日々草

日々草

2005.09.05
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小泉首相のキャッチフレーズの一つに「自民党をぶっ壊しても郵政民営化を断行する」というのがある。

これは都市の浮遊する無党派層に受けている。

今までの自民党の強力な支持基盤は地縁、血縁を背景に強固に結ばれた半封建的な農村であった。(もちろん巨大な企業もであるが)
しかしこの従来の自民党支持層は、高齢化による死亡と農業の壊滅的な破壊による農業人口の衰退、農村文化の死滅でこの社会から姿を消しつつある。

私の実弟(自民党)は地方都市の議員をしており、私はこの30年余り地方選挙には常に狩り出され、弟の選挙運動を心ならずも支援する立場にある。私はその都市の住民ではないが、選挙の度に、私が生まれ育った町の人々と懐かしい対面をしてきた。
前の地方選の時、とりわけ痛感したのは弟を支持する地盤の老いと崩壊が着実に進んでいるなということである。

これは止めることの出来ない流れなのである。

そしてその子供たちは、大都市の給与所得者であったり、今流のフリーターや無職となって、今までの農村文化の地縁とは無縁なところに生活基盤をおいている。結婚していない30代の息子、娘もとても多い。従来の農村の「家を継ぐ」という考えかたからは大きく逸脱した村の崩壊がそこにはある。

今まで自民党は、この地縁で結ばれた地方の議員たちの網の目のように張り巡らされた日常活動の基盤の上に成り立っていた。

この農村は政策とは無縁である。

日常の生活のなかで結合している「結い」の結社のようなものである。選挙にでもなれば、村は有力者の派に分かれ、激しく争うこととなる。地方で投票率が90~80%にもなるのは、この国家の一番、下位層の住民のこのような熾烈な戦いがあるからである。

しかし、この村は今はない。
高度経済成長とともに壊滅した。
自民党はこの浮遊する農村出身の若い世代に照準を合わせなければ存立も危うい。
郵政民営化の金儲け話はこの若い世代には目新しく魅力的に見えている。

現在、田舎に唯一残存している組織は何か。
農協と「全国特定郵便局」で代表される基盤である。
明治政府が郵便制度をスタートさせた1875年(明治8)以来、農村に延々と君臨している巨大で強力な組織なのである。
なにしろこの組織のルーツは、戦国時代の「地侍」「地方豪族」に由来する地方の名主・庄屋の協力を得て、その屋敷の一角に郵便局を置いたのが始まりだという。130年余り延々と続き、ある時は「日本列島改造論」の高度成長期の資金の金庫となり、又今度はアメリカの一儲けに貢献しようとしている。(其の政策によって、農村だけが破壊され痛めつけられている。)

この巨大な世界最大とも言うべき金融システム、生活互助会を自民党に有利に作り変えていくことは正に小泉首相の言う「命がけ」の戦いなのである。
自民党の存立基盤に関る生命線なのである。
今までの集票マシンは老いて死に絶えようとしている。
もう今までの集票マシンには頼れないのである。この老いぼれ層は見捨てなければならないのである。そのために小泉は「命がけ」なのである。

都市で浮遊する若い世代に希望を与える為には、儲け口があるという「幻想」をふりまかねばならないのである。

我々庶民の豊かな生活、人間らしい生活とはそれは無縁な改革である。
アメリカ流の金儲け第一、国民は其のおこぼれで満足しろと言う、これは政策転換である。

日本の農村の衰退と退廃、精神的にも非常なダメージを受けて今、高齢者たちが寂しく片隅で暮らしているという事実が、この金もうけオンリーの路線の行き着いたところである。
若者たちは都市で、する仕事もなく、仕事をする気力もなえて浮遊している。
これが金儲け好きな政策の行き着いた先だ。
其の路線を益々強固にし、推し進めようというのが今回の郵政民営化法案なのだ。

このような現実を突きつけられても、尚アメリカ流の金儲け、「勝ち組」と「負け組み」に分かれて争う社会になることを望むのか。

深く現実を観察し、この4年間の日本はどう変わってきたか見て一票を投じよう。

しかし、私は、
農村の集票マシンが破壊され、都市の労働組合の集票力が落ち、多量に浮遊する票が行き場を探しあぐねていることは、
社会が、大きく「個」というものを構成単位とするものに変化しつつあることを示していてとてもいいことであると思う。

民主主義はレベルの高い「個」の集まりでしか成り立たない。

市民として自分の頭で考え、行動する柔軟な知力、知性を養う学力こそ21世紀を生きる子供たちが身につけなければいけない。

「学び」の根拠がここにある。

他人まかせ、お上まかせの親の世代の論理を打ち破る若者たちの台頭が、今こそ待たれている。
そして、社会の奥深いところでは、もうすでにそういう若者が活動している。
流れとなって社会の表面にはまだなっていないけれど。
そういう社会の担い手になるべく、今日も若者たちが学び、働いている。

この若者の列に一人でも多くの若者が加わることを望みたい。そういう学びをして欲しい。






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最終更新日  2005.09.05 10:29:36
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