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オレは返事をしないマッギーに向かって続けた。「マッギー、確かにオレはお前の過去の傷を預かるとは言ったさ。でもそれが、女の子からクマを預かって、奥さんからゾウを預かることだとは思いもしなかったよ。」やはり、返事はない。もちろん姿を現すこともなかった。だが、この言葉がマッギーに伝わっている事は確信できた。「次はおネエちゃんからネコでも預かるのかい?」しばらく反応を待った。。。少し経つと、マッギーがすぐそばにいる、という気配はふっつりと消えた。。。(やっぱりそうか。。。)オレは急にやりきれない気持ちに襲われた。。。車を走らせ、街外れにある高台に向かった。夜にはたくさんの車が夜景を見にやってくる場所。。。ひさしぶりに街を見渡してみた。そんなに大きな街ではないが、こうして見ると、あのあたりは行ったことがないな。。。と感じる地域もある。オレもマッギーもこの街で生まれた。いろいろあったが、今もこの街にいる。そして、この街のどこかで、マッギーはずっとレッドを見守っているんだろう。。。オレから電話をかけてもおそらくもう出ることはないだろう。。。オレは、ヤツの居そうな場所を推測しながら、ずっと街を見下ろしていた。夕方近くなって、オレは酒屋で安物のバーボンを2本買い、マッギーの家へと向かった。マッギーもイエローもおそらくそこにはいない。ただ、何かわかることがあるはずだから、気長に待ってやろう、ということさ。酒でも飲みながらでないと多分やってられない。ヤツの家の前で車を止めた。ガレージには車がない。インターフォンを押しても、思ったとおり反応はなかった。(長期戦になりそうだ。。。)オレは車に戻り、早速バーボンを開けほんの少しだけ口にふくんだ。to be continued...
2006/06/30
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その時、すぐ脇を車が一台通り過ぎていった。「動物園で見るゾウよりずっと大きいのよ。」オレにはレッドがふざけているようには見えなかった。「いつ現れるかわからない。。。道を歩いている時、家に居る時、仕事をしている時。。。当然、周りにいる人には見えない。。。」「トイレや風呂にも入ってくるのかい?」我ながらつまらないことを言ってしまった。だが、レッドは軽くうなずいた。「空間を超越してるっていうか、空間がゾウの大きさに合わせて大きくなる。そして、踏まれそうになる。。。」オレにはどうもイメージがつかめない。「それで。。。 ゾウが暴れないようにピンク色にしてしまう。 塗り絵に色鉛筆で塗りつぶすみたいに。。。」(ゾウを色鉛筆で塗りつぶす。。。?)「そのために、ピンクの服装が欠かせないってわけだね。」オレは話を合わせてみたつもりだった。レッドはそれには返事をせず、オレに背中を向け歩き始めた。否定しなかったところをみると、どうやらその通りらしい。続けて、下着もピンクなのか聞きたいところだったが、やはりそれはできなかった。。。彼女は狂っているようには見えなかった。振り向きもせずに歩き去っていく後姿を、オレはぼんやり眺めていた。レッドの話をまとめるとこうなる。普段の日常生活に突然非日常的なもの(ゾウ)が現れる。暴れると危険なので暴れないように対処(色鉛筆でピンクに塗りつぶす)する。そうすると、危険だったゾウが危険ではなくなる。そのためにピンク色の服装が欠かせない。幻覚・妄想のようなものだとしてもバカげてはいるが、彼女の中では現実だということか。。。「マッギー、そろそろ出てきたらどうだい?彼女は行っちまったよ。」オレは姿の見えないマッギーに向かって言った。さっきから隠れて見ているのはわかっていた。おそらくレッドにも。。。to be continued...
2006/06/29
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オレはレッドと交流のある人物を5人ピックアップしていた。ひとりひとり、まる一日張り付いて、そのうちの男女各1人をもう一日ずつ張り付いて1週間を過ごした。たまたまかもしれないが、その5人はオレが張り付いている間にレッドと接触することは一度もなかった。その間に、役所と警察のそれぞれに勤務するお友達に依頼してあった資料が届いた。レッドに関する資料とマッギーが関わったという事故についての資料。。。話を持って行った時は2人とも散々もったいをつけていた。だが、最後には2人とも「頼むから受け取ってくれ。。。」と言って、泣きながらムリヤリそいつをオレの手に押し込んだ。(不正をはたらくヤツは許しておけねえ。。。)ようやく全貌がつかめてきた。。。翌朝、1週間ぶりに見たレッドは。。。最後に見た時の姿は別人としか思えなかった。ピンクのスーツを着ている。「やあ、ひさしぶりだね」「まだあたしに何か?」1週間前の事はおそらく覚えていない。レッドの反応を見てオレはそう確信した。「実は、どうしてもわからないことがあってね。。。 なぜいつもピンク色?」いつもの軽口を言う調子で言ってみたが、表情を見るとそうは受け取らなかったようだった。「探偵さんには関係ないことだと思うけど。。。」「確かにオレには関係ないが、マッギーには関係が大有りなんだよ。。。」レッドの表情が曇った。オレは、この質問はサラッとかわされてしまうだろう、と考えていた。朝、外出する時に家のまん前の道端で立ち話する話題ではない。。。レッドは考えこんでいた。(マッギーの名前を出したのは失敗だったか。。。)やがて、レッドは意を決して、口を開いた。「突然、目の前にゾウが現れるのよ...」to be continued...
2006/06/28
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「久しぶりだね。マッギーは元気にしてるかい?」なんとか普段どおりの挨拶をしてみただが、無理矢理平気な顔をしてることを見抜けない人ではない。「あの人は相変わらず。。。 あなた、飲み歩くのもほどほどにしないと、今日はまた一段とひどい顔してる。」鏡はみていないが、確かにひどい顔をしているだろうと思った。「まあ、これも仕事だよ。 飲み屋に入ってミルクを飲んでたんじゃ目立ってしょうがないだろう。」イエローの顔は明るくはならなかった。「何か困り事かい?」あまり気は進まなかったが、そう訊かずにはいられなかった。「ゾウを探して欲しい。。。」(やっぱりゾウか。。。)そう思いながらも、質問を続けなければならなかった。「動物園にいるゾウ?それとも野生のゾウを探してくるのかい? 日本に連れて帰ってくるのはかなり費用がかさむよ。」オレがそう言うと、イエローは下を向いて少し考え込んでいたが、やがて不意に上空を見上げ、またゆっくりと視線を下に向けた。そして、もう一度上空を見上げようとするのか、と思ったらオレのところで視線が止まった。「あなたはここにいない方がいいみたい。。。」返事になっていない。しかし、確かにオレも同じ意見だった。「ゾウのことは近いうちに分かると思うから、気にしないで。。。 今取り掛かっている仕事に専念して。。。」何の事だかさっぱりわからないが、オレは彼女の言う通りにしてみようと思った。「わかった。しばらく留守番を置いておくよ。」イエローは早く帰りたそうにしていた。夕飯の支度にはまだ早い時間だったが、挨拶だけして早々に帰って行った。その後オレも留守番の段取りをし、とりあえず必要になりそうな物を鞄に詰め込み、事務所を後にした。それ以来、オレが事務所に行くことはほとんどなかった。それからオレがやったのは、レッドのことを徹底的に調べることだった。小学生の頃の出席番号から、今住んでるアパートの風呂の栓のサイズまで、それこそ何から何まで。。。その後レッドの姿を見たのは、その日から1週間後のことだった。to be continued...
2006/06/25
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やけに固いベッドで寝ている。。。寝苦しくなってきて気がつき、目を開けると、天井がゆっくりとまわっていた。オレはリノリウム張りの床に転がっていた。どうやら自分の事務所にいるようだ。酒を飲んだような記憶もないが、頭がズキズキ痛む。腕に何かを抱えている事に気が付いて、ムリヤリ上体を起こしてみた。クマのぬいぐるみが、オレの腕の中でゆっくりまわっている。。。そいつを見て、少しずつ記憶がよみがえってきた。頭は痛むが、じきに治まりそうな気配がある。感触としては、どうにかケガはしていない。レッドにお腹をナイフでグリグリかきまわされたわけではなかった。。。意識がはっきりしてくるのを待って、ようやく立ち上がれるようになるまでに1時間ほどかかってしまったかもしれない。まずは、腕に抱えたクマを、大きいだけで何の機能も果たしていない金庫に、型崩れしないように注意しながら丁寧にしまいこんだ。来客用の椅子に深く座り込み、コーヒーを一口すすってみても、考えがなかなか一点に集中していかない。。。夢の中の出来事はともかく、わからないことが多過ぎる。あの時の痛みは何だったのか。そして、なぜ自分がここにいるのか、どうやってここに辿り付いたのか。。。考えはまとまらないが、ひとつの仮説が頭に浮かんだ。その仮説について検証をはじめようとしたとき、事務所のドアをノックする音が聞こえた。返事をしようか迷っている間にドアは開いた。イエロー。。。黄色いコートが入ってきた。何度か会ったことがある、マッギーの奥さんだった。to be continued...
2006/06/22
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レッドは目をオレの方に向けた。手にはヤケに眩しく光るモノを持っている。切れ味の良さそうな新品のバタフライナイフが、戦闘体制に入った状態でしっかりと握られていた。「そいつでオレを3枚におろして、お造りにでもしようってのかい?」まだ続けて言いたいことがあったんだが、オレがそこまで言い終わった、一瞬の出来事だった。それまで動かなかったレッドが突然視界から消えた。オレは下腹部に鋭い痛みを感じた。一瞬にして目の前が真っ白になった。やがて、オレは見知らぬ街を旅する夢を見ていた。。。見たことがあるようで見たことのない風景。その中を1歩1歩踏みしめながら歩いている。町並みの中の広場のようなところで、小学生になるかならないかぐらいの子供たちが10人ほどかたまっている。その他には人影は見あたらない。何かの遊びに夢中になっている。近くを通り過ぎようとしたが、その前に1人がオレに気づき、声をあげて走り寄って来た。するとそこいた全員が一斉に声を上げて走ってきて、たちまち子供たちに囲まれてしまった。無邪気に大声をあげながら、体当たりを繰り返してくる子供、服や手をつかんで引っ張る子供。。。なぜかオレはなされるがままになっていた。どれくらい続いただろうか。オレは少し強く引っ張られて上体のバランスを崩し、慌てて近くの子供の足を踏まないように気をつけながら足を踏ん張ろうとした。だが、うまく地面をつかめなかったオレは、こらえきれずに地面に座り込んでしまった。騒いでいた子供たちは急に押し黙って、座り込んだオレから少し離れ、円を描いてオレを取り囲んだ。(今度は一体何だ。。。)やがて、正面付近にいた女の子が1人ゆっくりと、オレの方に向かって歩いて来た。胸の辺りで人形のようなものを抱えている。すぐ傍まで来ると、その子は手に持っていたものを、オレに向かって差し出した。(クマのぬいぐるみ。。。オレに渡そうっていうのか?)質問したいのだが、どうしたわけか声が出ない。。。ただ、そいつをオレに渡そうとしているのはわかった。(受け取るしか、なさそうだな。。。)オレが手を伸ばすと、その女の子は少し微笑みながら、そいつをオレの手に渡した。思ったより手にずっしりと重みが感じられた。意外な重みに少し驚いて、その子に向かって笑って見せようか、と思って見ると、少し表情が強張っていた。どうしたのかと思って、肩に手をやると、その子の目から大粒の涙が溢れて出てきた。胸が苦しくなった。その子の方をまともに見ていることができなくなり、手渡されたクマを返そうとした。その瞬間、鈍器で頭を殴打されたような痛みを感じた。場違いなほど大きな音がした。ハリセンで叩かれたお笑い芸人のように、その場に倒れこんだ。。。to be continued...
2006/06/21
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「一体何の話をしてるんだい?」いつもと違って苛ついた調子の返答だった。「少し聞いてくれ。例の素行調査の女の件なんだが。。。」少し間を空けて続けた。「彼女は両親を事故で亡くしてる。 実は俺はその事故に少し関わっててね。。。」そこでマッギーは少し口ごもった。何か言いたい事を抑えている。「そうか、わかったよ。 お前の過去の傷はオレが預かっておこう。」そう言ってオレは電話を切った。(やれやれ、オレは何をしたいんだか。。。)翌日からオレは、毎朝レッドのアパートで待つ事にした。毎朝、レッドが出てきそうな気配がするとオレは車から降りて、出かけて行くのを横目で確認し、見えなくなってしまう頃を見計らって車に乗り込み彼女を追い抜く。なぜかそんなことを続けてみた。やがて、毎朝お互いに軽く挨拶を交わすようになった。1ケ月ほど経った頃だろうか、朝いつものようにレッドは外に出て来たが、その日はいつもと様子が違っていた。しばらく考えて、どうやらそれまで出かける時はいつもピンクの服を着ていた、ということに初めて気がついた。赤いコートを着ている。。。そこに気づいたオレは、またいつものようにあらぬ方向を向いて、通り過ぎるのを待ったがその日はそうはならなかった。こっちに向かって歩いてくる。。。初めてのことだった。ほんの数メートルほどのところまで来て立ち止まった。オレはうつむき加減に横を向いたまま、これから何かが始まる、ということを悟っていた。できれば何も言わず通り過ぎてくれることを祈っていた。何も言わずに立ち止まったまま、長い時間が過ぎた。オレが彼女の方を向いた瞬間、全てが始まる。。。(やれやれ、どうやら逃げ道はなさそうだ。)オレは意を決して、彼女の方を向いた。思いつめた表情で遠くを見つめる彼女がいた。to be continued...
2006/06/20
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振り返ると、ピンク色のスーツ姿のレッドが立っていた。不意を突かれてしまったが、もしかしたらこうなることは解っていたのかも知れない。今になって思うとそんな気がする。本当なら、慌ててその場をなんとか取り繕うことになるはずだが、その時のオレはなぜかそうはしなかった。「特に用事ってわけではないさ。あんたを見張るように頼まれてね。それだけだよ。」なぜそんなことを言ったのか自分でも解らないが、レッドは妙に納得したような表情を見せた。「そう。まぁ頑張ってね。」そう言い残してレッドは、いつもの帰宅ルートの方向へ歩いていった。後を追いながら、オレは正直戸惑っていた。尾行がバレていたとは思えなかったが、実際バレていた。しかし、それはオレのミスだからしょうがない。問題は、自分の発言と彼女の返答だ。少し常識から外れている。彼女が帰宅して、仕掛けておいた盗聴マイクから聞こえてくる物音を聞いている間も、そんなことを考えていた。とそのとき、声が聞こえてきた。電話で話しているらしい。あまり明瞭には聞こえないが、どうも他愛もない話をしているようだった。特に内容にこだわる必要はなさそうだったが、あまり会話とは関係のないところで「ピンクのゾウ」という言葉が2度使われた。そんなことを考えている時に、マッギーから携帯に電話が入った。「パーロウ、話があるんだが・・・」と言ってきたので、オレはすかさずこう答えた。「どうせピンクのゾウの話だろう?」to be continued...
2006/06/15
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肌寒い季節だった。マッギーからある女性(仮にレッドとしておこう)の素行調査の仕事が舞い込んで来た。ヤツから持ち込まれる仕事は極秘ルートからのものなので、何が起こるかわからない。調査しているつもりが逆にこっちの素行調査をされてる、なんてことも考えられる。たかが素行調査とはいえ注意が必要だ。まずは、出勤から帰宅まで尾行し、オフィスの外から仕事中の様子を伺い、交友関係、よく行く場所などをチェックする。アパートに一人暮らし、朝は7時に出勤し、仕事が終わって買い物をすませて帰宅。。。帰宅した後は、特に出かけるふうでもない。2日めの調査が終えたところで、特にあやしいところはないように思えた。ただ、ほんの一瞬だが少しまわりの視線を気にしているように感じた。こちらの気配を察しているのか、とも考えたが、どうもそういう性分らしいことは仕事ぶりを見ていて感じた。3日めの仕事を終えたのが確認できた。そして建物からレッドが出てくるのを待った。10分ほどその場にいただろうか。前の2日はそれほど待った記憶がない。。。階段に蹴つまづいて怪我でもしたか?そんなことはないだろうが、別の出口から出たのかもしれない。少し不安になり、その場を離れようと歩き始めて2・3歩ほどで背後から声が聞こえた。「あたしに何か用?」to be continued...-----独り言-----こんな調子だと何日かかるかわからねえ。。。
2006/06/14
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オレとしたことが、ちょっとしたヘマをやらかしちまって、この事務所にもあまり近寄れなくなってたんだよ。おかげで随分と長い間留守にしちまった。まぁ時々は、必要な書類やクマのぬいぐるみを取りに戻ってきてはいたんだがね。。。ヘマのはじまりは、ある人物から荷物を預かってしまったことだった。この人物がとんだクセ物だったわけで、当然そのブツもとんだシロモノだった。この時点でそんな荷物なんぞ、そいつもろとも窓から放り出してしまえばよかったんだ。。。このブツをしょいこんだことで、また別の人物からも荷物を預けられる羽目になった。どうもオレはコインロッカーと間違われてしまったらしい。世の中では誰も彼もが、探偵に自分の荷物を預けたくなるような時代になったのか、と疑いたくなったよ。詳しい話は次回(連載しようかな。。。)
2006/06/13
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