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chiko619 @ Re:新参者(09/22) 「新参者」読みました。 東野圭吾さんは、…
kimiki0593 @ 相互リンク 初めまして、人気サイトランキングです。 …
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ はじめまして^^ 先ほどこのロングインタビューを読み終え…
2011.10.30
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カテゴリ: 社会・政治・時事

 利発で溌剌とした新皇帝の登場は、人々にとって新鮮であった。
 当時の支持率は、三代皇帝カリグラに優るとも劣らぬ高率であったはず。
 しかし、それは前皇帝クラウディウスの統治失策によるものではない。

 それでは、なぜ人々は、これほどまでに16歳の若者を好意の眼で迎えたのか。
 前皇帝は「安全」「食」の二大重要事項は、見事に保証していたというのに。
 それは、人々が60歳を越える不格好な、説諭調の歴史家にうんざりすると共に、
 元老院が秘書官政治のあり方に、大いなる不満を持っていたからである。

  人間は、問題がなければ不満を感じないというわけではない。

  それを不満の種にするのは人間性の現実である。
  このような人間を相手にしなければならないがゆえに、
  「政治は高度のフィクションである」(丸山真男) と言われたりするのだと思う。
  一般市民がネロの皇帝就任を歓迎したのは、ただ単に、気分の一新を望んだからである。
  元老院の歓迎の理由は、解放奴隷で成る秘書官政治の廃止を期待できたからであった。(p.16)

ここに至り、十代の新皇帝の摂政役として事実上の統治を行おうとした
ネロの実の母・小アグリッピーナの野望は、実現したかに思えた。
だが、やがて自立し始めた息子は、そんな母親に反抗し始める。
そして紀元59年、息子は母親殺しを、彼女に怨念を抱くアニケトスに命じたのだった。

25歳になったネロは、相変わらず高支持率を維持していたが、
身近なところからネロを守り立ててきた近衛軍団長官ブルスを病死という形で失い、

こうしてネロは、彼に直言できる存在であった二人の人物を同時に失ってしまった。

そして3年後、ネロ暗殺を謀った「ピソの陰謀」が発覚した際、
それへの加担を疑われたセネカは自死に追い込まれる。
さらに翌年には、軍団の青年将校たちが、東方問題で活躍したコルブロを帝位に就けようとした
「ベネヴェントの陰謀」も発覚するなど、ネロの足下は大いに揺らぎ始めたのだった。


しかし、ローマ市民は、食の保証に対する不備をきっかけに反ネロで立ち上がった。
すると、一転して元老院はネロを国家の敵とする宣言を可決、近衛軍団もガルバを皇帝に推挙。
ここに至り、ネロはローマ郊外の隠れ家で、自死に追い込まれたのである。

このネロを最後に、アウグストゥスが始めた「ユリウス・クラウディウス朝」は崩壊。
この後、ローマが安定するのは、1年半の内乱の中で、
ガルバ、オトー、ヴィテリウスという三人の皇帝交代劇を経て、
一地方都市出身者に過ぎないヴェスパシアヌスが、皇帝になってからのことである。

  しかし、アウグストゥスの「血」とは訣別したローマ人も、
  アウグストゥスの創設した帝政とは訣別しなかったのである。
  カエサルが青写真を描き、アウグストゥスが構築し、ティベリウスが盤石にし、
  クラウディウスが手直しをほどこした帝政は、
  心情的には共和政主義者であったタキトゥスですら、帝国の現状に適応した政体、
  とせざるをえなかったほどに機能していたからだ。(p.223)





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Last updated  2011.10.30 22:08:40 コメントを書く
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