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2023.03.12
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テーマ: 読書(8559)

本のタイトル・作者



22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる (SB新書) [ 成田悠輔 ]

本の目次・あらすじ


第1章 故障
第2章 闘争
第3章 逃走
第4章 構想

感想


2023年050冊目
★★★

なかなか興味深い話。
私は台湾のデジタル担当相、オードリー・タンが大好き。
オードリーの民主主義×テクノロジーの話は、読んでいて本当にワクワクする。

「へえええ、そんなこと考えている人いるんだ」「なるほどぉ」「でもなあ」が味わえて大変おもしろかったです。
何より自分の内側になかった発想の人の考えを読むのが楽しかった。
著者は、




というわけで「賢こ(かしこ)」の子やった。

オワコンの民主主義を、どうイノベーションするのか?
という様々な提案。荒唐無稽に思えるけれど、「これが未来ならいいのに」と思う。

政治家なんて猫とゴキブリでいいじゃねえか、というのは暴論かもしれないが真理だ。
複雑化した政策の意思決定を担うのは、マスのビッグデータを集約したAI。
人間はただそのアルゴリズムを修正していくだけ。

入力データ → アルゴリズム → 出力
という機械学習をモデルにした、著者が提唱する「無意識民主主義」はわかりやすかった。

で、真の民意とは一時的かつ一面的にしか意思表示できない現在の選挙制度に限らず、センサーなどで日常から拾い上げられた民意のこと。

真の民意の吸い上げは、監視カメラ社会になるんじゃないかな。
ちょっと映画「プラチナデータ」を思い出して怖くなった。

多数の情報が集められ、その問題解決のための「政策」が出力される。
人間は出てきた結果(政策)から、アルゴリズムを微調整し修正するのみ。


たとえば愛される、愛でられる、注目を集める存在としての猫。
これは駅長でもありますしね。たま駅長。
そして嫌われものとして叩かれる存在としてのG。
あるいはVTuberのようなバーチャルな存在でもいいのだと。

紹介されている世界の状況に、「へええ!」と関心しきりだった。
日本で生まれて生きて、日本の政治制度は西洋を参考に導入したもので、民主主義が始まった国々から輸入したそれが世界のスタンダードなのだと思っていた。
でも、国によってのマイナーチェンジがあって、その共通ではない部分が面白い。

シンガポール政府の大臣の給料は、成果報酬型(給与の平均30〜40%はDGPなどの指標の達成度に応じたボーナス)。
大臣の基本給は国の高所得者トップ1,000人の中央値から40%引いたものなんだって。
決まった金額を貰うより、政策や状況によって収入が変動している労働者の所得を意識するようになるという効果を狙ったものらしい。すごい。

政治家や有権者に定年を課している国があるというのも初めて知った。
イランは被選挙権が75歳以下。ブータンは65歳以下。
カナダやソマリアの任命上限はそれぞれ74歳と75歳以下だ。
日本は年寄りのおじいさん政治家ばかりが目につくけれど、それを辞めるならそうするしかないよな。
さらに、ブラジルでは70歳以下の有権者のみ投票が義務(罰則付き)で、それ以上は自由なんだって。

若者が政治を変えていく方法(年配者が有権者の多くを占めるがために選挙が高齢者優遇の政策ばかりを狙ったものになる)のひとつとして、若者世代が集団移住すれば、首都の重要区の区長選すらジャックできるという話。
引き合いに出されいた実話に驚愕。
1980年代にアメリカ、オレゴン州で新興宗教団体が自治体を乗っ取り。
各地の大量のホームレスを無料バスで生活拠点提供を謳い文句に集め、住民の過半数を握った。
これ怖い。

国会の答弁を見ていて、「これが我が国…」という気持ちになる。
なんかこう、もう、無理なんよな、色々と。
一回AI使ってみたいよ。そうしたらどんな解を「最適解」として提示してくれるん?
私たちはどうすればええん?

それはある種の思考放棄だろうか。
いつかどこかで、AIの弾き出した答えに従い、手痛いしっぺがえしを食らう時が来るんだろう。
信じてしまったがゆえに。

だって入力されるデータが誤っていたなら、出来上がってくるアウトプットも間違っているんだから。
ディープラーニングだってそうだ。
もはや人は、その「深さ」についていけていない。
投入した。答えが出た。ただその間に何があったのか、その思考のプロセスがわからない。
私たちはそれを信じていけるのかな?



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最終更新日  2023.03.12 00:00:06
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