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2022.06.01
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テーマ: 読書(8559)

本のタイトル・作者



往復書簡 限界から始まる [ 上野 千鶴子 ]

本の目次・あらすじ


エロス資本
母と娘
恋愛とセックス
結婚
承認欲求
能力
仕事

連帯
フェミニズム
自由


引用



マスメディア、とりわけ男メディアの需要に応えて役割演技をパフォーマンスすることで日銭をかせぐより、ほんとうに自分のやりたいことをおやりなさい。アラフォーになれば、人生の日射しはもう傾き始めています。自分の人生が有限であることをしみじみ痛感するようになるのがこの年齢です。人生のなかで大切なことに優先順位をつけて、それをまちがえないようになさいな。


感想


2022年135冊目
★★★

言わずと知れた上野千鶴子さんと、慶應義塾大学在学中にキャバクラやAV女優を経験し、日経新聞に就職した(現在は退職し作家)鈴木涼美さんの往復書簡形式の対談集。

身体の価値は誰が決めるのか?
その自己決定権は本当に自分によるものなのだろうか?

といった問題についても考えるのだけど、何よりこの本の形式により、なんというか…「年を取るのが怖くない」と思えた。
というのも、鈴木さんはまだ自分の中で確固たる答えにたどり着いていないというか、うわべを言葉で飾って同じところをぐるぐる回っている感じがするのだ。
自家撞着、自家中毒。
読んでいて「そうなんだけど、うーん」と気持ち悪く思うところがあって、それを次の上野先生の返信がばっさり切る。


鈴木さんはこの対談が出来て本当に良かったんじゃないかな。
自分の「核」のまわりで、それがないものように振る舞い、それに触れないようにしていた。
そんな感じがする。
「核」、「中心部」の引力が及ぶ範囲で、その遠心力に引き寄せられて回周している。

でも上野先生はそれが何なのかを言い当てる。

あなたはそれを、とことん知りなさい。
そうしてはじめて、そこ=限界から出て行けるのだ、と。

痛いときは痛いとおっしゃい。
好きなことをなさい。
人生は短い。優先順位をつけて、それを間違えないようになさい。

上野先生ご本人が、鈴木さんに対して「親戚のおばちゃん」みたいになってしまう、と仰ってるのだけど、本当にそういう意味で、上野先生より下の世代の女性に対するメッセージの1冊としても良い本。
人の心身は壊れやすいもの。壊れやすいものは、壊れものとして扱う必要がある。それが自分にも他人も必要だと分かるまで時間がかかった。愚かなことだった。と書いてらっしゃるの、本当にすごいと思った。

上野先生の言葉は、本当に容赦ない。
それは、傷を直視する。
相手のために「見ないふり」をすることじゃない。
あなたは血を流している。その傷だ、と言い当てる。
だからあなたは、そこに手を当てるべきなのだと。

鈴木さんが最初遠慮して、そしてズバズバ来る指摘に若干卑屈になって、でもそこから師に教えを乞うように自らを開示し、最後にちょっと「ここ」から出て行けそうな気配があって、楽しみになった。

上野先生の豊富な語彙もすごいんだけど、2点見慣れない言葉が出てきたのでメモ。

・阿諛(あゆ)…おべっかを使うこと。
・旗幟鮮明(きしせんめい)…旗を掲げるように、主張がはっきりしていること。

豊富な知識量。それにアクセスし、自分の武器として使えること。
そしてそれを、誰かのために使えること。
ああ、いいなあ。こんなふうに、歳を取っていけるなら、加齢はなんと楽しみなのだろう。
ただそのためには漫然と年を重ねるだけでは辿り付けない。




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最終更新日  2022.12.04 00:09:32
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