やっぱり読書  おいのこぶみ

やっぱり読書 おいのこぶみ

2015年04月08日
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カテゴリ: 読書メモ

昨日も今日も雨、菜種梅雨ということか。しかも寒いので、部屋にこもりきりだ。本が読めていいんだけれど、それも続くと飽きてきて、机のまわりや書棚を眺めまわす。

「あら、こんな冊子がある」と手に取って読みだしたら止まらないのがあって終日読みふける。

鎌倉書房1993年10月発行、 マダム増刊号『森瑤子 愛の記憶』
1993年7月6日に亡くなった森瑤子さんの追悼雑誌だ。

各界の友人関係者の追悼文やら、写真が散りばめられ、ご本人の短文やエッセイ、旅行記がある。
あたりまえなのだが、物書きを職業としている方の文章と、友人親族ではあるけれども、
それが職業ではない人との文章の端正さの違いが判然としてくるのは仕方がない。

しかし、森さんの文章のいいこと、うまいこと!やっぱりなあ。

この冊子に収録してある『マスカレード』短文集の惹句
「仮面舞踏会の女主人公は、素顔をいくつものマスクで覆い、自分に友に本音を語る」
に文字通り惹きつけられた。

35歳で主婦から作家になって、52歳で亡くなってしまった駆け抜ける様な煌めき。
遺された肖像写真には過剰なほどの華やぎの姿。主婦のころのアルバム写真には普通の子育て主婦の姿が写っており、
今にして思えばそれも森瑤子さんの独特の表現であったのだ。

作曲家の三枝成彰さんが寄せた文にこうある。

35歳で作家としてデビューするまでは、妻として、三人の娘の母として、自己を表現する手段何ら持たなかった。そんな40歳が近づく彼女を激しく駆り立てたのは、「自分が自分であること」のあかしであった。そのあかしのために彼女は「書く」という創造の仕事を選んだ。

(中略)

 しかし、ぼくのような作曲や森さんのような作家に限らず、何かモノを創るということは、普通の人には考えもつかないつらい作業である。交代も衰えも許されず、その表現そのものだけが、ありとあらゆる人々の批判の目に曝されるという仕事である。
 そのような仕事を選んだ森瑤子さんは、あくまでもそういった作家であろうとした。さもなくば、彼女の存在そのものが崩れ落ちてしまうという、ぎりぎりの崖っぷちを歩くことを自らに強いたのである。

お付き合いは古くないとおっしゃる三枝さんのなんと人を見る目の確かさ!

*******

上記、もっともらしく記したけれども、読書ノートを見たら実はこの冊子8年前に読んでいるの、すかっかり忘れて忘却のかなた。どうりでエッセイを読んでいて、記憶あるなと変な気持ちになったのだけど、ノート見るまで気が付かないというボケ振りで。

そのブログが 2007年3月27日の「会話」 である。

森瑤子








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最終更新日  2015年04月08日 13時57分59秒
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Re:忘れてはいけない(04/08)  
alex99  さん
密かに思っているのですが
ブロッガーという存在も
小説家のような芸術性は持ち合わせないが(笑)
普通の人間ではないかも知れませんね

他人のブログにコメントを入れるだけの方が
気楽だし責任もないし楽だろう
とは思うのですが
しかし、よく考えてみれば
私は、そのようなコメンターでいるだけでは
気が済みません(笑)

気になること、ひっかかることがあると
どうしても、自分の主張をブログ記事として、一応、ちゃんととした形で完結させたくなる
長文にもなる
言いたい事が納まらないツィッターなど、まったく興味がありません

因果な性分です(笑)



(2015年04月08日 16時20分22秒)

Re[1]:忘れてはいけない(04/08)  
ばあチャル  さん
alex99さん

常にアンテナをはって、広く深く物事をとらえて、ご自分の意見を真摯でありながらユーモアをこめてするどく、しかもほとんどとぎれなくブログになさっているalexさんはすごいなあと尊敬しております

このようなブログ(文学や芸術ではないのでしょうも)でも続けるのは並大抵ではありませんよ
その意志はなるほど因果とも言えますね

けれども根底にあるのは誠実な人生における思惟じゃないでしょうか

わたくしなどこれで無くなればなにほどの意識を持った者であったか完全に忘れられる蟻のような存在でしょうと思います
それでもいいのですが、せっかくこんな機会があるのなら...って思うのですが、それでも続けていくのは至難のような(笑

えらそうに言いましたが、ほんとうは
さすがalexさんブログの真意を見抜かれましたm(__)m


(2015年04月09日 07時55分15秒)

Re:忘れてはいけない(04/08)  
alex99  さん
過分なお言葉を戴き、恐縮です
私は、ばあチャルさんの継続的で精力的な読書を尊敬しております
私には、とても出来ない事です

>けれども根底にあるのは誠実な人生における思惟じゃないでしょうか

この言葉に尽きますね
結局、いまさらですが、人間は考える葦、なんですよね

・ 言葉の発明
・ 文字の発明
・ 紙の発明
・ コンピューターの発明
・ インターネットの発明

こういうものの恩恵で、生きている証・脳内活動の証・思惟を、揮発性の「言葉」ではなく、書き物にしたり、ネットに載せる
人間とは、不思議な存在だと感じます



(2015年04月09日 09時03分52秒)

Re[1]:忘れてはいけない(04/08)  
ばあチャル  さん
alex99さん

>過分なお言葉を戴き、恐縮です
>私は、ばあチャルさんの継続的で精力的な読書を尊敬しております
>私には、とても出来ない事です


こちらこそいつもコメントをくださりありがとうございます
とてもとても励みになっております


>>けれども根底にあるのは誠実な人生における思惟じゃないでしょうか

>この言葉に尽きますね
>結局、いまさらですが、人間は考える葦、なんですよね

>・ 言葉の発明
>・ 文字の発明
>・ 紙の発明
>・ コンピューターの発明
>・ インターネットの発明

>こういうものの恩恵で、生きている証・脳内活動の証・思惟を、揮発性の「言葉」ではなく、書き物にしたり、ネットに載せる
>人間とは、不思議な存在だと感じます


70歳を過ぎますとたぶん世間もそしておそらく自分も、充分生きたと、なにがなしどこかで思っていると思われます

それなのに考えることは止まないのです
わたしなどずっと死ぬまで正気で居たいのですが
どうなりますか

その発露の手段がここってことになっているみたいですね
ありがたいと思います


(2015年04月10日 16時38分21秒)

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