「七十歳死亡法案が可決された。
これにより日本国籍を有する者は誰しも七十歳の誕生日から30日以内に死ななければならなくなった。例外は皇族だけである。尚、政府は安楽死の方法を数種類用意する方針で、対象者がその中から自由に選べるように配慮するという。<週刊新報・2020年2月25日号>」
というブラックユーモアで始まる垣谷美雨ワールドに、はまってしまうわたし77歳。はじめは自虐的に読んでいたけれど・・・。
物語は宝田家の「嫁」東洋子(55歳)がわがまま放題の姑(84)を介護して15年間。能天気な夫(58)、転職中なのに引きこもりの息子(29)、娘30は家を出ていて無関心、家族は手伝ってくれない孤立無援状態なのであったが、この法案が強行採決されてほっとしているところから始まる。
だがその2年が待てなくなった東洋子は家出を決行。 死亡法案によって後12年しか生きられないと思った夫は、早期退職して念願の世界一周旅行に友達と勝手に出かけてしまっている。寝たきりの状態のおばあちゃんの世話は引き込もり孫息子にかかってきて、祖母の娘たちも冷たい、姉も知らん顔、父は帰ってきてくれない。小金があるのに祖母は介護サービスは嫌だという。さあ、大変なことになった・・・。
わかりやすくて、テンポがよくて、笑いながらサラッと読めてしまったけれども、本当だよね。
解説(永江朗氏)にある
「タイトルは刺激的で設定もいささか露悪的」「荒唐無稽ではあるけれども」 「長寿化は不幸の種のひとつ」「と誰もが心の底で思っている現実を突いている。」
それと同時に
「家事労働を貶めて」「家事労働に携わる働き手を忌避、買い叩く」を非常に明確に表しているのである。
また、介護職の専門性への尊厳、待遇がよくならなければこれからの日本は無いのではないかと思う。
よみがえり 2023年12月21日
こういうエンタメが好き 2023年12月19日
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