フィリップ・パ~ロウ探偵事務所
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1
私は見覚えのない鬱蒼とした林の中に立ち尽くしていた。月明りにしては、ヤケに周りの物がはっきり見え過ぎているような気がした。足元でタコヤキの奥さんが、雑草と漬物石と小さな水たまりをベッドにして横たわっている。。。記憶ではほんの少し茶髪にしていただけのはずだったが、月の光の加減か妙に光っていた。私は彼女を『ブロンド』と呼ぶことにした。よく眠っている、と感じたのは一瞬の間だけだった。さすがにゾッとした。ブロンドの足先から腹部にかけて、数匹のヘビが絡まり合っていた。そして、ゆっくりとした動きで体の上を這っていく。。。私は慌ててそいつを払い落としてやろうとした、だが、どうしたことか体が全く動かない。『起きろー!』と声をかけているつもりであるが、その声も届いていないようだった。(このまま見ているだけしかねぇってことか。。。)ヘビが何匹いるのか数えてみようとするが、両端が頭になっているためだろうか、途中でわからなくなった。5匹あたりまで数えて、混乱してまた最初から数え直す。。。そんなことを3度ほど繰り返した。その間に、1匹がブロンドのアゴのあたりに接近していった。暗くてよくわからないが、濃い赤色のスプリット・タンがチロチロと見え隠れしているのがわかった。ブロンドは気を失って倒れてしまっているのかも知れない。。。私がそのことに気付くには、少々時間がかかり過ぎだ。眉間のあたりがかなりの不快感をよく表している。私も気を失ってしまいたい気分だったが、不幸にも私の精神構造にはそんな便利な機能が備わっていない。体が動かないのがもどかしい。ヘビはそれぞれが、時々舌を見せながら無表情な目つきでゆっくりと這いずり回っていた。私は繰り返し『しっかりしろー!』『やめろー!』とブロンドとヘビに向かって交互に怒鳴った。自分でも声がかすれてきているのを感じたが、本当に声がでているのだろうか。。。そんな事を思い始めた時、どこからか『通りゃんせ』の曲が聞こえてきた。一瞬、信号が青に変わったのか?と思ったが、こんな所に信号などがあるはずもない。調子はずれで不安感に襲われる。ところどころの音が外れているのだった。何のことはない、その音の発生元は私の携帯電話だった。もちろんそんな着メロに設定するようなことはしないし、寝る前にアラームをかける時以外はマナーモードにしている。何か狂っている。。。(そうか、アラームだ。。。)「起きてたかい?」電話を耳に当てて聞こえてきたのはタコヤキの声だった。現実の世界に戻ってくるのに少々時間がかかった。近所のファミレスで待ち合わせする予定だったが、念のため約束の時刻の1時間前に一度電話をくれるように頼んであったのだった。to be continued...
2006/09/11
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