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2022.05.17
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本のタイトル・作者



バチカン大使日記 (小学館新書) [ 中村 芳夫 ]

本の目次・あらすじ


大使の一日
私的聖地ガイド
昭和天皇の写真
教皇から手渡された3冊
カトリックとの出会い
スイス衛兵への敬意
マザー・テレサ列聖式

ビジネス界出身の大使として
世界の宗教指導者が集う
スポーツと信仰
日本バチカン国交樹立75周年
教皇フランシスコの訪日
聖職者による性的虐待
中国訪問という「夢」
土光敏夫会長の思い出
コロナとともに

引用


足跡を見ず。過去は振り返らず。前を見て進む。それが土光さんの流儀で、スタッフへの教えだった。


感想


2022年120冊目
★★★★

バチカンに日本大使がいるなんて知らなかった。
タイトルが気になって読んでみた本。


経団連に入局し税制を担当。
土光敏夫会長、豊田章一郎会長、今井敬会長、奥田碩会長、御手洗富士夫会長から教授を受ける。
2010年経団連副会長・事務総長に就任。
2014年第2次安倍内閣・内閣官房参与(産業政策)。
この本は、2016~2020年に駐バチカン大使を務め、教皇来日を実現した著者の日々の記録。


もちろん大使館はバチカンの中にはなく、イタリア、サンタンジェロ城の近くに「在バチカン日本大使館」がある。(日本人はもちろんバチカン市国にいないにも関わらず!)

なのにどうしてバチカンがそこまで重要視されるのだろう?
と疑問だったけど、この本を読んでわかった。
どのような辺境の地にも張り巡らされた情報網。
全世界に13億人にいるカトリック信者。その影響力。

著者はカトリック教徒だけど、妻との結婚を機に信徒になったので、生家がキリスト教なわけではない。
カトリック名は「マタイ」。
マタイはキリストの弟子になる前、徴税人として働いていた。
租税政策を勉強する著者は、そこから名づけられた。
ちなみにキリスト教徒であることは駐バチカン大使の条件ではないそうだ。

著者が赴任時にかかげた目標は三つ。
・教皇の訪日実現
(教皇は初のイエズス会からの選出であり、日本もまたイエズス会により布教された国だ)
・日本からの枢機卿の選出
・日本バチカン国交樹立75周年事業
(太平洋戦争勃発の翌年1942年にアメリカの反対を押し切ってバチカンは国交を樹立)

この本を読んでいると、外交とは「接待」であり「人心掌握」なのだな、と思う。
著者は庭師も含めたバチカンに仕える人々と交流し、日本の地位を高め存在感を強めるよう動く。
そしてついに教皇来日を実現させる。
家族の面会もちゃっかり取り付けていたり、この人たぶん清廉潔白なだけじゃない。
でもたぶん、そういうものじゃないところで、いろんな物事が動いたりしているんだろうな。
人は「利」で動き、しかしまた「情」で動く。

信任状捧呈式で、教皇フランスシスコから著者が渡された3冊の本。
『回勅 ラウダート・シ―――ともに暮らす家を大切に』
『使徒的勧告 福音の喜び』
『使徒的勧告 愛の喜び』
2015年に発表された「ラウダート・シ」は環境に会する回勅(教皇が司教を通じ、全世界の信徒に出す公文書)だそうで、そんなものが存在していたことを初めて知った。

行き過ぎた資本主義。技術への過信。戦争。核。
ウクライナ侵攻の際、教皇が「どうかみなさん、戦争に慣れないでください」と言っていた。
それを聞いたとき、「慣れることなんてないだろう」と思っていたのだけれど―――人は、慣れる。
ニュースは戦争を報道する。毎日毎日。それが当たり前になる。
そうして気付けば後戻りが出来ないところまで来てしまう。
気づいたときには「あの時」がずいぶん遠ざかっている。
戦争に慣れた自分に気づく。
天気予報を見るように日常に溶け込んだそれを当然のように受け入れている自分に。
そうやって、「しかたがない」と、「やむをえない」と、進んだのだろうか。
かつての戦争も。

私は幼い頃に救いを求めてひとりキリスト教の門戸を叩き、救われずして人知れず去った者なので、キリスト教に対しては「どうしてあの時、私を助けてくれなかったのですか」と思う気持ちがある。
教義もろくすっぽ学ばずして、キリスト教の側からしたら逆恨みも良い所なのだが。
宗教は、信仰は、縋るものを与え、人を支える。
それゆえの良い面もあれば、悪い面もある。
教皇が訪日の際に「青年との集い」で話していた内容はとても良かった。
「相手を上から下へ見てよい唯一正当な場合は、相手を起き上がらせるために手を貸すとき」。
世界中に、それぞれの宗教がその良き影響を与えてくれるように願う。

○この本に出てきて辞書を引いた言葉
・謦咳(けいがい)
…せきばらい。しわぶき。「謦咳に接する」で目上の方に直接お目にかかること。
・捧呈(ほうてい)
…手に捧げて奉ること。「信任状の捧呈」
・陥穽(かんせい)
…人を陥れるはかりごと。「陥穽にはまる」
・真福八端(しんぷくはったん)
…至福の教え。エス・キリストが「山上の教え」の冒頭で、真の幸福とは何かを語ったもの。カトリックでは「真福八端」という。




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最終更新日  2022.12.04 00:11:43
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