全4件 (4件中 1-4件目)
1
言うまでもなく、「財源」の基本は税制にある。その税制は「どのような国を目指すか」というビジョンに深く結びついている。どの時代でも富は「強者」、つまり支配システムの中で優位な立場にある人々へ流れ込み、強者は益々富裕になり、弱者はさらに貧しくなる。強者が「小さな政府」を主張し、規制緩和を求め、税金のフラット化を目指すのは、こうしたカネの流れを維持したいからにほかならない。 強者は強欲なものである。この強欲さを資本主義は経済活動の原動力にしている。こうした強欲な行動は市場に存在する「神の見えざる手」が正しい方向へ導くとする教義を無批判に信じる「カルト集団」が存在するようだが、勿論、そのような「手」は妄想にすぎず、実在しない。強欲な強者の意志、いわば「悪魔の汚れた手」が市場を支配しているだけだ。 そうした市場を放置し、「弱肉強食」を基本原理にすれば社会は乱れ、崩壊へと向かうしかない。適切な対価を受け取れない下請け企業や労働者が「遣る気」をなくすのは当然のことだ。 社会的に優位な立場の大企業が適切な対価を支払わないことで生じた歪みは「社会保障費」の増加として現れる。いわば、大企業を儲けさせるために税金が投入されているわけだ。本気で日本経済を再生させたいならば、不公正なシステムを是正し、巨大企業の過剰な内部留保(表も裏も)を放出させるしかない。適正な対価を取引相手に支払わせ、法人税と所得税の累進制を高めることだ。 もはや「国際競争力」などというまやかしは通用しない。日本の大企業は国際的に見て優遇されているからである。表面的な税率だけに焦点を絞った詐欺的な議論が通じる時代は過ぎ去った。せめて、イギリスのロイド・ジョージやアメリカのフランクリン・ルーズベルトくらいの政策を打ち出すべき時期にきている。 勿論、富裕層への課税強化や庶民層の権利拡大は簡単に進むことはないだろう。過去を振り返っても、ロイド・ジョージに対する風当たりは強く、ルーズベルトの政策は最高裁によって妨害された。後にジョン・F・ケネディも大企業に対して厳しい姿勢で臨んだのだが、暗殺されてしまった。そうしたことを理解した上で、「弱肉強食」のシステムを終わらせる政治家が必要な時代になっている。 富裕層は溜め込んだ資金を投機市場で運用し、さらに儲けようとしてきたが、投機市場はカジノであり、カネの取り合いをする場にすぎない。市場へ資金が流入している間は相場が上昇し、取り引きの参加者は儲かっていると錯覚するのだが、庶民層から搾り取れる資金が限界に達すれば市場への新たな資金の流入が細り、相場は頭打ちになって下落へと転じてしまう。その値下がりを恐れて税金を投入しても本質的な解決にはならない。とりあえず「ショック死」を避けるための対処療法にすぎないわけで、根本的な治療法はカジノを縮小するしかないのだ。 ところが、すでに富裕層は「博奕中毒」に陥っている。カジノを縮小するという治療を受け入れようとしない。日米欧の金融機関、投機機関の経営者を見ていればわかるように、富裕層/支配層はあくまでも庶民層からカネを搾り取ろうとする。 このまま進めば庶民はさらに貧困化し、暴動、一揆、あるいは革命が起こる可能性が高まることを、勿論、富裕層は理解している。だからこそ、反乱を防ぐために教育で自分たちにとって都合の良い思想を庶民層に植えつけ、プロパガンダで感情をコントロールし、それでも出てくる異分子を監視するシステムを強化、思想を取り締まる機関や鎮圧部隊を組織してきた。新たな富を外部に求めて戦争を始めるのも常套手段だ。 洗脳、宣伝、監視、鎮圧、戦争、アメリカは全ての手を打っているが、事態は悪化するばかりだ。日本もその後を追っている。社会システムを再生させる唯一の方法を拒否する以上、アメリカにも日本にも未来はない。これが2009年末の状況だ。
2009.12.27
民主党に対する「政治資金スキャンダル攻勢」が山場を迎えている。総選挙前に始まった小沢一郎幹事長(現在)に続き、鳩山由紀夫首相が槍玉に挙げられているのだが、こうした攻撃に違和感を感じている人は少なくないだろう。勿論、両者の行為に問題がないわけではないが、日本の状況を考えると東京地検特捜部が動くような大事件ではなく、特捜部が動くこと自体がスキャンダラスである。 鳩山の場合、2005年から08年にかけて首相の実母から12億円を受け取ったにもかかわらず、虚偽記載によってその事実を隠していたことが問題になっているようだが、名義を借りて「化粧」している政治家は少なくないはずで、驚きはしない。 家族の資金をどのような活動に使ったのかが不明だと批判する声もある。確かに不透明であることは否定できないが、それを言い始めたならば、国会議員の大半が当てはまってしまう。いわば、大半の議員の首にはロープがかけられている。今回、特捜部は「好ましからざる議員」、あるいは「潜在的脅威」のロープを締め上げたということである。 前にも書いた話だが、鳩山は家族の資金を使って政治活動をしていたわけで、賄賂性があるとは言えない。金主へ何らかの便宜を与える見返りとして資金を手にしている政治家より、「自腹」で活動している政治家の方がマシだ。企業献金を放置した状態では、検察の行動に「政治的な意図」があると見られても仕方がないだろう。 多くの人が指摘しているように、企業が見返りを期待せずに資金を支出することは許されない。だからこそ、財界は「通信簿」をつけていたわけだ。スポーツであろうと「文化活動」であろうと、企業のイメージを高めるという宣伝的な意味があるから認められている。 企業献金は経営者、あるいは資本家の利益が目的であり、労働者の利益とは反する。非正規雇用の比率が増えて社会が不安定化したのも企業献金の結果だと言える。大企業の正社員の場合、これまでは経営側と「協調」して中小企業から搾り取った利益の分け前にあずかってきた。 そうした大企業の正社員を代弁してきたのが総評、同盟、そして現在の連合であり、そうした組合に担がれていた政党が社会党や民社党、そして現在の民主党。つまり、自民党と社会党という「二大政党」が支配していた時代も、自民党と民主党という「二大保守政党」が支配している現在も、国会は大企業を中心に動いている。このシステムを支えてきたのが企業や団体からの寄付だということだ。 最高裁がどのような判決を出そうと、企業献金が限りなく「賄賂」に近いことは否定できない。だからこそ、1994年には政党助成法などが成立し、所属議員数によって政党へ助成金が支払われる仕組みを作って「違法状態」を解消しようとしたのかもしれないが、今でも企業献金は続いている。 現在、民主党を検察やマスコミが攻撃している原因は大企業の利害以外にもある。言うまでもなく「日米同盟」だ。ジョージ・W・ブッシュ政権が推進した「暴力路線」からの「チェンジ」を掲げて登場したバラク・オバマも最近では親イスラエル派や戦争ビジネスの方向へ軸を移動させている。権力システムに立ち向かおうとすれば命がけになるので無理もないが。 もっとも、オバマが頼りにしていた勢力(いわば旧保守派)も決して平和主義者ではない。イスラエルの利益を第一に考え、単独で戦争を仕掛ける前政権のやり方に危機感を持っていたが、前政権は「ルビコン川」を渡りきる寸前まで暴走した。そこから引き返すだけの決断力がオバマにはないのかもしれないが、このまま進めば間違いなくアメリカは崩壊する。 消極的であろうと、オバマ大統領は国際的に孤立するイスラエルを支え、イラクの占領を民間企業に「アウトソーシング」し、アフガニスタンへは増派を決定、イエメンに対する攻撃を実施し、ラテン・アメリカではコロンビアを拠点として再支配を目論んでいる。つまり、暴力路線から抜け出せないでいる。オバマ政権としても、出撃基地であり、資金源でもある日本を手放すわけにはいかないだろう。あわよくば、日本を犠牲にしてアメリカを存続させようとしているのかもしれない。この点、新保守も旧保守も立場は同じだろう。
2009.12.25
バラク・オバマ米大統領がノーベル平和賞を受賞した。過去の受賞者を見れば、佐藤栄作やヘンリー・キッシンジャーなど平和とは縁遠い人物もいるわけで、誰が受賞しても驚くほどのことはない。メナヘム・ベギンなどはイルグンのリーダー、つまり「元テロリスト」である。政治的な受賞も少なくない。 オバマの場合、権力抗争が続くアメリカで平和への道を歩かせようというノーベル委員会の思惑があったとも言われたが、結果としてはアフガニスタンへ3万名を増派する決定を公表した直後の受賞になってしまった。しかも、受賞後に戦争を擁護する演説を行ったのだからノーベル賞委員会としては赤恥をかかされた形だ。受賞後、オバマ大統領はノルウェー国王との昼食会など多くの行事をキャンセルしているが、それだけアメリカ大統領に対する逆風はきついということである。 演説の中でオバマはアドルフ・ヒトラーを引き合いに出し、「非暴力運動」は無力だと主張してマーチン・ルーサー・キングやモハンダス・ガンジーたちの考え方に挑戦している。アルカイダを倒すには武力が必要だというわけだが、この武装集団を作り上げたのがアメリカだと言うことを忘れてもらっては困る。1980年代、アメリカ政府はこうした集団を「自由の戦士」と呼んでいたのである。 この辺のロジックはネオコンに酷似している。このロジックでアフガニスタンとイラクを攻撃し、多くの住民を殺害してきたのだ。犠牲者の数は100万人を超す可能性が高い。念のために書いておくが、戦争が事態を悪化させているのである。キングが言ったように、暴力は問題を何も解決せず、さらに複雑な問題を作り出すだけなのである。「戦争ゲーム」と現実を混同してはならない。 大統領選挙の候補者の中でオバマは最もネオコン(新保守/親イスラエル派)から遠い存在だったが、勿論、影響は受けている。そのネオコンは1990年代からイラクのサダム・フセイン体制を排除し、イスラム諸国を戦乱で疲弊させるべきだと主張していた。こうした戦略と対立していた旧保守の中心人物はジェームズ・ベーカー元国務長官であり、最前線で戦っていた人物がロバート・ゲーツ国防長官。前政権でネオコンの影響力が低下してからゲーツは国防長官に就任、オバマ政権は再任させた。おそらくネオコン対策だが、ゲーツも平和的な人物ではない。しかも、アフガニスタンに関しては利権の関係で簡単に手を引くことはできない。そもそも、利権のためにアメリカ政府はパキスタン政府の協力でタリバン政権を作り上げたのである。タリバンも自分たちが作り上げたモンスターであり、タリバンを本気で壊滅させる気ならば、パキスタンと戦争を始めなければならない。 勿論、イラクやアフガニスタンでの戦争が泥沼化していることを考えれば、パキスタンと事を構えることは難しい。南アジアに戦火が拡大しては、自分たちの利権を破壊することにもなる。 マイク・マレン統合参謀本部議長もアフガニスタンでアメリカ軍は負けていると証言している。軍隊を増派しても戦況が劇的に好転するとは思えない。アメリカ兵の犠牲を減らしたいのか、最近、無人機を使って攻撃しているのだが、その結果、多くの一般市民を殺害することになり、反米感情を煽ることになっている。 アフガニスタンに軍隊を増派する一方、オバマ大統領はイスラエルに対して強い態度に出られないでいる。大統領選に勝利して間もなく、オバマは大統領主席補佐官にラーム・エマニュエル下院議員を任命し、国務長官にヒラリー・クリントンを据えた。クリントンは「ソフト・シオニスト」と言われているが、エマニュエルは筋金入りの「武闘派シオニスト」である。この勢力を押さえられないということだろう。アメリカの権力バランスを考えると、ネオコンやキリスト教原理主義者という親イスラエル派を無視できないのだろうが、国際的に見るとアメリカは信頼度を低下させることになっている。ノーベル平和賞はオバマ大統領にとって新たな重荷になりそうだ。
2009.12.10
今から68年前の1941年12月7日午前7時48分(ハワイ時間)、日本海軍はハワイの真珠湾を奇襲攻撃し、「太平洋戦争」が始まった。もっとも、アジアでは長い間、戦争を続けていたが。 歴史を振り返ると、1875年9月に朝鮮の首都防衛拠点である江華島の近くに日本政府は軍艦「雲揚号」を派遣して挑発、砲撃されたことを口実にして逆に砲台を撃破し、「日朝修好条規」を結んで日本の朝鮮支配は始まり、84年には権力者の閔氏を倒す目的でクーデターを試みたが失敗、94年春に「甲午農民戦争」が勃発すると、6月に朝鮮政府は清国に出兵を依頼、8月には日清戦争に発展した。 1895年10月の夜明け間近、「親露派」と見られていた閔妃を殺害するため、日本の官憲と「大陸浪人」からなる暗殺チームが朝鮮の宮廷に突入して女性3名を殺害した。その3名の内、誰が閔妃かわからなかったからである。この作戦の責任者は日本の公使、三浦梧楼だと信じられているが、日本では「証拠不十分」で罪を免れている。日本政府が竹島を日本領としたのはその後、1905年のことである。その直前、1904年には帝政ロシアと戦争状態に入るが、当時のロシアは革命運動で大揺れの状態だったために日本と戦争を続ける余裕はなく、1905年に日本が勝利する形で終わった。 1927年になると山東省へ日本は軍隊を派遣、28年には関東軍の河本大作参謀たちが奉天駅の近くで列車を爆破して張作霖を暗殺、31年には奉天(現在の瀋陽)の郊外にある柳条湖近くで満鉄の線路を爆破して「張学良軍の陰謀」だと称して「満州事変」を引き起こし、37年には盧溝橋で中国軍を攻撃して「日中戦争」へと発展した。 こうした軍事行動の背景には経済の行き詰まりがあったのだが、戦争は泥沼化して日本の置かれた状況はますます悪化、挙げ句の果てに真珠湾を奇襲攻撃したわけである。アメリカの国力が云々かんぬんという話はアジア大陸での「負け戦」を認めなくないための言い訳にすぎない。勿論、アメリカへの奇襲攻撃は無謀以外の何ものでもなかったが。 ヨーロッパでは1939年9月にドイツがポーランドに軍事侵攻して第二次世界大戦が勃発するが、これにはドイツとポーランドとの領土問題が存在している。第一次世界大戦の後、ドイツの本国と東プロイセンの間にポーランド領(ポーランド回廊)ができて東プロイセンは飛び地のようになってしまった。背後にはイギリスが控えていたポーランドは交渉で強硬な姿勢を崩さず、軍事衝突に発展してしまったわけである。当初、ドイツは世界大戦を始める意志はなかったようだが、すぐにイギリスが宣戦布告し、大規模な戦争へと拡大していった。もっとも、ドイツは戦争の準備ができていなかったため、半年ほど激しい戦闘がなく、この期間は「奇妙な戦争」とも呼ばれている。 言うまでもなく、大戦が始まった当時、アメリカは参戦していない。真珠湾攻撃が原因でアメリカは参戦し、ヨーロッパの状況は大きく変化してドイツは苦しくなった。しかもソ連への軍事侵攻に失敗してドイツの敗戦は決定的になった。真珠湾攻撃に最もショックを受けたのはドイツ政府だったかもしれない。 その後、日本軍は人間を爆弾の「操縦装置」として利用、庶民の命を奪っていった。こうした発想は今でも消えず、権力者は自分たちの欲望を満足させるために庶民の命を「非正規雇用」という形で浪費している。その結果、日本の社会は存続が困難な状況になっているのだが、欲に目の眩んだ支配者たちはアメリカの権力者に盲従し、自分たちだけは助かろうとしている。
2009.12.07
全4件 (4件中 1-4件目)
1

![]()
