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2020.01.28
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カテゴリ: 雑記
飼っていた猫が死んだ。

14年前。
高校の後輩が溝に捨てられていた子猫を拾い、貰い手を探していた。
タキシードのような、黒の身体に白い模様。
まさしくそんな猫が飼いたかった私。
生まれて初めて猫を飼うことになった。

家族・猫部門の新設。
毎日毎日、同居の犬と喧嘩ばかり。
家はボロボロになり、何度も粗相をされ、病気をして高額な医療費に驚き。

玄関まで急いで迎えに来てコーナーを曲がり切れず壁に激突して。
名前を呼べば返事をして、大儀そうに愛想を振りまく。
猫を飼うことの大変さと、面白さ。

一人暮らしをするとき、一緒に連れて出た。
けれど、街へ連れてこられたハイジみたいに、家に帰りたがった。
一週間で、実家に戻った。

それから、「実家の猫」になった。

具合が悪くなってから、1か月。
食事をとれなくなり、点滴だけで過ごした。
最後まで自分で歩いて、膝に乗って甘えた。

両親と妹が、介護と看取りをしてくれた。

無責任に、ただ来訪者として。

月曜日。
早朝、息を引き取ったと連絡がきた。
実感がわかなかった。

水曜日に、葬儀屋さんに来てもらうことになった。

「猫のために休むの?」と上司に言われた。純粋に、驚いたように。
そうなのかもしれないな、と思った。
動物を飼っていない人からしたら、そんな風に思うのかもしれない。

これまで動物を飼ったことがない夫は、「僕も行こうか?」と言った。
この人が、ネジをたくさん持っている人で良かったと思った。
私が持たない心のネジを。

水曜日。
昼休みになっても仕事が終わらず、40分ほどしてから職場を出る。
実家に向かう途中、ダリアの花束を2つと、みんなで食べるシュークリームを買った。

実家へ向かう電車は、昼下がりで空いていて、午後の光が差し込んでいた。
そのときになって、ようやく、涙がにじんできた。
胸がつかえたような、何かを飲み込んだような。

ああ、もういないんだ。
この世界のどこにも。

今から私が向かう先に、にゃあと言って出迎えてくれる君はいないんだ。

眉間の白の模様が、すこしずれていること。
そこを触ると、ザリザリして気持ちいいこと。
肉球にハートみたいな黒い模様。
たぷたぷした白いお腹を揺らして歩いていたこと。
宝石みたいな瞳の色。
耳が薄い花びらみたいだったこと。

はじめてうちへ来た日、ベッドの下に隠れて出てこなかった。
「こんなちいさな生き物の命が、私にかかっている」と思うと、怖くてしかたなかった。
最後に会ったとき、抱き上げたら骨と皮ばかりになって、子猫ほどの重さしかなかった。

山盛りのカリカリ(餌)に、お気に入りのぬいぐるみと、毛布。
丸くなった姿は、ちょっと眠っているだけのようにも見えた。

花束をひとつ、棺に入れた。
もうひとつは、実家に飾った。
そうしたら、煙になっても、まだつながっていられる気がした。

これから先、何年もたって。
いろんなことを、私は忘れてしまう。

でもきっと、世界中にあなたの影を見る。
通りすがりの猫に、テレビに映る猫に、姿を重ねる。
何度も何度も、私が死ぬまで。
猫といえば、あなたのことだ。

飼っていた猫が死んだ。
私が初めて飼った猫が。



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最終更新日  2020.01.28 05:47:42
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