人にやさしい生態系とは。
私の散歩小径に
私の住む町の中央を貫く川があり、
その河川敷は4月の終わりごろより
一面、真黄色の見渡す限りのお花畑
オオキンケイギクで覆われる
(花の盛りは終ったが、河川敷3キロばかり延々と黄色のオオキンケイギクが咲き、
その合間を縫うように白い綿毛のチガヤが風にゆれている)
今年の晩春から初夏にかけては、
オオキンケイギクの大群が工場団地の土手や河川敷や道端に
目をみはるばかりの群れとなって咲いていた。
(後ろの方にある白い綿毛の群れがチガヤの群落:オオキンケイギクが真っ盛りの頃は、
河川敷は黄色に染まり、チガヤはその陰に隠れ見えなかった)
鮮やかな黄色で覆い尽くされた河川敷
夏を思わせるぎらつく陽光に
黄色を一層明るくオレンジ色に輝かせて
初夏の水辺で揺れている。
はっとするほど
明るく美しいお花畑
オオキンケイギクは
キク科の宿根草で
北アメリカ原産の帰化植物。
明治の中頃に観賞用として輸入され、
園芸植物として庭で栽培されてきた。
しかし
戦後は野生化し、海岸や河川敷に大群落となって出現した。
この10年間では、
高速道路の土手や新しく造成された鉄道路線沿いに
突然、大群落となって
お花畑をつくた。
2006年2月には
外来生物法に基づき
特定外来生物として栽培・譲渡・販売・輸出入などが
原則として禁止となった。
私の散歩道の河川敷の
オオキンケイギクは
万葉の時代から千数百年にわたり、
日本の風土のなかに順応して
人々の暮らしの中で、いのち紡いできた
チガヤ(茅)と
その生育場所をせめぎ合っている。
年毎に日本古来のチガヤがその場所を譲ろうとしている。
オオキンケイギクの強い繁殖力は
川原にその根を張り巡らして、
チガヤの根と争っている。
チガヤ
(初夏の風に揺れる、静岡・つま恋のチガヤ By Dabjose)
チガヤはイネ科の多年草
日当たりのよい空き地に一面にはえ、
白い穂を出す。
ツバナといって若い穂の甘い汁は、
かつては食べられたこともある。
私たちも幼い頃、サトウキビのように吸って遊んだ。
甘味の乏しかった戦後に
お菓子の代用であったのかも。
万葉集には
チガヤは
「浅茅」(アサジ)・「茅花」(チバナ・ツバナ)の名で登場する。
紀女郎(きのいらつめ)が、大伴家持におくった歌、
戯奴(わけ)がため わが手もすまに 春の野に
抜ける茅花そ 食(め)して肥えませ
(巻8・1460)
家持の返歌、
わが君に 戯奴は恋ふらし 賜りたる
茅花を喫(は)めど いや痩せに痩す
(巻8・1462)
穂をむしりとり食べた風習は万葉時代からあったことが歌からも窺える。
茎葉は乾燥させて屋根を葺き、
成熟した穂は火口(ほくち)に使い、
花穂は乾燥させて強壮剤に、根茎は茅根(ぼうこん)と呼ばれ利尿剤に、
チガヤは人々の暮らしの中で長い歴史をともにしてきた草
人々の暮らしが変わり
チガヤは無用となった。
さらに、
ワイルドフラワーなどという花々が
緑化の名のもと、花をにぎやかに咲かせて
土手や河川敷や造成地を花畑にするのが流行だ。
何千年もの長い時間を
その土地で、その四季を生き抜いて、その土地の風雪に耐えうる生態に進化させてきた草花が
このように安易に捨てられていいのだろうか。
人もグローバル化などと言い、
人らしい進化を止めている。
グローバル化とは、それぞれの特殊性や個性を無視して、
金儲けのために、
すべてを非人間的な低い方へ平均化することに過ぎない。
賃金の切り下げ、非正規雇用の増大など
労働条件を劣化の方へ
発展途上国と呼んでいる国に合わせることが
今、社会が行っている
グローバル化。
草花たちにも
同じことがおきているのではないか。
山々を丸ごと潰して、
雑木林を根こそぎなぎ倒し、
丸裸にされた大地に
造成された細切れの宅地と安普請の住宅を
一生かけても支払いきれない借金で購入する家。
その虚飾の家の
猫の額ほどの狭い庭に
雑多に花々を植えて飾り立てる
隣家と競うように花を咲かせている。
見たこともない外国の花々ばかり、
遺伝子の操作で、作り出された
確かに色鮮やかであったり
可憐であったり、
人の目に刺激的な花々
でも
なんだか変。
花が真っ盛りのときだけ
愛でられる園芸。
花期が終ればことごとく引っこ抜かれて
園芸店から別の花がやって来る。
蝶やハチが花粉を運び
風が、小鳥が種子を運ぶ
この花たちはどんな雑草になって繁茂するのだろう。
私の散歩道は
年毎に見たこともない草が次々に花を咲かせる。
雑然として荒れた草たち
その花の
姿を色を
次々に変えて咲く
道端の草たち
野の草花も
人の心を写す鏡なのかもしれない。
美しさを失っていく野の草、
荒れて雑然と咲く。
人が人らしく生きることの出来る
生態系を守るとは何か深く考えさせる
野の雑草たち。
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