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お料理、特に揚げ物などをしていて天ぷら油が眼に入りかけたことはありませんか?高温の油が眼に入ったらどうなってしまうのかちょっと心配ですよね。 ところが人間というのは良く出来たもので、現実にはなかなか油が眼に入ることはありません。危険を察知して瞬間的に眼を閉じるので、「眼に入った!」と思っても実際はまぶたに油が当たっただけということが多いんですね。 先日もある患者様が「天ぷら作っていたら揚げ油が目に入った。滅茶苦茶痛いので飛んできた」といって来院されました。私が「意外と本当に眼に油が入ることはないんですけどね。良く診せて頂きましょう」と拝見すると、、、、、、 油、本当に眼に入っていました。ちょっと珍しいですね。上の写真で緑色に丸く変色している部分がそうなのですが、高温の油が当たって黒目(角膜)に炎症・点状の細かな密度の高い傷に加えて一部上皮欠損を起こしています。黒目は非常に敏感な部分なので、このくらいの傷でもかなり強い痛みが出ることがあります。 目薬と眼軟膏を処方して本日再診して頂いたのですが、 ほとんど治っていて私もホッとしました。 このくらいの傷だったらすぐ治るには治る訳ですが、かなり強い痛みが出るのは事実なので、皆様も料理中には油が目に入らないように十分注意してくださいね。
2009.10.19
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「緑内障の目薬で毛が生えるって本当なの?」という質問を患者様から戴きました。今日はこの疑問について少し考えて見ましょう。 現在緑内障の治療では「プロスタグランジン関連薬」という系統のお薬を第一選択薬として使います。下に示すのがその代表的な薬(プロスト系)です。 眼圧(目の血圧)を下げる効果が高く全身への副作用がほとんどないからですが、局所への副作用はかなりあります。充血・目の周りの色素沈着(黒くなる)などですが、その一つに多毛があります。目の周りに目薬がこぼれると、皮膚が黒くなりますし、明らかに毛が生えているのが分かりますね。 この多毛という副作用を避けるため、私は入浴前の点眼をお勧めしています。(この系統のお薬は全て1日1回点眼です)点眼後にお風呂でしっかりと顔を洗えばかなり予防できますからね。 ここからは余談になりますが、ちょうど友人がストレスで円形脱毛症になったのでちょっと上記の点眼薬を脱毛部に使ってみました。 かなり禿げていますが、お薬を使って2ヶ月後には、 かなり生えています!。その後も増毛は続き、現在では脱毛部は消失しています。かなり効果がありそうですね。 このようにお薬の作用というの本当に不思議なものですね。
2009.04.29
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目の中に入った異物や汚れを洗い流すために使う、洗眼薬という市販薬があります。小林製薬の「アイボン」がその代表的な商品です。 私も使ったことがありますが、アイボンで目を洗うとすっきりして気持ちがいいんですね。目にゴミが入ったとき・花粉症で眼が痒くてどうしようもない時などに大変重宝する良い薬だと思います。 ところがこのアイボン、使っているうちにその爽快感・スッキリ感が癖になってしまい、1日に何十回も使用している 「アイボン中毒、略してボン中」 とでも言えるような状態の方がいるんですね。 先日、「目の調子が悪くてアイボンを1日に20~30回くらいしていたのに、治らないので来た」という患者様が来院されました。目を拝見すると、 黒目(角膜)にたくさんの傷(上の写真で水色に濃く染まっている部分)が入ってしまっています。 これはアイボンのしすぎで、ムチン層という黒目の表面を守って涙の状態を安定させる大事な物質が洗い流されてしまったことによるものです。例えて言うなら、 アカスリし過ぎて皮膚がズル剥けて真っ赤っ赤 というような状態ですね。 また、我々の涙には「ばい菌をやっつける天然成分」が元々入っています。アイボンをしすぎるとこの大切な天然成分も流れてしまい、逆にばい菌への抵抗力が減ってしまうこともあるので注意が必要です。 さて、この患者様にはアイボンを中止し点眼薬を処方したところ、1週間後には、 症状はほぼ改善しました。 アイボンは良いお薬ですが、使いすぎるとこのようにかえって逆効果になることもあります。なので、アイボンを使うときには用法・用量(1日3~6回)を必ず守るようにして下さいね。
2010.05.08
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義眼の方の目の中はどうなっているんですか? と言う質問を患者様から頂きました。 義眼は怪我や病気などで眼球を摘出せざるを得なかったり眼球の中身を取る手術をした場合に、 眼球があるように見せるために入れる扁平な楕円形のもの で合成樹脂で作られています。ほとんどは反対側の元気な目に合わせて色や形を整えて1つ1つオーダーメイドで作ります。 それでは実際に見てみましょう。 非常に綺麗に義眼が入っていますね。 これを外すと、、、、、 中は空洞 になっています。この空洞(結膜嚢:けつまくのう)の状態に合わせて1人1人の患者様にぴったりの義眼を作っているので、パッと見では義眼と分からないことも多いくらいなんですね。
2016.07.15
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外来診察をしているとたまにこのようなキラキラした宝石のような輝きが目の中にある患者様がいます。 まるで少女漫画の主人公の目のように輝いていますね。この方は白色ですが、金色だったり黄白色だったり色々なバリエーションがあります。 これは星状硝子体症(Asteroid Hyalosis)といって、60歳以上の方にたまに見られます。硝子体という目の玉の中の線維の変性疾患なのですが、ほとんどの場合は視力も良好で治療の必要はありません。 外来中にこのような綺麗な星状硝子体症を見ると、その輝きの魅力で思わず見入ってしまうこともあります。我々眼科専門医にとってのちょっとした秘密の楽しみなのかもしれないですね。
2009.05.01
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まだまだ蒸し暑い時期が続きますね。草刈り等の農作業も多く、「目にゴミが入った」などの訴えで受診される患者様が多い季節です。 さて、この目の中なのですが、実に様々な異物が入り込みます。今日はどのようなものが入るのか、いくつかその内の珍しい事例を見て頂きましょう。 ↑ この患者様は以前も紹介したことがありますが、農作業中に田んぼで転んでその時に目にヒルが食い付いてしまいました。非常にすばしっこく逃げるので摘出するのが大変でした。 ↑ この患者様はみかんの摘果作業中に目にゴミが入り「洗っても何してもどうしても取れない」との訴えで受診されました。それもそのはず、蟻が目から振り落とされないように結膜(白目)に足を深く刺してしがみついたまま絶命していました。このありんこも引っぺがすのが大変でした。 ↑ この患者様は、「まぶたの裏で何かがもぞもぞ動いている!」との訴えで来院されました。上まぶたをめくって調べて見ると、ショウジョウバエと思われる2ミリ大の虫が目の中で既に絶命していました。 このように、目の中と言うのは様々な異物が入り込みます。自力ではなかなか取れないもの、取るのが危険なものもあります。ですので、「あれ?何か目にゴミが入ったぞ。」という時には、是非気軽にお近くの眼科専門医を受診するようにしてくださいね。
2012.09.01
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2012年5月、今から6年前にひっそりと静かに日本国内発売となった緑内障・高眼圧症治療薬のアイファガン点眼液。 このアイファガンは、元々アメリカでは「アルファガンP」という名前であり、1996年の発売以来売上高世界上位のベストセラー薬であり続けている名薬でした。 少し復習をしておくと、この目薬(一般名 ブリモニジン)は「アドレナリンα2作動薬」といって、目の中を流れる房水(ぼうすい)の産生を抑制しつつ流出を促進するという、2つの作用機序を持つ非常に優れた薬剤です。先行して発売されたアメリカではずっと緑内障点眼薬売上ランキングの上位を維持し続けてきたベストセラーであり、我々日本の眼科専門医にとっても長年「喉から手が出るほど」使いたい、欲しいお薬でした。 ただ残念ながらその認可は遅々として進まず、なんと「アメリカから16年遅れ!」でようやく発売となったという、その「ドラッグラグ(海外で使われているくすりが、日本で承認されて使えるようになるまでの時間の差のこと)」の大きさでも話題となりました。 そしてこの2012年にようやく発売となったアイファガンなのですが、 なんと発売から6年が経過した今年2018年になって、多くの屈強な薬剤がひしめき合い、しのぎを削っている緑内障点眼薬の中で、なんと売上1位となった のです。 これはとてつもなく凄いことです。それがどうしてなのかを説明しましょう。1. 現在の緑内障治療においてはいわゆる「標準治療」≒ガイドラインが存在している。そしてその中では、第一選択薬としてプロスタグランジン関連薬(キサラタン、タプロス、トラバタンズなど)を使うことが推奨されており、 アイファガンは「最初に処方されるお薬」ではない。 2. また同時に保険診療上の縛りもあり、アイファガンは「ファーストライン(疾患に対して効果があるとされる複数の治療薬のうち、最初に投与すべきと考えられる治療薬)」として使うことは出来ない。あくまで「セカンドライン」以降の薬と言う位置づけとなっている。つまり、「大きくは売れないことを元々宿命づけられた薬」である。3. 更に悪いことに、発売元の千寿製薬は失礼ながら弱小メーカー(2018年3月期の売上高は379億円。これは製薬メーカーとしてはかなり少ない。)であり、薬の宣伝をする営業マン(MRさん)の数も広告のための予算も非常に少ない。なので「鼻薬を嗅がされた、緑内障学会のとてもエライ先生」が一般眼科医に薬を使うように「啓蒙」し、「応援」してくれることもほぼない。 つまり、 アイファガンが売れたのは、広告や宣伝の力ではなく、薬に本当の実力、「突出したガチンコ力」があったから なのです。でも同時に、千寿製薬には十分なプロモーションのためのお金がありませんでした。なので、アイファガンの良さは静かに口コミレベルで医療現場にじわじわと浸透するしかなかった。その為、2012年の発売からランキング1位となるまでに6年もかかったのです。 そして、資金力のある大手メーカーによる「パワープレイ」が支配的な製薬業界において、発売後6年が経過し更に弱小メーカーからの販売となったお薬が売上ナンバーワンとなるなどということは、医学界の常識では通常ではあり得ない、凄いことなのです。 それでは次回は、なぜアイファガンは数々の不利を乗り越えて売上ナンバーワンとなることが出来たのか? アイファガンのどこがそんなに優れているのか? その、 アイファガンの秘密 に迫っていきましょう。(続く)
2018.05.22
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さて先日に続いて今日は、最近の私の白内障手術の進化・改善点についてお話してみたいと思います。 白内障手術では水晶体の前面の膜、前嚢(ぜんのう)を丸くめくるCCCという手技が極めて重要であることは前回の日記でも書きましたが、白内障が進行していると視認性低下のために非常に困難な場合があります。 そういった時には前嚢を染めて見えやすくして手術を行うのですが、数ヶ月前までの私はICG(インドシアニングリーン)という緑色の薬剤を使用していました。ただこのICGは溶解液が作成しにくい、染まりがやや悪いなどの欠点がありました。 そのため、当院では2月から「トリパンブルー染色」という新しい染色法を導入しました。 このトリパンブルー染色液は従来のICG染色液に較べて溶解液が作成しやすく、かつ前嚢が良く染まります。具体的に見てみましょう。 薄い水色に前嚢が綺麗に染まっていますね。上の図のハート型に切れているのがCCCという手技になります。このCCCの後、水晶体の中身を吸い取って行くんですね。 このように当院では常により安全な手術を目指して努力を続けています。もちろんこれからも更に術式を洗練させて、八幡浜地域の皆様の目の健康づくりのお役に立ちたいと考えています。
2010.04.23
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黒目と白目の境目がどんどん白くなってきたのですが大丈夫ですか? と言う質問を患者様から受けることが良くあります。そうですね、大体1ヶ月に数回は聞かれます。今日はこの問題について考えて見ましょう。 まず結論から言うと、これは 老人環(ろうじんかん senile ring) というものです。「お年のせい」ということですね。加齢によって脂質が沈着して黒目の周りが白っぽくなったものですが、通常は視力低下に繋がったりはしないので気にしなくて大丈夫です。 それではこの老人環が一体どのようなものなのかを具体的に一緒に見ておきましょう。 上の写真で水色の矢印で示したのが老人環です。ちょっと分かりにくいので色を塗ってみましょう。 緑色に塗った所が老人環です。黒目(角膜)の隅っこなので視力などには影響はないので心配しなくてもいいんですね。 そしてこの老人環、70歳以上だと大体80%くらいの方に存在します。なので、 目の白髪 くらいに思って頂いて良いと思いますね。
2016.06.21
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さて当院では新型白内障手術機械のインフィニティを購入したところですが、今日は製造販売元の日本アルコン社のサージカル担当の方にお願いして、A-Vit(エービット:前部硝子体切除)の勉強会をしました。 このA-Vitというのは、白内障手術時に後嚢破損(こうのうはそん)という合併症が起こった場合にトラブル処理に使う機械です。登場頻度は極めて低いのですが、だからこそ事前の入念な準備が必要なんですね。 本物のセットを開けて、インフィニティに接続して使用してみます。 このインフィニティには、アキュラスという硝子体(しょうしたい:目の奥のドロドロした物質)切除用の本格的で切れ味の良いカッターをつなぐことが出来ます。しかも25Gという極めて細い最新型の物が使えます。傷口を拡大せずに小さな切開創から使用できるので患者様の負担も軽いんですね。 ただ、インフィニティで唯一問題なのは、A-Vit使用時に毎回「Vitrectomy Cut I/A」モードを選び直さなくてはならないことです。元々の設定が「Vitrectomy I/A Cut」モードになっており、これを修正できないんですね。 A-Vit時には、必ずCut→I/Aモードを最初に使用する必要があります。I/A→Cutモードを先に使うと網膜はく離などの重い合併症に繋がることがあるので要注意なんですね。 素晴らしいマシンであるインフィニティがこんな単純なおかしな設定を修正できないというのは不思議な気がするのですが、サージカル担当の方によると「アメリカでは専門が別れているので、白内障手術専門医は本当に白内障しかしない。トラブルが発生して追加のA-Vitが必要になるとそのまま硝子体手術専門医に送るシステムになっておりあまりA-Vitを使わないので、多分そのせいで細かい設定に大らかで気にならないのでしょう。」ということでした。 うーんなるほど、機械を通してその国の医療システムが透けて見えると言うことなんですね。とっても勉強になりました。
2011.10.13
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さて普通の学会だと最終日、日曜日のプログラムと言うのはメインの演題は既に終了していて内容がスカスカなことが多いのですが、最近の日眼はプログラム改革に力を入れてくれていて日曜日の午前中にも勉強になるセッションがたくさん用意されていました。我々開業医を意識してくれているのでしょうが、本当に助かります。 日眼はメジャーな学会なので参加者が多く、また会場も巨大なのでまるで迷路のようです。 行きたい会場を探してウロウロしていると、あちこちに眼科専門書の出張本屋さんが出店しているのも楽しみの一つです。 さてこの日の午前中は緑内障のセッションに集中して参加しました。開業医になるとどうしても慢性疾患である緑内障の患者様の数が勤務医時代よりも多くなるので、緑内障に関してはとにかく常にしっかりと勉強し続けることが大切なんですね。 今日は私が勉強になった内容をメモ代わりに箇条書きにしてまとめておきます。眼科専門医向けのやや特殊な内容となっていますので御了承下さい。 大乳頭の過大評価、小乳頭の過小評価には本当に注意をする必要がある。大乳頭は通常よりも目の視神経乳頭が大きいもの、小乳頭は逆に小さいものだが、大乳頭は緑内障に見えやすく、小乳頭は異常が隠れていても分かりにくくて正常に見えやすい。 視野異常=緑内障、ではない。白内障、近視性網脈絡膜萎縮、BRVO(網膜静脈分枝閉塞症)のレーザー治療後、頭部外傷後の視神経萎縮、SSOHなど、多彩な疾患が緑内障に似た視野異常を来たすので、冷静に深く鑑別する必要がある。 緑内障の進行具合を判定するためには視野検査で基準となるベースラインの設定が必要だが、そのためには「2年で6回」の視野測定が必要である。(chauhan BC、Br J Ophthalmol 2008) 達成できていない施設が極めて多いので更なる努力が求められる。 OCTはGON構造障害の一端しか捉えていない。そして視野検査は視路全般の機能障害・可塑性を反映している。そのため、OCTと視野は相補的・補完的検査であることを肝に銘じる必要がある。 非常に勉強になるセッションでした。(続く)
2013.06.08
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さて2月4日(土)、初日に非常に勉強になったのは「強膜炎の薬物療法」、「強膜炎の外科的治療」という2つのプログラムでした。 強膜というのは、眼球そのものを形作っている丈夫で文字通り「強い膜」で、普段は白い色をしています。そして、この膜に炎症が起きている状態を強膜炎といいます。 症状としては、強い充血と痛みです。強膜炎の充血は比較的深いところで発生してるので、黒っぽい赤色に見えるのが特徴です。充血している部分は押すと痛みを感じます。この「痛い」というのが強膜炎の最大の特色であり、しかもその痛みは患者様によっては「鉛筆を目に刺されたよりも痛い」と言うほど激烈です。具体的に実際の患者様の状態を見て頂きましょう。 この強膜炎はリウマチなどの自分で自分自身を攻撃してしまう自己免疫疾患に合併することが多いですが、色々調べても結局原因が分からないことも良くあります。 そして、これだけ医学が進歩した現在でも治療に難渋することが多く、最悪の場合は強膜が溶けて(壊死して)穴が開いてしまうことさえあるのです。そのためこの強膜炎と言うのは、我々眼科専門医にとってはその知識量・経験・状況判断力・決断力を問われる非常に厳しい病気なのです。 今回のプログラムではこの強膜炎について様々な角度から勉強することが出来ました。 ↑ このように強膜炎の原因疾患というのは無数にあり、それがこの病気の治療を難しくしています。 ↑ そして、上のスライドにあるとおり、「とにかく痛い」こと、これが困るんですね。 ↑ そして、目薬だけであっさり治る症例から、内科的・外科的治療を総動員して何とか治った症例、どうしても治せない症例まで、その予後は本当に千差万別です。 ↑ 治療法は一応のフローチャートはありますが、これがまた一筋縄ではいかないのです。 ↑ これは重症例の写真ですが、激烈な炎症で強膜が溶けてしまい、その奥のぶどう膜という茶色い組織が出てきてしまっています。 ↑ こうなると、強膜パッチ術といって、他の方の献眼された目を持ってきて弱いところに貼るという外科的な治療をするというのが教科書に書いてある定説なのですが、 ↑ うかつにこのパッチ術に手を出すと、パッチをしても次から次へと溶けてしまってまた穴が開き、「合計したら数個分の目をパッチに使ってしまった!」というような凄まじい状況におちいることがあるので、「うかつに外科的治療に踏み切らないことが大切である」ことが解説されました。 重症例の治療法の実際を聞くことが出来て、本当に勉強になりました。(続く)
2012.03.23
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先日のことですが、「飼い犬が急に前足を出してきて、爪が左目に入った。ごろごろして痛い」という訴えで患者様が来院されました。早速目を拝見すると、 白目(結膜)が切れて、犬の爪の跡もくっきりとついています。症状としては軽く大したことはなかったのですが、患者様は「グラちゃん(仮名)は普段はとってもいい子なのに、どうして急にこんなことをしたのかしら?」と大変ショックを受けておられます。 私は「でもまあ、怪我したのが黒目(角膜)じゃなくて不幸中の幸いでしたよ。」と慰めて、「せっかく来て頂いたので目の奥(視神経や網膜)もついでに診せて頂きましょう」と拝見すると、 パッと見ただけで両目とも目の神経が減っており、緑内障が非常に疑わしい状態です。 精密検査で視神経の周りの神経繊維層を分析してみると、 やはり両目とも神経の量が減っています。(上記の写真の赤色で示された部分) 視野検査上でも、 やはり両目ともすでに視野が欠けています。でもラッキーなことにまだ緑内障としては初期でした。今から治療を開始すれば失明まで至ることはまずありません。 ただこのくらい初期の緑内障だと、自分自身で気づくことはまずありません。今回は愛犬のグラちゃんのおかげで偶然眼科に来てそれで緑内障を初期で発見することが出来たのでした。 私が患者様に「グラちゃんは、もしかしたら不思議なパワーで飼い主の目のピンチを知らせてくれたのかもしれないですよ。忠犬グラちゃんですね。」と説明すると、患者様も「はい、うちの犬は本当に最高の子なので絶対そうだと思います。」と大喜びで帰宅されました。きっとグラちゃんは御馳走を貰えただろうと思っています。
2010.07.06
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さて2010年12月の発売以来、今や日本人の国民病とまで言われる「ドライアイ」の治療を革命的に進歩させた参天製薬の名薬にして、発売7年が経過した今もベストセラー街道をばく進する、ジクアス点眼液。 このジクアス点眼液はその薬理作用上、目の細胞からの水分とムチンという物質の分泌を促進するので、点眼後に涙の量を増やしてくれます。そしてその「うるおい効果」が点眼後約1時間も持続するという、画期的で優れものの目薬です。 その為、「ジクアスが無いともう生活が成り立たない。」と仰られる患者様もたくさんいらっしゃるくらいに大人気のお薬なのですが、ベストセラーで売り上げが多い(2018年3月期で見て、1年間で128億円)が故に、逆にクレームが目立つ点眼薬でもあります。 そしてそのクレームの中で断トツに多いのが、 ジクアスを点眼すると、その後で半透明のネバネバした目やにがたくさん出てきて気持ち悪い というものです。この「ジクアス点眼後に目やにが出る」という患者様からの訴えは非常に多く、私が1週間外来をしていると、最低でも1、2回は聞きます。 これは一体何なのでしょうか? ジクアスの何か危険な副作用なのでしょうか? 今日はこの「ジクアス点眼後の目やに」の正体について、私が眼科専門医として分かりやすく回答しましょう。 先ほども書いたように、ジクアスを点眼すると目の表面からムチンという物質が放出されます。これは納豆の様にネバネバしたものなのですが、この ジクアスの効果で出てきたムチンが、目の表面の常在菌をトラップしてトリモチのように絡めとって「目やに」として出てくる のです。 つまり、 ジクアス点眼後の目やには、お薬が効いている証拠 でもあるということなんですね。 ちなみに、このジクアス点眼後の目やには、無構造でバクテリアなどをトラップしたものであり、炎症細胞はほとんど認められない、いわば無害なものであることが専門的な研究によって既に分かっています。 以上をまとめると、 ジクアス点眼後の目やにに対してはそれほど神経質になる必要はない と思います。ただドライアイ治療ではジクアス以外にも有力な選択肢はたくさんありますので、どうしても不快で気になる場合には違う点眼薬に変えればそれで済む話でもあります。 なので、どうしても気になる方は、是非気軽に次回の外来で私達眼科専門医に相談してくださいね。
2018.06.11
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血管に富んだ組織が角膜(黒目)の真ん中に向かって侵入してくる、翼状片(よくじょうへん)という病気があります。 はっきりとした病因は不明なのですが、紫外線(太陽の光)や慢性的な機械刺激などが原因になると言われており、「みかんと魚の街」で、紫外線にさらされることの多い八幡浜市では非常にたくさんの方がこの翼状片になっています。 この翼状片、進行した場合は手術しか治療法がないのですが、単純に切除しただけでは50%!という高率で再発することが知られており、なおかつ悪いことに再発した場合は「より凶悪にパワーアップして進行」します。 そのため初回手術が非常に大切で、私は「有茎結膜弁移植」という手法で極力再発しないような丁寧な手術を手がけています。上の写真の患者様の術後はこのようになります。 ただ、どんなに丁寧に手術をしても再発する方はします。そのためずいぶん昔には再発予防のために切った後、そこに抗がん剤を塗って再発を抑える手術法が多く取られていました。ところが、この術式を受けられた方のなかに10年以上経って、 その抗がん剤を塗った部位が弱くなってしまう合併症が頻繁に見られるようになりました。 なので、私は現在では初回手術ではこの抗がん剤を使用しないことにしています。(再発した場合は使用することはあります) 手術というのは、した後もずっと患者様の状態に責任を持たなくてはならないものなので、「長い眼で見て一番有利」という術式を常に追い求めていこうと考えています。
2009.09.11
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さて今日は「名薬、ムコスタ点眼液の悲劇」シリーズ最終回です。 この素晴らしい薬効を誇るムコスタ点眼液ですが、実は私自身も毎日寝る前に使用しています。 圧倒的に眼の調子が良くなりますし、 点眼すると目がかすんで見えなくなるのでそのまま良く眠れる という意外な作用もあります。(笑) 「苦い、しみる、かすむ」と3拍子揃った強面のハードボイルドなムコスタ点眼液 ですが、ドライアイ患者様なら一度は挑戦してみるべき素晴らしいポテンシャルを秘めたクスリでもあります。 私は眼科専門医として、この「悲劇の名薬」ムコスタ点眼液をこれからも適切に患者様に処方していきたいと考えています。
2013.03.22
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さて日本人では40歳以上の20人に1人(5%)、70歳以上では7人に1人(14%)の有病率ということで、非常にありふれた病気であると同時に、「失明に直結する!」という「とても怖いイメージ」があるために、多くの方から「恐れられている」病気である緑内障。 当ブログでもこれまでに様々な角度から取り上げてきましたが、この緑内障は「超慢性疾患」で進行がとてもゆっくりな病気なので、実際には発病から失明に至るまでには30年以上という時間的な猶予が与えられた、真面目に治療に取り組む患者様にとってはある意味で「優しい病気」でもあります。 そして治療の基本は、眼圧を下げるための点眼治療です。何故かというと、眼圧を下げることによって緑内障の進行を遅らせて目の健康寿命を延ばすことが出来ることは、既に質の高い多くの論文から明らかになっているからです。治療法としては他に手術も色々とありますが、結局はどれも眼圧を下げるためだけの物なので、目薬の治療だけで病気がコントロールできるのであればそれに越したことはありません。何も好き好んで痛い思いをする必要はないですからね。 そして実際全国にはとてもたくさんの緑内障点眼薬を使用していらっしゃる患者様がいます。緑内障は決して「良くなる」ことはない病気なので、世界最高レベルの高齢化がこれからも類を見ないスピードで進展するここ日本では緑内障患者様の数はこれからも増える一方です。もしかすると、このブログに辿り着いた方の中には既に緑内障の治療中の患者様もいるかもしれませんね。 そこで今日はこれまでと視点を変えて、緑内障点眼薬の世界を広く見渡してみることにしましょう。これはとても大切な視点です。何故かというと、この数年緑内障の分野では新薬ラッシュが続き、使えるお薬が爆発的に増え、その結果として以前とは比べ物にならないくらいに処方パターンが増えているからです。 それではまずはその全体像をお示ししましょう。 す、すごい量ですね。20年前には「僅かに数種類」しかなかった緑内障点眼薬は、いつの間にかこのような「爆発的な進化」を遂げているのです。そして私達眼科専門医は、これらの全てのお薬の長所・短所・有効な組合せ方を学び続けながら、毎日の診療に当たっているんですね。(続く)
2019.03.09
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さて今日からは、緑内障治療の第一選択剤である、プロスタグランジン関連薬の世界を見ていきましょう。 初回となる今回はキサラタン(一般名 ラタノプロスト)点眼液です。その強力な眼圧下降効果で1999年の発売と同時に爆発的な大ヒットとなり、「日本の緑内障治療を変えた」と言われる歴史的名薬ですね。 ちなみに私は1999年に眼科医になったのですが、ちょうどこのキサラタン発売と時期が重なったために、緑内障の点眼治療が飛躍的に進歩したことと掛け合わせて「キサラタン世代」と呼ばれていました。今から考えると特に意味はないのですが、当時は何だか最先端の様に感じていましたね。(笑) ところでこのキサラタンが出るまでは、上の一覧表の中のレスキュラ点眼液 が同じプロスタグランジン系統(厳密にはちょっと違う)唯一のお薬としてバカ売れしていたのですが、このキサラタンが発売になるやいなや、見る見るうちにそのシェアを落として、当時販売していた製薬会社のMR(営業マン)の方が真っ青な顔をして夜遅くまで大学医局の廊下に立っていたのを思い出します。多分会社で売り上げ減を怒られて必死だったんでしょうね。 さてこのキサラタン点眼液の特徴を一言で言うと、 眼圧が良く下がる上に副作用が少なくてバランスが良い ということになるかと思います。 前回紹介したPAPという副作用が少なめで、かつ眼圧下降のキレが良い、いいお薬なんですね。 ちなみにこのキサラタンが発売されて20年が経過した今では同じ系統にも色々な薬が出ているのですが、緑内障専門医の先生たちと飲んでいると、「ぶっちゃけていうと、やっぱりキサラタンがトータルで見たら今でも一番いいよね。」というお話になったりもします。(ちょっと秘密) そして私も、「キサラタンはやっぱりいい薬だなあ。」とこの記事を書いていても改めてしみじみと思います。キサラタンに救われた患者様の数というのは莫大と思いますし、もしもこの薬が登場していなかったらと思うと、ちょっとゾッとしますね。 ところで、キサラタンは発売後20年が経過しているので当然ジェネリック(後発)医薬品が存在します。「ラタノプロスト点眼液」というのがそれですが、今だとこの後発品の方が処方されるケースが多いだろうと思いますね。(続く)
2019.03.19
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当院では2021年に日本アルコン社の「センチュリオン」という最新型の白内障手術装置を導入してそれで毎週の手術を行っています。 非常に能力の高いマシンで、導入してから白内障手術時のトラブルが激減しました。手術自体はこの25年間常に全身全霊を賭けて1例1例「すべての症例を自分の父母の目にメスを入れるという感覚」でやっていますので、合併症が明らかに減ったのはやはり手術機械のクオリティが上がったことが何よりも大きいと思います。 さてそんな素晴らしい名機センチュリオンですが、当院では実は2台同時に購入していました。 その理由ですが、機械にトラブルは付き物なので、万一に備えてバックアップのために買っていたのです。これは今回が初めてではなく前機種である「インフィニティー」の時にも2台体制を取っていました。 さて2021年に同時に2台やってきたセンチュリオンですが、1台は花子、もう1台は太郎と名づけられました。彼らは2週間交代で大切な患者様の目の手術に臨みます。ただその後の2台は対照的な運命を辿りました。 花子は優等生で、その後の3年半、一度も何のトラブルも起こしませんでした。オペ場のスタッフも「花子が鎮座していると安心」と言う感じで絶大な信頼を得ていました。 一方の太郎はかなりの暴れん坊で、この3年半で様々なトラブルに見舞われました。具体的に言うと、1. 朝、オペ場で機械を立ち上げようとすると、そもそも起きない。2. 起きても、いよいよ手術が始まるという瞬間になぜかフリーズしていて動かない。3. オペ中に急にイヤイヤ言い出して動作が止まる。4. 前部硝子体切除(A-Vit)という手術トラブル時に使う機能を一度も使っていなかったので試しに動かしてみようと思ったところ、そもそも壊れていて反応が無い。 などでした。そしてこういう時には常に花子が緊急登板して事なきを得てきたのでした。 、、、ところが先日のことです。大エースの花子が手術中に突然操作画面のタッチパネルが反応しなくなったのです。しばらくいじくり回していると動き始めて手術は無事に終わったのですが、次の日にはついに立ち上がらなくなってしまいました。 オペ場のナースたちが「まさか、お利口な花子がこんなことになるなんて。。。」と大きなショックを受けています。でも、問題児の太郎が代打を務め手術は滞りなく終了しました。「太郎にも役に立つことがあるんだねー。」とみんなが感心しています。 その後緊急で日本アルコン社にメインテナンスをお願いすると、花子はタッチパネルの裏側のコネクターが外れていただけで、すぐに治りました。やっぱり優等生だったんですね。 、、、と、こんな感じで我々は毎週楽しく手術に臨んでいます。これからも太郎と花子を常に万全にメインテナンスしながら、より安全で精度の高いオペを出来るようにスタッフ全員で努力していきます。
2025.02.18
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本日、当院の3次元眼底像撮影装置、トプコン 3D OCT-2000 をバージョンアップして貰いました。 今回はプログラムのバグ取りなどの小さなバージョンアップだったのですが、それにしてもトプコン社のこの3D OCT-2000に賭ける気合は凄いものがあります。とにかくバージョンアップが頻繁でどんどん良くなっているんですね。 OCTに関しては現在多くの商品がしのぎを削るまさに戦国時代です。トプコンのライバルのOptovue社のRTVue-100は緑内障診断ソフトウェア(GCC)が秀逸、OCT本家のカールツァイス社はとにかくデータの見せ方が上手い、日本の二デック社のRS-3000はとにかく撮影が早く簡単で、かつ驚異の広範囲スキャンができるといった状況で、個別で見るとトプコンのOCTにはまだまだライバルに及ばない点が目立ちます。 ただトプコンのOCTは以前にも書きましたが、何といっても汎用性が高く、OCT画像と同時に通常の眼底写真も撮ってくれて、実際の眼底写真とOCT画像を同時に見て戴きながら分かりやすく病状を説明することが出来るので患者様に大好評なのが魅力です。更に前眼部(角膜・隅角)、緑内障(視神経)、網膜の各撮影モードのどれもが他社と比較した場合にムラ無くまずまず優れており、トータルバランスに秀でたマシンです。 しばらく前にトプコンの眼科部門の偉い方にお会いする機会があり、その時に私が「いやあ、3D OCT-2000、熱いマシンですね。現場で使っていて開発陣の気合が伝わってきますよ」と言うと、「そうでしょう。ここだけの話、3D OCT-2000、開発費が尋常じゃないんですよ。売れてくれないとマジでヤバイんです。」ということでした。ユーザーからすると非常にいい話ですね。 これからもこの トプコン 3D OCT-2000 のバージョンアップのスピードに負けないように、私も眼科の勉強を積み重ねていこうと思っています。
2010.10.21
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我々人間は外界からの情報の80%を目から手に入れていると言われており、だからこそ目はとても大切なわけですが、その目の真ん中に開いているのが瞳孔です。この瞳孔なんですが、動物によって形が違うことは割りと知られていません。 (眼科セカンドオピニオン 銀海舎 P53より) 我々人間が真ん丸なのは皆様ご存知でしょうが、ヒキガエルはなんとハート型なんですね。 ネットを巡回していると、なんと 「ハート型の瞳孔を持つ猫」 もいました!。 ただ残念ながらこの猫は「エイプリルフール用の合成写真」だったようなのですが(私は本物かと思ってかなり驚いていたのですが)、 実は 人間でも「ハート型の瞳孔」を持つ方が存在する のです。 これはある患者様に検査のために散瞳薬という目薬を入れたところなのですが、上方の虹彩(茶目)の一部がその後ろの水晶体とくっついている関係で、偶然「ハート型」になっています。 患者様に「目がハート型になっていますよ」とこの写真をお見せしたら大変喜んで頂いたのですが、とっても珍しいものが見れて私も嬉しかったです。こういった様々な楽しいことがあるので私は外来診療が大好き なんですね。
2009.08.04
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現在緑内障の治療では「プロスタグランジン関連薬」という系統のお薬を第一選択薬として使います。眼圧(眼の血圧)を下げる効果が一番強いからですが下に示すのがその代表的な薬(プロスト系)です。 上の写真の中で、左端の 「キサラタン点眼液」 が発売されたのが1999年、この薬の登場が緑内障治療を劇的に変えたといわれる、当時まさに画期的な新薬でした。ちなみに私が眼科医になったのも1999年のことで、それで我々は「キサラタン世代」と呼ばれています。 キサラタンはあまりに画期的なお薬だったためにその後何年もライバルが現れませんでした。数年前からようやく「トラバタンズ点眼液」、「タプロス点眼液」という同系統の薬が発売されたのですが、その薬の効果はキサラタンとほぼ同等で、「もっと眼圧の下がる」キレの良い薬の発売が望まれていました。 10月第一週に 「ルミガン点眼液」 という新薬が発売になるのですが、 この薬は前述の「キサラタン」に対して有意差を付けて眼圧が下がるというデータが出ています。 簡単にいえば 「過去最高の効き目の薬」 ということです。その理由を下の図に示していますが、分かりやすく言えば 「患部に直接ガツンと効く」 ということになります。 ただ、良いお薬には当然副作用もあります。このルミガンは今までの薬よりも 強烈に目が充血する と言われています。早速当院のスタッフにお願いして実験してみました。 右目だけにさしたのですが、 明らかに左目 より強く充血していますね。ただ、肝心の眼圧の方は、 13.7→8.7と確かに良く下がっています。これは期待できそうですね。! この期待の新薬、ルミガン点眼液、発売と同時に当院でも採用します。少しでも緑内障患者様の不安が減ってくれたらと思いますし、私も発売を心待ちにしています。
2009.08.21
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さていよいよ近日中に、千寿製薬という眼科専業の製薬会社から「アイファガン点眼液」という緑内障の大型新薬が発売になります。 ↑ 写真は先行して発売されているアメリカでのものです。アメリカでは「アルファガンP」という名前であり、1996年の発売以来売上高世界上位のベストセラー薬であり続けています。 今の日本には存在しない系統の目薬なので、現在第一選択薬として使われているプロスタグランジン関連薬(キサラタン、タプロス、トラバタンズ、ルミガン)や第二選択薬のβ遮断薬(ミケラン、チモプトール)、炭酸脱水酵素阻害薬(エイゾプト、トルソプト)などと組み合わせて使うと大きな効果を発揮する可能性がありその発売が待ち遠しいです。 今日は先行して、このアイファガン点眼液(一般名ブリモニジン)の特徴を見ておきましょう。この目薬は「アドレナリンα2作動薬」といって、目の中を流れる房水(ぼうすい)の産生を抑制しつつ流出を促進するという、2つの作用機序を持つ非常に優れた薬剤です。 その効果は、1981年の日本発売以来ベストセラーの地位を保ち続けている名薬のチモプトール(一般名チモロール)とほぼ同等かやや劣る程度です。 若干結膜へのアレルギーが出やすく、効果が減退しやすいという欠点はあるものの、今日本で使えるどの緑内障点眼薬とも併用できて更なる眼圧下降が狙えること、また全身への副作用が少ないことから、実際に発売されれば全国の緑内障患者様にとって大きな福音となるでしょう。 私も緑内障治療医として、その発売日を首を長くして待っています。
2012.04.02
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「ためしてガッテン」余波で中断していましたが、今日は久々に「瀬戸内眼科コロシアム2012参戦記」をお送りします。 続いてのセッションは「アレルギー性結膜炎」でした。 これは非常にありふれた病気であり、新鮮な話題が少ない分野なのですが、今回はアレルギー性鼻炎(花粉症)の鼻症状に対して耳鼻科で頻用されている点鼻(噴霧)ステロイドが実は眼症状にも有効である、という話題が少し新しかったです。 この点鼻ステロイド、具体的にはアラミスト、ナゾネックスなどの製品がありますが、本当に目のかゆみを取るのにも効果的なんですね。実は私自身もその効果を以前から実感していて患者様にも良く処方しますし、実際に自分でも使っています。(笑) この点鼻ステロイドの効果は、抗ヒスタミン薬の内服とほぼ同等ということでかなり強力です。ただ、何故効くのか?については実は不明な点も多いのですが、今のところ鼻の中のヒスタミンなどの炎症性メディエーターの減少により、鼻-眼反射(naso-ocular reflex)が減ることによるものとの説が有力です。またこの点鼻ステロイドは経口ステロイドと較べて眼圧に影響しないので、直接的な作用は否定的ということでした。 「耳鼻科でフルメトロン点眼などのステロイドを含めてアレルギーの目薬を貰っている患者様は多いが、逆に眼科で点鼻ステロイドを貰っている患者様はほとんどいない。副作用も極めて少ない薬だし、我々眼科医はもっと積極的に処方しても良い。」という、講演した先生の話が非常に印象に残りました。
2012.11.05
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さて今年2023年のおそらく9月以降くらい(現時点ではまだ決まっていない)のことになるのですが、レバミピド懸濁性(けんだくせい)点眼液2%「参天」が発売になります。 これは2012年に大塚製薬から発売されたドライアイ治療薬であるムコスタ点眼液の後発品(ジェネリック)となります。発売後10年以上が経過しすべての特許が切れたので他のメーカーが安価な後発品を出せるようになったんですね。 さて先発品のムコスタ点眼液ですが、作用としては結膜(白目)の杯細胞というものを増加させます。そしてこの杯細胞は「分泌型ムチン」というネバネバ物質を出すので、結果として目の表面で働く分泌型ムチンが増加するということになります。これによって涙の質と量が改善されます。 更にドライアイには炎症が深く関与しているのですが、元々が胃薬であるムコスタには炎症を抑える作用もあります。この「杯細胞の増加&抗炎症作用」の2つの力で、この10年間ドライアイ治療のキープレーヤ的な存在として大活躍してきました。 そして今回、このムコスタ点眼液の後発品がひっそりと参天製薬から発売されることになったのですが、そこには、 我々全眼科医を震撼させる「衝撃の事実」 が隠されていたのでした。。。。(続く)
2023.06.22
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遺伝性の疾患で、全世界平均で3000~4000人に1人の発症率と言われている、網膜色素変性症という難病があります。 これは進行性の病気で、最初は「薄暗い所で見えにくい」などの症状ですが、徐々にその夜盲・視野狭窄が進み、末期には高度の視力低下あるいは失明に至ることもあります。成人中途視覚障害原因3位であり、頻度が低いとはいえ大変重要な疾患です。 ↑ これがその「網膜色素変性症」の患者様の実際の眼底写真ですが、中心部を除いて網膜が高度に変性・萎縮しているのが分かります。 私が開業している愛媛県八幡浜市及び「日本一細長い半島」で知られる伊方町は、数十年前までは隣町の大洲市・西予市等とは険しい山で遮られていて、道路状況が非常に悪いということがありました。その関係で例えば近親婚なども多くあったのでしょうか? 原因ははっきりしませんが、私の開業しているエリアには、この網膜色素変性症の患者様が非常に多いという印象があります。 暗順応〈あんじゅんのう〉改善薬や、ビタミン剤、網膜循環〈もうまくじゅんかん〉改善薬などを、進行予防のため補助的に処方することが多いのですが、それらの薬の有効性には根拠となる証拠がなく、我々眼科専門医も非常に心を痛めているのが現状です。 私は八幡浜に来て4年半が経ちました。前述したとおり網膜色素変性症の患者様が大変多いこともあり、ずっとこの病気について勉強を重ねてきました。その中で私は「一筋の光明」を見出したのです。(続く)
2010.07.23
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先日の日記の続きです。有効な治療法が無いと言われる難病、網膜色素変性症ですが、実は数年前から散発的に「ウノプロストンという目薬が効果がある」という論文を目にするようになりました。 論文によると著しく自覚症状が改善した患者様が実際にいるということです。これはウノプロストンが持つ、網膜の神経節細胞のグルタミン酸障害に対する保護作用によるものではないか?と推察されていますが、まだはっきりしたことは分かっていません。 ↑ これがそのウノプロストンです。実際には「レスキュラ点眼液」という名前の緑内障・高眼圧治療薬です。 このレスキュラ、10年以上前にはベストセラー薬として一世を風靡したこともあったのですが、「点眼時に非常にしみる」、「角膜(黒目)の上皮障害を高率に起こす」、「眼圧下降効果が弱い」などの弱点があり、他の緑内障新薬に負けて現在では処方されることが非常に少なくなってきています。 ところが薬の作用と言うのは不思議なもので、今また新たな病気に効く可能性が浮上しているわけです。緑内障を合併している網膜色素変性症の患者様には当然保険診療の範囲内で処方することが可能な目薬なので、私はここ数年網膜色素変性症がある方には、このレスキュラ点眼液について説明をし希望の方には実際に処方もしてきました。 「この薬はしみるのでイヤ」という方ももちろんいらっしゃいましたが、継続されている方の中に「レスキュラさし始めてから、なんだか視界が明るく良く見えるようになった」と、自覚症状の改善を認める患者様も実際にいらっしゃいます。 なので、私は自分自身の経験から「レスキュラには網膜色素変性症の治療薬となる可能性がある」のではないか?と感じています。 また実際にこのレスキュラ、現在開発元のアールテックウエノ社が、少し濃度を変更して(未確認データですが25%濃度を上げているという説もあります)、オキュセバ点眼液と言う名前で、網膜色素変性症の治療薬として治験中 でもあります。 医学の世界は常に少しづつ進歩しています。昨日治らなかった病気も明日には治ることもあります。私は八幡浜地域の皆様に全国レベルの最新で安全な眼科医療を提供し続けることが出来るように、これからも毎日の勉強を欠かさずに努力していきたいと考えています。
2010.07.25
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今日の日記は眼科専門医向けのやや特殊な内容となっております。ご了承下さい。 さて、この数年のことですが、前立腺肥大(ぜんりつせんひだい)というおしっこの出方が悪くなる病気で、治療のためにα1遮断剤というお薬を飲んでいる患者様が激増しています。具体的には「ハルナール、フリバス、ユリーフ」などの商品名のものが多いのですが、これらが日本では現在なんと年間で8億個!も処方されています。 泌尿器科の先生にとってはありふれたお薬で、非常にカジュアルに気軽に処方されているのですが、これらの薬を飲んでいると白内障手術時に40%の確率でIFIS(アイフィス:術中虹彩緊張低下症候群)というやっかいな合併症を起こすことが知られています。 これは、お薬の影響で虹彩(茶目)がフニャフニャになってしまい、術中の水の流れでうねったり縮んだりして手術が難しくなることを言うのですが、その症状がシビアな場合には手術の安全性に関わることもあり、我々白内障手術専門医の大きな悩みの種となっています。 これはα1遮断剤が「瞳孔散大筋のブロック」を起こすからなのですが、α1受容体を選択的に活性化させる「フェニレフリン」という薬剤でこのIFISは予防できることが知られるようになってきました。ただし、そのためにはミニムスという使いきりタイプの点眼剤を個人輸入しないといけません。また、一般的な散瞳剤の「ミドリンP」にもフェニレフリンは入っていますが、原液でないと前房(目の中)内濃度が足りないし、そのミドリンPには防腐剤が入っているので原液使用は無理です。 ただ、身近なところで出来る範囲でもこのIFISを予防する手段は色々あります。今日はその対策を個人的メモ書きとしてまとめておきます。 1. そもそも白内障手術前に、α1遮断剤を飲んでいないかをしっかり確認する。割と「そういえば泌尿器科の先生に内服開始を勧められている」ということも多く、その場合は先に手術をさせて貰えば良い。また、現在α1遮断剤を内服中の場合、休薬してもIFIS発症は予防できないというデータが多いが、個人的な臨床体験からは「休薬すると少なくともパワフルなIFISはほとんどない」のも事実であり、症例の難易度によっては可能であれば一時的な休薬をお願いすることも魅力的なオプションだと思う。 2. 実際の手術に際して1番効果があるのはこれ。新品のネオシネジン点眼液(フェニレフリン)を1mlシリンジに吸っておいて、手術の洗眼後に結膜下注射しておく。その量は0.1mlくらい、感覚としては少し結膜が膨れるくらいで十分で、これでIFIS発症率を大幅に減少させることが出来る。 3. 散瞳不良症例はIFIS発症の可能性が高いので、必要に応じてBSS2.5mlにMP1滴入れてそれを前房内投与する。(ただし想定リターンがリスクを上回る場合のみ) 4. それでも無理で術中にパワフルなIFISを起こした場合には、前房形成能の高いヒーロンVを適宜使用する。(ただし個人的にはヒーロンVにはあまり過度な期待を抱かない方が良いと考えている) 以上です。これからもより安全で効果的なIFIS対策を追い求めて行きたいと考えています。
2011.09.25
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薬に罪はないのに、日本の厚労省のシーラカンスの様な動きの遅さによる絶望的なドラッグラグ(本国アメリカから発売16年遅れ)、更に保険診療上の縛り(ファーストラインとして最初に処方することが出来ない)、トドメにプロモーション力が圧倒的に足りない業界下位の弱小メーカーである千寿製薬からの販売という、 「3重の地獄の苦難」を背負っての2012年の「ひっそりとした」静か過ぎる日本発売となったアイファガン点眼液。 またこれは完全な裏が取れているわけではない噂レベルの話ではあるのですが、複数の業界筋によると、このアイファガン点眼液の日本販売権に関しては、「アメリカ発売から16年も遅れて、更にめんどくさい1日2回点眼の古い薬なんて、どうせ今更大して売れないよ。」と製薬業界内で嫌がられてたらい回しにされ、それで最終的に弱小メーカーの千寿製薬に販売権が回ってきたという説もあります。(笑) そしてこのように、業界内の誰にも、何だったらもしかすると販売元の千寿製薬にさえも大して期待されないまま (笑) 静かに日本発売後6年が経過した今年、その「突出したガチンコ力の高さ」によって多くの並みいる競合薬を抑えて緑内障薬売上ランキングのトップに立ちました。これはまさに、 アイファガン点眼液が起こした奇跡 です。 今日は、どうして3重苦を背負った、並みの平凡な薬であったならばひっそりとそのまま息絶える運命だったアイファガンが「6年越しの奇跡」を起こせたのかについて、眼科専門医であり同時に発売時から熱狂的なアイファガンファンでもあり続けたこの私が、その秘密をついに語りましょう。 アイファガンの凄い所は以下の通りです。1. 副作用が少なくて効き目が強い。 はい、アイファガンの長所を一言で言えばこうなります。お薬と言うのは全てリスク(副作用)とリターン(作用・効き目)があるわけですが、このアイファガンはそのバランスが抜群にいいのです。 例えば、現在緑内障の点眼治療ではファーストラインとしてプロスタグランジン関連薬 が使われています。これらのお薬は眼圧を下げる力は本当に強くて、だからこそファーストラインなのですが、その一方で多くの特に「局所」の副作用があります。具体的には点眼後の強い充血、更に点眼を目の周りにこぼすと、そこが黒くなったり、くぼんだり、しまいに毛が生えたりします。中には逆にこの副作用を狙って、使い終わって余った使用期限切れの目薬を頭皮にゴシゴシ塗り込んでいるおじいさんさえいたりします。(専門的にはこの副作用はDUES:デューズという名前で呼ばれています。) またプロスタグランジン関連薬に次ぐセカンドラインの位置づけのベータブロッカー点眼剤(製品名でいうとチモプトールやミケラン)は、喘息・コントロール不良の心臓病・閉そく性の肺疾患がある患者様には禁忌で処方することが出来ません。ただ緑内障の方には高齢者が多く、自分で自分の持病を完全に把握できていない場合もあり、この系統の点眼薬の処方は医師・患者様の両方にとって大きなリスク要因となります。 更にセカンド/サードラインとして良く用いられる炭酸脱水酵素阻害剤点眼薬は、ペーハーの関係で強烈に目に沁みたり(製品名トルソプト)、沁みなくても目薬が白い濁り液で点眼後しばらくめがかすんで見えなくなるので、元々目に関して色々な不安を感じている緑内障の患者様にとっては気持ち的に沈んでしまって点しにくい、ついつい点眼をさぼりやすい(製品名エイゾプト)ものだったりします。 つまり、 緑内障の目薬と言うのはどれもそれなりの欠点があって気難しいものが多い のです。ところがアイファガンは非常に点し心地が良く(これ、凄い美点)、更に眼圧も良く下がる(ほぼセカンドラインのチモプトールと同等)のです。なので、患者様に一度処方すると、「先生、今度の目薬、点しやすいし眼圧下がるし、滅茶苦茶いいわあ。」と喜ばれることが多いのです。そして患者様が嬉しいと私達医者も嬉しいのです。何故なら、我々は患者様の「役に立つ」ことが最大の喜びであり、それをモチベーションとして毎日の外来診療を頑張っているからです。 これでもうお分かりですね。 アイファガンがベストセラーとなったのは、患者様に強く求められるお薬であったから。そこに「幸せの、喜びの連鎖」があったから。 なのです。 そしてアイファガン点眼液にはまだ他にも長所があります。2. 防腐剤に工夫があり、角膜障害が少ない。 緑内障の目薬と言うのは大なり小なり角膜(黒目)へのダメージがあります。そして防腐剤として、安価で一般的なベンザルコニウム塩化物(通称 エンベコ)が入っている目薬では、そのダメージが更に増強されます。ここでは具体的には書きませんが、多くの緑内障点眼薬はエンベコを使用しており、特に海外メーカーのものはその濃度もべっとりと非常に高い場合があります。ただ欧米の方はあまり角膜障害を気にされないようなのですが、日本人と言うのは「世界一消費者意識が高くてとても繊細」なので非常に気にされます。 そしてアイファガンは、Purite(亜塩素酸ナトリウム)という、非常に角膜に優しくて安全な防腐剤を使用しており、長期使用に不安が少ないところも大きな美点なのです。 この2点がアイファガンの凄い所なんですね。 ただこのアイファガンにも少ないながら欠点はあります。それは、 点眼後数か月が経過すると結膜(赤目)にアレルギーを起こしてくる場合が一定の確率である ことです。この副作用が出た場合には、違う系統の薬に切り替えることになります。 さて長くなりましたが、以上をまとめると、 アイファガンは売れるべくして売れた ということです。 緑内障点眼薬の中で「総合力が断トツトップ」であり、それが口コミで広がってついに6年経って1位になった ということですね。 これからも名薬アイファガンと共に、緑内障患者様1人1人の眼の状態に合わせた「オーダーメイド治療」に精進していきたいと考えています。
2018.05.27
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さて、「目の周りに塗るだけでそれがじわじわ滲みて目の中のかゆみが取れる」という魔法のような世界初の機序を持った、アレジオン眼瞼クリーム。 こちらが実際の製剤になります。 ノズルがめちゃ細いです。目の周りにちょっとだけ塗るものなので、あまりクリームが多く出過ぎないようにと言う配慮だと思います。日本ナンバーワンの眼科薬メーカーの参天製薬のお薬と言うのは、使いやすいようにいつも隅々まで細やかな配慮がされているんですね。 院長が寝る前に塗ってみました。実際にアレルギー持ちなのですが、次の日の朝の目のかゆみが明らかに少なくなっていました。これはやはり効能が期待できそうです。 このアレジオン眼瞼クリーム、専門的に言うと、瞼(まぶた)の皮膚を通過して目の玉(眼球)と白目(結膜)に届いてかゆみを取ってくれると言うものです。 ただこれを実際に製品化するには極めて高度な製剤技術が必要で、「薬を溶かす技術が世界一」の参天製薬だからこそ実現できた薬だろうと思います。おそらく他の後発メーカーには至難だろうと思いますし、参天製薬のレベルの高さに眼科専門医として改めて感嘆しました。 今のところ、発売は5月下旬と噂されています。実際に世に出る日が楽しみですね。
2024.05.14
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さてアクティブになる楽しい夏の季節なのですが、それに伴って目にも色々なものが入ってトラブルを起こすことがあります。これは以前にも書いたことがある人気記事なのですが、新たな画像を追加して「2016年夏バージョン」でお送りしましょう。 ↑ この患者様は、「魚を捌いていたら急に目が痛くなって水で洗っても目薬しても何しても痛みが取れない。」との訴えで来院されました。矢印の部分に何かがありますね。 魚のうろこが白目(結膜)に刺さっていました。うろこは表面が複雑な形状をしているので一度目にくっつくとなかなか自力では取れません。顕微鏡で見ながら慎重にピンセットで引っぺがしたのですが、強力にくっついていたので剥がすのが大変でした。 ↑ この患者様は以前も紹介したことがありますが、農作業中に田んぼで転んでその時に目にヒルが食い付いてしまいました。非常にすばしっこく逃げるので摘出するのが大変でした。 ↑ この患者様はみかんの摘果(てきか)作業中に目にゴミが入り、「洗っても何してもどうしても取れない。」との訴えで受診されました。それもそのはず、蟻が目から振り落とされないように結膜(白目)に足を深く刺してしがみついたまま絶命していました。このありんこも引っぺがすのが大変でした。 ↑ この患者様は、「まぶたの裏で何かがもぞもぞ動いている!」との訴えで来院されました。上まぶたをめくって調べて見ると、ショウジョウバエと思われる2ミリ大の虫が目の中で既に絶命していました。 このように、目の中と言うのは様々な異物が入り込みます。自力ではなかなか取れないもの、取るのが危険なものもあります。ですので、「あれ?何か目にゴミが入ったぞ。」という時には、是非気軽に遠慮なくお近くの眼科専門医を受診するようにしてくださいね。
2016.07.07
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さて引き続き先週の白内障学会での機械展示ブースをめぐっての感想の話です。 私は白内障手術で、NIDEK(二デック)社のCV-7000という機械を使っているのですが、 その後継機種に当たるCV-30000(Fortas)が展示されていました。 新しいテクノロジーで前房(ぜんぼう)という手術空間の安定性が格段に増しているとのことでした。いつか機会があったら是非使ってみたいと思っています。 とにかくこのNIDEK社の製品はさすがに「メイド・イン・ジャパン」だけあって、信頼性・耐久力が抜群です。私が今使用しているCV-7000も開業後2年少し経ちますが発生したトラブルは0、本当にタフで頼れるマシンです。 ブースをウロウロしていると、 白内障手術で、濁った水晶体を削る先端部分であるUSチップの新商品が発表されていました。 先端の形状が工夫されており、小さな傷口から挿入しやすく手術効率も良くなっているとのことで、これに関しては早速当院でも実際に使ってみようと思っています。 学会と言うのは、このように色々な発見があるので非常に勉強になるんですね。
2010.06.29
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さて昨年の12月13日の発売以来、今日までで当院でも2000本以上を処方させて頂いた「ドライアイ」の画期的な新薬ジクアス点眼液ですが、 たくさんの患者様からその使用感を教えて頂き、また処方後の目の状態を診せて頂くことによって「ジクアス点眼液の長所と短所」がかなり見えてきました。 まず第一に言えることは、ジクアス点眼液は従来型のヒアルロン酸の点眼薬(商品名で言うとヒアレインやティアバランス)よりも明らかに効果が強い、目の表面の傷を改善する力が高い、ということです。やはり15年振りの待望の新薬だっただけのことはあります。 そして次に言えることは、その高い臨床的効果を背景にして患者様の「自覚症状」が改善する場合が非常に多いと言うことです。それは具体的には、 ジクアス点眼を始めてから、明らかに目の調子が良くなった。 パソコンをするときに目がほとんど疲れなくなった。 本が読みやすくなった。 点眼してしばらくすると目が元気になる。 目が常に潤っている感じで視力が良くなった気がする。 などの患者様からの喜びの声で分かります。従来型のヒアルロン酸の目薬では、ここまではっきりした明白な評価を戴ける事はほとんどなかったので、やはり「ジクアスは凄いな」と思います。 その反面、「ジクアスが合わない」患者様も一定の率で存在することも分かってきました。合わない患者様は、 ジクアスさしたら涙が出っ放しになって仕事にならない。 常に泣いてるみたいで目がウルウルになってしまい、本も読めない、テレビも見れない。 涙が出るので気にして目を触っていたら周りが腫れた。 うまく言えないが良くない。前のヒアルロン酸の目薬の方がサラッとしていて良い。 などと仰います。10人処方させて頂くと1人くらいが合わない、という印象です。 ジクアスはその薬理作用上、目の細胞からの水分とムチンという物質の分泌を促進しますので、点眼して「涙が出る」というのはある意味当然なのですが、どうやら「効きすぎる」患者様がいるようなんですね。 そういった患者様に関しては、点眼回数を絞る、従来型の点眼に戻す、などの対処をしていますが、これからも更に勉強を重ねてより精度の高いドライアイ治療を目指して行きたいと考えています。
2011.01.24
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さて次に勉強になったのは、「細隙灯顕微鏡(さいげきとうけんびきょう:皆様が眼科の外来を受診して顔を乗せる顕微鏡のことです)所見から考えるぶどう炎の鑑別診断」というプログラムでした。 このぶどう膜炎というのは、 「目の中に炎症を起こす病気」の総称で、皆様にはあまり馴染みがない名前でしょうが、実はその患者様の総数は膨大です。 そして「ぶどう膜炎」と一括りにはしているものの、実際にはその中に細かく言うと数百もの病気があると言われており、このぶどう膜炎の診断・治療は良く「推理小説」に例えられるほど難しく複雑です。 今回のプログラムでは、このぶどう膜炎の中でどの病気が多いかの最新のランキングが示されました。それによると、1位のサルコイドーシス、2位の原田病は不変ですが、3位には急性前部ぶどう膜炎(AAU)が入りました。以前にはベーチェット病がトップ3の常連だったのですが、この数年で減り今回も6位という結果になりました。画期的な新薬が開発されたこともありますが、どうも患者様自体が減っているような印象もあります。その理由は良く分かりませんが。 今回のプログラムは日本のぶどう膜炎治療の第一人者の先生によるものでしたが、本当に素晴らしい内容でした。というのは、 外来で診てすぐ分かる顕微鏡所見だけに絞って、良くある病気に付いて「分かりやすくかつ深く」教えて頂けたからです。その内のいくつかを見ておきましょう。 ぶどう膜炎では角膜後面沈着物(KP)というものが出てくるのですが、病気によってその性状には差があります。 原因疾患1位のサルコイドーシスでは、 このように豚の脂のようなベトッとしたKPが出ます。 5位のヘルペス性虹彩炎では、 KPが「整然とした配列」をしているのが特徴です。 9位のポスナー・シュロスマン症候群では、 サルコイドーシスに似ているものの、ちょっと「少なくて薄い」のが特徴です。 25位のフックスでは、 小さくて範囲が広いのが特徴です。 また炎症細胞が眼の表面の下側に貯まる、前房蓄膿(ぜんぼうちくのう)というものがあるのですが、 3位の急性前部ぶどう膜炎ではそれが「山盛り」になり、6位のベーチェット病では「サラサラで水平」になるなど、日常良く出会うぶどう膜炎について非常に良い勉強になりました。 そして、 ぶどう膜炎ではすぐに鑑別のための血液検査に進みがちだが、そうではなくスリット(外来顕微鏡)所見で病気を絞っていくことがまず大切、という講師の先生のメッセージが深く心に残りました。(続く)
2013.02.07
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さてそれでは今回からは、広い広い緑内障点眼薬の世界を個別に見ていきましょう。 初回となる今回は、何といってもプロスタグランジン関連薬です。 効き方としては、主にぶどう膜強膜流出路からの房水(ぼうすい : 眼球を充たす体液のこと。眼圧を保つと共に角膜・水晶体の栄養補給の役目を果たしている。房水は毛様体という組織で作られ、主にシュレム管を通過し眼外に排出される。)流出促進作用となります。 さてこのプロスタグランジン関連薬は、現在緑内障治療の第一選択薬(ファーストライン)として使用されています。緑内障と診断された方は、まずはざっくりとこのエリアから目薬を処方されるということです。 その理由は何と言っても「眼圧が良く下がるから。」です。緑内障の目薬は何と言っても「眼圧が下がってナンボ。」なので、眼圧が下がらない=効かないのではてんでお話にならないのです。またこの系統のお薬には「全身的な副作用がなく、安全で使用しやすい。」という長所もあります。 その一方で、これらのプロスタグランジン関連薬には、点眼によって目の周りが落ち窪んだり、黒くなったり、毛が生えたりという、患者様に非常に嫌がられている、 PAP(眼窩周囲症状 Prostaglandin associated periorbitopathy)と呼ばれている副作用 があります。 これを防ぐためには、目薬を点眼後に濡らしたティッシュでふき取るか、目を閉じて洗眼するのが有効なのですが、どんなに気を付けていてもPAPが出現してしまう患者様も残念ながら多いです。 この副作用をものすごく、死ぬほど嫌がっている患者様というのは実にたくさんいらっしゃいますし、特に女性の方は嫌います。 大切な「目力」に影響してしまうので当然 ですね。なので、このPAPが強く出た場合や患者様の拒否反応が強い場合には違う系統の目薬を検討することになります。ただ逆に言うと、このPAPが気にならない場合には、 プロスタグランジン関連薬は、無敵に、夢の様に良いお薬 ということも出来ます。とにかく良く効きますからね。 それでは次回からは、このプロスタグランジン関連薬の世界を個別に見ていきましょう。(続く)
2019.03.12
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いまや日本人の国民病とも言われる緑内障、これは見える範囲(視野)が欠けてくる病気なのですが、その治療には眼圧(目の底の血圧)を下げる目薬を主に使用します。 ところがこの緑内障の目薬というのは、大体において「しみる、さしにくい、おまけに値段が高い」の3重苦が伴っており患者様に大変不評です。更に悪いことには目薬には「緑内障を治す・良くするまでの効果は無く、ただ進行を食い止めるだけ」なのです。 そのため、最初は目薬をさしていてくれた患者様でも段々と「頑張っても治らないならつまらない。元々自分では全く自覚症状もなくて健康だと思うし、もう治療はやめたい。通院も今日で最後にして欲しい。」と言われてしまうことがたまにあります。言わないまでも心の中でそう思っている患者様はきっと多いと思います。。。。 でも、この緑内障、どうしても絶対に治療を続けて頂かなくては困る のです。以前にも書いていることなのですが、とっても大切なことなのでその理由を今日も改めて説明しましょう。 まず繰り返しになりますが、緑内障とは「眼圧(眼底血圧)がその人にとって高いことで目の神経が壊され、その結果として視野の中に見えない部分や見えにくい部分が出来てくる病気」です。 この緑内障による見え方を表す図としてパンフレットなどには、 よくこのような説明図が載っています。「こんな風に見え方が欠けていたら誰でも自分で気付くはずだろう。私は全然そんなことないし、先生は緑内障っていうけどほんとなのかな?」と疑っている緑内障の患者様がたくさんいらっしゃいます。 でも、実は、緑内障での実際の見え方はこのようなものでは全く無い のです。。。 上の図では道路に飛び出してしまったボールを拾おうとして、車の陰から子供が2人猛ダッシュしてきています。正常な方なら上記のように見えるのですが、もしも緑内障があると、、、、、、 初期でも車と子供達が消えてしまっています! これではなぜ道路にボールがあるのか全然分かりませんし、もしこのような見え方の人が車を運転していたとすると、最悪の場合子供達を車で跳ね飛ばしてしまうかもしれないですね。 緑内障が進行すると見え方は更に次のように変化していきます。 ↑ このくらいの見え方でも自分では正常と思っている患者様はたくさんいらっしゃいます。 お解り戴けたでしょうか? 実は緑内障というのは、 よほどの末期にならない限りは自分ではなかなか気付けない病気なのです。だから恐ろしいのです。 どういうことか別の角度から説明しましょう。 我々の頭というのは物凄く良く出来ています。視野が欠けてしまっても、頭でそれを補正することが出来るのです。そのため、上の図では本来見えていないはずの花びらがなんとなく見えるように感じてしまうのです。 そしてこの緑内障、良くはならないが悪くはなる のです。なので、出来る限り初期から治療を始め、その進行を食い止めて生活に支障が出ないようにする、ことはとっても大切なことなのです。 今でも毎月のように、「急に目の異変に気付いて我々眼科専門医のところに大慌てで駆け込んできたけど、すでに失明寸前で手遅れ!」 という患者様が多くいらっしゃいます。 現在緑内障を発見されて治療中の患者様は、実は病気をコントロールできているわけなのでとってもラッキー ということも出来るのです。なので、イヤになって通院をやめたりせず、是非我々眼科専門医と一緒に頑張ってくださいね。
2011.08.25
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小さなお子様やお身体が不自由な患者さまの目の表面(前眼部)の検査・観察に必要な検査機械に「手持ちスリットランプ」というものがあります。眼科では絶対に必要な機械であり、私も7年前の開業時に当然買っていました。 これはシンプルな機械なのですが、ここにも技術革新の波は及び、光源がLEDとなり耐久性と明るさが飛躍的に増した新製品が出ました。試しに使ってみたところ従来型のものとは較べものにならないくらい目の表面が見やすかったので大喜びで買い換えました。日本のコーワというメーカーのSL-17というモデルになります。 従来型のものよりもグリップ形状が良くなっており非常に持ちやすいです。そして何より目の中が良く見えます。具体的に言うと従来型では全然見えなかった虹彩紋理まで鮮やかに確認できて、私は毎日の診療がより楽しくなりました。 従来型のマシンをお使いの全国の眼科専門医の方、これはガチで買い替えの価値があると思います。騙されたと思って是非一度使ってみてください。(笑)
2015.08.19
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さて学会場に入ります。 気分が高まりますね。 学会場に着いたら、まず最初にコングレスバッグを貰います。 これは学会場で資料を入れるためのバッグですが、学会終了後はそのままエコバックにもなる優れものです。今回は上記の4つからの選択でしたが、 私はこの水色と白のストライプが綺麗なバックを選びました。 さて次はランチョンセミナー(お昼にお弁当を食べながら勉強できる一石二鳥のお得なセミナー)の整理券取りです。これは急がないと行きたいセミナーに入れなかったり、ひどい時は全て売り切れでお昼御飯そのものにあぶれてしまう事もあるのでとっても大切なのです。 今回は十分間に合いました。 さて、学会の日程表を良く見て一日の行動を考え、いよいよ勉強開始です。(続く)
2012.02.07
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コンタクトレンズ処方を希望される患者様からよく戴く質問の一つに、「結局、目に一番安全で良いソフトコンタクトレンズはどれなの?」というものがあります。 この質問に対する私の答えは毎回決まっています。それは「ソフトコンタクトレンズでは1日使い捨てタイプが感染症が少なくて最も安全です。その中でもシリコーンハイドロゲル素材といって酸素をたくさん通すタイプのものが一番良いのですが、現在のところジョンソン&ジョンソン社のワンデーアキュビュートゥルーアイというレンズのみがその条件を満たしています。私はこのトゥルーアイを「究極のレンズ」と考えており私自身も毎日使用しています。他のレンズに較べると高価ですが、予算が許せば自信を持ってお勧めしたいと考えています。」というものです。 この「ワンデーアキュビュー・トゥルーアイ」 は 、 「世界初のシリコーンハイドロゲル素材の1日使い捨てコンタクトレンズ」です。競合他社は今のところまったく追随することが出来ず、製造元のJ&J社の技術力・総合力の高さをまざまざと見せつける形になっています。1日使い捨てタイプのソフトコンタクトレンズは他社からもそれこそ無数に発売されているのですが、その酸素透過性の差から、商品戦闘力はまさに「格が違う」状態です。具体的には、コンタクトを1日使うと夜に目の渇きを自覚することが多いと思うのですが、この渇きが非常に少ないのです。実際に使ってみるとほとんどの方にその差を実感して戴けると思います。 そのため1日使い捨てタイプのソフトコンタクトレンズに関しては、 まず、ワンデーアキュビュートゥルーアイを考える。なんらかの理由で無理な場合に、他のレンズを検討する、ということで良いと思います。 次に、このトゥルーアイの欠点ですが、 1. 値段が高い。 2. 従来型の酸素透過度の低いハイドロゲル素材のコンタクトレンズに較べるとやや固いので、患者様によっては違和感が強くて合わないことがある。 3. 実はこれが一番の問題なのだが、我々眼科専門医の高い期待を裏切るような商品の自主回収が続き(現在までに2回)、また製造ライン改修のため、今でも度数によっては生産中止の状態が続いていて、全ての患者様に処方が出来ない。 となります。このうち3については、9月中旬には一般的な度数については供給が可能になるという未確認情報があり、私も皆様の目の健康を守る眼科専門医として、その日を首を長くして待っているところです。 以上をまとめると、 1日使い捨てタイプのソフトコンタクトレンズに関しては、安定・安全供給さえされれば、この「ワンデーアキュビュートゥルーアイ」に勝てるコンタクトレンズは現状存在しないため、「これで決まり!」 です。 ところが、現在最も処方数が多く最激戦地の2週間交換タイプのコンタクトレンズになるとその様相は全く異なります。有力で戦闘力が高く出来の良い各社のレンズが揃っているからです。もしも皆様からのリクエストがあるようであれば、このタイプのレンズについてもいつか考えてみたいと思っています。
2011.08.30
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若い女性で美容目的で一重瞼を二重瞼にするためにアイテープいわゆるアイプチをしている方が割りといらっしゃるのですが、 このアイプチ、実は割と危険なものなのです。具体的には、 1. テープの接着剤の成分がまぶたの皮膚を刺激して、アレルギー反応がおこり、かゆみや強い炎症を起こすことがある、ひどい場合には皮膚が固くなってくることもある。 2.目を完全に閉じることができないので、ドライアイなど他の目の病気につながることがある。 などの危険があります。我々眼科専門医からすると「アイプチは禁止!」といいたいくらいなのですが、若い女性の美にかける執念はすごいものがあり、アイプチ愛用者が減ることはなかなかありません。男性の方でアイプチをしている人はさすがにみたことがないですけどね。(笑)
2009.07.16
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さてここからはセミナーで印象に残った話、勉強になったことを自分のメモ代わりに書いていきます。 患者様の多くは「目には癌は出来ない」と思われているのですが、実は目にも癌は発生します。もちろんその頻度は高くはないのですが0ではないんですね。セミナーではその「眼腫瘍」の講義があったので、具体的にそのポイントを見ておきましょう。 一番良くあるのは、 この脂腺癌(しせんがん)です。まぶたにあるマイボーム腺の出口が詰まって慢性的な炎症が起き、その結果肉芽腫という塊ができる霰粒腫(さんりゅうしゅ)と非常に良く似ているので要注意なんですね。 私も実際数年前のことですが、「何度も何度もめいぼができて、色々な眼科で切ってもらったけど治らない。」という患者様が来院され、念のために外科的に切った後で病理検査に回した所やはりこの脂腺癌だったということがありました。高齢の方で何度もめいぼが再発する、と言う場合は常に悪性腫瘍の可能性を念頭に置かないといけないんですね。 それ以外でも、体のどこかに癌がありそれが目に転移してきた、眼底(がんてい)に茶褐色や薄い黄色の淡いさりげない病変が広がる「転移性脈絡膜(みゃくらくまく)悪性腫瘍」や 治りにくい結膜炎と区別が付きにくい、サーモンピンク色の鮮やかな腫瘤が広がる「結膜悪性リンパ腫」などもたまにあります。 これらの眼の悪性腫瘍はなかなか発見しにくいのですが、早期であれば局所の腫瘍摘出や放射線療法、化学療法で済む場合も多いので、眼科専門医として幅の広い豊富な知識を保ち、これらを決して見逃さないように努力していかなくてはならないと決意を新たにしました。(続く)
2012.06.10
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さて今日も「第117回日本眼科学会参戦記」の続きです。 ラウンジの中には新聞や週刊誌がたくさん置いてありました。 そこで週刊誌を手に取ってパラパラと見ていると、 日本サッカー界の至宝、本田圭佑選手がレーシック手術に失敗してしまい、それでワールドカップ予選に欠場することになったのではないか?という気になる記事が出ていました。 この記事だけでははっきりとしたことは分かりませんが、裸眼視力をしっかり出すためにやや過矯正気味に角膜を削りすぎてしまい、それで様々な心身の不調が出ている可能性があるという内容でした。心配ですね。 レーシックは基本的には非常に安全で確実な手術ですが、しばらく前には銀座眼科での集団感染症の発症もありましたし、「レーシック難民」という言葉があるように術後にドライアイ・微細な両眼視機能異常を始めとする様々な多彩な症状に悩まれている患者様が一部にいることも事実です。 ただこの手の週刊誌での「医療バッシング記事」はやや割り引いて読まなければならない場合もあります。というのは、バッシングされるのは美容外科、歯科のインプラント手術、眼科のレーシック手術などの保険の効かない「自由診療」のことが多いのですが、これらの業種は広告宣伝費を多く使うことで知られています。 そして広告代理店はマスコミに医療バッシングの記事が出ると、バッシング先に出かけていって「あなた方のアピール力が足りないからこういう記事が出るんです。もっと広告をする必要があります。」という営業をかけるということがあるんですね。それは巡り巡って広告料の還元と言う形でマスコミを潤すことがあり、マスコミ側にはそういった動機・インセンティブが少なくとも無意識下のレベルで働いている可能性があるということです。全てマスコミの記事と言うのは多面的に深く捉える必要があるんですね。 すいません、少し話が脱線してしまいました。最初の話の続きですが、皆様もレーシック手術を検討されるときには、手術の長所ばかりでなく短所もしっかりと説明してくれる、術前に十分な問診と両眼視機能検査を含む詳細で慎重な検査をしてくれる、また術後のフォローアップ体制がしっかりとしているクリニックを選ぶようにしてくださいね。(続く)
2013.04.11
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今の時期は学校健診の季節です。私も幼稚園から中学校までいくつかの学校の校医を務めており、時間を調整して外来の昼休みの時間にコツコツと出かけています。 健診には斜視がないかをチェックするためのペンライトや 目の角膜(黒目)、結膜(赤目)、更にその奥の水晶体に異常がないかをチェックするための、手持ちスリットという機械を持っていきます。 学校に着くと、体育館や保健室に小さな椅子と机が用意されており、ズラッと並んだ生徒さん達の目を順番に見ていきます。一番気を付けているのは斜視がないかですが、それ以外にも強いアレルギー性結膜炎やさかまつげ、めいぼなどがないかもチェックしていきます。 その際全ての子に「何か目で気になることはないですか?」と質問をします。最近は日本全体が極めて清潔になったことが影響しているのでしょうか? 以前に較べてアレルギー性結膜炎の患児が激増しています。 そのため自分から「目がかゆいです」と訴える子と言うのは割と多いのですが、特に幼稚園児や小学校低学年の場合だと、1人が目がかゆいというと、それを後ろの列で並んで聞き耳を立てていて、 そういえば私もかゆいです。 僕は○○君よりも超かゆいです。 などとみんなが次々にかゆみを訴え始めて収集が付かなくなったりすることもあります。健診には健診なりの独特な苦労があるんですね。(笑) それ以外でも、 あくびをしたら涙が出るのが気になります。 こないだ目に虫が入ってからずっと目が赤いので、もしかすると目の中で卵を産んだかもしれません。 など、目に関する難問珍問が続出することもあります。(汗) そんなこんなで、毎年この時期は楽しく眼科健診をさせて頂いています。
2013.05.26
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さて2010年12月の発売以来、今や日本人の国民病とまで言われる「ドライアイ」の治療を革命的に進歩させた参天製薬の名薬、ジクアス点眼液。 このジクアス点眼液は従来型のヒアルロン酸の点眼薬(商品名で言うとヒアレインやティアバランス)よりも明らかに効果が強い、目の表面の傷を改善する力が高い、ドライアイ分野では15年振りの待望の大型新薬だったわけですが、発売後の売上高の順調な伸長(現在年間75億円)がジクアスが非凡なお薬であったことを明白に証明しています。 ところで ジクアス はその薬理作用上、目の細胞からの水分とムチンという物質の分泌を促進するので、点眼後に目を潤す効果が強いお薬です。そのため多くの方が苦しんでいる [ソフトコンタクトレンズ装用中の目の渇き] に抜群な効果を発揮する のですが、残念ながら今まではソフトコンタクトレンズの上からは「原則として」点眼することが出来ませんでした。 それはジクアスが防腐剤としてベンザルコニウム塩化物というものを使用していたからです。このベンザルコニウム塩化物(我々の業界では「塩ベコ(えんべこ)」と略す)は非常に防腐剤としての効力が強い反面、角膜(くろめ)の表面を荒らしたり、ソフトコンタクトレンズを劣化させたりするという副作用があったのです。ただこの塩ベコを使わずに目薬を作るのには非常に高い技術力と費用が必要なので、特に安いジェネリック医薬品には大量で高濃度の塩ベコがべっとりと含まれているのが実情です。 さて今回ジクアス点眼液は製品改良により、 この悪の元凶である「塩ベコ」を取り除くことに成功 しました。 それによって、 ソフトコンタクトレンズの上からも安全に点眼が出来るようになりました。 ジクアス×ソフトコンタクトレンズのコラボレーションは非常に目が潤いますので、コンタクトレンズ使用中のドライアイ患者様にとっての大きな福音と思います。 素晴らしい製品改良 ですね。 我々眼科専門医が世界トップレベルの眼科医療を提供できているのは、この参天製薬に代表される日本の点眼薬メーカーの高い技術力に負うところが大きい のです。本当に感謝・感謝ですね。
2015.12.21
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どうして人間の瞳は丸いのですか? という質問を患者様から戴きました。今日はこの問題について考えて見ましょう。 まずここで言う瞳と言うのは目の真ん中に開いている「瞳孔」のことですね。私達人間は 「外界からの情報の80%を目から手に入れている」 と言われており、その入り口となるとても重要な部分となります。 さてこの瞳孔、我々人間はたまたま丸いわけですが、 実は動物によって異なる のです。! (眼科セカンドオピニオン 銀海舎 P53より引用) 猫が縦型なのは割と皆さんも御存知かと思うのですが、 ヒキガエルはなんとハート型 なんですね。 また我々人間でも、たまにこのハート型の瞳を見ることもあります。 これはある患者様に検査のために散瞳薬という目薬を入れたところなのですが、上方の虹彩(茶目)の一部がその後ろの水晶体とくっついている関係で、偶然「ハート型」になっています。 患者様に「目がハート型になっていますよ。」とこの写真をお見せしたら大変喜んで頂いたのですが、とっても珍しいものが見れて私も嬉しかったです。こういった様々な楽しいことがあるので、私は毎日の外来診療が大好き なんですね。
2016.06.06
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さてシリーズでお送りしている「緑内障点眼薬の世界」。 これまでに現在第一選択薬(ファーストライン)として使用されているプロスタグランジン関連薬 第二選択薬(セカンドライン)として使用されているβ遮断薬 の紹介が終わりました。 そして今回はβ遮断薬と同じく第二選択薬(セカンドライン)としての位置づけとなるアルファ2作動薬のアイファガン点眼液です。 効き方としては、ぶどう膜強膜流出路からの房水排出促進+房水産生抑制の2つの作用となります。 さて私の個人的な考えをここで述べると、現在発売されているあらゆる緑内障点眼薬の中で、 アイファガン点眼液が総合力ナンバーワン と思います。 高い眼圧下降効果(リターン)と少ない副作用(リスク)が両立していて、使えば使うほどに、「アイファガン、ほんとにいい薬だなあ。」という実感がどんどんと高まっているからです。 これまでに紹介したように、緑内障の目薬と言うのはどれもそれなりの欠点があって気難しいものが多いのですが、 アイファガンは非常に点し心地が良く(これ、凄い美点)、更に眼圧も良く下がる(ほぼセカンドラインの チモプトール と同等)のです。なので、患者様に一度処方すると、「先生、今度の目薬、点しやすいし眼圧下がるし、滅茶苦茶いいわあ。」と喜ばれることが多いのです。そして患者様が嬉しいと私達医者も嬉しいのです。何故なら、我々は患者様の「役に立つ」ことが最大の喜びであり、それをモチベーションとして毎日の外来診療を頑張っているからです。 そしてその「突出したガチンコ力の高さ」によって、現在アイファガン点眼液は多くの並みいる競合薬を抑えて緑内障薬売上ランキングのトップ(2018年度売上高136億円)に君臨しています。 尚、このアイファガンについては、当ブログで過去に既に徹底解説しています。未読の方はぜひこの機会に目を通してみて下さい。↓ アイファガン点眼液が、売上1位のベストセラー緑内障点眼薬となりました。 アイファガン点眼液が起こした奇跡 さてそんな無敵のアイファガン点眼液なのですが、ただ1つ心配なことがあります。それは、発売元の千寿製薬が失礼ながら弱小メーカー(2018年3月期の売上高は379億円と製薬会社としては超小粒。)であり、このアイファガンは千寿製薬にとって他に代わるものの無い大エース=屋台骨となっていることです。 そして現在はベストセラー街道を驀進中のアイファガンなのですが、近い将来ついにジェネリック(後発)医薬品が登場します。その時、偉大な孝行息子を失うことになる千寿製薬はどうなってしまうのか、果たして大黒柱が倒れた後にも生き残っていけるのか、それを私は眼科専門医としてとても懸念しています。
2020.03.11
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さて世の中には、「寝る前には、決して目薬を点してはいけない」 という昔から語り継がれている伝説があります。 今でも特にご高齢の患者様では信じている方が多く、「夜、寝る前に目薬をすると、寝ている間に急死することがあると昔聞いた。あぁ、恐ろしい。絶対に点さない。」と診察室で言われることもあります。 またこれの違うバリエーションでは、目の病気が悪化したときに「もしかして、寝る前に目薬をしたのでそれが悪かったのでしょうか?」と真顔で訊かれることも良くあります。 最初に結論を申し上げると、「寝る5~10分前までに目薬をすれば何の問題もありません。寝る直前だと、涙の流れが停滞することにより成分によっては目への刺激が長引くことがあるので望ましくありません。」 ということになります。 では、一体どうしてこのような不思議な伝説が生まれたのでしょうか? それは、大昔に良く売れていた 「ある目薬」 が引き起こしたことだったのです。 具体的には、収れん・消炎作用がある 「サンチンク点眼液」 です。 この目薬には「硫酸亜鉛」という強い成分が入っていて収れん作用があるので、充血が良く取れる・目が白く見えるということで人気があり、大昔には良く病院で処方されていました。ただ硫酸亜鉛は刺激が持続する可能性があるので、「決して寝る前に点してはいけない。」と添付文書に書かれていたのです。でも当時はとても人気のある目薬だったので、きっと多くの副作用が出たのでしょう。そして上記の伝説が生まれたという事です。 今では硫酸亜鉛の様なリスクのあるお薬を使わなくても、もっと安全に充血を改善することが出来る目薬がたくさん出たので、サンチンクは「過去のお薬」となりました。そしてついに今年2023年、販売中止となりました。 「1つの時代が終わり、伝説だけが残った。」 ということですね。
2023.01.13
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さて日々の眼科診療では「目薬」を処方することが多くあります。というか正確に言うとそれが我々眼科専門医の毎日のメインの仕事だったりします。 今の目薬と言うのは非常に進化しているというか、良く効きます。特にドライアイや緑内障の点眼薬は20年くらい前と較べるとまるで「別世界」の様にクオリティが上がっているというのが実情です。 若い頃にはほとんどの方は健康でトラブルが無いことが多いのですが、年齢が進むと加速度的に色々と悪くなってくる臓器が目と言う組織でもあります。でも「あっ、自分はもう目は見えなくてもいいです。」という方はまずいませんので、結局段々と目薬のお世話になる方が増えてきます。 ここからが今日の本題なのですが、「加齢によってアイフレイルで目は色々と衰える×現代の目薬は非常に良く効く」の2つの要因によって、眼科医療の現場では「同時に複数の目薬が処方される」ことが増えてきています。4種類、5種類と言う様な多量の点眼が他院で処方されている例も実際によく見ます。1日に4回の点眼が3種類、1日に2回が2種類、1日に1回が1種類で合計17回も点眼しないといけない、なんていう冗談みたいな処方例もあります。 私はこういう場合に「こんなにたくさんは点せないですよね。実際には1日に何回点眼していますか?」とパッと質問をします。そうすると、「1日に4回点しているはずの目薬はよくて2回、1回と指定されているやつは大事かなと思ってこれはちゃんと1回、全部で合計で5、6回」くらいが大体のところです。 でもこれは当たり前の事と思います。 患者様は目薬を点すために生きているわけではない からです。 そういうこともあって、当院では処方する目薬は必要不可欠なものだけに極力絞っています。ほとんどの患者様は1種類か2種類くらいです。どうしても必要な薬があれば「1増1減」でやっぱり2種類を死守くらいのイメージでやっています。
2025.02.07
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さて当院では本日、画像鮮明化ソフトウェアの「ミエル フォー クライオ」を導入しました。 「ミエル」はもちろん「見える」の意味なので、ネーミングがオヤジっぽいですが、多分名前を付けたのが開発元の会社の偉いオジさんなんだと思います。自分もおじさんになったから良く分かるのですが、なんか年を取ると無性に「オヤジギャク」を言いたくなるものなんですね。(汗) このソフトウェアは、検査で撮影した様々な画像を特殊な処理で鮮明化することによって、診断能力の向上の側面支援となるものです。私は学会場の機械展示ブースでデモを見て、「これは間違いなく役立つ。患者様のためになる。」と確信し、すぐに購入したのでした。 このように撮った画像が非常に精細にクリアになります。↓ 使い方はとても簡単で、電子カルテに追加された「鮮明化」ボタンをポチっと押して、 鮮明化レベルを選ぶだけです。 このソフトウェアですが、糖尿病網膜症の重症度判定に特に劇的に効くという印象です。出血がはっきりしない眼底画像をこれにかけると、嘘みたいにはっきりと出血があるかないかが分かります。 当院ではこれからも、常に最新の検査機械やソフトウェアで武装しながら、大切な患者様にベストの眼科医療を提供できるように努力を重ねて参ります。
2025.06.13
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