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「野球雲の見える日」
昨日、BS1で高橋由伸選手(巨人)のドキュメンタリー(スポーツ大陸)を放送していた。今年の自主トレから開幕戦までの密着ルポである。番組では、彼のバッティングに対する考え方(インタビュー)や具体的な練習方法もふんだんに盛り込まれていた。とても参考になった。が、その反面、ん?それは違うだろ、という点も含まれていた。つい先日このブログで書いた「軸」の話である。
彼は自分のバッティングをバージョンアップするために、1人のMLB選手の打ち方をめざしていた。バリー・ボンズである。高橋選手は、典型的な日本式の打ち方。つまり、前脚を上げ、それを下ろす勢いを利用して、体重移動→回転へとつなげていく打法である。バリー・ボンズをめざした理由は、軸をできるだけぶらさず、ボールを極力体に近いところでヒットする打ち方をまねたいためだ。しかし、そこに大きな誤解があったことを、彼は知っているのだろうか?
番組では、バリー・ボンズは「後ろ脚に体重を残し、後ろ脚を軸にして体を回転させている」と解説。センター方向からの映像で、両者のバッティングを比較していた。確かにバリー・ボンズの映像を見ていると、そのように映る。通常、バッターはピッチャーの手からボールが放れた辺りで打つか打たないかを判断するのだが、バリー・ボンズはなんと、(ピッチャーとキャッチャーの)中間地点。超人的なスイングスピードがなければ無理な話だ。体の大きさや筋力も当然関係してくる。問題は上記の解説である。もし、この解説を鵜呑みにし、そのままバットスイングしたらどうなるであろうか?答えは簡単である。ボールに力が伝わらず、飛ばなくなるのだ。実際、高橋選手もそれを痛感し、元の打ち方に戻すのだが、バリー・ボンズの打ち方をよく理解もせずにまねようとすれば、そうなるに決まっているじゃないか。誰か周りの人間が教えてやれよと言いたくなる。
バリー・ボンズの打ち方は、ある意味究極である。実に無駄がない。向こうの選手は、股関節でタイミングを取ることが多く、股関節と連動させてバットグリップを上下にチョコチョコと動かす選手もいる。股関節でタイミングを取るというのは、後ろの股関節→前の股関節→後ろの股関節→前の股関節…と、体重をのせ替えながら小さく振幅させて、ボールを待つことである。バリー・ボンズは手の動きの方が大きく、下の動きはほとんどない。見落としてはいけないのが、打ちに行く直前での前脚の股関節の動きである。よく見ると、彼は早めに体重移動を開始し、前脚の股関節に体重をのせ始めたところで一旦止め、打つと判断するや、そこから後ろ脚の股関節に体重を戻しながら、その反動を利用して体を回転させている(そのため、結果的に前足のつま先が上がることが多い)。だから、終始後ろ脚に体重を残し、後ろ脚を軸にして体を回転させているように見えてしまうのである。これは相当体幹(コア)の力がないと厳しいのだが、前脚の股関節が上手に使えているから(開いて閉じる)、自然に腰がしっかり入り、力負けしないのだ。
上半身は至ってシンプル。すでにバットを出すだけの状態にしているから、最短距離で出てくる。注意すべきは上体のぶれ(突っ込み)とインサイドアウト、ヘッドを立てることくらいか。だから、あれだけボールを引き付けられるのである。ただ構えたままで引き付けたら、ボールに力が伝わるはずもない。そして、軸(回転軸)はあくまでも中心軸(脊柱)なのだ(彼自身の感覚もそう)。この打ち方、ソフトボールの一流選手にも多く見られる。ソフトボールの打法とMLBのそれに類似点があるとは、意外でしょ。
番組でそのような解説はまったくなかった。非常に残念である。まだまだ、バリー・ボンズのバッティングに対する誤解は解けていないようだ。秘密は股関節にある。この番組は、6月16日(土)の深夜2時45分~3時34分にNHK総合テレビでも放送される(「はいつくばるまで振れ ~巨人 高橋由伸~」)。必見である。
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