クルマ、バイク、鉄道模型など趣味で人生を楽しむ

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2024.04.18
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カテゴリ: クルマ
458を2台乗継いで8万km走りましたのが、なぜ458スペチアーレを買わなかったのでしょうか。458スペチアーレと488ピスタはどこが違うのでしょうか。
両車の相場がドンドン高騰する中でよく聞かれることなので、今までの経験に基づいて私なりに説明したいと思います。
また、最近の出来事として、458スペチアーレの自走不能の事故車をCORNESが横浜ボディショップで本気で復元レストアし、ハイエンドモデルの個体を重視する新しい価値観を提案して来ました。修復歴無しの認定中古車が7000万円強で売られている中で、顧客のフェラリストによる入札方式で6500万円前後で落札されたようです。決して安くありませんし、その個体は2013年製で生産後20年以上経過したクラシックフェラーリでもないのに、クラシケの本社認定証明が付与されているとのことで、その点も極めて異例なので背景を探ってみたいと思います。

まず、 458スペチアーレを買わなかった理由 です。
1台目の458を乗っていた時にスペチアーレの新車を買った知り合いの方に30分ほど、六甲山を走らせてもらったことがあります。第一印象は軽くて回頭性がさらに良くなったことです。サスが固められ、エキゾーストノートもより大きくなって、車内はタイヤのロードノイズも加わってレーシーなサウンドで充満し、会話がしにくいほどでした。458の特性をより伸長させた感じで開発コンセプトの方向性を修正したり、パーフォーマンスの弱点を改善したということではありませんでした。
458に乗って一番感じていた課題はトルク不足です。よくご存じの方は理解していただけると思いますが、トルクがないとスピードが出ません。カタログデータを見れば、その傾向がよく出ています。スペチアーレは458に比べて90kg軽量化され、最高出力は458の578psから605psに向上していますが、それはレブリミットの9,000rpmの値ですから、トルクの向上は断念し、圧縮比の12.5→14.1、コンロッドのチタン化、フライホイールの軽量化など元々の高回転型エンジンの特性をさらに極めたのでしょう。しかし、肝心のトルクが540Nmで458と変わりないのです。トルクを上げるためには、回転数を上げるか、排気量を増やすか、ターボを付けるかの3択しかありません。そのため、0→100kmは458の3.4秒に対し、3.0秒。0→200kmは458の10.8秒に対し、9.1秒と軽量化の成果が如実に出ていますが、ピスタの7.6秒、296GTBの7.3秒には遠く及びません。大人しい味付けのGTカーであるローマでさえ、何と458と同じ10.8秒。458や458スペチアーレは「最後のNA」と賛美され、F355から高圧縮比、高回転のエンジンを正常進化させてきました。しかしながら、最近の800回転!(アイドリングです)くらいからターボが効いて軽やかに吹き上がるツインターボの実力を忘れてはなりません。全域で効いているのでターボメーターなんて付いてません。
もちろん、エキゾーストノートはツインターボ車と連続して乗り比べると458はしびれるなあと感じますが、ピスタやF8もよくチューニングされていて、サウンドが貧相とか細いという感じはしません。やはり野太く、ドスの効いた音色であり、まぎれもなくフェラーリ・パーフォーマンスモデルの一族なのです。NAへのこだわりというより、14.1という高圧縮比(ピスタ9.6、296GTB9.45)によるF1のクォン、クォーンというようなカン高いエキゾーストサウンドがどうしても好きという方は別ですが・・。
458スペチアーレで高速を飛ばしたことはありませんし、自動車評論家の大半のちょい乗り試乗でも高速は殆どないと思いますが、恐らく180kmくらいから240kmくらいの中間加速ではツインターボ車のように中々速度が上がらず、オヤッ?と意外に驚くはずです。
カタログの最高速度だけ比べても殆ど意味がありません。実際FISCOで1500mのメインストレッチを走らせると、第1(TGR)コーナーまでにNAの458やポルシェGT3RSは270-280km/hしか出ませんが、ツインターボのピスタ、ポルシェGT2RS、アストンDB11AMR、マクラーレン720Sは310-320Km/hまで出ます。やはり、最終コーナーの80km/h前後からADVANブリッジの230km/h前後までの中間加速はトルク差が如実に出ます。TGRコーナーから100Rや100Rからダンロップコーナーなどで追い抜く場面でもトルクによる加速が上回っていないとインからは中々抜けません。
以上が458スペチアーレを買わなかった理由です。

CORNESに希望オプション仕様のピスタを探してもらうようお願いした時は、すでに458が488より人気がありリセールバリューが高かったので、車検が来た458の1台目を乗り続けずに、走行距離の少ない2台目に乗換えて待てば、一番売買代金、維持費の資金負担が少ないと判断し、実際その通りになりました。
458スペチアーレはカーセンサーなどを見ると、特にスパイダーが1億円のプライスになっています。街のショップが投資買いされたオーナーからの委託希望で頼まれて出品していると思われますが、スペチアーレの後継車と言われるピスタの相場を踏まえると、CORNESの7,000-8,000万円の出品価格が妥当なレベルと思います。レース・サーキット志向の458スペチアーレでスパイダーがベルリネッタより1,000万円以上も高額になるのはアメリカ市場でもなければ、可笑しいと思われませんか。同乗の彼女が一般路での乗り心地の悪さに悲鳴を上げるでしょう。

その後の相場鎮静化 5/17
お蔭さまで現在、ブログの閲覧数は全体で10,000件を突破し、本稿はその中でもかなり沢山の方々にご覧いただいています。458スペチアーレは458とともに新しい電子制御の時代を切り開いた歴史に残る名車ですが、トルク不足と電子制御の未成熟性は紛れもない事実なので、その後、市場に売り物が増えて、相場が相応の7000-7500万円に落ち着いてきたのは嬉しいことです。投資目的で買う方がいらっしゃるのは仕方ないですが、やはりクルマなので乗ってどれだけの価値があるかという一般の評価で相場が決まらないと異常だと思います。



次に何かと話題の 458スペチアーレ復元車の話 に入ります。
2月に実車が東京、名古屋、大阪のショールームで展示されていたのでご覧になった方もおられると思います。




横浜ボディショップは元々サービスセンターでしたが、加修やレストアの経験を蓄積して、今回ボディセンターとして特化しました。このような動きはすでにアストンマーチンのディーラーである八光が先行し、ボディテクニカルセンターをメーカー本社と緊密に連携して充実させています。





元の事故車は外目には大破というようなひどい状態でもなく、自走できなかったのが不思議なくらいです。しかし、外観がこの程度で済んでいるということはクロスメンバーやサイドメンバーがショックを吸収して歪んでいるということです。さらに内部でセンサーやECU、ラジエター、オイルクーラー、サス、ブレーキ、エアフロ―など電子制御機器がぎっしり詰まった現代車はそれらの損傷も含めると途方もない修理費用が掛かり、保険上の扱いは修理費用が3,290万円の当初車両価格から減価償却された価格の半額以上になる「全損」扱いになるんでしょう。
右側のヒットで前後ともフレームが複雑に歪んでいるので、エンジンが搭載されたボルトオンのリアフレームは即交換、溶接されたフロントフレームは一旦切断して交換部分の溶接、前後のカーボンバンパーは即交換などなど、純正カーベンチに車体を搭載して三次元でミリ単位の復元が施されたようです。






ファクトリーマニュアルの先頭パートはベンチデータがぎっしり記載されていて、ミリ単位で指定された3次元の位置にフレームを調整するのは至難の業でしょう。全体に歪んだフレームを引っ張りながら溶接できる状態にまで持っていくのが大変そう。CORNESも2か月掛かったと説明していました。こちらを引っ張れば、既に合わせていたあちらが歪み・・・とか、3次元の位置合わせは究極のイタチゴッコだったでしょう。


ユーチューブでよく観る、アメリカのショップが手慣れた調子で作業している光景ですが、問題は精度をどこまで出しているかですね。正直なところ、「これでまっすぐ走るの?」です。「サーキット走行を楽しんで下さい」とCORNESは公言しているので、相当の自信があるようです。






アルミの溶接は一発勝負。融点が低いので歪み、ワレ、酸化が進みやすく熟練度が勝負。過去からの溶接データが蓄積されていて、溶接部位の仕上がり状態はフェラーリ本社からもチェックが入るとのこと。CORNESの説明では溶接は30か所に及んだそうです。










超高速での直進安定性がアライメント調整で試されます。


リアフレームはボルトオンで新品交換。向こうが運転席側、手前が最後尾側です。








前後バンパーはカーボンで即交換になります。


20インチ鍛造ホイールF9J、R11JやミシュランパイロットスポーツF245/35、R305/30も4輪全て新品交換のようです。




右側のドアトリムやフルハーネスも新品交換されたそうです。スイッチ類はワイヤレスにもなっているし、作業の大変さは想像に難くないです。


CORNESとしても経験豊かなメカニック、エンジニア、マネジメントの総力を挙げての態勢で臨んだようです。

復元プレートを付けるくらいですから、CORNESとしてもリセールバリューの維持向上にかなり注力されると思いますので、オーナーとしても将来処分しなければならない場合にも「修復歴ありの中古車」扱いとは次元の異なる安心感が持てそうです。

フェラーリのクラシックレーシングカーを収集されているセレブの方とお話ししましたが、そもそも修復歴があるのは当たり前でかろうじてオリジナルフレームの一部を残している点が、「オリジナル」とされる所以だそうです。ペブルビーチコンクールなどではビス、ナットなども含めオリジナルパーツが多くないと入賞できないものの、売買交渉の上では、エンジンはリプロパーツ使用もやむを得ず、リペイント、再メッキは100%OKとのこと。ヨーロッパの金持ちはミッレミリアなどのイベントにはレプリカをもう1台作ってそちらで参加することが多いが、レプリカとは言え、仕上がりがオリジナルと変わりないので、オーナーが変わっていくうちに「オリジナル」扱いになることも多いとか。残存台数も諸説に分かれる場合が結構あるそうです。
ともかく、修復歴の有無をやたら問題にする日本の既存中古車市場とは別のマーケットを育てていく必要がありそうです。

なお、クラシケの認定に関しては、私の理解では20年以上前のビンテージフェラーり、クラシックフェラーリに限られていたと記憶していますので、なぜ2013年製の個体に対して付与されたのか、CORNESに今回の例外措置の経過をお聞きして、また更新します。横浜ボディショップと中古車事業部に照会しましたが、担当が違うのでよく分からないとのことでした。





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Last updated  2024.05.26 06:14:50
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