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2023.06.27
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テーマ: 読書(8290)

書名



本屋、地元に生きる [ 栗澤 順一 ]

目次


はじめに
第1章 さわや書店とはどんな本屋か
第2章 仕事で必要なノウハウはすべて営業で学んだ
第3章 地域経済の輪のなかで
第4章 ヒントはいつもまちの中に
対談 田口幹人×栗澤順一

引用


以前に店頭で使用していたカバーには、さわや書店創業の地であり、本店が立地する盛岡市中心部の大通商店街の歴代地図がデザインされていて、次のようなコピーが書かれていました。
「わたしは、わたしの住む街を愛したい 手あかにまみれた一冊の本のように。」


感想


2023年138冊目
★★★

「はじめに」にあるように、盛岡は「読書のまち」で、2017年家計調査で一世帯あたりの本の購入金額が全国一位なのだそうだ。

そんな本好きの町の有名書店。
さぞや盤石なと思いきや、大型チェーン書店が出店し、生き残りをかけた特色作りが始まる。

著者は、

栗澤順一(クリサワジュンイチ)
1972年、岩手県釜石市生まれ。岩手大学を卒業後、盛岡市内の広告代理店に入社。その後、「東北にさわや書店あり」と全国の読書マニア、出版業界人、書店業界人にその名を知られる岩手県の老舗書店チェーンさわや書店に転職。本店専門書フロア、フェザン店次長、仙北店店長などを経て、外商部兼商品管理部部長。教科書販売から各種イベントの企画、出張販売や各店巡回など、忙しく駆け回る日々を送る


ということで、「さわや書店」が一躍有名になった後を継いで、新規路線を広めた方。
書店員さんが本を出すってすごいよなあと思う。
そしてこの本の中で著者が紹介しているんだけど、歴代の名物書店員が軒並み本を出しているという…。すごいな…。

今では本屋だけでなく、図書館でも「覆面本」が置いてある。
パッケージされて、中身がわからない本。
さわや書店がその先駆けだったというのは知らなかった。
2016年に、さわや書店フェザン店が「文庫X」として、文庫本の表紙をオリジナルの手書きカバーで覆い、書名を分からなくして販売。
(中身は清水潔のノンフィクション『殺人犯はそこにいる』)

また、2006年に外山滋比古『思考の整理学』にPOPをつけて大幅に売上を伸ばすなど、スタープレイヤーの書店員が、既刊本を掘り起こし売り上げるという手法で有名に。

しかし名物書店員が次々と店を去り、残された著者は、本屋という既成の枠を脱した「よろず屋」書店を目指す。
書店で地域物産品を取り扱ったことから、地元のハブ、仲介役として機能。
ラジオ局のように情報を集積し発信を始める。
また、待つだけの本屋ではなく、出ていく本屋として積極的に外へ。

認知症患者の多いクリニックに出張販売。
読み終えた本を回収し、新しい本に替えて病院で暮らす子どもたちへ届ける本の循環プロジェクトに参加。

読んでいて、「この本屋さんに行ってみたい」と思った。
それはなんというか、観光の時に目的地となるような本屋さん。
思うんだけど、大型チェーン店は、観光の目的地にはならないよね。
わざわざそこに行きたいとは思わない。
だって自分が住んでいる町にだってあるし、ネットで買うののリアル店舗なだけだし。
じゃあその書店にわざわざ足を運びたいと思うのはなぜか?
「そこに行けば、何かがある」と思うからだろうなあ。

何か、面白いもの。
何か、楽しいもの。
何か、わくわくするもの。
何か、この気持ちをどうにかしてくれるもの。

生きている何か。
新刊本の新鮮さというのともまた違う。
人間がそこにいて、その本を読んで、なおかつその本を勧めたいと思っていること、読んでほしいと願っていることの思い、みたいなものだろうか。
熱意、奔流、鼓動、愛。

図書館はちょっと違う。
あそこは何というか、整然として眠っている。
誰かに呼ばれて起こされるまで、ひっそりと。

私はおそらく一般的な人よりは本をたくさん読むけれど、たくさん読むからこそ、書店で買う本よりも図書館で借りることのほうが多い。
本を買うときだって、書店でゆっくり選ぶ時間はないから、つい手軽な宅配生協の同梱をお願いしたり…。
場所を取らない電子書籍も利用する。

この本によると、一日一店ペースで、年間350軒書店が閉店していく状況が、15年間続いているのだという。
カフェで千円近いラテを飲んでも、文庫本に数百円出す習慣が生まれないのは、買うだけでなく「読む」行為が必要だからか。
その時間がないのかな。
本を読んでいると言うと、「いつ読んでるの?」「どこにそんな時間があるの?」とよく訊かれる。
電車の待ち時間、電車に乗っている間、休憩時間、子どもの習い事の待ち時間…。
私が本を読んでいるのは大体「スキマ時間」だ。
おそらく多くの人がスマートフォンを触っている時間。
(そのスマートフォンで本読んでるのかもしれないけどな)

けれど最近、本を手にしている人が増えてきたような気がしている。(私調べ)
子どもの習い事の待ち時間、以前は私だけしか本を読んでいなかったのだけど、今は2〜3人が本を読んでいる。
嬉しい。
もしかしたら私が本読みアピールをすることで、世に本読みを増やしていけるのではないかと思って今日も本を読む。

世の中には、びっくりするような人生を送っている人がいて、よくもこんなものをと思うものすごい物語があって、私は日常の合間にそこへ行く。
私は生きるのに向いてないと思いながら、文字の世界でしばし羽を休める。
だいじょうぶ、いきていける。そこに本がある限り。言葉が私を守ってくれる。

本屋がなくなったら、本に出会う場所は図書館になるのだろうか。
図書館も電子書籍の購入予算を増やしていると、この本にもあった。
なかなか図書館まで行けない人は、それはとても便利だろう。それはそれで良いことだ。
けれど紙の本が素晴らしいのは、思いがけない出会いがそこにあること。
どうしても電子書籍の販売は、その人好みのアルゴリズムに左右される。

そこになんでもあること、が大事だ。
そしてそれにいつでもアクセスできること。

著者は「よろず屋」としての地元の本屋を目指す。
そこに行けばどんな情報でもある。
そしてそれは広く開かれている。
行政事業との書店の親和性の高さ(=信頼性の高さ)にも触れていた。

ふらっと立ち寄りたくなるそんな本屋さん、いいな。


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最終更新日  2023.06.27 08:19:30
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