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chiko619 @ Re:新参者(09/22) 「新参者」読みました。 東野圭吾さんは、…
kimiki0593 @ 相互リンク 初めまして、人気サイトランキングです。 …
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ はじめまして^^ 先ほどこのロングインタビューを読み終え…
2015.07.26
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 同じような内容だろうと思って読み始めたら、全く違った。
 まさに、今年一番の衝撃の一冊。
 さすが、岡田尊司さんというところか。

 なぜ、この本が、もっと話題にならないのか不思議に思う。
 しかし、それがマスコミの実態ということなのだろう。
 スポンサーにとって不都合なこと(つまり自身の不利益に繋がること)は、
 決して積極的に発信なんかしない。

   ***


  男性では、オンラインゲームや動画への依存が多く、
  女性では、LINEやフェイスブック、ツイッターといった
  SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)や
  ソーシャル・ゲームに依存する人が多い。(p.34)

まぁ、そうだろう。
これぐらいなら、驚かない。

  ところが、中学生もスマートフォンをもつ子が増えている。
  親が子どもにスマホを買い与えるとき、
  ちょっと進んだ携帯電話を与えるというくらいの感覚ではないだろうか。
  だが、それはあまりにも甘い考えだ。
  携帯のメール機能だけでも、はまってしまってなかなか寝ない中学生が続出した。

  コンピュータと劇場と通信ネットワークとスロットマシーンが、
  掌に与えられたようなものだ。
  それを寝床までもっていくのは、ニューヨークのタイムズスクエアかラスベガスで、
  煌々と光る電飾看板に照らされながら寝ようとしているようなものだ。(p.37)

例えが、これ以上ないくらいにとても上手いが(特にスロットマシーン、ラスベガス)、

それを知らないのは、逆に無知としかいいようがない。

  線状体は快感の中枢であり、その領域でのドーパミンの放出増加は快感をもたらす。
  人であれ、サルであれ、快感をもたらした行為を、繰り返すようになる。
  それが依存を生むことにもつながっていく。
  わずか50分間のゲームが、
  覚醒剤の静脈注射にも匹敵する状態を脳内に引き起こしていたのである。(p.39)

精神科医である筆者に脳内画像診断データを提示され、初めて読者は気付くのである。
「これは、ひょっとすると凄いことになっているのではないか……」と。

  重度のギャンブル依存症では、勝負に勝とうが負けようが、
  変動する確率にワクワクする興奮そのものが刺激であり快感となっているのである。
  依存症に陥った人の行動を周囲からみると、どうしてそんな行動に、
  時間とお金と健康を無駄にしているのかと、ばかばかしく思えるに違いない。
  パチンコ依存の人は、平均で年間150万円くらい損をしていると言われている。
  20年続ければ、3,000万円だ。
  競馬にしても、その期待値(平均的な回収率)は、0.75であり、
  100円の馬券を買えば75円しか戻ってこない。
  つまり、やればやるほど損が膨らむ運命にある。
  それが数学的な真実であり、勝ったり負けたりしながら
  最終的には負けが膨らんでいく。
  だが、ギャンブル依存の人は、負けてもドーパミンが出続けてしまい、
  金銭的な損得よりも、賭けること自体が報酬になっているのである。
  そのことを理解すれば、損が膨らもうと賭けつづけることにも納得がゆく。(p.45)

ここへ来て、スマホをスロットマシーンやラスベガスに例えた理由が見えてくる。

  前述の通り、2013年5月に、アメリカ精神医学会より出された最新診断基準であるDSM-5に、
  インターネット・ゲーム依存症が初めて、
  「インターネットゲーム障害」として採用されたのである。
  異議を唱える勢力の執拗な抵抗に遭いながらも、どうにか多数派を占め、
  一定の同意をみるに至ったのである。
  最初のゲーム依存の報告から、30年かかったことになる。(p.60)

私も、DSM-5関連の書物は、
『精神医療・診断の手引き』 や  『<正常>を救え』 等、何冊か読んでいたが、
そのものをしっかりと読んではいないので、
「インターネットゲーム障害」については、見過ごしていた。

  さらに2012年から、16歳未満の児童に対して、
  深夜零時から朝6時までインターネット・ゲームへのアクセスを規制している。
  こうした姿勢と取り組みによって、
  韓国のインターネット依存症の有病率は低下傾向にある。(p.188)

韓国は、相当酷い状態だというのは知っていたが
規制により、何とか最悪の事態は食い止めたようである。

  事態を重くみた中国当局は、2007年4月から、
  オンラインゲーム依存防止システムを試験的に導入した。
  これは、18歳未満の児童が1日に3時間以上プレイした場合は、
  それまで稼いでいたクレジット(ゲームをする権利)が半分になってしまい、
  5時間以上だとゼロになってしまうという仕組みである。
  18歳未満の児童であるかどうかを把握するため、中国ではオンラインゲームをする場合、
  本名での登録が義務付けられ、身分を証明する住民登録番号も必要となる。
  こうした規制にゲーム会社も協力し、2011年から全面的に実施されている。
  また、治療の面でも、中国は世界で最初にインターネット依存を臨床的な障害、
  つまり病気として捉え、積極的な対策に乗り出している。
  また、インターネット・ゲーム依存となった若者の治療のための
  軍隊式の教育キャンプが設置され、そこで多くの若者が実際に治療を受けている。(p.189)

中国でも、相当思い切ったことを実施している。
まぁ、中国だから出来るのだとも、言えるかもしれないが。

  繰り返すが、インターネット依存、インターネット・ゲーム依存を防ぐうえで重要なのは、
  親子の関係や、それと直結する愛着の安定性である。
  親子関係が不安定で、愛着も不安定な場合には、
  家庭内の居場所や家族からのサポートが乏しくなるだけでなく、
  家庭外での対人関係にも問題を抱えやすく、
  インターネットやゲームの世界にしか逃げ場所が見出せなくなってしまう。(p.210)

岡田さんの近著には 「愛着」 「家族関係」 に関するものが多く見られるが、
本著では、それらが見事に一体となって、融合している感じがした。

  依存が重度で理性的なコントロールがまったく利かないケースや、
  発達に課題を抱えているようなケースでは、
  無理に取り上げるとパニックになり、危険な行動を誘発しやすい。
  こうした対応は、お勧めしない。
  むしろ、依存するという行為には、
  そうせざるを得ない理由があるのだと理解した方が良い。(p.230)

そして、どのように治療しサポートするかを、豊富な症例を交えながら、段階的に説明している。
この部分は、まさに臨床の精神科医にしか書けない部分であり、本著のクライマックスである。

(1)関係を作り、安心感を取り戻す段階
(2)自覚を芽生えさせる段階
(3)背景にある問題を吐露し、整理する段階
(4)変化への決意を引き出す段階
(5)決意を行動に移す段階
(6)現実の活動をサポートする段階

親子関係や家庭外での対人関係に問題を抱えている人たちはとても多い。
そして、その逃げ場所にインターネットやゲームの世界はなっている。
巻末の「インターネット・ゲーム依存症 チェックリスト」では当てはまらなくても、
「スマートフォン(スマホ)依存症 チェックリスト」で当てはまる人は、相当数いるだろう。

  一旦依存症になると、そこから得られる報酬によってだけでなく、
  やらないと生じる離脱症状によって、文字通りにやめることを困難にする。
  飴と鞭で二重に縛られてしまうのだ。
  それが、「デジタル・ヘロイン」と呼ばれるゆえんだ。(p.282)

「デジタル・ヘロイン」
何とも物騒な言葉だが、これがもっと世間に認知される必要がある。

  韓国、中国、タイ、ベトナムでは、すでに児童の利用には一定の規制が行われ、
  効果を上げている。
  一方日本は、対応の遅れから、
  小学生にまでインターネット・ゲーム依存が広がっている状況だ。
  阿片が蔓延し亡国の道を歩んだ清朝中国の二の舞にならないためにも、
  国が主体性をもって国民の未来を守るという姿勢を、
  危機感を持った決意と行動で示して欲しいものである。(p.286)

この筆者の叫びにも似た警告の言葉を、
日本に住む住民は、きちんと受け止めることが出来るのだろうか。
それなしには、決して国は動かない。





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Last updated  2015.07.27 22:46:03 コメントを書く
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