が日頃実感していることを述べてみたい。

この「英語育児」教材の論理的根拠は、アメリカの言語学者、ノーム・チョムスキーの理論に裏づけられているらしい。
この理論は人の脳には生まれながらに言語習得機能装置(LAD)があり、言語運用能力は幼い時、たとえば英語などをインプットすると脳の中の「ウェルニッケ感覚言語野」に日本語とは別の独立した言語中枢を作る、しかもこのLADなるものは5~6歳で完成され13~14歳で劣化する、と言うことである。
赤ちゃんの時から英語を垂れ流すのは、このLDAなるものの発達を確保し、複数の独立した言語中枢を赤ちゃんの脳に作るためだという。

このお母さんは、この理論の実験をわが子でしておられる。
赤ちゃんから習得させれば、モチベーションなくして英語が習得できるからと言っておられる。

しかし、この言語学者の脳の発達のメカニズム論が本当に真かどうか、どうやって実証出来るのだろうか。

もしこの理論が真実なら、わが息子などは言語習得機能装置が全く劣化し、たぶん脳の中で死んでしまっている時から本格的に英語を勉強し始めたことになる(高校卒業後)。言語習得機能領域は死滅し、言語習得は不可能ということになる。
確かに、英語習得に苦労はしたが日本の青年層のなかでは、どこに出しても通用する役立つ英語を身につけることが出来ている。
アメリカの大学でも悪い成績ではなかった。
自分の専門領域はもちろんのこと、文化、芸術分野も学べるまでの英語力に到達できた。

人間の脳がどのように発達し、言語や運動能力や論理的思考などの複雑な能力をどうやって獲得していくかと言う問題は、専門家の間でも両極端といっていいほどかけ離れた理論を闘わせているのが現在のレベルではないのか。(私は専門家ではないので詳しくはわからないが)

先日、紹介した脇 明子さんの「読む力は生きる力」のなかでもこの問題に論及している。
赤ちゃんが自分の生まれた環境に合わせて、必要な能力をバランスよく発達させていく為には、余分な回路まで無理に残しておこうとするとバランスがくずれて色んな問題が生じてくる、と。

一般の家庭の赤ちゃんが、すべて他を投げだして英語の習得に時間やお金をかけるほど、生きていく時、英語が大切だろうか。
英語など出来なくとも優れた、充実した、楽しい人生を送っている人は多い。
広い深い人生観で生きている人はいくらでもいる。

母国語以外の言語中枢を作るために、他の発達をそこなってまで赤ちゃんに英語を垂れ流して生活しなければならないとは。

百歩譲ってこの理論実践が赤ちゃんの発達に好ましいとしても、

この赤ちゃんたちが社会で活躍する30年後に英語は今ほど重要でないかもしれない。
一般の人々は母国語で充分、という時代が来るかもしれないし。

現代の社会は、予測できないスピードで変化している。

そういう未来を予測して、どんな大人に育てるべきかが、まさに今親たちは問われている。

現代の青年たちが、いざ社会にでる時期になったら、其の親たちが子供に身につけさせたものはいらなくなっていた、ということも現に起きている。

サイトをにぎわしている英語育児はまさにそれ。その赤ちゃんたちが大人になった時、このわけの分からぬ英語力はいらないのだ。

これは、現代の英語コンプレックスの親たちにつけこんで、儲けをたくらむ巧妙なビジネスだ。

日本のお母さんたちが、「英語育児」ではなく「日本語育児」にこれほど熱狂してくれたきっと、今ある子供の問題の多くは解決できるはずだ。

今の日本の子供たち、中高生たちの日本語力、特に、書いたり、読んだりする力がどんなものか親たちは知っているか。
其の母語の貧困が子どもたちの人格形成にどんな影響を及ぼしているか知っているか。

とても深刻なのである。
この問題については、又機会を改めて書きたい。





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最終更新日  2005.08.01 15:33:18
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