吟遊映人 【創作室 Y】
2025
2024
2023
2022
2021
2020
2019
2018
2017
2016
2015
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
全1件 (1件中 1-1件目)
1
【 教皇選挙〈コンクラーベ〉 】「これはコンクラーベだ。戦争ではない」「れっきとした戦争だ! だから君もどちらにつくのか立場をはっきり決めろ!」毎日茹だるような酷暑を乗り越え、朝夕肌寒ささえ感じられるようになってきた。静岡県伊東市長の学歴詐称疑惑は、言ってしまえばこんな愚にもつかない内容にもかかわらず、全国ネットで放送され、地元住民にとっては「なんだかなぁ」という複雑な心境なのではと、お察し申し上げる。本来なら、伊東と言えば、東伊豆における熱海に次ぐ観光スポットであるし、もっと伊東の魅力の何たるかを全国に発信したかったに違いないからだ。こちらの報道をざっくり言うと、伊東市長である田久保眞紀市長が「東洋大学卒」と、うたっていたのだが、実は卒業していなかったのでは?と言う顛末。その疑惑に鋭く反応した市議会議員らが、こぞって田久保おろしを始めるのだ。それはともかく、ちゃぶ台返しのように流れを変えたのは、議会の解散。田久保市長、恐るべし・・・これにて伊東市は、市議選に突入することとなった。そんな折、私は『教皇選挙』コンクラーベを見た。(こんなことを言ってはアレだが、伊東市における市議会議員選挙とはスケールが違う)あらすじは次のとおり。世界三大宗教の一つであるキリスト教。そのうち最大教派であるカトリックの総本山がバチカンである。その最高指導者であるローマ教皇が死去した。ルールに則り、教皇の座をずっと空席にしておくわけにはいかない。すぐに新教皇を決めるべく、教皇選挙〈コンクラーベ〉が行われることとなった。全世界に14億人以上の信徒を有するカトリック教会だが、その中から100人を超える候補者たちがバチカンに次々と集まって来る。彼らを取り仕切るのは、首席枢機卿であるローレンス。一筋縄ではいかない候補者たちのスキャンダルの数々に、ローレンスは苦悩し、半ば絶望的になる。世界中が固唾を飲んで注目するコンクラーベは、実は聖職者同士の熾烈な戦いであった。ここからはネタバレになるのでご注意を。主人公ローレンス枢機卿が、その立場上、一番教皇に近い存在であるにもかかわらず、自分は俗っぽい人間なのでとうていそのような大役を務めることなど不可能だと言い続ける。敬愛して止まない前教皇の素晴らしさを思えば、自分などその足元にも及ばない、と謙虚に拒否し続け、同じ一派であるベリーニ枢機卿を教皇に推すのだ。ところが人間なんて皆同じ穴のムジナなのだ。スキャンダルやら何やらで票が割れてしまい、やる気満々の候補者らが次々と倒れていく中、ローレンス枢機卿に票が入るのだ。なんと、敵対しているテデスコ枢機卿と決戦投票にまで持ち込んでしまう。その際、おそらくローレンス枢機卿も「教皇」という座に心が揺れ、野心が見え隠れする。ベリーニ枢機卿から「教皇となった暁には名前(教皇名)はどうする?」と聞かれ、ローレンス枢機卿は思わず「ヨハネ」と答えてしまうのだ。あれだけ「その気はない」と言い続けて来た御仁なのに、「ローレンス、おまえもか」と思わずボヤきたくなってしまった。それで視聴者は、やっぱり主人公ローレンスが教皇となり、人間の業の深さみたいなものを漂わせてこの作品の幕が閉じるのだと想像するのだが、大どんでん返し!カテゴリがサスペンス映画となっているだけのことはある。結論を言ってしまえば、ローレンス枢機卿は教皇の座を逃す。その座に着いたのはダークホース的存在であった、アフガニスタン出身のベニテス枢機卿なのだ。しかもこの人物、肉体的に完全なる男性ではないことが判明する。子宮を摘出するか否かで悩み、結局は、神が創造した肉体を改造するのではなく、すべてを受け入れて生きていくことを決意するのだ。つまり、女性(少なくとも肉体的には)がローマ教皇の座に着くことになりそうなラスト。この問題はとても繊細な部分に触れることにもなるので、あまり思い切ったレビューは避けたい。だが一つ言えるのは、これも時代の流れとして受け入れなくてはならないという覚悟を突き付けるものであること。男女平等というものが、実際のところきちんと機能するのかどうか曖昧なのに、このまま画一的に推し進めていいものなのかはわからない。おそらく世界の「何でも平等」指向の波に呑まれて、日本も女帝が誕生するのも時間の問題かもしれない。だってそうだろう?歴史と伝統とガチガチの男社会であるバチカンで、ローマ教皇に女性が即位したら、それこそ右へ倣えで世界中がこれまでのしがらみを捨て去らなければならないからだ。さて、皆さんはこの問題をどう捉えるだろうか?※筆頭管理人から吟遊さんに「コンクラーベがいいよ!」とすすめると、最初はトンチンカンなことを言ってました(^^;)でもそうはいっても甘い物を我慢できる吟遊さんではありませんでしたとさ。2025年公開【監督】エドワード・ベルガー【出演】レイフ・ファインズ、ジョン・リスゴー、イザベラ・ロッセリーニ
2025.10.18