2004年07月12日
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『豊饒の海』四部作の四作目『天人五衰』

天人五衰とは
天人の命が尽きようとする時、俄に表れるれる5種の衰亡の様子
衣服が汚れ垢が目立ち、頭上の華は萎え、身体からは臭いを発し
腋下から汗が流れ、その座を楽しまなくなる
天人といえども、たとえ長生きしようとも結局は俗世の存在であり
五衰が生じはじめると、死からは逃れられない
広辞苑と、この作品にある説明をまとめるとこんな感じかな

本多繁邦は76歳、妻は他界してすでにひとり


駿河湾を望む船舶信号所で働く16歳の安永透とめぐりあい
ひと目で自分と同じ悪の素質を見抜く
透に例のホクロを確認するや養子に迎える決心をする、夭折から救うために

それは、本多の、清顕につながる命への友情の証、と言うよりは
自分の属せない美しきものに対する嫉妬ではないだろうか
自らの命が終焉にちかづき、見守る命もおそらくこれが最後
見届けられないものならば、いっそ壊したいほどの想いの裏返し

しかしなぜ、透は本多と同類の悪意を持つのだろう
それは、透が偽者だから?
いや、そうではないだろう、きっと彼は本物なのだろう
清顕や透の一途さは、ジン・ジャンですでに崩れはじめていたように思う

自分はこの世のものでないような、そんな錯覚を覚えさせ
自我の意識のみが透の心に純粋培養されていったのではないだろうか

崩壊へ向かう輪は、たださまよっていただけかもしれない
記憶を失い穏やかに語る聡子の魂は、すでに清顕より先に安住の地へ向かい
その輪が解けるのを待っているのだと思いたい

もともと無が分かれて陰陽になり、有が生まれたのだろうから
私自身に宗教的思想も、歴史的考察も足りず、未だ理解及ばずの感
何度も読み返し、少しずつでも真意を得たい
とても深みのある、美しい日本語に溢れた四部作

この作品が書き上げられたのは、昭和45年11月25日。





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最終更新日  2004年07月12日 08時24分58秒
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