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2007年05月25日

『天窓のある家』篠田節子（新潮文庫）

(5)

テーマ：最近、読んだ本を教えて！(24657)

カテゴリ：読書感想

解説に『女たちのジハード』裏バージョンとある。言い得て妙。

篠田節子の長編には堪能しているが、短編もうまいなーと思う。

オカルトっぽいのもあるんだけれども、すっと入っていける。
そして怖い。自分にもあるオカルト的偏執狂的なところが暴かれよう。

なりゆきに笑えず、泣けてくる。

ひとつ紹介。

「誕生」

読んでいるとお腹が痛くなってくるような短編だ。

直子は総合職のキャリア、若年課長になってばりばり働いている。

しかし仕事中に発作を起こし、痛みの脂汗のあげく、赤ん坊を産んだ幻想に落ちる。
理由はわかっている。流産したことがあるのだから。

忙しい仕事にかまけて自分の責任だったかもと悩んでもいた。
いや、仕事のためにはこどもはいらない、と言い切れない深刻さもある。

幻想で産んだ子にとりつかれ、理性では計り知れない行動を取る。
すなわち、お祓い、供養に大金をつぎ込む。仕事は降格。

ついに職を失う。幻の子が成長するとともに生きていこうとする。

終わりにちかい次の文章が印象的。

（文庫本P267）