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去年の5月頃前庭ローズガーデンの改良に踏み切りました。既存のバラを生かしつつ周辺の植栽とのバランスをとるために多年草を配置していこうということで、ローズガーデンのイメージにあった品種を選んでいきました。使われているバラはホルストマンズ・ローゼンレスリー (Rosa 'Horstmann's Rosenresli') で花弁の多いロゼット咲きの大きな白色の花を咲かせます。花びらは大きくレース状に重なり合っていてややランダムな輪郭ですから、組み合わせる多年草も似たような形態をしたものが好ましいのではないかと考えました。また、既存の品種ではバラの背後に紅白の花をつけるサルビア・ミクロフィラ (Salvia microphylla) が控えており、付け加えるのであればシンプルに一色だけが妥当でした。そこでまず選んだのがサルビア・ファリナセア (Salvia farinacea) です。澄んだブルーの色合いの花穂から小さな花びらがややランダムに広がります。バラと比べて花びらの大きさはかなり小さいですが、ローズガーデンの主役を引き立てるという意味ではコントラストが効いていて良いのではないかと思います。またサルビア・ミクロフィラの花びらのサイズともおおよそ一致しており、統一感出す効果も期待できます。ペニセタム・オリエンターレ (Pennisetum orientale) グラスですが白色透明の花穂を立ち上げるという点では色彩、テクスチャーともに好適種だと思います。またサルビア・ファリナセアと背丈も同じくらいでバラの存在感を引き立てるのに向いているように思います。ネペタ・ウォーカーズロー (Nepeta racemosa 'Walker's Low' ) は小ぶりでたくさんの薄いブルーの花を付ける品種でサルビア・ファリナセアと同系統の色合いで少し見た目に変化をつけることができます。去年の植え付け時から比べるとそれぞれが大株になってきて迫力のある風景になってきました。青と白のメインカラーに時折赤が混ざり込み、統一されたテクスチャーの中でホルストマンズ・ローゼンレスリーの大きな花が映えて見えます。意図した風景が実際に出来上がってくるとデザイナーとしては嬉しいものです。今回の植物サルビア ファリナセアサルビア ファリナセア ホワイトペニセタム オリエンターレサルビア ‘ホットリップス’ EXPERIMENTAL GARDEN
2018.06.24
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ロンドンのウォータールー駅付近のサウスバンクにはローヤル・フェスティバル・ホールがあります。1951年に建造された文化複合施設でクラシック・ミュージックのコンサートホールをはじめレストランや様々なショップ、バーなどが詰め込まれています。毎週水曜日にP2Cの勉強会が行われており今年の2月から数ヶ月間はここに通っていました。勉強会は毎回代わる代わるチェアとなる人が二人選ばれ、それぞれ5問ずつ質問を準備してその解答をテーブルを囲んで議論するという形式でした。様々な会社からランドスケープ・アーキテクトの面々が集まりそれぞれの経験を共有しながらシラバスに関する理解を深めていけるので、多彩なアイディアに触れることができる貴重な機会でした。最も印象に残っている議論は「庭に生えている木が敷地境界のフェンスを越えて隣人の敷地に枝を張り出していて枝の落下により隣人が負傷したとする。損害責任の所在は誰にあるか?」という質問です。これは所有者責任についての問題で、土地や建物の所有者はその所有する領域内及び領域周辺の安全管理の責任を負うというルールがあり、枝の管理を怠った場合木の所有者が責任を負わなくてはならないという平凡な問題でした。ところがグループの中の一人が、「もし仮に、土地の所有者が木を完璧に管理していて、枝も完璧に敷地内に収まっていたにも関わらず雷がその木に落ちて、吹き飛んだ枝が偶然にも隣人を直撃し負傷したとしたら誰の責任になるの?」という質問を投げかけたのでグループ内で議論になり、所有者は管理責任を果たしているから関係ないとする派閥と、過失はないが厳格責任が適用されて所有者が負傷の責任を負わなければならないとする派閥に分かれました。結局試験では聞かれないだろうし法律の専門家に意見をきくと答えた方が無難だろうというふうに落ち着きましたが、あまりにおかしな設定だったのでみんなで笑いながら議論していたのが印象に残っています。フェスティバルホールのやや東側に向かうと黄色く目立つ階段があります。隣接のクイーンエリザベス・ホールの屋上に続く階段で、それを登って3階までいくとクイーン・エリザベス・ルーフガーデン・カフェ・バーがオープンしています。カラフルなプランティングポットや小さな芝生のエリア、ワイルドフラワープランティングに木製のプランターで作られたキッチンガーデンなど小さいながら工夫してさまざまな空間を作っていることが見て取れます。この小さな屋上庭園はグラウンデッド・エコセラピーというボランティアによってホームレス、依存症や精神疾患患者の症状改善や社会復帰を手助けする活動の一環として維持管理されています。知る人ぞ知るという感じの場所ですがテムズ川を一望できる穴場スポットです。ペイントが施された木製プランターに植えられている植物のコンビネーションです。パープルの垂直に伸びた花穂はリスラム・バゲイタム (Lythrum virgatum) です。水辺によく自生していて背丈が1.5mほどに達するやや高性種で、池の周辺などの植栽に用いられることの多い植物です。鮮やかな赤はリクニス・カルセドニカ (Lychnis chalcedonica) で植栽の中でよく映えます。ロンドン・オリンピックパークのヨーロピアン・プランティングベッドの中でも登場する品種です。階下にはサウスバンク・スケートスペースがあります。1968年に建造されたクイーンエリザベス・ホールのピロティに偶然できたスロープや凹凸の多い空間で、1973年から長年にわたって多くのスケートボーダーに愛されてきました。壁や支柱はグラフィティ・アートで塗られまさにポップカルチャーの象徴とも言える場所で、数年前に建物の改築が立案された時は有志で署名活動を行ってこの場所を保存する試みが行われています。こうしたポップカルチャーの保存活動は、歴史的なものと比べて価値の評価が難しく学問の場でもしばしば議論されているテーマです。この場所の保存と改良に関してはUCLのチームも提案を行っており依然として注目度の高いエリアです。 EXPERIMENTAL GARDEN
2018.06.23
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パディントンといえばくまのパディントンで有名なパディントンベアーがブラウン一家に遭遇した駅があるところですが、この付近にはリトル・ヴェニスと呼ばれるエリアがあり沢山のナローボートが停泊しています。ナローボートには人が暮らしていたり本屋やカフェ、バーに改修されていたりするため、いかにもイギリスらしい風景を楽しむことができます。リトル・ヴェニスから数分歩いた場所にはクリフトン・ナーセリーと言うガーデニング専門店があります。店内には多年草や球根をはじめとして多くの草木類やテラコッタ・ポット、様々なデコレーション、温室植物のブースやカフェがあり訪れた人々が思い思いに楽しんでいける場所です。何か質問があればサルバドール・ダリ並みの巻きひげのおじさんが植物のあれこれを色々と教えてくれます。今回紹介するプロジェクトは落ち着いた雰囲気のあるカナル周辺の住宅地と駅付近のハイストリートの喧騒の境界線上にあると言っていいと思います。パディントン駅からリージェンツ・カナル方面の出口を出てリトル・ヴェニスの方へ少し進んでいくとレストランなどが入っている建物と左へ逸れる道が見えてきます。パディントン・セントラルはオフィスビルの間にある公共空間の改修プロジェクトです。今のオフィスで働き始めた頃プレゼンテーションボードの作成を手伝ったことがありますが、オフィスビルの間の細長い街路空間をより歩行者にとって親しみやすい空間にするために、既存のサービスアクセス用の車道を縮小し、より多くの植栽と良質の敷石を使った遊歩道、小規模のイベントに使えるポケットスペースが一体となった活気のある空間を作ることが狙いでした。オフィスビルの間に位置するため陰りがちで、既存の構造物上を改修するため重量制限もありますが、マウンドを使って樹木や植栽に必要な作土層の深さをつくりだしています。街路樹は半日陰に耐えるベチュラ・ナイグラ (Betula nigra) で、明るく爽やかな樹冠を持ち、やや茶色みがかった幹はフレーク状の樹皮で覆われておりユニークな外見です。敷石とプランターの境界を入り組ませて空間的な一体感を出しており、所々に配置されたベンチでは植栽に囲まれながらリラックスして過ごすことができます。以前は車道と金属プランターに植えられた生垣しかない空間でしたが、多くの植栽を加え、昼休みには外に出て座ってランチや会話を楽しんだりできるポケットスペースへと生まれ変わりました。リトル・ヴェニスからの至近距離にバーやレストラン、ジムを備えているため今では平日休日問わず賑わう空間となっています。 EXPERIMENTAL GARDEN
2018.06.17
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今回はイギリスのランドスケープ・プロフェッショナルの仕組みを解説したいと思います。ランドスケープ・コンサルタント業界の中枢はランドスケープ・インスティチュート(以下LI)です。LIはランドスケープに関する教育慈善団体として設立されランドスケープの推進保全活動を行ってきました。LIは長年の功績を認められ1997年にローヤル・チャーター(王室認可)を取得しランドスケープに関する職能団体と認められました。王室認可を得たことでLIにはランドスケープ関連の問題や政策に対する発言権が与えらました。そのため会員のステータスと質を守るためにLIは会員資格を取得するまでのプロセスを厳格に定めています。基本的な過程は以下のようになります。1. ランドスケープ学位を取得 (3年)2. 実務訓練 (1-2年)3. ランドスケープの修士号を取得 (1年)4. チャーターシップの取得 (通常2年以上)この流れに沿って通常7-8年間かけてランドスケープ・コンサルタントの資格を得ることができます。もし学部で他の学位を取得していた場合は、1年間のコンバージョンコースと1年間の修士課程を修了することで1と2のプロセスに替えることができます。それでは各プロセスを簡潔に説明したいと思います。1. ランドスケープ学位の取得高校を卒業しランドスケープ関連の職業を生業としていこうと考えるのであれば、大学でランドスケープ学科を専攻します。大学はLI公認プログラムを有する大学を選択します。大学の教育はプロフェッショナルの養成を目的としているので実務に沿ったプログラムが設定されています。そのため大学に通う3年間で実務に必要な技術や知識、能力を身につけることができます。2. 実務訓練 (Year Out)学位取得後に最低1年間の実務経験を積むことが修士課程へ進学するための条件になっています。人によっては1年以上の経験を積む人もいます。3. ランドスケープの修士号を取得実務経験を経て修士課程へと進学します。修士プログラムは大まかにランドスケープデザイン、プランニング、メンテナンスの方向性に分かれており、自分のやりたい分野に応じて授業を選択し単位を取得できます。修士設計に重きが置かれており、約半年間かけて行われ全単位の半分を占めます。4. チャーターシップの取得修士課程を修了するとP2C (Pathway to Chartershipの略)と呼ばれるチャーターシップ取得課程に登録することができます。P2Cとは実務経験を積みながらLIの定めたシラバスに則りプロとして必要な知識と判断力を養っていく学習課程のことです。学習内容には倫理、法律、環境規制、業務管理、施工管理、開発許可申請法が含まれ、それぞれの分野の学習進度は会社内のメンターによって査定され進捗状況に応じてポイントが付与されます。それと同時に実務記録を提出し外部のスーパバイザーからアドバイスを受けます。チャーターシップの受験資格を得るにはメンターからの推薦とスーパバイザーからの承認が必要です。承認後は年に2度行われる口頭試問形式の試験を受験します。合格者にはCMLI (Chartered Member of the Landscape Institute)と言われる会員資格が与えられます。CMLIのステータスはイギリス国内だけでなく国際的にも認知されています。ランドスケープ・アーキテクトはこれらすべてのプロセスをすべて修了することで初めて真のプロフェッショナルとして認められると同時に、長いキャリアのスタート地点に立ったと言えます。 EXPERIMENTAL GARDEN
2018.06.10
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