迦陵頻伽─ことだまのこゑ─

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2026.09.18
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カテゴリ: 浮世見聞記
太田記念美術館の「没後50年記念 鳥居言人」展を觀る。



江戸の昔から芝居小屋の正面を彩ってきた鳥居派の繪看板、鳥居言人(とりい ことんど)はその八代目であり、晩年には父も名乗った鳥居清忠を五代目として名乗る。

言人が生まれた明治三十年(1900年)とは、江戸時代までの日本人の価値觀が西洋文明と思想によって破壊と變換の只中にあった時代であり、多感な年頃をその狭間の時代で過ごした傳統的鳥居派の跡取りは“家業”に疑問を持ち、十代には父である七代目を手傳ひつつも、やがて歌川派の流れ出た新興日本画の旗手であった鏑木清方の門下となり、新版画の美人画で名聲を得る。


(※案内チラシより 以下同)

一方で師の鏑木清方や有職故實を教はった小堀鞆音からは“家業”を大事にするやう諭され、さうして傳統的鳥居派の後繼者として家業も會得して新旧二刀流の畫家となったことが、のちに大きな財産となる。



美人を描けば新旧どちらもえも言はれぬ色氣が漂ひ、傳統的に歌舞伎の人物を描けば大輪な迫力のなかに柔らか味も漂ひ、いづれも鳥居言人の主張が邪魔にならず、しかしはっきりと表れてゐるところに、私は江戸時代から續く家の八代目としての真価があると見る。

特に「道行旅路花聟」から取材したお軽の清純な美貌と、首の線だけでその下の振袖衣裳(着物)に隠れて見えない繊細な身体をも表現する香りは、なるほどこの女とならばお家を捨てて駆け落ちしてもいいと思はせるだけの説得力(ちから)があり、これこそが歌舞伎(しばゐ)を熟知した者でなくては描けない、遊女になっても愛を信じるしなやかにして芯の強い女の肖像なのである。





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最終更新日  2026.09.19 00:42:46
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