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6月28日の早朝、100名とも200名とも言われるクーデター軍の兵士がマニュエル・セラヤ大統領の住宅を襲撃、そこで大統領を拉致し、コスタリカまで連れ去った。この襲撃からホンジュラスの軍事クーデターは始まった。その際、銃撃があったとも伝えられている。 実は、このクーデターに少なくとも2名のSOA(The School of the Americas)卒業生が中枢メンバーとして活動している。SOAとは、1946年にパナマで創設されて以来、ラテン・アメリカに多くの軍事政権を生み出し、民主的なプロセスで誕生した政権を破壊し、この地域を不安定化してきたアメリカの学校。 この学校で教えている内容は反乱鎮圧、狙撃訓練、ゲリラ戦、心理戦、情報活動、尋問テクニックなど。そうした訓練を生かし、卒業生は帰国してから反体制派、つまり巨大企業のカネ儲けに邪魔な人々を迫害、排除するために、拷問、レイプ、暗殺、誘拐、虐殺などを繰り返してきた。そこでSOAは「School of Assassins(暗殺者学校)」とも呼ばれている。 あまりに悪名が高くなったこともあり、1984年にパナマから追い出され、2001年には名称がWHISEC(Western Hemisphere Institute for Security Cooperation)へ変更された。 これまでにラテン・アメリカ各国から約6万人にのぼる軍人を受け入れ、訓練してきたのだが、その中には、ロメロ・バスケス将軍とルイス・ハビエル・プリンセ・スアソ将軍も含まれているのだ。バスケスは1976年と1984年、ソアソは1996年に在籍している。 さすがにクーデターを正面切って支持する政府は存在しないようだが、バスケス将軍たちが単独で実行したとも思えない。バラク・オバマ米大統領の政策に反対しているアメリカの勢力、あるいはアメリカ以外の国が関係している可能性は極めて高い。 ホンジュラスはアメリカの情報機関が秘密工作の拠点に使ってきた国で、ラテン・アメリカがアメリカから自立しつつある現在、この国を奪還する意味は大きい。ニカラグアの革命政府を倒すため、軍事政権の兵士を集めて創設したゲリラ「コントラ」を支援する工作でもホンジュラスは重要な役割を演じ、アメリカだけでなくイスラエルも同国ルートで武器をコントラに渡していた。 しかし、このクーデターが将軍たちの思惑通りに進むかどうかは即断できない。少なくとも表面上はクーデターを支持する国は存在せず、大統領を支持する人々がクーデターに抗議する活動を始めている。「選挙の結果が気にくわない」というイランのデモとは質的に大きな違いがある。 ホンジュラスとイランの政変には共通項がある。アメリカ的な経済システムで豊かな生活を送れるようになった、あるいはなれそうな人々が、貧困階級に目を向ける大統領を排除しようとしているということだ。
2009.06.29
イランで8名以上のイギリス大使館員が逮捕された。大統領選挙後に「改革派」と呼ばれるホセイン・ムサビやその支持者が投票の無効を訴えて大規模な抗議活動を続けていたが、その背後でイギリスが干渉しているとイラン政府は非難、すでに2名の外交官を国外に追放している。 本コラムでは何度か指摘しているので食傷気味かもしれないが、シーモア・ハーシュ記者によると、2006年の時点でアメリカはイラン領内で秘密工作を活発化させるだけでなくイラン空爆を検討、2007年の段階では秘密工作を実行していたCIAやJSOC(統合特殊作戦司令部)がMEK(ムジャヒディン・ハルク/英語流の表記ではMujahidin-e-Khalq)やクルドの分離独立派と協力していたと報告している。2007年には、イランを混乱させるためにアメリカが「テロ・グループ」に資金を提供しているとイギリスのテレグラフ紙も伝えていた。アメリカ以外にもイスラエルが活動しているとする情報もある。 MEKは「左翼」と見なされている組織で、1965年から王制打倒を目指して活動していたのだが、1979年の革命でイスラム勢力に負けた形になっている。その後、アメリカ、カナダ、イラク、イランなどから「テロリスト」だと呼ばれるようになるのだが、今では「自由の戦士」のようだ。 こうした事情がありながら、イギリスが攻撃されている一つの理由は、アメリカで秘密工作を実行しているのはネオコン(親イスラエル派)であり、イランとの関係改善に前向きなバラク・オバマ米大統領を敵に回したくないのだろう。そもそも、外交関係がまだ回復していないが。 そうしたとき、中米のホンジュラスで軍事クーデターがあり、大統領がコスタリカへ拉致された。大統領が再選できるように憲法を変えるため、国民投票を強行しようとしたことに軍部が反発したとされているが、それだけでは説明しきれない点がある。アメリカ政府はクーデターに反対したとされているのだが、この報道が正しいならば、かなり異常な事態である。アメリカ政府の意向を無視してでもクーデターを実行しなければならない事情があったということだ。 一つの可能性は、ネオコンの意向である。2001年のベネズエラでのクーデター未遂では、ネオコンのエリオット・エイブラムズ、キューバ系のオットー・ライク、元ホンジュラス駐在大使のジョン・ネグロポンテが黒幕と指摘されていた。ネグロポンテが大使だった時代にホンジュラスでは「死の部隊」が「反体制派狩り」を盛んに行っていたことは有名だ。 ホンジュラスのクーデターにオバマ政権が介入しようとすれば、おそらくネオコンはイランにも介入しろと主張するはずで、イランの体制を「チェンジ」したい勢力にとって、ホンジュラスのクーデターは好都合だと言えるだろう。 その一方、国連はガザでの「戦争犯罪」に関する公聴会を行っている。イスラエル政府が「まな板」に乗せられている。イスラエルと親イスラエル派にとって、今は正念場のようだ。
2009.06.28
何か大きな出来事が起こったとき「何が語られていないか」は、重要な情報のひとつである。先入観や思い込み、あるいは希望的観測のため、目の前で起こっている事実に気づかないこともあるし、自分たちにとって不都合な事実を意図的に隠すこともある。語られない事実の中に本質が隠されていることは少なくない。 現在、イランでは「改革派」と呼ばれる勢力が「保守派」とされる現職の大統領を攻撃する示威行動を続けているのだが、「改革」というラベルには良いイメージがない。かつて、小泉純一郎も「改革」を叫んでいたが、結局のところ、庶民階級から富を徹底的に搾り取るシステムを導入しただけだったからだ。今でも「小泉改革」を支持している日本人は少ないだろうが、イランでも似たようなことが起こっていると指摘する人もいる。 投票の3週間前にイラン国民の選挙に関する意識を調査した報告書で、「改革派」は決して多数派からは支持されていなかった。その報告書を作成したのは「TFT(恐怖のない明日)」。あれぼど激しくイランのマフムード・アフマディネジャド大統領を攻撃していたイギリスのメディアも、TFTの調査結果を伝えざるをえなくなっているのだが、日本のマスコミはまだ無視しているようだ。 何しろ、イスラエル、日本、イギリス、アメリカなどに嫌われているアフマディネジャドがライバルのホセイン・ムサビをダブル・スコアでリードしていたとTFTは報告しているわけで、取り上げたくないのだろう。「改革派」は「善玉」で、「国民」から支持されているという自分たちのシナリオに反する情報は受け入れられないわけだ。小泉の「改革」を支援、「郵政民営化」は絶対的に正しいと叫んでいた日本のマスコミはイランでも似たようなことをしている。 このTFTはアメリカのワシントンDCを拠点とするNPO(非営利団体)で、アメリカでは政府やメディアから一目置かれている存在であり、その調査結果を否定することは難しい。選挙で不正があったことを示す事実が出ているようだが、それでもTFTの報告書を否定はできないのだ。逆に、アフマディネジャド大統領としては、投票結果を操作する必要はなかったわけで、明らかになった不正に大統領が絡んでいた可能性は低いという見方も成り立つ。 ジョージ・W・ブッシュ大統領の要請を受け、アメリカ議会がイランでの秘密工作をエスカレートさせることを認めたのは2007年の終わり頃だった。調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュによると、秘密工作の中心になっていたのはCIAやJSOC(統合特殊作戦司令部)で、イランのMEK(ムジャヒディン・ハルク)やクルドの分離独立派と協力関係にある。 かつて、MEKをアメリカ政府は「テロリスト」に分類していたのだが、状況が変われば「自由の戦士」になるようだ。この逆がアル・カイダだった。イギリスのテレグラフ紙は2007年2月25日付けの紙面で、イランを混乱させるため、アメリカが「テロ・グループ」に資金を提供していると伝えている。 さらにその前、ニューヨーカー誌の2006年4月17日号に掲載されたハーシュ記者の記事によると、この時点でアメリカはイラン領内での秘密工作を活発化、イラン空爆を検討していた。つまり、この時点からアメリカやイスラエルはイランに戦争を仕掛けているわけだ。 イランの庶民階級にとって、「改革派」の経済政策は好ましいものでなかった。しかもアメリカやイスラエルとの見えない戦争が続いている。こうした実態を理解しなければ、庶民階級がアフマディネジャドを支持した理由はわからないだろう。が、こうした背景を日本のマスコミは語ろうとしない。(09.06.23)
2009.06.23
イランで大統領選挙の投票が終わってから始まった混乱に不可解な点があることを本コラムでは何度か指摘してきた。投票の3週間前に実施されたアメリカのNPO「TFT(恐怖のない明日)」の調査では、現職のマフムード・アフマディネジャドが「改革派」のホセイン・ムサビをダブル・スコアでリードしていた。これは発表された選挙結果に符合するのだが、マスコミは「誰もが接戦になると思っていた」と伝え、ムサビ陣営は自分たちが勝ったと主張して抗議活動を続けている。「誰も」が誰であり、彼らがそう思った根拠は語られないが。 ムサビの支持者は「Twitter」と呼ばれる一種のコミュニケーション・ツールを利用して抗議活動を続けているとされているが、その切っ掛けを作ったのは「イランの学生」ではなく、イスラエルの「右翼系新聞」と言われているエルサレム・ポスト紙だという疑いが出てきた。 つまり、選挙で不正があったと最初に書き込んだ数千の「tweet」や「retweet」を調べていくと、「#IranElection spam」の中心にいる一握りの人々、そしてエルサレム・ポスト紙の記事に行き着くのだ。Twitterアカウントも6月13日に作られ、大多数はペルシャ語ではなく、英語で書かれていた。 ムサビ陣営は勿論、ムサビ候補が勝つことを願っていた。イランの選挙システムを信頼していたとも思えない。そうした心理状態のところへ「マッチ」を放り込めば、爆発しても不思議ではない。アメリカのネオコン(親イスラエル派)、例えばジョージ・パッカーやアンドリュー・サリバンなどは抗議活動を支援するべきだと主張、火の手が上がったイランにガソリンを撒こうとしている。 今回の抗議活動を1979年の「イスラム革命」になぞらえる人もいるが、TFTの調査によると、今回はアフマディネジャドを支持するイラン人が多く、状況が違う。ムサビ陣営としては投票の再集計は望んでいないかもしれない。再集計で負けが明確になっては困るということだ。 イランが不安定化している一方、イスラエル政府は入植問題でアメリカ政府と対立している。イスラエルではアラブ系住民が住宅の破壊や隔離壁などに抗議して平和的なデモを行っても暴力的に弾圧されているが、アメリカも日本もヨーロッパも気にしないようだ。戦争で最も残虐な戦術は兵糧攻めだとも言われているが、イスラエルがガザ地区で行っていることは、まさにそれ。 そうしたイスラエルのアビグドール・リーバーマン外相は先日、「平和を望むなら戦争の準備をしろ」と演説、アラブ系住民を国外に追放し、アスワン・ダムを爆撃しろと言っているのだが、アメリカも日本もヨーロッパも、彼の発言を容認している。 アフマディネジャドとリーバーマン、どちらが凶暴なのかは言うまでもないだろう。
2009.06.19
昨日、「臓器移植法改正A案」が衆議院の本会議で可決された。つまり、「脳死」を人の死と解釈し、家族の同意で、あらゆる年齢の「死者」の臓器を摘出し、別人に移植できるようにしようという内容だ。「移植医療」を推進したい人々にしてみると、歓迎すべき法案が衆院を通ったということになるのだろうが、問題は多い。 今回の法案で「脳死」を「人の死」と定めた理由は、新鮮な臓器を手に入れやすくするためである。この事実を誤魔化してはならない。脳の仕組みが完全に解明されたとは言えないことを考えると、脳死の判定は簡単でない。新鮮な臓器が欲しいという感情が先に立つと、限りなく殺人に近づいてしまう可能性がある。このことを肝に銘じておく必要はある。 幼児の場合、自分の臓器を提供するかどうかを事前に自分で意思表示することは不可能で、親が決めることになる。例えば、その親が多重債務者で、闇金融(暴力団)に「追い込み」をかけられている場合、「臓器で返済」ということは起こりえる。 現段階でも多くの医師が虐待の有無を見抜くことが困難だと考えているのだが、外部の「プロ」が関与してきた場合、殺害方法はより巧妙化し、見過ごされることになりかねない。新鮮な臓器を前にすれば、チェックが甘くなる可能性もあるだろう。金銭の授受を調べることも簡単でない。 また、救急医療や小児医療が崩壊寸前の状態にある現在、臓器の供給数が増える可能性もある。そこで、人によっては現状を改善する必要はないと考えるかもしれない。救急医療や小児医療の分野が充実すれば、臓器の供給数は減少してしまうからだ。 医療の目的が「治療」ではなく、臓器の「鮮度」を維持することにもなりかねない。まさか、某国で路上生活している子どもを誘拐して臓器を輸入したり、身寄りのなさそうな旅行者の臓器を摘出したりすることはないだろうが。 現在、日本でも健康保険システムが揺らいでいるが、アメリカ並みになった場合、庶民階級の相当部分はシステムから排除され、適切な医療を受けられなくなることが確実である。そうなれば、「商品価値の高い臓器」の供給数はさらに増えることになるだろう。これを良しとするのか、悪しとするのか。 臓器移植を考える場合、日本には特別な問題も横たわっている。日中戦争で日本の医学界が軍と共同で行った細菌兵器、化学兵器の開発である。その末端にあった「実験部隊」が「731部隊」であり、そこでは生体解剖も行われていた。この人脈がミドリ十字や国立予防衛所研究所(現在の国立感染症研究所)につながっていることは、様々な人が様々な場所で指摘している。 戦争当時、東京帝国大学や京都帝国大学の教授たちも731部隊の実験に深く関わっていた。この過去を清算することなしに「移植医療」などするべきではない。血液製剤が原因で引き起こされた「薬害エイズ」の問題を考えるだけでも、医学界の体質が戦後になっても変わっていないことがわかる。その実態を知りながら報道しようとしなかったマスコミの体質も「大本営発表」の当時と大差がない。
2009.06.19
イランの混乱が続いている。プラカードやバナーには印刷されたらしい英文が書かれ、組織的な抗議活動だということはわかる。そうした活動をアメリカ国務省は公然と支援しているが、イランに対する先制攻撃について言及していた長官を擁する省だけに、注目しておく必要はあるだろう。 大統領選でマフムード・アフマディネジャドとホセイン・ムサビの得票は競ると見られていたとマスコミは根拠を示さず、断定的に解説するが、アメリカのNPOが3週間前に実施した調査では、アフマディネジャドがダブルスコアで勝つという結果が出ていた。これはすでに本コラムでも指摘した話だ。開票のスピードが速すぎるとか、信憑性が不明の「内部情報」が不正の根拠になっているようだが、信頼できるとは言えない。 勿論、選挙に不正行為はつきものである。例えば、2000年と2004年の米大統領選挙で組織的な不正があったと信じる人は多い。この場合、投票妨害や投票用紙の問題、電子投票システムの疑惑など具体的な根拠があった。こうした疑惑をアメリカの司法が封印し、ジョージ・W・ブッシュ政権は誕生した。そのひとつの結果がアフガニスタンやイラクへの先制攻撃であり、100万人を超すと言われる非戦闘員の虐殺につながった。要するに、ここでアメリカ政府がイランの大統領選挙で不正があったと声高に叫ぶわけにはいかない。そんなことをすれば、物笑いの種になるだけだ。 1953年にイランでは民主的に選ばれたムハマド・モサデグの政権がクーデターで倒されたが、その序章は反政府デモだった。この軍事行動にアメリカが関係していたことをバラク・オバマ大統領は先日、認めている。このクーデターを企画したのはイギリスの情報機関であり、実行したのはアメリカの情報機関だということは広く知られている話(拙著『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』を参照)だが、アメリカ大統領が認めた意味は重いだろう。 2001年にはベネズエラでウーゴ・チャベス政権の打倒を目指すクーデターが企てられている。このときも反政府デモから始まった。その黒幕として名前が挙がっているのは、ネオコンのエリオット・エイブラムズ、キューバ系のオットー・ライク、秘密工作の常連であるジョン・ネグロポンテ。新政権は実業家のペドロ・カルモナを中心に組閣されることになっていた。 クーデターの際、アメリカ海軍がベネズエラ沖で待機していたとも言われているほか、アメリカの武官、例えばジェームズ・ロジャーズ中佐の関与も指摘されている。勿論、アメリカ側はクーデターへの関与を否定しているが。 このクーデター計画は失敗に終わるが、その理由は事前に情報がチャベスに伝えられていたからだった。OPEC(石油輸出国機構)のアリ・ロドリゲスからクーデターが計画されていると警告されていたのだ。 イランで現在、どのような事態が進行しているのかは不明だが、こうした状況の中、怪しげな情報を信じ込み、振り回されるべきでないとは言える。「信頼できる筋」は意外と信頼できないものである。
2009.06.18
イランとグルジアに不安定の波が押し寄せている。イランでは「自由を求める勇気ある人々」がデモを繰り広げ、ホセイン・ムサビが大統領選挙で負けたことを認めないと主張している。その数は十数万人とも100万人とも伝えられているが、こうした動きを受けてマフムード・アフマディネジャドを支持する人々も集まり始め、緊張は高まっている。 日本のマスコミの報道姿勢を見ていると、選挙に不正があったことを前提にしているようだが、ワシントンポスト紙によると、アメリカのNPOが3週間前に30州で実施した世論調査では、2対1の割合(注)で現職のアフマディネジャドがリードしていたという。つまり、選挙の結果と一致している。 ホセイン・ムサビの支持基盤は「改革派」だとされている。西側のマスメディアが「改革派」、あるいは「民主勢力」と呼ぶ人々は、知識人や「中産階級」を指していることが多い。欧米的な考え方をする人々であり、かつての「改革路線」で良い思いをした人々だとも言えるだろう。それに対し、アフマディネジャド大統領の支持基盤は、学ぶこともままならず、「知識」を身につけることも難しいような「貧困階級」の人々である。「改革路線」で切り捨てられた人々だ。 そうしたイランで、アメリカやイスラエルの秘密部隊が工作を続けている。おそらく、ホワイトハウスやペンタゴンの指揮下にはない。イランを不安定化し、あわよくば攻撃しようとしているのだが、これはアメリカの「旧保守」にとって好ましくない展開。今回のデモ自体が仕組まれたものかどうかは不明だが、こうした混乱を利用して自分たちにとって都合の良い状況を作ろうとすることは間違いないだろう。 イランがこのように混乱しているとき、その北に位置しているグルジアでは「親アメリカ/イスラエル派」のミハイル・サーカシビリ大統領に抗議する活動が月曜日にあり、警察隊と衝突して負傷者が出ていると報道されている。 グルジアのサーカシビリ政権は昨年8月に南オセチアを奇襲攻撃し、逆にロシア軍の反撃で惨敗している。この戦闘ではイスラエルの存在が指摘されている。同国はグルジア軍に武器/兵器を提供、軍事訓練を行い、奇襲作戦の立案をしたのではと疑う人もいる。 さらに、アメリカの傭兵会社、MPRIとアメリカン・システムズは、元特殊部隊員で編成されたチームを昨年1月から4月にかけてグルジアに派遣して同国の特殊部隊を訓練し、さらに奇襲作戦の数日前にも教官がグルジアへ入ったと伝えられている。アメリカ政府も数年間に150名程度の教官をグルジアに派遣していた。 この戦闘に関し、EU委員会は主な責任がサーカシビリ大統領にあると結論づけて非難している。ただ、アメリカやイスラエルの役割に関しては調べず、報告にも反映されていない。これは当然だろう。アメリカやイスラエルとEUが事を構えることは、少なくとも現段階では無理である。 イランとグルジアの混乱にアメリカ(親イスラエル派)とイスラエルが関与していないと考えることは難しい。(注)「大統領選挙で誰に投票しますか?」アフマディネジャド:34%、ムサビ:14%
2009.06.16
イランの大統領選挙で現職のマフムード・アフマディネジャドが圧勝した。「改革派」のホセイン・ムサビ候補の支持者はこの結果を受け入れず、選挙に不正があったと主張して抗議活動を開始、数万人規模のデモが展開され、放火や破壊で混乱しているようだ。 アフマディネジャド大統領に敵意を持つ日米欧の勢力が監視する中で行われ、具体的な不正行為が指摘されていないところをみると、反対派の主張を鵜呑みにすることはできないのだが、選挙が「出来レース」だった可能性を伺わせる話は伝わっている。選挙前、ムサビの勝利を拒否すると発言していた人物がいる。イランの国家元首は「最高指導者」であり、「大統領」ではない。その最高指導者、アリー・ホセイニー・ハメネイがムサビの敗北を予告したというのだ。 ただ、その一方で、ムサビに対して、勝利してもライバルを刺激する演説はしないようにと伝えられていたとも言われている。こうした情報が正しいならば、ムサビ敗北はハメネイの「命令」でなく、「希望」だったのだろう。選挙後、ハメネイは選挙について調べると発言しているが、どちらに有利な結論に達しても、混乱は避けられないかもしれない。イスラエルやアメリカの親イスラエル派にとっては好ましい展開だ。 本コラムでは前にも指摘したが、アメリカとイスラエルは2006年の春頃からイランでクルド人グループなど少数派と連携しながら秘密工作を続けてきた。レバノンからアフガニスタンに至地域で展開されている工作の一環で、テヘランで起こった「爆弾テロ」に関わっていた可能性も指摘されている。 2007年1月に「サンデー・タイムズ」紙は、イスラエル空軍の2飛行大隊が攻撃訓練を行っていて、レーザー誘導爆弾で目標に通じる「トンネル」を作り、「小型核爆弾」を撃ち込む計画だと報道している。イスラエル政府は否定しているものの、攻撃が実施されれば、中東全体がイラク化することを覚悟しなければならない。 また、つい最近、ヒラリー・クリントン国務長官はABCの番組で、イランが態度を変えないならば先制攻撃も辞さないという趣旨の発言をしている。イランの不安定化に成功すれば、アメリカ軍が侵攻するチャンスが生まれるはずだ。 ジョージ・W・ブッシュ政権時代、親イスラエル派はアメリカ軍の粛清を進めたが、それでもイラン攻撃に反対する声は小さくない。ロバート・ゲーツ国防長官はイラン攻撃がイスラム世界に「聖戦世代」を作り出し、孫の世代にはアメリカが戦場になると発言したとも伝えられている。 こうした軍事的な緊張が続いているイランなのだが、内政の問題も深刻だ。高い失業率、燃料不足、インフレなどで国民の間で不満が膨らんでいることは確かで、不安定な状態になっていることは否定できない。イランの不安定化はこうした戦争に反対する力を弱めることになるだろう。イスラエルや親イスラエル派にとっては、それで良いのかもしれないが、アメリカを祖国と感じている人々に取っては深刻な事態だ。 1951年にイランの首相に選ばれたモハメド・モサデグを倒した際にもデモは有効に使われた。デモでモサデグ政権を揺さぶり、1953年のクーデターにつなげたのだ。1958年には、イスラエル、トルコ、イランの情報機関が協力関係に入っている。この関係はイランのイスラム革命で一角が崩れ、昨年のガザ侵攻でトルコとの関係も悪化して崩壊状態だ。イランを破壊したいイスラエルも追い詰められている。
2009.06.15
言うまでもなく、現実の世界で「哲人政治」が仕組みとして存在することなどはありえない。たとえ高潔な人物がトップに立ったとしても、それは一過性の出来事。どんなに立派な人間でも老いと死は避けられないわけで、遅かれ早かれ、私腹を肥やそうとする人たちが頭をもたげてくる。そうした腐敗にブレーキをかけるために先人が考え出したシステムが民主主義であり、情報の公開である。このふたつが機能していない日本の体制が腐敗するのは当然。そうした流れの中で実施された郵政民営化の裏で不正が行われることは不思議でも何でもない。 日本で民営化の推進を宣言したのは中曽根康弘首相であり、その政策をさらに進めたのが小泉純一郎首相。中曽根の民営化を象徴するのが「国鉄」だとするならば、小泉は「郵政」だ。その郵政民営化の過程に疑惑があると主張、日本郵政の西川善文社長の再任を拒否すると宣言した鳩山邦夫総務相が更迭された。それだけ明るみに出したくない事実が郵政にはあると多くの人は感じているはずだ。 小泉政権が誕生したのは2001年4月。郵政民営化が動き始めたのは翌年の12月に開かれたある会合からだ。この集まりには、三井住友出身の西川をはじめ、竹中平蔵、ゴールドマン・サックスのCEO(最高経営責任者)を務めていたヘンリー・ポールソン、そしてCOO(最高業務執行責任者)だったジョン・セインが参加したと伝えられている。 その後、ポールソンは財務長官に就任、またセインはメリルリンチのCEOになった。つまり、郵政民営化の背後にはゴールドマン・サックス、メリル・リンチ、そしてジョージ・W・ブッシュ政権が存在していたことになる。竹中や西川はアメリカ側の代理人にしか見えない。 リーマン・ブラザーズの倒産を切っ掛けにして表面化した金融破綻の中でセインは不適切な行動の責任を取らされて追放、ポールソンもホワイトハウスを去った。ゴールドマン・サックスは大統領選でバラク・オバマに対して98万ドル寄付、新政権にも大きな影響力を持っているが、ここで西川が退陣すると、アメリカ側にとっても困ったことになるだろう。 ある種の人々に取って、民営化が大儲けのチャンスだと言うことは、日本以外でも言えること。例えば、ボリス・エリツィン時代のロシアでも「民営化」で一部の人間が巨万の富を手にしているが、そうして誕生した「少数独裁者」は犯罪組織との関係が指摘されている。ライバルを蹴落とすためには、暴力装置が必要だったということだ。 チェチェン・マフィアとの関係が報じられ、イスラエルの市民権も持っていたボリス・ベレゾフスキーは中でも有名な存在で、アメリカのフォーブス誌の編集者だったポール・クレイブニコフが詳しく報告している。 ベレゾフスキーのような「少数独裁者」、日本のマスコミに言わせると「実業家」が使う「暴力装置」の凶暴さはヤクザの比ではない。何しろ、多くはソ連/ロシア軍の特殊部隊や情報機関のメンバーあるいは元メンバーで、戦い方は「犯罪組織」を超越していた。 2006年11月に変死したアレキサンダー・リトビネンコもKGB(ソ連国家保安委員会)やFSB(ロシア連邦保安庁)に所属していた人物で、FSB時代から「アルバイト」でベレゾフスキーの下で働いていたと言われている。リトビネンコが信奉していたのは祖国でも自由でも民主主義でもなく、ベレゾフスキーのカネだったとしか思えない。 そのベレゾフスキーが裏で何をしていたかを明らかにしたクレイブニコフは、2004年にモスクワで射殺された。容疑者としてチェチェン系の2名が起訴されたのだが、下級審では大方の予想に反して「証拠不十分」として無罪判決が出された。この判決を批判する声は多く、2006年11月、リトビネンコが変死した月に最高裁はその判決を取り消し、審理が再開されている。
2009.06.12
西松建設から民主党の小沢一郎代表(当時)へ「違法献金」が渡ったとされる事件を検証するため、同党は「第三者委員会」を設置していたが、その最終報告書が公表された。その中で検察の捜査を批判、マスコミの報道にも疑問を呈している。妥当な内容だと思うのだが、マスコミの中には気に入らない記者がいるようだ。 国会議員は「公人」であり、「政治とカネ」に絡む問題を積極的に報じることが責務だという記者の主張に異論はないが、これまで大手のメディアは「政治とカネ」が絡む問題には腰が引け、まともに報道しようとしてこなかったのが実態だ。今回のケースでも、地検特捜部が取り上げた小沢一郎の「カネ」しか報じていない。少しでも気の利いた記者ならば、小沢事務所のような形で献金を受け取っている議員が多いことを熟知し、違法だとは見なされていないことを知っているはず。こうした金銭の流れにメスを入れたいならば、法律自体が抱える問題を「積極的に報じる」べきだった。 勿論、自民党の議員も「公人」であり、彼らの「政治とカネ」に絡む問題も積極的に報じるべきなのだが、検察もマスコミも全くと言って良いほど手つかず。その理由を説明する責任が両者にはある。西松建設の件では、小沢一郎の「政治とカネ」について報道したかどうかという点ではなく、なぜ自民党の議員についての報道には消極的で、構造的な問題を調べ、分析しなかったのかという点が問題だ。 改めて言うこともないだろうが、大手メディアの記者たちは東京地検特捜部、あるいはその周辺から流れてくる「情報」に群がるだけで、「政治とカネ」の問題を積極的に報道したわけではない。「検察関係者が情報源」だからではなく、検察側の意向に沿った話を確認しないまま伝え、明らかに間違った情報さえ報じていたことが問題なのである。 最近、「足利事件」の冤罪が明確になったが、こうした刑事事件でもマスコミは警察や検察の情報を垂れ流すだけで、逮捕された時点で容疑者を犯人視していた。つまり、こうした「大本営発表」スタイルはマスコミの体質になっていて、「誤報」を訂正することもない。ジャーナリストとしての自覚がないのだ。「権威」の尻馬に乗れば安全であり、その覚えがめでたければ情報を貰えるという計算が働いている。 もっとも、企業としてのマスコミに銀行を怒らすことのできない事情があり、銀行を動かすことのできる立場の人たちと対峙できないことは理解できる。何しろ、どんな優良企業でも融資を止められれば倒産であり、スポンサーに逆らうことも難しい。 ここで個人的な経験をひとつ。1987年に株価が暴騰した国際航業株は、その年の初めから注目されていた。国際航業は額面総額100億円の転換社債を発行する予定で、野村證券系列の投資委信託がこの株式を買っていたので値上がりする可能性が高いと見られていたのだ。そして、7月になると急騰、「コーリン産業(後に光進へ名称変更)」という小谷光浩が率いる仕手グループが株式を買い占めているという話が流れた。同じ頃、永田町でも国際航業株は暴騰するという噂が駆け巡っていた。 この「仕手戦」では野村證券が「種玉」を提供、「金主」として住友や三井の名前が早い段階から挙がっていた。こうした話に日本のマスコミは興味を示さず、やって来たのは後に『ザ・ハウス・オブ・ノムラ』を書くことになるアルバート・アレッツハウザーだけだった。 もうひとつ別の体験談。日本の隠された戦後史に触れた『ヤクザ』やWACL(世界反共連盟)の事態を書いた『インサイド・ザ・リーグ』が国外で出版されたとき、有名記者の中には「日本では書けない」とか「書いた奴は殺されるぞ」と開き直る人もいた。 ということで、西松建設の「違法献金事件」を担当した記者だけが「強者」の太鼓持ちだというわけではないが、こうした体質のメディアに将来はなく、読者や視聴者だけでなく、「強者」にも見捨てられることになるだろう。
2009.06.11
バラク・オバマ米大統領がイスラム世界との関係改善に動いている中、ヒラリー・クリントン国務長官はABCの番組で、イランが態度を変えないならば先制攻撃も辞さないという趣旨の発言をした。ジョージ・W・ブッシュ政権と同じことを行うというわけだ。クリントンは「ソフト・ネオコン」、つまり親イスラエル派だと見なされているが、今回のインタビューでその正体を現したと言える。 ブッシュ政権はイランに対する秘密工作を始めていた。民族的、あるいは宗教的な少数派を抱き込み、揺さぶりを掛けようというわけだ。そうしたグループの一例がスンニ派の武装集団、ジュンダラーでイランの南東部で活動しているが、その創設メンバーのひとりは「9/11」の中心人物だとしてパキスタンで拘束され、今はアメリカで拘留されている。 ともかく、イランの不安定化に成功すれば、アメリカ軍が侵攻するチャンスが生まれると考えているようだ。が、この秘密工作が続いている限り、イラン政府がアメリカを信頼するはずはない。イランが新しい地対空ミサイルの配備に向けて動き始めたのも納得できる。 イスラエル政府はこれまで何度かイランを攻撃する意志を表明してきたが、クリントン長官は、イランがイスラエルを攻撃した場合にアメリカは報復すると繰り返す。イスラエルの先制攻撃にイランが反撃することを許さないと言っているようにも聞こえる。大統領選挙中、イスラエルに対する核攻撃はアメリカへの攻撃と見なすとクリントンは発言していたが、現在もこの姿勢に変化はないようだ。 イスラエルやアメリカのネオコン/シアコン(親イスラエル派)がイラン攻撃の口実にしているのはイランの核開発なのだが、言うまでもなくアメリカは世界最大の核兵器保有国であり、イスラエルもイギリスや中国に匹敵する核弾頭を保有している国である。そうしたイスラエルやアメリカがイランの核開発に文句を言うのも奇妙な話。核兵器を使うという「脅し」は自分たちだけに許された特権だというわけだ。 そのイスラエルはIAEA(国際原子力機関)に対し、シリアやイランの核施設を調査するように要求しているが、秘密裏に核兵器を開発、150発とも言われる核弾頭を保有している自分たちのことには触れていない。この要求に応え、IAEAがイスラエルを放置したままイランやシリアを調査することになれば、ますますイスラム社会の反欧米感情は増大し、中東の「親アメリカ派」国家、その大半は独裁体制だが、その国家は大きく揺れることになる。 オバマ大統領の中東政策にイスラエルは反発、国連を無視して入植を続けている。こうした時期にクリントン国務長官がイスラエルに媚びを売るような発言をしたことは注目に値する。大統領は難しい舵取りをしていると言えるだろう。
2009.06.08
無期懲役が「確定」していた受刑者が釈放された。1990年5月12日、足利市のパチンコ店駐車場にいた4歳(当時)の女児が行方不明になり、その翌日に渡良瀬川の河川敷で全裸の遺体が発見されているが、この事件で「犯人」とされた人物である。 弁護側が求めていたDNAの再鑑定が実施されて誤審だということが決定的になり、東京高検は再審の開始を容認する意見書を東京高裁に提出、刑の執行を停止することを決めた。ここで無罪を認めた方が検察の受けるダメージは小さいと判断したのだろう。本来なら、もっと早く釈放されて当然なのだが、裁判所が拒否したことで遅れていた。 足利市では1979年と1984年にも同様の殺人事件があり、とりあえず、栃木県警は「犯人」を逮捕する必要があった。県警幹部にしてみると、事件が未解決のまま推移すると出世にも影響する。そこで、近所の人から「怪しい」と名指しされ、勤め先である幼稚園の園長から「子どもを見る目つきが怪しい」と言われ、パチンコ好きでアダルト向けを含む多数の映画ビデオを持っているSが目をつけられた。Sを逮捕した後、県警は「市民を恐怖に陥れた幼女連続殺害事件の全面解決」を宣伝している。 足利事件に限らず、逮捕、起訴、判決に疑問のある裁判は少なくない。なぜ逮捕されたのかわからない事件、捜査官が証拠を捏造した可能性の高い事件もあるが、それでも死刑や無期懲役が言い渡されているのが実態。冤罪を訴えていた人物が処刑されたケースもある。今回の釈放は、DNAの再鑑定でSの無罪を示す証拠を検察側は突きつけられ、追い詰められた結果。こうした決定的な証拠がなければ、これからも冤罪は放置されるはずだ。 ここで日本の警察や検察に「自浄能力」を求めるつもりはない。警察や検察は「人を見たら泥棒と思え」という視点から人々を見るわけで、警官や検察官の善意を信じたとしても、見方は一方的で、判断を間違えることがある。逮捕、起訴した人物を有罪にするため、被告に有利な証拠を隠すことも珍しくない。だからこそ、別の視点から事件や容疑者を見る人間が必要になり、弁護人がつくわけだが、足利事件では一審の弁護人が検察側の主張を鵜呑みにして有罪を認めている。 裁判官が信頼できないことも足利事件は証明した。善意の判事でも間違いはあるが、日本では強者に弱く、弱者に強いのが裁判所の現実。行政の暴走が止まらない一因はここにある。政治犯の場合、裁判官と検察官は一体の関係になりがちだ。裁判が公開を原則にしているのは、そうしたことを先人が知っていたからであろう。 事件が起こり、警察が容疑者を逮捕し、検察が起訴した時点で日本のマスコミは犯人扱いする。「無罪の推定」などはしない。血祭りに上げる人間を求めている多くの人々も同じだ。マスコミに警察/検察のチェックなどできない。捜査当局は便利な「情報源」であり、警察/検察からみるとマスコミはプロパガンダ機関にすぎない。 足利事件の場合、自白と客観的な事実との間に矛盾があることは早い段階から指摘されていたことで、マスコミにも事件をチェックするチャンスはあった。つまり、この事件で「執念の捜査が実を結んだ」と報じたマスコミは警察/検察/裁判所と共犯関係にある。今回の事件でマスコミは「誤報」を訂正し、受刑者などに謝罪する義務がある。 さて、日本では「裁判員制度」がスタートしたが、現在のシステムでは裁判員も冤罪の片棒を担がされることになりかねない。証拠の全面的な開示を罰則付きで定め、裁判官の不適切な「説示」をなくすために評議を透明化する必要があるだろう。秘密にできるのはプライバシーなど限られた情報にするべきだ。 有罪か無罪かを判断するだけなら、裁判官は必要ない。専門的な知識が必要な量刑を裁判員が決めることに無理がある。いっそのこと、「大陪審(起訴陪審)」を導入して起訴するかどうかの段階で一般人を参加させるべきではないだろうか?
2009.06.04
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