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さて、「目の周りに塗るだけでそれがじわじわ滲みて目の中のかゆみが取れる」という魔法のような世界初の機序を持った、アレジオン眼瞼クリーム。 こちらが実際の製剤になります。 ノズルがめちゃ細いです。目の周りにちょっとだけ塗るものなので、あまりクリームが多く出過ぎないようにと言う配慮だと思います。日本ナンバーワンの眼科薬メーカーの参天製薬のお薬と言うのは、使いやすいようにいつも隅々まで細やかな配慮がされているんですね。 院長が寝る前に塗ってみました。実際にアレルギー持ちなのですが、次の日の朝の目のかゆみが明らかに少なくなっていました。これはやはり効能が期待できそうです。 このアレジオン眼瞼クリーム、専門的に言うと、瞼(まぶた)の皮膚を通過して目の玉(眼球)と白目(結膜)に届いてかゆみを取ってくれると言うものです。 ただこれを実際に製品化するには極めて高度な製剤技術が必要で、「薬を溶かす技術が世界一」の参天製薬だからこそ実現できた薬だろうと思います。おそらく他の後発メーカーには至難だろうと思いますし、参天製薬のレベルの高さに眼科専門医として改めて感嘆しました。 今のところ、発売は5月下旬と噂されています。実際に世に出る日が楽しみですね。
2024.05.14
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さて最近はスマホやタブレット端末で長時間目を酷使される方が激増しています。そしてその結果として近視の患者様が世界的に急増して大きな問題となっています。また特に受験戦争で幼い頃から眼をハードに使うことの多い東アジア(中国・韓国・日本)では明らかに近視の子供が多いことも知られています。 そしてこの近視の何が怖いかというと、 強度近視(具体的にはマイナス7D以上)になると加齢と共に加速度的に目の病気が増えることが統計的に明らかになっている からです。具体的には加齢黄斑変性や緑内障などです。そしてこれらの病気により世界中で将来の失明者が激増するのではないか?と心配されているのです。 失明は社会や医療経済に及ぼす影響が大きいので、社会全体として近視の進行を抑えることが非常に重要です。 そしてこの近視の進行抑制にはシステマティックレビューや大規模なコホート研究により、「間違いなく有効な方法」が実は既に明らかになっています。知りたいですよね。 それが何かと言うと、、、、、、 1日あたり120分以上の屋外活動をすること なのです。 屋外で太陽の光に当たること(光線曝露)によって近視の発症率が有意に低下することが証明されている んですね。 これはとても簡単で誰でも明日からできるやりかたです。なので、大人も子供もスマホやパソコンばかりせずに毎日2時間は外で活動するといいのです。是非覚えておいてくださいね。
2024.05.17
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さて今の世の中、目にアレルギー・かゆみを起こす原因と言うのは何かしら年中あるものです。 スギ・ヒノキ・イネ・ブタクサなどの花粉がどの季節でも飛んでいますし、中国からの黄砂や大気汚染物質のPM2.5 も目に症状を引き起こします。 そんなこんなで、最近は「年中かゆみ止めの目薬が欠かせない。」という患者様も増えてきています。ただ目薬を嫌がるお子様や、手が震えてなかなか目薬がちゃんと入らない高齢者の方もたくさんいらっしゃいます。 ここでちょっと余談なのですが、当院では白内障手術前に患者様が目薬を自分で点せるか実演して頂いています。看護師が「目薬、点せますか?」とお聞きすると、ほぼ100%の方が自信満々に「はい、大丈夫です。」とお答えになるのですが、実際にやってもらうとまともに出来ている方は半分もいません。そのくらい目薬を点すというのは難しいことなんですね。(笑) もちろん、点せない方にはその後正しい点眼方法を指導させていただいています。 そんな中、アレジオンLX点眼液と言う現在ナンバーワンのアレルギー点眼剤をクリームにしたものが近日発売されることになりました。なんと1日1回目の周りに塗ればそれが皮膚からジワーっと浸透して目のかゆみを抑えてくれるという、画期的な魔法のようなお薬です。 眼科専門医としての勘から言うと、これは滅茶苦茶売れそうな気がします。実際の製剤のサンプルを戴いたので、次回はその使用経験についてお話ししようと思います。(続く)
2024.05.10
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さて2012年の発売以来ドライアイ治療で大きな役割を果たし続けてきた名薬 ムコスタ点眼液 。 このお薬は元々は胃薬でそれを目薬に仕立てたものなのですが、なかなか溶けない・成分が安定しないという欠点があったようで、開発元の大塚製薬は製剤化に苦しみ抜いていました。そもそもは2010年位に発売予定だった記憶があるのですが、それがどんどんと延期され我々眼科業界の一部では「出る出る詐欺」とまで言われるくらいのお待たせ状況でした。(笑) そうしてようやく2012年に発売となったのですが、普通の点眼瓶(マルチドーズ製剤)で出すことが出来ず、1回きりの使い捨てタイプ(ユニットドーズ製剤)での登場となりました。 このタイプの製剤は毎日使うにはやや不便があるので、当然大塚製薬は製剤をより安定させて普通の点眼瓶タイプでの発売を目指していると2012年からずっと聞いていました。そして我々臨床の第一線に立つ眼科専門医もそれに強く期待していました。 ただ、時が流れても一向に実現せず、複数の情報源によると「チャレンジを続けているが、技術的に極めて困難で難しい。」とのことで、私は「あぁ、これはもう無理なんだろうな。」と半ば諦めていました。。。。 そんな中、今回不意に登場した参天製薬からの後発品(ジェネリック)は、何と平然と普通の点眼瓶タイプとして我々の前にその姿を現しました。! 日本有数の製薬会社である大塚製薬が、「恋焦がれ全力を尽くし10年の歳月をかけても達成できなかった幻の姿」で忽然(こつぜん)と出てきたのです。 中身が白濁液なのは先発品のムコスタ点眼液と一緒ですが、 粒子がより細かくなっているのかな?、点眼後の霧視(むし:霧がかかったようにぼやけて見える症状)がより軽くなっているようにも個人的には思いました。 眼科専門メーカーである参天製薬は元々、「薬を溶かして目薬に仕立て上げる能力」が世界一 と言われています。今回の「レバミピド懸濁性点眼液2%参天」の登場は、その技術力の異次元の高さと巧みさを改めてはっきりと満天下に示す象徴的な事例となりました。 ちなみにここで一言補足しておくと、これは大塚製薬の技術力が低いという事では全くありません。大塚製薬は抗精神病薬「レキサルティ」などでは世界トップクラスの戦闘力を誇る、日本を代表する製薬メーカーだからです。そうではなく、眼科専業で命を賭して日々目薬作りに邁進している参天製薬があまりにも特異的に凄い、というだけのことです。(笑) ま、いずれにせよ、秋になればこの待望の「参天版ムコスタ点眼液」が市場に登場してきます。実際に点眼した感触も非常にいいですし、眼科専門医としての私の直感では馬鹿売れしそうな気がします。実際の発売が今から楽しみですね。♪
2023.07.14
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さて今年2023年のおそらく9月以降くらい(現時点ではまだ決まっていない)のことになるのですが、レバミピド懸濁性(けんだくせい)点眼液2%「参天」が発売になります。 これは2012年に大塚製薬から発売されたドライアイ治療薬であるムコスタ点眼液の後発品(ジェネリック)となります。発売後10年以上が経過しすべての特許が切れたので他のメーカーが安価な後発品を出せるようになったんですね。 さて先発品のムコスタ点眼液ですが、作用としては結膜(白目)の杯細胞というものを増加させます。そしてこの杯細胞は「分泌型ムチン」というネバネバ物質を出すので、結果として目の表面で働く分泌型ムチンが増加するということになります。これによって涙の質と量が改善されます。 更にドライアイには炎症が深く関与しているのですが、元々が胃薬であるムコスタには炎症を抑える作用もあります。この「杯細胞の増加&抗炎症作用」の2つの力で、この10年間ドライアイ治療のキープレーヤ的な存在として大活躍してきました。 そして今回、このムコスタ点眼液の後発品がひっそりと参天製薬から発売されることになったのですが、そこには、 我々全眼科医を震撼させる「衝撃の事実」 が隠されていたのでした。。。。(続く)
2023.06.22
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さて当院では新型白内障手術機械のインフィニティを購入したところですが、今日は製造販売元の日本アルコン社のサージカル担当の方にお願いして、A-Vit(エービット:前部硝子体切除)の勉強会をしました。 このA-Vitというのは、白内障手術時に後嚢破損(こうのうはそん)という合併症が起こった場合にトラブル処理に使う機械です。登場頻度は極めて低いのですが、だからこそ事前の入念な準備が必要なんですね。 本物のセットを開けて、インフィニティに接続して使用してみます。 このインフィニティには、アキュラスという硝子体(しょうしたい:目の奥のドロドロした物質)切除用の本格的で切れ味の良いカッターをつなぐことが出来ます。しかも25Gという極めて細い最新型の物が使えます。傷口を拡大せずに小さな切開創から使用できるので患者様の負担も軽いんですね。 ただ、インフィニティで唯一問題なのは、A-Vit使用時に毎回「Vitrectomy Cut I/A」モードを選び直さなくてはならないことです。元々の設定が「Vitrectomy I/A Cut」モードになっており、これを修正できないんですね。 A-Vit時には、必ずCut→I/Aモードを最初に使用する必要があります。I/A→Cutモードを先に使うと網膜はく離などの重い合併症に繋がることがあるので要注意なんですね。 素晴らしいマシンであるインフィニティがこんな単純なおかしな設定を修正できないというのは不思議な気がするのですが、サージカル担当の方によると「アメリカでは専門が別れているので、白内障手術専門医は本当に白内障しかしない。トラブルが発生して追加のA-Vitが必要になるとそのまま硝子体手術専門医に送るシステムになっておりあまりA-Vitを使わないので、多分そのせいで細かい設定に大らかで気にならないのでしょう。」ということでした。 うーんなるほど、機械を通してその国の医療システムが透けて見えると言うことなんですね。とっても勉強になりました。
2011.10.13
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さて世の中には、「寝る前には、決して目薬を点してはいけない」 という昔から語り継がれている伝説があります。 今でも特にご高齢の患者様では信じている方が多く、「夜、寝る前に目薬をすると、寝ている間に急死することがあると昔聞いた。あぁ、恐ろしい。絶対に点さない。」と診察室で言われることもあります。 またこれの違うバリエーションでは、目の病気が悪化したときに「もしかして、寝る前に目薬をしたのでそれが悪かったのでしょうか?」と真顔で訊かれることも良くあります。 最初に結論を申し上げると、「寝る5~10分前までに目薬をすれば何の問題もありません。寝る直前だと、涙の流れが停滞することにより成分によっては目への刺激が長引くことがあるので望ましくありません。」 ということになります。 では、一体どうしてこのような不思議な伝説が生まれたのでしょうか? それは、大昔に良く売れていた 「ある目薬」 が引き起こしたことだったのです。 具体的には、収れん・消炎作用がある 「サンチンク点眼液」 です。 この目薬には「硫酸亜鉛」という強い成分が入っていて収れん作用があるので、充血が良く取れる・目が白く見えるということで人気があり、大昔には良く病院で処方されていました。ただ硫酸亜鉛は刺激が持続する可能性があるので、「決して寝る前に点してはいけない。」と添付文書に書かれていたのです。でも当時はとても人気のある目薬だったので、きっと多くの副作用が出たのでしょう。そして上記の伝説が生まれたという事です。 今では硫酸亜鉛の様なリスクのあるお薬を使わなくても、もっと安全に充血を改善することが出来る目薬がたくさん出たので、サンチンクは「過去のお薬」となりました。そしてついに今年2023年、販売中止となりました。 「1つの時代が終わり、伝説だけが残った。」 ということですね。
2023.01.13
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さて当院は開業して15年が経過しているわけですが、それに伴って経年劣化で色々とボロが出てきております。 そういったものは見つけ次第迅速にメンテナンスを入れているのですが、その一環として先日院内のボイラー設備を新品に交換しました。 今後もあらゆる保守・点検を怠らず、日々最高の状態を保って皆様の診察に当たって参ります。
2024.04.24
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我々人間は外界からの情報の80%を目から手に入れていると言われており、だからこそ目はとても大切なわけですが、その目の真ん中に開いているのが瞳孔です。この瞳孔なんですが、動物によって形が違うことは割りと知られていません。 (眼科セカンドオピニオン 銀海舎 P53より) 我々人間が真ん丸なのは皆様ご存知でしょうが、ヒキガエルはなんとハート型なんですね。 ネットを巡回していると、なんと 「ハート型の瞳孔を持つ猫」 もいました!。 ただ残念ながらこの猫は「エイプリルフール用の合成写真」だったようなのですが(私は本物かと思ってかなり驚いていたのですが)、 実は 人間でも「ハート型の瞳孔」を持つ方が存在する のです。 これはある患者様に検査のために散瞳薬という目薬を入れたところなのですが、上方の虹彩(茶目)の一部がその後ろの水晶体とくっついている関係で、偶然「ハート型」になっています。 患者様に「目がハート型になっていますよ」とこの写真をお見せしたら大変喜んで頂いたのですが、とっても珍しいものが見れて私も嬉しかったです。こういった様々な楽しいことがあるので私は外来診療が大好き なんですね。
2009.08.04
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さて2010年12月の発売以来、今や日本人の国民病とまで言われる「ドライアイ」の治療を革命的に進歩させた参天製薬の名薬にして、発売7年が経過した今もベストセラー街道をばく進する、ジクアス点眼液。 このジクアス点眼液はその薬理作用上、目の細胞からの水分とムチンという物質の分泌を促進するので、点眼後に涙の量を増やしてくれます。そしてその「うるおい効果」が点眼後約1時間も持続するという、画期的で優れものの目薬です。 その為、「ジクアスが無いともう生活が成り立たない。」と仰られる患者様もたくさんいらっしゃるくらいに大人気のお薬なのですが、ベストセラーで売り上げが多い(2018年3月期で見て、1年間で128億円)が故に、逆にクレームが目立つ点眼薬でもあります。 そしてそのクレームの中で断トツに多いのが、 ジクアスを点眼すると、その後で半透明のネバネバした目やにがたくさん出てきて気持ち悪い というものです。この「ジクアス点眼後に目やにが出る」という患者様からの訴えは非常に多く、私が1週間外来をしていると、最低でも1、2回は聞きます。 これは一体何なのでしょうか? ジクアスの何か危険な副作用なのでしょうか? 今日はこの「ジクアス点眼後の目やに」の正体について、私が眼科専門医として分かりやすく回答しましょう。 先ほども書いたように、ジクアスを点眼すると目の表面からムチンという物質が放出されます。これは納豆の様にネバネバしたものなのですが、この ジクアスの効果で出てきたムチンが、目の表面の常在菌をトラップしてトリモチのように絡めとって「目やに」として出てくる のです。 つまり、 ジクアス点眼後の目やには、お薬が効いている証拠 でもあるということなんですね。 ちなみに、このジクアス点眼後の目やには、無構造でバクテリアなどをトラップしたものであり、炎症細胞はほとんど認められない、いわば無害なものであることが専門的な研究によって既に分かっています。 以上をまとめると、 ジクアス点眼後の目やにに対してはそれほど神経質になる必要はない と思います。ただドライアイ治療ではジクアス以外にも有力な選択肢はたくさんありますので、どうしても不快で気になる場合には違う点眼薬に変えればそれで済む話でもあります。 なので、どうしても気になる方は、是非気軽に次回の外来で私達眼科専門医に相談してくださいね。
2018.06.11
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さて眼科と言うのは、ほとんどすべての検査を自前で行わなければならないという特色のある診療科です。ちょっと特殊なんですね。 そのために、院内にはぎっしりと様々な機械が立ち並んでおり、日々しっかりとメインテナンスをしながら皆様の来院をお待ちしています。 また機械が日進月歩で進化していくこともあり、時代の変化に対応し続けるためにマシンを最新型に買い替えるということも頻繁です。 ただ、そんな中で超音波画像診断装置(エコー)だけは大きく進化していないことと、開業時の15年前に買ったものがずっと元気で壊れずにいてくれていたので、そのまま買い替えずに今日に至っておりました。 ただ、流石に15年が経過すると最新機種と較べると画像の精度が劣るということもあり、ついに新機種に買い替えることとなりました。 さよなら、US-4000。長い間元気にトラブルもなく働いてくれてありがとうございました。
2024.06.03
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お料理、特に揚げ物などをしていて天ぷら油が眼に入りかけたことはありませんか?高温の油が眼に入ったらどうなってしまうのかちょっと心配ですよね。 ところが人間というのは良く出来たもので、現実にはなかなか油が眼に入ることはありません。危険を察知して瞬間的に眼を閉じるので、「眼に入った!」と思っても実際はまぶたに油が当たっただけということが多いんですね。 先日もある患者様が「天ぷら作っていたら揚げ油が目に入った。滅茶苦茶痛いので飛んできた」といって来院されました。私が「意外と本当に眼に油が入ることはないんですけどね。良く診せて頂きましょう」と拝見すると、、、、、、 油、本当に眼に入っていました。ちょっと珍しいですね。上の写真で緑色に丸く変色している部分がそうなのですが、高温の油が当たって黒目(角膜)に炎症・点状の細かな密度の高い傷に加えて一部上皮欠損を起こしています。黒目は非常に敏感な部分なので、このくらいの傷でもかなり強い痛みが出ることがあります。 目薬と眼軟膏を処方して本日再診して頂いたのですが、 ほとんど治っていて私もホッとしました。 このくらいの傷だったらすぐ治るには治る訳ですが、かなり強い痛みが出るのは事実なので、皆様も料理中には油が目に入らないように十分注意してくださいね。
2009.10.19
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目の中に入った異物や汚れを洗い流すために使う、洗眼薬という市販薬があります。小林製薬の「アイボン」がその代表的な商品です。 私も使ったことがありますが、アイボンで目を洗うとすっきりして気持ちがいいんですね。目にゴミが入ったとき・花粉症で眼が痒くてどうしようもない時などに大変重宝する良い薬だと思います。 ところがこのアイボン、使っているうちにその爽快感・スッキリ感が癖になってしまい、1日に何十回も使用している 「アイボン中毒、略してボン中」 とでも言えるような状態の方がいるんですね。 先日、「目の調子が悪くてアイボンを1日に20~30回くらいしていたのに、治らないので来た」という患者様が来院されました。目を拝見すると、 黒目(角膜)にたくさんの傷(上の写真で水色に濃く染まっている部分)が入ってしまっています。 これはアイボンのしすぎで、ムチン層という黒目の表面を守って涙の状態を安定させる大事な物質が洗い流されてしまったことによるものです。例えて言うなら、 アカスリし過ぎて皮膚がズル剥けて真っ赤っ赤 というような状態ですね。 また、我々の涙には「ばい菌をやっつける天然成分」が元々入っています。アイボンをしすぎるとこの大切な天然成分も流れてしまい、逆にばい菌への抵抗力が減ってしまうこともあるので注意が必要です。 さて、この患者様にはアイボンを中止し点眼薬を処方したところ、1週間後には、 症状はほぼ改善しました。 アイボンは良いお薬ですが、使いすぎるとこのようにかえって逆効果になることもあります。なので、アイボンを使うときには用法・用量(1日3~6回)を必ず守るようにして下さいね。
2010.05.08
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さて当院では開院時からドイツのカールツァイス社のルメラという手術顕微鏡を導入しています。15年前には我々眼科専門医の間で「最近出たツァイスのルメラ、ヤバいくらいに良く見えるよ。」と話題騒然となったニューマシンで、当時目が飛び出るほどに非常に高額だったものの、頑張って買ったのでした。 それから長い時が流れましたが、このルメラは今でも現行機種として販売が継続されています。「時を超える力のある名機だった」ということですね。 さてそんなルメラですが、最近少しだけ手術時の見え方に違和感があったので、カールツァイスの技術の方に出張して頂いて見て貰いました。 その結果、顕微鏡内部のハーフミラーというものが少しズレていたとのことで直して頂きました。同時にすべての光学系のクリーニングもして貰いました。 当院ではこれからも設備投資と機器のメンテナンスにお金を惜しまず、常に万全の状態を保って大切な患者様の診療に当たって参ります。
2024.06.25
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さて2010年12月の発売以来、今や日本人の国民病とまで言われる「ドライアイ」の治療を革命的に進歩させた参天製薬の名薬、ジクアス点眼液。 このジクアス点眼液は従来型のヒアルロン酸の点眼薬(商品名で言うとヒアレインやティアバランス)よりも明らかに効果が強い、目の表面の傷を改善する力が高い、ドライアイ分野では15年振りの待望の大型新薬だったわけですが、発売後の売上高の順調な伸長(現在年間75億円)がジクアスが非凡なお薬であったことを明白に証明しています。 ところで ジクアス はその薬理作用上、目の細胞からの水分とムチンという物質の分泌を促進するので、点眼後に目を潤す効果が強いお薬です。そのため多くの方が苦しんでいる [ソフトコンタクトレンズ装用中の目の渇き] に抜群な効果を発揮する のですが、残念ながら今まではソフトコンタクトレンズの上からは「原則として」点眼することが出来ませんでした。 それはジクアスが防腐剤としてベンザルコニウム塩化物というものを使用していたからです。このベンザルコニウム塩化物(我々の業界では「塩ベコ(えんべこ)」と略す)は非常に防腐剤としての効力が強い反面、角膜(くろめ)の表面を荒らしたり、ソフトコンタクトレンズを劣化させたりするという副作用があったのです。ただこの塩ベコを使わずに目薬を作るのには非常に高い技術力と費用が必要なので、特に安いジェネリック医薬品には大量で高濃度の塩ベコがべっとりと含まれているのが実情です。 さて今回ジクアス点眼液は製品改良により、 この悪の元凶である「塩ベコ」を取り除くことに成功 しました。 それによって、 ソフトコンタクトレンズの上からも安全に点眼が出来るようになりました。 ジクアス×ソフトコンタクトレンズのコラボレーションは非常に目が潤いますので、コンタクトレンズ使用中のドライアイ患者様にとっての大きな福音と思います。 素晴らしい製品改良 ですね。 我々眼科専門医が世界トップレベルの眼科医療を提供できているのは、この参天製薬に代表される日本の点眼薬メーカーの高い技術力に負うところが大きい のです。本当に感謝・感謝ですね。
2015.12.21
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まだまだ蒸し暑い時期が続きますね。草刈り等の農作業も多く、「目にゴミが入った」などの訴えで受診される患者様が多い季節です。 さて、この目の中なのですが、実に様々な異物が入り込みます。今日はどのようなものが入るのか、いくつかその内の珍しい事例を見て頂きましょう。 ↑ この患者様は以前も紹介したことがありますが、農作業中に田んぼで転んでその時に目にヒルが食い付いてしまいました。非常にすばしっこく逃げるので摘出するのが大変でした。 ↑ この患者様はみかんの摘果作業中に目にゴミが入り「洗っても何してもどうしても取れない」との訴えで受診されました。それもそのはず、蟻が目から振り落とされないように結膜(白目)に足を深く刺してしがみついたまま絶命していました。このありんこも引っぺがすのが大変でした。 ↑ この患者様は、「まぶたの裏で何かがもぞもぞ動いている!」との訴えで来院されました。上まぶたをめくって調べて見ると、ショウジョウバエと思われる2ミリ大の虫が目の中で既に絶命していました。 このように、目の中と言うのは様々な異物が入り込みます。自力ではなかなか取れないもの、取るのが危険なものもあります。ですので、「あれ?何か目にゴミが入ったぞ。」という時には、是非気軽にお近くの眼科専門医を受診するようにしてくださいね。
2012.09.01
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さて、いよいよその発売が迫ってきたドライアイの大型新薬、ムコスタ点眼液ですが、先日ようやくサンプルを戴けたので実際に試してみました。 ユニットドーズ製剤と言って、使いきりタイプの点眼剤です。早速開けてみましょう! おぉ、白色の濁り液です。うーん、これは溶けにくくてお薬の成分を目薬に仕上げるのに苦労したでしょうね。。。大塚製薬の開発者の方、お疲れ様でした。では早速点眼してみます。大型新薬ですので、院長の私はもちろんスタッフの皆も挑戦してくれました。その感想は、、、、 点眼した後、1分くらい目がかすんで見えない。 鼻から口にかけてかなりの苦味が来る。 あたりの、ネガティブな意見が最初に多く出ました。 添付文書にも苦味が多いということは書いてありましたし、ホリエモンではないですが、まあ「想定の範囲内」ですね。(笑) ただ、点眼後しばらく経つと、 なんだか目がスッキリした。 目がしっとりと潤ってきた。 目が暖かい感じで調子が良くなった。 など、やはりムコスタ点眼液のパワーを実感させるポジティブな感想が多く出ました。ムコスタ点眼液は、対照薬となった参天製薬の歴史的名薬の0.1%ヒアレイン点眼液に対して有意差を持ってドライアイ症状を改善するというデータが出ていますし、やはり力はありますね。 私の個人的な感想を言うと、「点眼直後のかすみや苦味は確かに弱点だが、それを上回る効果は間違いなくある! 少なくとも重症のドライアイに苦しむ患者様はトライする価値のある目薬である。」というものでした。 またこのムコスタ点眼液は、先行して発売されている同じ「ムチン産生促進薬」のジクアス点眼液とは作用の仕方が違うとの事なんですね。 添付文書には色々と難しいことが書いてあるのですが、ムコスタ点眼液が実際にどういう理屈で効くのかはまだ分かっていないとの事です。 ただ、ムコスタはジクアスの作用点であるP2Y2受容体には影響を及ぼさないことは分かっており、もしかすると、ジクアス点眼液とこのムコスタ点眼液を併用すると1+1=2のように、ドライアイにもっと効くのではないか?という期待も膨らんでしまいます。 いずれにしても、近い将来のムコスタ点眼液の登場が本当に待ち遠しいですね。
2011.11.09
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さて当院は開院から10年以上が経過しました。クリニックの外壁には天然の焼杉の板を全面に張り付けていたのですが、一部が腐食したり、焼きが剥げてまだら模様になってしまっていました。そのため、しばらく前に足場を組んで焼杉の全面的な張替えを行いました。 その結果、新築時の輝きを取り戻すことが出来ました。また併せて、院内の細かい不具合もすべて徹底的に修繕をしました。 ちなみに当院は「黒×オレンジ」の配色でデザインされているのですが、10年以上前にはこういった外観の医療機関はほぼ皆無でした。 ではなぜこういうファサード(建物の正面部分)にしたのかというと、クリニックを開くにあたって自分の中に、「いかにも病院と言うイメージの見た目には絶対にしたくない。むしろ美容院かカフェのような仕上がりにして、患者様が気軽に気楽にリラックスして受診できるような建物にしたい。」という強い気持ちがあったからです。 そして建築家の先生と議論を重ねる中で、私が「先生、クリニックの外観で絶対に使わない色は何でしょうか?」と質問したところ、「うーん、それは、死をイメージする黒と、後は血をイメージする赤でしょうね。」との返答だったので、「なるほど、じゃあ、逆にウチはそれで行きましょう。」ということになったのです。 ただ、当院が開業している愛媛県八幡浜市は全国でも有数のミカンの産地ということもあり、赤はみかんオレンジに変更し、結局は下の様な「黒×オレンジ」のデザインが完成したのでした。 開院当時は「斬新な見た目ですね。」と言われることも多かったのですが、10年以上が経過し、今では街の皆様に認知され風景に溶け込みました。これからもクリニックの外観も、そして肝心の中身も、常にブラッシュアップし適切なメインテナンスを加えながら、「次の10年」も皆様に信頼され続ける存在であるように努力を続けていく所存です。
2020.10.12
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さて、「日本発、世界初」の2つのドライアイ新薬、ジクアス点眼液とムコスタ点眼液が発売されて1年以上が経過しました。 この2剤にはそれぞれに従来型のドライアイ治療薬であるヒアルロン酸ナトリウム(代表は参天製薬のヒアレイン点眼液)を間違いなく超える長所があるわけですが、なかでも大塚製薬が社運を賭けて開発した「ムコスタ点眼液」の出来の良さ・薬効の高さは際立っています。 ところがクスリの出来の良さとは裏腹に売上はズタボロに低迷し、大塚製薬の担当MRの方々はプレッシャーから自社のベストセラー胃薬の「ムコスタ錠」を片時も手放せない、青息吐息の日々であるとの噂も聞いています。(笑) 今日からシリーズで、この「ムコスタ点眼液」の素晴らしさ、そしてそれなのにどうしてこんなに売れないのかについて、様々な角度から考えてみたいと思います。 ムコスタ点眼液の悲劇、その最大の理由は「発売が遅れたこと」でした。ムコスタは後でも書きますが元々は胃薬でした。ところが大塚製薬はその成分を溶かして目薬に仕立て上げるのに苦しみ抜き、実際の発売は遅れに遅れました。それは一部で、 「出る出る詐欺」 とまで言われるほどでした。 そしてムコスタ点眼液の発売が遅れる一方で、ライバルの参天製薬からは、 世界初のP2Y2受容体作動薬で、目の水分分泌・ムチン分泌を促進する、ジクアス点眼液が先行して発売されました。 このジクアス点眼液は、それまでのドライアイの標準治療薬であったヒアレイン点眼液を確実に着実に上回る薬効を持っており、この分野では待ちに待たれていた15年ぶりの大型新薬だったこともあって、あっという間にベストセラーとなりました。 また製造販売元の参天製薬は「眼科一筋」の製薬会社で、眼科分野では日本でナンバーワンの製薬会社であり、MR(医薬品の情報を医師に伝える営業マン)さんの数が多くて宣伝体勢が充実していたこともそれを後押しする形となりました。 つまりムコスタ点眼液は、発売前から強力なライバルに圧倒的に先行されるという過酷な状況にあったわけです。しかし、ムコスタ点眼液の悲劇はこれだけに留まりませんでした。(続く)
2013.03.07
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さて今日も「名薬、ムコスタ点眼液の悲劇」シリーズの続きです。 ムコスタ点眼液の作用を専門的に言うと、まずは結膜(白目)の杯細胞を増加させます。そしてこの杯細胞は「分泌型ムチン」というものを出すので、結果として分泌型ムチンが増加するということになります。これによって、涙の質と量が劇的に改善されるのです。更にドライアイには炎症が深く関与しているのですが、ムコスタには炎症を抑える作用もあります。 つまり、 杯細胞の増加&抗炎症作用の2つの力 があるので、ムコスタ点眼液はドライアイに抜群に効くのです。 今日はここでムコスタ点眼液がどれほど眼の表面の炎症を取り、ツルツル綺麗にしてくれるのかの実例を1つ見ていただきましょう。 色々な原因で角膜(黒目)に糸状の付着物が付着してしまい、強い異物感や痛み、充血などを引き起こす「糸状角膜炎」という病気があります。 これはなかなか難治性の病気で目薬で治す事が難しく、治療は、 ピンセットや綿棒で糸状の付着物を取るくらいしかありませんでした。当然すぐに再発もしますし、痛みなどの自覚症状が強いために多くの患者様が苦しんできました。 さて、上の写真の患者様はこれまでも強力に炎症を抑えるステロイドを筆頭に様々な目薬を処方した上で2週間おきに糸状物を取り除く治療をしていたのですが、ある時試しにムコスタ点眼液を処方したところ、 2週間後の再診時には、長年苦しんでいた糸状角膜炎(filamentosa)が嘘のように全て消えてしまっていました。! 患者様も「今まで目がしょぼしょぼし過ぎてほとんど新聞が読めなかったのに、ある日読めそうな気がしてそれから日毎に紙面が読みやすくなりました。感動しています。」と大喜びでした。 私も大変驚きましたが、その後他の同じ病気の患者様にもムコスタ点眼液を処方してみたところ、ほとんどの方が劇的に症状が改善しました。 これがムコ点のパワー なんですね。「効く人には劇的に効く。患者様自身が症状の改善をダイレクトにはっきりと実感できる」、ムコスタ点眼液は本当に素晴らしいクスリだと感じています。(続く)
2013.03.18
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しばらく前のヤフーのトップニュースに、 視力矯正するレーシック手術が激減! その真相を探ってみると、、、 と言う興味深い記事がありました。 この記事によると、 平成20年に45万件施行されていたのが、平成26年にはなんと5万件!と9分の1にまで落ち込んだ ことが指摘されています。 レーシック手術の件数が激減した理由については以前から色々と考察されています。一般的に良く言われていることを列挙すると、 1. 銀座眼科という東京都中央区にあったレーシック専門クリニックで多くの方が角膜感染症を発症すると言う「集団感染事件」 があり、これがマスコミで大々的に報じられたことによって「レーシックはどうやら怖い手術らしい」とのイメージが国民の間に急速に広まった。 2. その後消費者庁から レーシック手術に関する注意喚起 の文書が出され、それによって「やっぱり凄く危険な手術なんだ。」という認識が国民の間で一般的となった。 3. この数年でソフトコンタクトレンズの技術革新が急速に進み、シリコンハイドロゲルレンズという「ほとんど裸眼と一緒」と言って良い位に角膜に多くの酸素を供給してくれる安全で快適なレンズが普及したことによって、レーシック手術を受けなくても目の乾燥感無く良好な矯正視力を得ることが出来るようになった。 などが挙げられます。 それ以外にもネットで良く言われている言説に、 「レーシック手術が安全だと力説している医者が、何故か自分自身はメガネをかけている。その理由はきっとレーシックに色々な危険性があるからだろう。本当に安全なら自分もとっくにレーシックを受けているはずだ。」 と言うような、 「素朴だがなかなか鋭くて説得力のある意見」 もあります。(笑) そして上記の理由が相乗効果を上げて今の「レーシック手術冬の時代」を迎えているのですが、私が考えるのにはもう1つ大きな理由があります。 それは、 日本の医療は元々総合力で世界1位(世界保健機関(WHO)と経済協力開発機構(OECD)の報告書による) であり、 しかも国民皆保険制度の下で1割~3割の負担額でそれを享受できると言う「夢のような状況」 なので、レーシック手術のような負担額10割の自由診療が広まるハードルが極めて高いと言うことです。 レーシック手術自体は極めて洗練され安全でかつ患者様満足度の高い良い手術なのですが、負担額が最高でも3割の保険診療の3倍以上のクオリティがあるのか?と言われると、「うーん、それはどうかな?」ということになってしまっているのではないかと思うのです。 つまり、ここ日本でレーシック手術が激減したのは、そもそもの「日本の保険医療制度の実力のとてつもない、尋常でない高さ」 が影響しているということなんですね。
2016.09.08
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「花粉症の時期も終わったはずなのに何故か目がかゆい!。変だなあ。おかしいなあ。」と言いながら受診される患者様が今年も最近になって激増しています。 おかしいことは一つもありません。実は今は「世界3大花粉症」の一つ、「カモガヤ花粉症」のピークの時期なのです。その潜在患者様は膨大な数に上るのですが、2~3月の有名な「スギ花粉症」の時とは違って何故かテレビや新聞などのマスコミでもほとんど取り上げられないため、花粉症と知らずにじっと我慢している方が多いのが実情です。 このカモガヤというのは別名「オーチャードグラス」と呼ばれ、明治の初期に牧草として日本(北海道)に輸入されました。そして日本の気候に合っていたため、いつの間にか全国に野生化して広がったイネ科の植物です。 今の時期に「目がかゆい、鼻がムズムズする」という症状が出る方は、繁茂度と花粉飛散量がダントツのこの「カモガヤ花粉症」の可能性が高いです。オオアワガエリ、ハルガヤなどのアレルギーの場合もありますが、いずれもカモガヤと同じイネ科の植物です。 抗アレルギーの目薬・内服薬で症状は速やかに軽快することがほとんどですので、思い当たる方は是非気軽にお近くの眼科専門医を受診して下さいね。
2012.05.25
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当院では現在、日本アルコン社の「インフィニティ」という白内障手術装置を使用して皆様の手術を施行しています。 このインフィニティは、白内障手術機械の歴史上最も多く売れ、現在世界で最も多く使用されているベストセラーマシンです。発売は2003年と古く既にモデル末期なのですが、この9年間続々と新機能が搭載され、絶え間なくアップグレードされてきたことにより未だに高い戦闘力を誇っています。その最大の特徴は、 通常の白内障手術機械が、水晶体を削るための超音波が縦にしか出ないのに対して、このインフィニティは横にも出るということです。 そして横に出る超音波というのは、縦に較べて効率が良い上に目へのダメージが少ないのです。ただ、横発振だけでは機械が詰まったりすることもあったのですが、 数年前にOzil IP(オジールアイピー)と言って、横発振だけでは無理な場合に必要に応じて縦発振を入れることが出来るようになり、その欠点もほぼ解消しました。 私がクリニックを開業させて戴いている愛媛県八幡浜市は、高齢化率が極めて高く、そのために白内障が非常に進行した患者様が多い地域です。そういった進行した「固い核の白内障」に対してはこのOzil IPを搭載したインフィニティが他社のマシンに較べて相対的に優れていることもあり、 現在御機嫌で稼働中なのです。 このインフィニティ、発売後9年が経過し、その間に欠点・弱点を一つずつ潰してきたためにとにかく完成度が高いです。良く「輸入車買うなら、熟成度の高いモデル末期を買え!」みたいな話がありますが、このインフィニティも全く同じ状況です。そしてインフィニティの製造販売元の日本アルコン社の素晴らしいところは、常に開発・進歩の手を緩めないことです。 白内障手術では、IA(アイエー)と言って、水晶体の皮質という周辺部分を取る手技があるのですが、これには専用のIAチップという道具を使います。このIA中というのは、我々白内障手術専門医が最も恐れている合併症の破嚢(水晶体の袋が破れること)が割と起こりやすい時間帯であり、非常に神経を使います。 今回この大切なIAに関して、日本アルコン社から画期的な新チップが発売されました。 この新型IAチップは、先端が従来型の金属製ではなく柔らかいポリマー素材で出来ています。そして、チップ先端で眼内レンズを移動したり回転させたりすることがスムーズに行えるような表面処理がされています。また、スリーブを確実にセットできるように設計されてもいます。 実際に使用してみてすぐに感じたのは、「とにかく前房(目の中)が安定している」ということでした。スリーブのセットが確実で隙間がないことが影響しているのでしょうか?、後嚢(水晶体の袋の底面)がピシッと安定していて自信を持ってフットペダルを踏めます。 またチップ先端の表面処理も効いています。眼内レンズを思ったように躍らせて粘弾性物質(手術時に目の中を保護しているヒアルロン酸製剤)を快適に安全に除去できます。 逆に欠点としては性能が高くて吸引力が強いので従来型のIAに較べると5センチほどボトルを上げなくてはならないことと、完全ディスポで1本1500円(定価)するということですが、これは一回使って見ればその価値・凄さはすぐに分かると思いますし、当院でも是非採用したいと願っています。そして、全国のインフィニティユーザーの先生方にも是非一度お試し戴きたいと考えています。
2012.09.20
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義眼の方の目の中はどうなっているんですか? と言う質問を患者様から頂きました。 義眼は怪我や病気などで眼球を摘出せざるを得なかったり眼球の中身を取る手術をした場合に、 眼球があるように見せるために入れる扁平な楕円形のもの で合成樹脂で作られています。ほとんどは反対側の元気な目に合わせて色や形を整えて1つ1つオーダーメイドで作ります。 それでは実際に見てみましょう。 非常に綺麗に義眼が入っていますね。 これを外すと、、、、、 中は空洞 になっています。この空洞(結膜嚢:けつまくのう)の状態に合わせて1人1人の患者様にぴったりの義眼を作っているので、パッと見では義眼と分からないことも多いくらいなんですね。
2016.07.15
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さてここからは「眼科診療アップデートセミナー2011 in 京都」で勉強した中で、特に印象に残ったことを自分のメモ代わりに簡潔に書いていきます。 セミナーでは角膜移植に関する講義が複数あったのですが、この中では、「角膜移植は全層移植から、悪い部分だけを交換するパーツ移植の時代になった」、という話が印象的でした。 角膜移植というのは長い間、角膜全部を入れ替えるPKP(ピーケーピー)と言うやり方が一般的だったのですが、このやり方には、術後の乱視が強い、縫った部分からばい菌に感染することがある、拒絶反応が強い、移植した角膜が長持ちしにくい、などの欠点がありました。 それに対して最近では、角膜の表面側が悪い場合には輪部移植やDALK(ダルク)、角膜の裏側が悪い場合にはDSAEK(ディーセック)などというように、「悪い部分だけを取り替える」パーツ移植が出来るようになってきているのです。その中でも特にDSAEKが有望な手術法として広まろうとしています。 このDSAEKは、角膜内皮(+後部実質)という角膜の裏側の部分だけを入れ替えるもので、縫わなくて済むので乱視が少なく術後早期から視力が出る、感染が少ない、などの大きな利点があります。更にこのDSAEK、以前よりも術式が改良されてきており、かなり魅力的な手術になってきていることが実感できました。 眼科の手術と言うのは常に少しずつ進歩しています。それは角膜分野でも例外ではないんですね。
2011.03.18
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さて私は2018年4月に第122回日本眼科学会総会(日眼:にちがん)に参加してきました。この春の日眼と秋の日本臨床眼科学会(臨眼:りんがん)は、我々眼科専門医にとっては一種のお祭りの様なものです。その理由なのですが、学会と言うのは年中たくさん開催されているものの、この2つは特に参加者が多く、それを反映して様々な楽しいイベントや宴が開催されたり、機械展示場が広くて多くの新しい検査・手術機械に実際に触れることが出来るからです。 今日の日記は、自分が「あっ、これめちゃ欲しい。」と思った、個人的な物欲がスパークしたものを備忘録的に残しておくものです。 まず一番いいと思ったのが、ドイツのカールツァイス社の最新型の眼底カメラのCLARUS 500。 このカメラは画角は133度しかないのですが、同時に複数枚の写真を撮ってそれを瞬時にコンピューターで繋げることによって非常に広い範囲の眼底を一度にバンとチェックすることが出来ます。当院では既に約3年前にこのカールツァイスの新型カメラのライバルとなる イギリスのオプトス社のオプトスデイトナ (画角は200度と非常に広くそこが大きな長所) というマシンを買ってしまっているので、ちょっと買い替えるという訳にはいかない(オプトスも凄く高額だったし、減価償却も全然終わっていない)のですが、このツァイスのマシンは写真の色調が美しくて自然なのがとても魅力的だな、と思いました。涎がタラタラと出ましたね。。。ちなみにブースにいらっしゃった社員の方によるとお値段は、「、、、ま、十分に1本は御用意頂かないと、、、」とのことでした。くー、欲しいけど結構イクなあ、、、 痺れますね。。。 後は、自分は日々の診療で日の丸国産メーカーであるタカギセイコー社の細隙灯顕微鏡(さいげきとうけんびきょう)を気に入っていて10年使い続けているのですが、その顕微鏡を設置しているスライディングテーブルに薄型でクールでカッコいい、更に可動域も広がっているというナイスな新型が出ていて、これもかなり欲しいなと思いました。 このように、 学会と言うのは「行くと欲しいものだらけである意味危険な場所」 でもあるのですね。(笑)
2018.06.04
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患者様から非常に良く聞かれる質問に、 目薬をこぼれる程点すと、気持ちいいし良く効く気がするのですが? というものがあります。 そしてその後に、 目薬が全然足りないのでもっとたくさん下さい。 と続くのがゴールデンパターンです。(笑) これは以前から当ブログで何度も書いているのですが、 目薬はこぼれる程点しては駄目 です。 その理由は、1. 目薬は1滴で十分効く様にそもそも設計されている。具体的に言うと、目薬は1滴が50マイクロリットルなのですが、目の中の目薬が入る部分である結膜嚢(けつまくのう)の容積は30マイクロリットルとなっている。つまり、目薬は1滴で目に対して十分過ぎるくらいの量がある。2. 目薬をこぼれる程に点すと、目の周りが目薬の成分や含まれている防腐剤の影響で荒れる。酷い場合には皮膚炎を起こすこともある。 からです。 こぼれていいのは居酒屋で注いでもらう日本酒くらいのもの で、目薬をこぼれる程点すのは百害あって一利なし、ということなのです。 覚えて置いてくださいね。
2019.06.21
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現在緑内障の治療では「プロスタグランジン関連薬」という系統のお薬を第一選択薬として使います。眼圧(眼の血圧)を下げる効果が一番強いからですが下に示すのがその代表的な薬(プロスト系)です。 上の写真の中で、左端の 「キサラタン点眼液」 が発売されたのが1999年、この薬の登場が緑内障治療を劇的に変えたといわれる、当時まさに画期的な新薬でした。ちなみに私が眼科医になったのも1999年のことで、それで我々は「キサラタン世代」と呼ばれています。 キサラタンはあまりに画期的なお薬だったためにその後何年もライバルが現れませんでした。数年前からようやく「トラバタンズ点眼液」、「タプロス点眼液」という同系統の薬が発売されたのですが、その薬の効果はキサラタンとほぼ同等で、「もっと眼圧の下がる」キレの良い薬の発売が望まれていました。 10月第一週に 「ルミガン点眼液」 という新薬が発売になるのですが、 この薬は前述の「キサラタン」に対して有意差を付けて眼圧が下がるというデータが出ています。 簡単にいえば 「過去最高の効き目の薬」 ということです。その理由を下の図に示していますが、分かりやすく言えば 「患部に直接ガツンと効く」 ということになります。 ただ、良いお薬には当然副作用もあります。このルミガンは今までの薬よりも 強烈に目が充血する と言われています。早速当院のスタッフにお願いして実験してみました。 右目だけにさしたのですが、 明らかに左目 より強く充血していますね。ただ、肝心の眼圧の方は、 13.7→8.7と確かに良く下がっています。これは期待できそうですね。! この期待の新薬、ルミガン点眼液、発売と同時に当院でも採用します。少しでも緑内障患者様の不安が減ってくれたらと思いますし、私も発売を心待ちにしています。
2009.08.21
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毎日暑いですね。楽しいプールの季節の始まりです。さて、 プール後の洗眼は逆に目を傷めるのでしないほうが良い と言うのは、我々眼科専門医の間では既に常識となっているのですが、どうもまだ国民的な一般的常識までにはなっていないようなので、今日は復習としてこのお話をしたいと思います。 「プール後洗眼は悪影響」 塩素が角膜損傷 国内研究チーム発表 プールで泳いだ後に目を洗うのではなく、ゴーグルを-。水道水の消毒に使われている塩素が角膜を傷つけ目に悪影響を及ぼすことを、石岡みさき医師(両国眼科)、慶応大学眼科などの研究チームが実験で明らかにし、米国の眼科学専門誌に発表した。 学校現場で当たり前に行われる水泳後の洗眼は、かえって目にダメージを与える恐れがあり、研究チームは「洗眼はやめてゴーグルで保護した方がいい」としている。 実験は、健康な男女各5人を被験者として実施。250ccの(1)体液と浸透圧が同じ生理食塩水(生食)(2)水道水(3)生食に塩素を加えたもの-で目を洗い、角膜の状態などを複数の方法で調べた。 この結果、(1)~(3)のいずれも目を洗う前と比べて角膜上皮の傷がやや増えたが、塩素入り生食の場合に顕著だった。また、目を保護する粘液の成分が、水道水および塩素入り生食で洗ったときに減少し、生食では減らなかった。 さらに、色素の透過量で角膜上皮のバリアー機能を調べる検査では、塩素入り生食の場合のみ低下が認められた。 これらの結果から、浸透圧ではなく塩素が目に悪影響を与える主な原因と結論付けた。研究班の加藤直子・慶大非常勤講師は「強酸や強アルカリなどが目に入ったとき以外、目を洗う必要はない。プール後の洗眼は、さらに傷を広げる可能性があるのでやめた方がいい」としている。 上記記事は2011年3月1日の産経新聞より引用 私自身も学生時代にプールに入った後でみんなで並んで一律で高い水圧で目をジョボジョボ洗っていました。よくある「昭和の風景」だったわけですが、実はその頃も「洗眼って、目の中の大事な善玉の成分まで洗い流してしまいそうで、何か嫌だな」と漠然と思っていたのですが、やはりその直感は正しくて、本当に良くなかったんだというお話です。 少し具体的に解説をしておきましょう。 我々の眼の表面と言うのは、上から油層、水層、ムチン層(分かりやすく言うと納豆のネバネバのような層。眼の表面を守るのに重要な役割をしている)の3層があるのですが、目を洗いすぎるとこのムチン層が剥がれ落ちてしまい、 そこにバイキンが付きやすくなってしまうのです。 またいわゆる アイボンなどの眼を洗浄する薬剤も使いすぎると逆効果 になります。 アカスリのやりすぎが皮膚に良くないのと同じような話 かなと思いますね。 そのため大切なことは、水泳をする時には必ずゴーグルをつけて雑菌と塩素の多いプールの水が目に入らないように予防した上で、目の洗浄はほどほどにする、ということです。 皆様も是非この「新常識」を覚えた上で、夏のプールを楽しんでくださいね。♪
2018.06.28
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さて当院では、今年2018年の新規設備投資として、日本のタカギセイコー社の高性能な顕微鏡 OM-9 を導入しました。 このOM-9は白内障手術にも使える程のハイクオリティのものなのですが、今回は贅沢にもそれを外来処置用の顕微鏡として買いました。(笑) 日常的な眼科処置の安全性の向上にとても役に立ってくれています。当院ではこれからも積極的な設備投資を欠かさず、常に安全で快適な眼科医療を提供し続けることが出来るように努力を続けていきます。
2018.07.17
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さて日本人では40歳以上の20人に1人(5%)、70歳以上では7人に1人(14%)の有病率ということで、非常にありふれた病気であると同時に、「失明に直結する!」という「とても怖いイメージ」があるために、多くの方から「恐れられている」病気である緑内障。 当ブログでもこれまでに様々な角度から取り上げてきましたが、この緑内障は「超慢性疾患」で進行がとてもゆっくりな病気なので、実際には発病から失明に至るまでには30年以上という時間的な猶予が与えられた、真面目に治療に取り組む患者様にとってはある意味で「優しい病気」でもあります。 そして治療の基本は、眼圧を下げるための点眼治療です。何故かというと、眼圧を下げることによって緑内障の進行を遅らせて目の健康寿命を延ばすことが出来ることは、既に質の高い多くの論文から明らかになっているからです。治療法としては他に手術も色々とありますが、結局はどれも眼圧を下げるためだけの物なので、目薬の治療だけで病気がコントロールできるのであればそれに越したことはありません。何も好き好んで痛い思いをする必要はないですからね。 そして実際全国にはとてもたくさんの緑内障点眼薬を使用していらっしゃる患者様がいます。緑内障は決して「良くなる」ことはない病気なので、世界最高レベルの高齢化がこれからも類を見ないスピードで進展するここ日本では緑内障患者様の数はこれからも増える一方です。もしかすると、このブログに辿り着いた方の中には既に緑内障の治療中の患者様もいるかもしれませんね。 そこで今日はこれまでと視点を変えて、緑内障点眼薬の世界を広く見渡してみることにしましょう。これはとても大切な視点です。何故かというと、この数年緑内障の分野では新薬ラッシュが続き、使えるお薬が爆発的に増え、その結果として以前とは比べ物にならないくらいに処方パターンが増えているからです。 それではまずはその全体像をお示ししましょう。 す、すごい量ですね。20年前には「僅かに数種類」しかなかった緑内障点眼薬は、いつの間にかこのような「爆発的な進化」を遂げているのです。そして私達眼科専門医は、これらの全てのお薬の長所・短所・有効な組合せ方を学び続けながら、毎日の診療に当たっているんですね。(続く)
2019.03.09
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さてシリーズでお送りしている 緑内障点眼薬の世界。 今日は前回のチモプトール点眼液に続いて、緑内障治療の第2選択剤である、 ベータ遮断薬 の世界を引き続き見ていきましょう。 ベータ遮断薬2回目となるとなる今回は、ミケラン点眼液 (一般名 カルテオロール塩酸塩) です。 ただ実際には製剤的な工夫で1日1回点眼で済むように工夫されたミケランLA点眼液がそのほとんどのシェアを占めています。 なので以下はこのミケランLAについての説明です。 さてこのミケランLA点眼液は、ベータ遮断薬の中でのシェアは前回紹介した チモプトール点眼液 よりも低いのですが、個人的には圧倒的に優れていると考えています。その理由は、1. チモプトール(XE)よりも角膜障害が少ない。2. 点し心地が良くて使いやすい。3. 長期使用でも効果が減弱しにくい。 という大きな長所があるからです。 そのため当院では以前からこのベータ遮断薬では圧倒的にミケランLA点眼液を多く処方していますが、全国的に見るとチモプトール点眼液の方がシェアは上です。 いい薬が必ずしも売れるとは限らないのが、我々医療業界の7不思議の1つ なんですね。(続く)
2019.09.10
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さて当院では、2011年の9月から日本アルコン社のインフィニティという白内障手術装置を使用して毎週の手術を行ってきました。また数年後には万一の機械のトラブルに備えて2台目も購入し、万全の態勢で臨んできました。 白内障の進行した水晶体核を砕く力が強く、また眼の中(前房:ぜんぼう)の安定性も高く、本当に良いマシンでした。ちなみに、2011年9月当時の導入時の記事はこちら。↓ 新型白内障手術機械インフィニティ、購入しました。! ただ、導入後10年が経過して細かいトラブルがポロポロと出ていたことと、後継機種のセンチュリオンがバージョンアップされて非常に洗練度が上がっていたことから、ついにお役御免で買い替えることとなりました。 これがインフィニティの最後の雄姿です。流麗なデザインも魅力の1つでしたね。 10年間クリニックを支えてくれました。本当に感謝しています。有難う御座いました。
2021.05.31
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さて先日の日記の続きです。日本人の国民病、「ドライアイ」をその根元から改善する画期的な新薬ですが、いよいよ近日中に日本が世界に誇る点眼薬会社、参天製薬から発売となります。 ↑ これがその新薬、ジクアス点眼液です。その特徴は、 世界初のP2Y2受容体作動点眼剤であることです。 具体的には、目の表面の「水分」と「ムチン(粘膜を潤して損傷を防ぐことによって目の表面を守っている、例えて言えば納豆のようなネバネバ物質)」という2つの大切な物質の分泌を促進することによってドライアイを改善してくれます。 ↑ またこのジクアス点眼液は、従来型のドライアイの治療薬のヒアルロン酸ナトリウムに対して有意差を持って症状を改善する!という抜群のデータも出ています。専門的に言うと特にBUT(Breaking Up Time:涙液破壊時間)短縮型のドライアイに対して良く効くと言われています。 発売はおそらく来月かな? きっと患者様に喜んで戴けるでしょうし、実際に処方できる日が早く来て欲しいです。待ち遠しいですね。
2010.11.12
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学校の視力検査で近視が進行して引っ掛かり眼科を受診されるお子様はたくさんいます。お父さん・お母さん方は「ウチの子の近視が進んでメガネをかけさせるのは絶対イヤ!」と思われる場合も多く、「近視が治る目薬ってないんですか?」という上記の質問を受けることが非常に良くあります。 結論から先に言うと、「近視の治る目薬はあるような、ないような感じです。」という謎掛けのようなお話になります。今日はその「近視の治る目薬」のお話をしてみましょう。 昔の言葉で言う「学校近視」、今の言葉で言うと「仮性近視」、「偽近視」と呼ばれるものがあります。イメージ的には「近視が進行してきているけどまだ固まりきっていない状態」とでも言えるでしょうか。 医学的にはこの「仮性近視」については、 1. そもそもそのような病態が存在するかはっきりと分からない。 2. 仮性近視は存在するかもしれないが、治療可能なものは数少ない。 3. 仮性近視の治療には一定の効果が認められるものがあるのは事実だが、治療を中断すると元の近視に戻ってしまうことが多いので、結局はあまり意味が無い。 あたりがコンセンサスかと思います。まとめると、「平均的には我々眼科専門医は仮性近視の治療は根本的にはあまり意味が無いと考えている。ただし治療中には一定の効果をあげる可能性のある目薬というのは実際に存在し、また近視のお子様を持つご両親の希望が強い場合には処方する場合もある」くらいの感覚なのです。 それでは実際に、その「仮性近視」の治療ではどのような目薬を使うのでしょうか? それには、、、、、 この「ミドリンM」と「ミオピン」という2種類の目薬を使用します。我々の業界ではこれを略して「MM療法」と呼んでいます。 ミドリンMは、目のピントを合わせる筋肉である毛様筋(もうようきん)の緊張を和らげてリラックスさせ、仮性近視を戻らせる作用があります。ただし散瞳(さんどう)といって瞳を開く効果が同時にあり、昼間に使用すると日常生活に支障が出るため通常夜寝る前に1回使用します。 ミオピンは1日に4回使用します。この目薬は目の毛様筋(もうようきん)の反応を良くし、また目の疲労回復作用を持つことから、毛様筋が昼間に緊張状態に戻るのを妨げる作用があると考えられています。そのため、ミオピンはミドリンMのすき間を埋める役割をするので、ミドリンM単独療法よりも併用療法の方がより効果があるとされています。 実際、このMM療法の有効性を報告した文献も古いものですが存在しています。 また、このミドリンMもミオピンも歴史のある薬剤であり、長年の経験から安全性が非常に高いことも証明されています。 ここまで読んで頂くととっても効きそうな感じのするこのMM療法なのですが、実際に患者様に処方してみると「点眼中は少し近視が改善することもあるが、それで近視が実際に治るかと言われるとなかなか厳しい」といったところです。 近視が治る目薬が開発されたら私も眼科専門医として本当に嬉しいのですが、現状ではこのMM療法以外に「近視に効く」と言われている目薬はありません。でも医学の進歩と言うのはとにかく早いので、いつの日かそんな夢の目薬が開発されるかもしれないですね。
2010.10.29
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今日も「第117回日本眼科学会総会」参戦記の続きです。 さて学会場を出て暴風雨の中ホテルへ向かいます。 学会場は有楽町の東京国際フォーラムですが、私が泊まったのは隣駅の新橋にある「東京第一ホテル」です。有楽町・銀座エリアというのは日本一物価が高いことで知られていますが、ホテルも非常に高いです。ところが隣の新橋は安くて美味しい飲み屋も多いですし、ホテルも安い、といいことばかりなんですね。しかも学会場からトコトコ歩いても10分ちょっとくらいと実は非常に近いのです。 さてお腹が空いたので、ホテルのコンシェルジュでどこか美味しいお店が無いかを聞きます。「最近テレビでも話題の俺のイタリアンというイタリアンレストランが評判がいいですよ。基本立ち飲み・立ち食いですが、コストパフォーマンス抜群です。普段は超満員ですが、今日はこの暴風雨ですから空いているかもしれませんよ。行って見たらどうですか?」ということで早速向かいます。 傘の吹き飛ばされそうな強風の中お店に着いてみると、 「只今 空席あり」と書いてあります。ラッキー。(続く)
2013.05.02
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黒目と白目の境目がどんどん白くなってきたのですが大丈夫ですか? と言う質問を患者様から受けることが良くあります。そうですね、大体1ヶ月に数回は聞かれます。今日はこの問題について考えて見ましょう。 まず結論から言うと、これは 老人環(ろうじんかん senile ring) というものです。「お年のせい」ということですね。加齢によって脂質が沈着して黒目の周りが白っぽくなったものですが、通常は視力低下に繋がったりはしないので気にしなくて大丈夫です。 それではこの老人環が一体どのようなものなのかを具体的に一緒に見ておきましょう。 上の写真で水色の矢印で示したのが老人環です。ちょっと分かりにくいので色を塗ってみましょう。 緑色に塗った所が老人環です。黒目(角膜)の隅っこなので視力などには影響はないので心配しなくてもいいんですね。 そしてこの老人環、70歳以上だと大体80%くらいの方に存在します。なので、 目の白髪 くらいに思って頂いて良いと思いますね。
2016.06.21
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さてアクティブになる楽しい夏の季節なのですが、それに伴って目にも色々なものが入ってトラブルを起こすことがあります。これは以前にも書いたことがある人気記事なのですが、新たな画像を追加して「2016年夏バージョン」でお送りしましょう。 ↑ この患者様は、「魚を捌いていたら急に目が痛くなって水で洗っても目薬しても何しても痛みが取れない。」との訴えで来院されました。矢印の部分に何かがありますね。 魚のうろこが白目(結膜)に刺さっていました。うろこは表面が複雑な形状をしているので一度目にくっつくとなかなか自力では取れません。顕微鏡で見ながら慎重にピンセットで引っぺがしたのですが、強力にくっついていたので剥がすのが大変でした。 ↑ この患者様は以前も紹介したことがありますが、農作業中に田んぼで転んでその時に目にヒルが食い付いてしまいました。非常にすばしっこく逃げるので摘出するのが大変でした。 ↑ この患者様はみかんの摘果(てきか)作業中に目にゴミが入り、「洗っても何してもどうしても取れない。」との訴えで受診されました。それもそのはず、蟻が目から振り落とされないように結膜(白目)に足を深く刺してしがみついたまま絶命していました。このありんこも引っぺがすのが大変でした。 ↑ この患者様は、「まぶたの裏で何かがもぞもぞ動いている!」との訴えで来院されました。上まぶたをめくって調べて見ると、ショウジョウバエと思われる2ミリ大の虫が目の中で既に絶命していました。 このように、目の中と言うのは様々な異物が入り込みます。自力ではなかなか取れないもの、取るのが危険なものもあります。ですので、「あれ?何か目にゴミが入ったぞ。」という時には、是非気軽に遠慮なくお近くの眼科専門医を受診するようにしてくださいね。
2016.07.07
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さて「ためしてガッテン」で「動体視力改善効果がある」として紹介されたムチン分泌促進薬ですが、現在2種類が発売されています。 まずは先行発売された ジクアス点眼液 についてです。 このジクアス点眼液は画期的な効き目があると同時に、世界一新薬の承認が厳しいと言われるこの日本で、眼科専門の製薬会社の参天製薬が全世界に先駆けて先行発売に成功した薬です。また新薬の開発には製薬会社だけではなく、大学病院を中心とした研究・臨床の協力が不可欠であり、「日本発世界初」の効果抜群な目薬が誕生したと言うこの事実は、日本の眼科医療が総合的に見て世界最高水準であることの何よりの証明となりました。 ちなみに最近ではiPS細胞の臨床応用で加齢性黄班変性症が良くニュースでも取り上げられますが、これも日本の眼科医療が世界トップレベルであることが前提としてあると思います。 少し逸れてしまいましたが話をムチン分泌促進薬に戻します。まずは、ジクアス点眼液発売前夜の状況からです。 ドライアイの画期的新薬、ジクアス点眼液、もうすぐ登場です。 続いて、実際のサンプル品を使って見た時の感想です。 ジクアス点眼液、実際に体験して見ました。 発売後の患者様の感想です。 ドライアイ新薬 ジクアス点眼液、やっぱり大好評です。 発売1ヶ月が経過し、たくさんの患者様に実際に使用して頂いたことによって、ジクアスの長所と短所が見え始めて来た頃の日記です。 ジクアス点眼液発売1ヶ月が経過して思う。 このジクアス点眼液の登場によって日本のドライアイ治療は大きく飛躍しました。それには眼科一筋の頑固な製薬会社の参天製薬の力が何よりも大きかったと思います。参天製薬は薬の成分を溶かして目薬にする技術力が世界一で、それが今回の画期的な新薬発売に繋がったと思っています。私もドライアイ治療医として新薬の恩恵をしっかりと患者様にお届けできるように、参天製薬に負けないくらい日々精進していきたいと考えています。
2012.10.28
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私がまだ大学病院で眼科の研修医をしていた頃のお話です。 ある時、我々ピヨピヨの研修医がその自己紹介も兼ねて、地元のベテランの眼科開業医の先生方と飲むと言う貴重な機会がありました。 当時の私はまだ自分で白内障手術もしたことがありませんでしたし、臨床の経験も本当に未熟でした。関連病院にアルバイトに出かけると、患者様の病状が見たこともないものばかりで全身フリーズし、「これって一人前になれる日って本当に来るのかなあ?」と疑問を感じるほどでした。 さてそんなヒヨヒヨの私は、飲み会で上品な女医さんの隣に座りました。色々としゃべった後でふと私が、「先生、開業すると勤務医とは何か違うことってあるんですか?」と質問をすると、その先生がしばらく考えた後で、 「そうねえ、 開業するとまつげを抜く機会が凄く増えるわよ。 」 と仰いました。 私はそれまで患者様のまつ毛を抜いたことがなかったので、物凄く驚き、思わず、 「先生、世の中にそんなお仕事があるんですか?」 と質問してしまいました。 するとその女医さんがクスッと笑いながら、「あなたも、いつか分かるわよ。」と可笑しそうに言われました。 それから長い月日が流れました。私は開業して6年目に入りましたが、その先生の予言通り熱心に患者様の逆まつ毛を抜く毎日です。 「まつげを抜くお仕事」は、本当にこの世の中に存在した のですね。(笑) それでは、どうしてこのような奇天烈なお仕事が世の中にあるのでしょうか? それはだれでも年を取ると、目の周りの筋肉や組織が弱くなって、若い頃にはピンと外側を向いていたまつ毛が段々と内側に向いて目に当たるようになってしまうからです。そして当ったままだと角膜(黒目)に傷が付いてしまって様々なトラブルを引き起こす原因となります。 そしてこの「逆まつげ」は、その成因に合わせ、最適な手術法を取ることによって治すことが可能なのですが、手術後であっても数年後には少し戻りが出てやっぱり何本かのまつ毛が黒目に当たってしまうこともありますし、そもそも手術をするのはイヤなので来院した時に抜いて貰えばそれでいい、という患者様もいらっしゃいます。 そんなこんなで、眼科開業医の毎日にはこの「まつげを抜くお仕事」が、「切っても切れない不思議なメニュー」として存在しているんですね。
2014.07.27
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「眼が真っ赤になって市販の目薬さしても治らないし、なんだか眼がズキズキして痛いので来たんだけど。」という訴えで本日女性の患者様が来院されました。早速眼を拝見すると、 確かに眼が強く充血していますね。ただその充血の先を追っていくと、、、、 充血の仕方が普通の結膜炎とは違います。なんというか、「赤黒い」感じがあるんですね。実はこの方は、、、、、 強膜炎という病気でした。 これは 充血と強い眼の痛み が特徴で、悪化すると目の一部が壊死してしまうこともある怖い病気 です。治療には強力なステロイド薬の目薬や飲み薬を使います。 このように「タダの充血だろう」と思っていても、実は結構重い病気のこともありますので、「なんだか結膜炎が治らないなあ」というときは、是非お近くの眼科専門医を受診されてくださいね。
2009.09.07
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さて、発売前のデータで細菌性結膜炎・細菌性角膜炎への有効率がなんと驚異の「100%」と、まさに異次元の好成績だった期待の新型抗菌点眼剤の「スーパークラビット」こと1.5%クラビット点眼液ですが、ようやく本物の製剤見本を戴けたので、院長の私及び半数以上のスタッフでその実際のさし心地を試してみることにしました。 ↑ 従来の0.5%に較べて3倍の1.5%と濃度が高いせいか、やや黄色っぽい色調です。 実際に点眼してみると、、、、、、 「全然しみない。大丈夫。」 「0.5%のクラビット点眼液とさし心地は変わらない。」 「色が黄色なので、なんだか良く効きそう。」 「新薬と思って緊張して点眼したら、間違って口に入って苦かった。」 あたりがスタッフ及び私の感想でした。問題なさそうですね。 さてこの期待の新薬、1.5%クラビット点眼液ですが、実際に患者様に処方できるのは品薄が解消される6月20日前後になりそうです。待ち遠しいですね。
2011.06.03
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さて本日5月11日、大型緑内障新薬のアイファガン点眼液がいよいよ全国発売となります。「アイファンガン点眼液って何?」という方はまず こちら をご覧下さい。さてこのアイファガンがアメリカで発売されたのは1996年と実に16年前のことでした。そしてその後ずっとベストセラーを続けている名薬です。日本はとにかく新薬の認可が遅く、我々眼科専門医はこの名薬を長年使うことが出来ずに悔しい思いをしてきましたが、今日ようやくその夢が実現し嬉しい限りです。 さて今日はその実際のサンプル品をスタッフと共に試して見た時の体験を実際に見て頂きましょう。 一瞬、「緑内障の目薬なので、まさか悪ノリして液まで緑色なのかな?」とびっくりしましたが、緑なのは外側の包装だけで中身は透明で安心しました。(笑) さて今回は大型新薬ということもあり、5人で点眼にチャレンジして見ました。 まずは院長の私から。 眼圧は点眼前が12.3で点眼後が11.7です。うーん、イマイチですかね。ただ私は様々な目薬を試し過ぎているので、ちょっと目薬に耐性が出来ているせいがあるかもしれないですね。(笑) 次はスタッフで点眼チャレンジ初登場のゆみちゃんです。 眼圧は13.7→10.7です。良く下がっていますね。 次は点眼チャレンジ常連のきみちゃんです。 眼圧は13.7→11.0です。うん、良く効いていますね。 次はゴンちゃんです。 良く下がっています。ちなみにゴンちゃんは素直な目をしており、どの目薬も良く効く素敵な体質のようです。(笑) 最後は点眼チャレンジ初登場のともちゃんです。 眼圧は15.0から13.7に下降しています。まずまずですね。 以上をまとめると、アイファガン点眼液はどうやら期待通りの優れた眼圧下降効果を発揮しそうです。また点眼時の不快感もほとんどなく非常に点しやすい目薬であると言う点ではスタッフ全員の評価が一致しました。かなり総合戦闘力が高そうですし、実際どれほど患者様のお役に立ってくれるのかが本当に楽しみですね。
2012.05.11
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実用視力を改善する力のある「ムチン分泌促進薬」を紹介して話題沸騰だった、NHKの「ためしてガッテン」 ですが、この番組の放送以来私のブログにも特需が発生し現在全国から大変多くのアクセスを頂いています。今日はその特需を受けての第2弾です。(笑) さてムチン分泌促進薬を語るシリーズ、参天製薬のジクアス点眼液に続いては、日本の製薬会社の雄、大塚製薬から登場したムコスタ点眼液についてです。 まずは発売前の様子から。 ドライアイ新薬、ムコスタ点眼液も製造販売承認申請へ。 このムコスタ点眼液、数年前から発売が噂されていながら実際にはなかなか発売されず一部では、 「出る出る詐欺」 とまで言われかけていたのですが、ようやく船出の時を迎えました。 ムコスタ点眼液、近日中に登場です。 果たして効果はどうだったのか。 ジクアスとムコスタは薬としての実力はどちらが上なのか、その実際は、、、、、? ムコスタ点眼液、実際に使って見ました。 このムコスタ点眼液の有効成分「レバミピド」は大塚製薬が自社開発したもので、内服薬としてはずいぶん以前から発売されています。そして、胃潰瘍や胃粘膜病変に抜群な効果を発揮するベストセラー薬として知られていました。 内服で良い薬は、目薬になっても良い。 これはほぼ外れたことのない、 目薬の法則 であり、その意味ではムコスタ点眼液も期待通りの優れた薬効を示すお薬に仕上がっています。 ただその一方で、大塚製薬はこのムコスタを溶かして目薬に仕立て上げるのに苦しみ抜き、実際に出来上がった製品は成分が安定しにくいために一回毎の使いきりタイプのみで、液は濃く白濁し点眼すると強い苦味を感じる、という典型的な「良薬口に苦し」のやや使いにくい目薬となっています。 そのため、純粋に薬が持つパワーだけを見ればムコスタはジクアスを確実に上回ると個人的には思いますが、ジクアスはムコスタよりも圧倒的に点眼がしやすくて使いやすいので、総合力では逆にジクアスがムコスタをやや上回っている、というのが現時点での眼科専門医としての私の評価です。ただ、未確認情報ではこのムコスタは使いやすいフルボトルタイプの発売を目指して鋭意開発続行中とのことでもあり、これからの更なる進化に期待しています。 以上で、「ためしてガッテン」余波を受けての「ムチン分泌促進薬」関連の緊急シリーズは終わりです。この日記は地方で開業している眼科専門医である私の日常を綴っているだけのものですが、出来る限り一般の方にも面白く楽しく読んで頂けるように工夫を凝らしていますので、今回たまたまご訪問戴いた方には是非これを機会にブックマーク登録して頂ければ幸いです。(笑)
2012.11.01
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さて2月4日(土)、初日に非常に勉強になったのは「強膜炎の薬物療法」、「強膜炎の外科的治療」という2つのプログラムでした。 強膜というのは、眼球そのものを形作っている丈夫で文字通り「強い膜」で、普段は白い色をしています。そして、この膜に炎症が起きている状態を強膜炎といいます。 症状としては、強い充血と痛みです。強膜炎の充血は比較的深いところで発生してるので、黒っぽい赤色に見えるのが特徴です。充血している部分は押すと痛みを感じます。この「痛い」というのが強膜炎の最大の特色であり、しかもその痛みは患者様によっては「鉛筆を目に刺されたよりも痛い」と言うほど激烈です。具体的に実際の患者様の状態を見て頂きましょう。 この強膜炎はリウマチなどの自分で自分自身を攻撃してしまう自己免疫疾患に合併することが多いですが、色々調べても結局原因が分からないことも良くあります。 そして、これだけ医学が進歩した現在でも治療に難渋することが多く、最悪の場合は強膜が溶けて(壊死して)穴が開いてしまうことさえあるのです。そのためこの強膜炎と言うのは、我々眼科専門医にとってはその知識量・経験・状況判断力・決断力を問われる非常に厳しい病気なのです。 今回のプログラムではこの強膜炎について様々な角度から勉強することが出来ました。 ↑ このように強膜炎の原因疾患というのは無数にあり、それがこの病気の治療を難しくしています。 ↑ そして、上のスライドにあるとおり、「とにかく痛い」こと、これが困るんですね。 ↑ そして、目薬だけであっさり治る症例から、内科的・外科的治療を総動員して何とか治った症例、どうしても治せない症例まで、その予後は本当に千差万別です。 ↑ 治療法は一応のフローチャートはありますが、これがまた一筋縄ではいかないのです。 ↑ これは重症例の写真ですが、激烈な炎症で強膜が溶けてしまい、その奥のぶどう膜という茶色い組織が出てきてしまっています。 ↑ こうなると、強膜パッチ術といって、他の方の献眼された目を持ってきて弱いところに貼るという外科的な治療をするというのが教科書に書いてある定説なのですが、 ↑ うかつにこのパッチ術に手を出すと、パッチをしても次から次へと溶けてしまってまた穴が開き、「合計したら数個分の目をパッチに使ってしまった!」というような凄まじい状況におちいることがあるので、「うかつに外科的治療に踏み切らないことが大切である」ことが解説されました。 重症例の治療法の実際を聞くことが出来て、本当に勉強になりました。(続く)
2012.03.23
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日々の白内障手術や外来での外科的な処置になくてはならない機械である、高圧蒸気滅菌器(オートクレーブ)。このマシンを使って手術道具の滅菌をしています。簡単に言うと、「高温&高圧に出来る大きな釜」ですね。 当院では開院した10年前に当然ピカピカの新品を買っていたのですが、毎日の酷使が祟ったのか、先日突然に爆死してしまいました。 歯磨きをしない人生があり得ない様に、オートクレーブの無い医療機関と言うのもあり得ません。なので、緊急で買い替えることになりました。 10年分の進化で、操作画面がより洗練されてとても使いやすくなっていました。 、、、という事で、当クリニックにはまた新たな戦力が加わりました。 これからもクリニックの隅々にまで気を配って、常に安全で快適な医療を提供し続けられるように、スタッフ一同精進して参ります。
2018.12.03
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さてシリーズでお送りしている「緑内障点眼薬の世界」。 今日も緑内障治療の第一選択剤(ファーストライン)である、プロスタグランジン関連薬を見ていきましょう。 4回目となる今回はルミガン点眼液(一般名 ビマトプロスト)です。 このルミガン点眼液は、プロスタグランジン関連薬の中で 最強の眼圧下降効果 を持っています。 滅茶苦茶効く ということですね。ただその一方で、 PAPという副作用の出現頻度も断トツ で高くなります。 眼科専門医としての感想を率直に言うと、「非常に気難しい薬」という印象です。眼圧コントロール不良の緑内障患者様には以前はリスク覚悟で処方することも良くあったのですが、最近は違う系統のキレの良い新薬が増えているので、自分は処方することは凄く減っています。「ルミガン行くくらいなら、違う系統の目薬を追加しよう。」と考えることが多いんですね。 それでも今でもどうしてもルミガンが必要と言う患者様は厳然としていらっしゃいますし、なんといっても眼圧はガツンと良く下がるので、必要な薬であることに変わりはないです。まあ、 緑内障点眼治療「最後の砦」 といった位置づけの目薬ですね。(続く)
2019.05.27
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さて当院では現在更なる業務拡大のため、常勤看護師1名 事務・検査スタッフ1名 を募集中です。 その理由なのですが、根本的な理由として「眼科医療が成長産業である」ということが挙げられます。 目と言うのは、若い頃は多くの方は何のトラブルもないものですが、加齢と共に様々な病気が表れてきてどうしてもメインテナンスが必要となる組織です。そして日本は世界ナンバーワンの高齢化社会なので、眼科医療の需要が以前に比べてどんどんと増加しているのです。 また、眼科医療の進歩の速度が凄いということもあります。一例を挙げると、私が13年前に開業した当時には存在しなかった治療に抗VEGF薬硝子体(しょうしたい)注射というものがあります。これは、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症などの疾患で、目の奥の網膜に腫れが出たときにそれを改善してくれるものなのですが、非常に強力な効果があり、現在多くの患者様がその恩恵を受けています。 ただ、患者様によるのですが、場合によっては繰り返しの治療が必要になる場合があり、結果として注射を打つ回数がどんどんと増えています。当院でいうと、最近では年間の白内障手術数に近いくらいの症例数になってきています。そしてこれは「13年前には全く存在しなかった医療」なのです。 ということで、当院ではより良い医療を提供し続けるために、新しいスタッフの力を必要としています。興味のある方がいらっしゃいましたら、是非お気軽にお問い合わせください。
2021.08.09
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しばらく前から気になっていたのですが、コロナワクチン接種後に目の充血と強い痛みを訴えて来院される患者様が散見されます。 具体的には、下のような感じです。ちょっと赤黒い充血が特徴で、充血部を触るととにかく痛いのがポイントです。 これは実は、強膜炎と言う病気になります。関節リウマチやベーチェット病などの全身疾患を持つ方に良く出る病気なのですが、これが何故かコロナワクチン接種後の方に頻発している印象があるのです。 原因ははっきりとは分かりませんが、もしかするとワクチンの副反応の一つなのかもしれません。ただ、ステロイドの目薬を適切に使用すればほとんどの方はスーッと症状が治まりますので大きな心配はありません。 なので、皆様もコロナワクチンを打った後に、目の充血や強い痛みを感じた場合には、我慢せずに是非近くの眼科専門医を受診してみてくださいね。
2021.08.16
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さて今日は「名薬、ムコスタ点眼液の悲劇」シリーズ最終回です。 この素晴らしい薬効を誇るムコスタ点眼液ですが、実は私自身も毎日寝る前に使用しています。 圧倒的に眼の調子が良くなりますし、 点眼すると目がかすんで見えなくなるのでそのまま良く眠れる という意外な作用もあります。(笑) 「苦い、しみる、かすむ」と3拍子揃った強面のハードボイルドなムコスタ点眼液 ですが、ドライアイ患者様なら一度は挑戦してみるべき素晴らしいポテンシャルを秘めたクスリでもあります。 私は眼科専門医として、この「悲劇の名薬」ムコスタ点眼液をこれからも適切に患者様に処方していきたいと考えています。
2013.03.22
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