ビストロフの橋

ビストロフの橋

October 9, 2005
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テーマ: 連載(82)
カテゴリ: カテゴリ未分類
 目を皿のようにして見つめている僕におびえたように笑いかけクィレル教授は先に立って歩き出した。
 今度こそ、間違いなくウサギ穴だとウィルは思った。ウサギ穴の向こうは不思議の国、ロンドンの町並とは明らかに違う光景が見渡す限り続いている。
 ウィルはクィレル教授の後にくっついて歩いた。迷子になるのだけは勘弁してほしい。二人がアーチをくぐり抜ける。ウィルが何気なく振り返ったときには、アーチは見る見る縮んで、固いレンガ壁に戻るところだった。
 そばの店の外に積み上げられた大鍋に、日の光がきらきらと反射している。上には看板がぶら下がっている。
 『鍋屋ー大小いろいろありますー真鍮、鈴、銀ー自動かきまぜ鍋ー折畳式』
 その横の薬問屋らしい店で、小太りのおばさんが叫んでいた。
 「ドラゴンのきも、三十グラムが十五シックル? さっきんとこより安いじゃないか」
 薄暗い店から、低い、静かなホーホーという鳴き声が聞こえてきた。看板が出ている。
 『イーロップのふくろう百貨店ー森ふくろう、このはずく、めんふくろう、茶ふくろう、白ふくろう』


 箒の店、マントの店、望遠鏡の店、妙な飾りのついた鞄を売ってる店なんかもある。
 何かの動物の内臓や目玉がうずたかく積まれたショーウィンドウ。今にも崩れそうな呪文の本の山。羽根ペンや羊皮紙、薬ビン、月球儀・・・。
 「ぐ、グリンゴッツです」クィレル教授の声がした。
 小さな店の立ち並ぶ中、ひときわ高くそびえる真っ白な建物だった。磨き上げられたブロンズの観音開きの扉の両脇に、真紅と金色の制服を着て立っているのは・・・
 「こ、小鬼です」
 そちらに向かって白い階段を昇りながら、クィレル教授は震えているようだった。小鬼はウィルより頭一つ小さい。浅黒い賢そうな顔つきに、先の尖った顎髯。それに、なんと手の指と足の指の長いこと。二人が入り口に進むと、小鬼がお辞儀した。中には二番目の扉がある。
 「あ、ごめんなさい」
 クィレル教授が急に立ち止まったのでウィルはまともにぶつかってしまった。クィレル教授は銀色の扉を恐々見ていた。なにか言葉が刻まれている。
   見知らぬ者よ 入るがよい
   欲のむくいを 知るがよい
   奪うばかりで 稼がぬものは

   おのれのものに あらざる宝
   わが床下に 求めるものよ
   盗人よ 気をつけよ
   宝のほかに 潜むものあり
 「こ、ここまでく、来れば、も、もういいでしょう。、ここからはひ、一人で、い、行きなさい」





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Last updated  October 9, 2005 09:44:15 AM
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