仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2025.07.22
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カテゴリ: 仙台


仙台藩の罪と罰を考える(その1) (2025年07月21日)から続く

■吉田正志『仙台藩の罪と罰』慈学社出版、2013年 をもとにしています。

4 殺人の罪

ドイツ刑法をモデルに明治40年制定された刑法は、殺人罪(第199条)の一条のみで、具体的事情は裁判官が総合的に判断して、死刑から懲役5年の範囲で刑を科することになる。

しかし、フランス法をモデルとした明治13年の刑法も、謀殺(計画的な殺人)は死刑(第292条)、毒殺は死刑(第293条)、故意の殺人(故殺)は無期徒刑(第294条)、残酷なやりかたの殺人は死刑(第295条)など、殺人の内容を細かく規定して、裁判官の裁量の余地を狭めていた。

それ以前に、明治政府が古代の中国や我が国の律(りつ)などを参考に制定した『新律綱領』(明治3年=1870)では、祖父母、父母、主人を殺した者は梟首(=獄門)、故殺は斬(ざん)など、殺人を類型に分けて刑を決めている。

江戸幕府の『公事方御定書』(寛保2年=1742)下巻第71条「人殺しならびに疵附けなどお仕置きの事」でも、殺人を細かく類型に分けている。
・主殺しは、2日さらし1日引き廻し鋸挽きのうえ磔

・親殺しは、引き廻しのうえ磔
・毒殺は獄門
・単純殺人は、下手人(=単純な斬首)
・辻切りは、引き廻しのうえ死罪(=斬首のうえ死体を様(ためし)切りに利用、さらに闕所(けっしょ、財産没収)を付加)
など。これらは主として判例の積み重ねで作り上げられたと思われる。

では、仙台藩の『評定所格式帳』(元禄16年=1703)ではどうか。
・人殺しの類(第11条) 一般の殺人は死罪(武士は斬罪、凡下は切り捨て)
・主殺しの類(第12条) 引きさらし竹鋸で挽き磔の刑を科す。妻子は同罪、父母兄弟は死罪。なお、主人の嫡子を殺した場合は主殺しと同じだが、次男三男や弟を殺した場合は、城下引きさらしたうえ磔、と差別を設けている
・親子など殺し候者の類(第13条) 親殺しは主殺しと同じ。親が子を殺した場合は、獄門、事情によって牢朽し(ろうくだし)、密夫に本夫を殺させた妻と密夫は、ひきさらし磔、妻を殺した夫は獄門、悪質な場合は磔、兄を殺した弟、伯父を殺した甥は磔、弟を殺した兄は獄門。このように目上の者を殺したケースが重く罰せられる
・毒害の類(第14条) 妻が夫を毒殺した事件で妻が磔とされた。主人に毒を与えた場合は、主人が死ななくても、ひきさらしのうえ磔、となった
・乱心物の類(第15条) 殺した者の親類に与えて死罪とする、兄を殺した事件では磔になっている


・妻が子を置いて出て行って、その子を養育しかねて殺害した卒族を、入牢(じゅろう)に
・妻と口論して薪で突き死なせた者を、近流に
・同行のものを狐狸と疑い殺した者を、刎首(=斬首)に
などの判例が新たに付け加えられている。

これら仙台藩の科刑が、幕府や他藩とどう違うかを問うのは、具体的な事件がたくさん生じていて煩雑になるが、むしろ仙台藩の特徴としては、殺人を犯しても罰せられない事例(正当防衛、喧嘩両成敗、無礼討ち、家来手討ち)について検討してみたい(→次項へ)。

仙台藩の罪と罰を考える(その3 正当防衛) (2025年07月24日)に続く

■関連する過去の記事
 フリーページ「 戦国・藩政期の仙台・宮城 」から「仙台藩の藩政」をご覧ください。
(主なものは下記)
仙台藩の罪と罰を考える(その10 拘禁刑、さらし刑、肉体刑) (2025年08月11日)
仙台藩の罪と罰を考える(その9 奴刑) (2025年08月11日)
仙台藩の罪と罰を考える(その8 追放刑) (2025年08月10日)
仙台藩の罪と罰を考える(その7 流刑) (2025年08月08日)
仙台藩の罪と罰を考える(その6 江戸屋敷と刑罰) (2025年08月05日)
仙台藩の罪と罰を考える(その5 刑場と死刑) (2025年08月03日)
仙台藩の罪と罰を考える(その4 喧嘩両成敗) (2025年08月03日)
仙台藩の罪と罰を考える(その3 正当防衛) (2025年07月24日)
仙台藩の罪と罰を考える(その2 殺人の罪) (2025年07月22日)
仙台藩の罪と罰を考える(その1) (2025年07月21日)
芦東山記念館を訪れる (2013年5月7日)
仙台藩の刑制と流刑地 (10年2月10日)
芦東山と江戸期の司法制度 (08年10月2日)
仙台藩の刑場 (07年9月3日)
仙台藩の牢屋 (07年8月19日)
仙台藩の法治体制 (06年11月20日)
岩手の生んだ大学者の芦東山 (06年3月29日)





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最終更新日  2025.08.19 22:26:56
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