現在の世界を深く洞察する能力を
今年度の新卒の就職活動は、世界的な不況のなかで、困難を極めている。
今、30代前半の青年たちの就職活動を、世間は氷河期などと名付けて、就職難の象徴にしようとしたが、就職難はまたまた到来したのである。
その氷河期以降、急速に青年たちの働き方に質的な変化が起きている。
要するに就職難は頻繁に起きているのである。
この現状は、単に景気の動向によって起きている、青年の就職問題なのだろうか? もっと大きな社会全体・経済構造そのものにおきているシステム的な転換が底流にあり、それに起因するのではないか。
現在、自公の麻生政権が進めている景気浮揚策がたとえ、部分的に効果が出て、彼らの言う景気が好転したとしても、その後に又、今よりも、もっと厳しく深刻な社会混乱や景気後退が起きる事は必然のように思われる。
今、社会が若者たちに求めている能力は何か。資質は何か。 この問いに答える、自己分析をすることなしに就職活動をしても良い結果など期待できないのではないか。
今、社会は、歴史的にみても大きな転換点にある。
私たち親世代が生きてきた価値観、仕事観では、もう立ち行かなくなっている。
封建的社会が、近代的な市民社会に変化した時、社会がさまざまな革新、革命をおこして、次の社会に進んだ。それに匹敵するような質的な変化が、社会の中では起きつつあるのではないか。特に、資本主義が高度は発達しているような社会においては。
このように考えていけば、青年達に求められている資質、能力は、自ずと親世代のそれとは異なるはずだ。
新しい価値観で社会を切り開く能力・度量・資質を、企業や社会は、青年に求めている。一流の大きな企業も中小の企業にも、真剣に今の状態を打破して生き続けようと思っているところはそうではないか。
今の大学や高校の学校教育は、余りにもこの社会の要請に鈍感で、的はずれな教育しか行なっていない。特に、高校の教師のやっっている進路指導には激しい怒りを感じている。
その親たちも、実に陳腐な価値観で子どもの進路を指導しており、うまく行かない原因がどこにあるのか、まるで的はずれなのである。子供たちに適切な指導が出来ていないものがほとんどである。
一番、滑稽な指導が、今の子はコミュニケーション能力が乏しいので、その能力をつけるための練習を課していることである。コミュニケーション能力など、その根底にある人間としての価値観や人生観と深く結びついており、付け刃的に教え込んでも世間で通用するものではない。採用する側には、足元を見られて弱みを見せているだけのこと。
それよりも、若者が現代の社会を深く見る目、深く見通す力、その基盤となる教養をしっかり養うことの方が先決ではないか。そこからコミュニケーション能力などは、自然と溢れ出るもの。
社会の底辺を担うはずになる学校序列の中以下にいる若者の能力も、非常に問題あり、社会を背負っていく労働者としては、使い物にならないのが現実の姿ではないのか。余りにも真の意味での勉強をしていない。ひどい。
民営化の急先鋒、竹中平蔵氏などは企業が海外に出てしまうことの原因に、規制緩和が、生ぬるいことや税制の問題や社会が構造改革をやり続けないことを挙げているが、ただそれだけとは思えない。企業は日本の若い労働力の能力に失望し限界を感じているのだ。安くて優秀な能力の若者がいくらでも世界にはいるのだ。
社会が深いところでシステム的に変化しつつある。
そのような社会に対応でき、更には組織を切り拓いて行く創造的で柔軟な能力を啓発できる資質をもった青年を社会は要求している。
そのような人材は不足している。
そのような能力はどのようにして育つのか。
これは子育てや教育の問題であるが、それに応える学校や家庭になっているかは、はなはだ疑問である。
全国学力テストで競わせて子どもに知識を身につけさせるような学校のやり方では、このような社会が要請している学力や人格は育たない。それは親世代がすでに実証済みの失敗なのである。
社会は、今後も混乱が続き、若者にとって困難な道のりになりそうだけれど、困難だからこそ、自らを鍛えるとき。
就職し、仕事をすることで、次の社会が到来した時、存分に力発揮できるようなキャリアをつめる、組織や人と出会える選択を、就職活動を通してするように、自分を磨く必要がある。
転職するたびに、社会から疎外されていくような選択はくれぐれもせぬように。
今、自分のやりたいこと、やれることは何か。広い視野から考えて欲しい。
もっと自分を大切にして、自分を成長させていくような選択をすることが必要なとき。
いづれにしても、「お上の言うまま」の教育や子育てでは子どもは大人になれないということだ。社会の風潮に翻弄されているだけでは、子どもは育たない。育っていない。
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